スザクと別れるとライは再び研究所に足を運んだ。
研究所の中のシミュレーション室内にいるモニカに会うためだ。
モニカは先日完成した専用機の機体性能を確かめるため専用機の機体データをインストールしたシミュレーターを利用していた。
「言ってくれれば付き合ったのに……」
エリア24の任務の後からモニカは様子がおかしかった。
あからさまにライを避けていた。
助けた時「一緒に暮らさない?」とモニカから提案してきたのにそれから一回も話す事が無いままで一向に話が進まないでいた。
「……よし!」
ライはおもむろに隣のシュミレーターの電源をいれた。
(ライはもう帰ったかしら……)
シミュレーターの中にいるモニカは画面に映る仮想KMFを倒しながらそんな事を考えていた。
エリア24から帰ってきてからモニカはライに会わないように生活していた。理由は自分が口にした事だ。
(私あんなこと言うつもりじゃなかったのに……)
モニカは何時も他人とは一定の距離を作る事にしていた。
相手の機嫌を損ねない様に常に相手の機嫌が良くなるように笑顔を振り撒いていた。
ライにも最初の内はそう接していた。
だが、かつて瀕死の重症をおい、自分がライに抱く恋心に気が付いた時からライとの距離の取り方が分からないでいた。
いつか、ライがかつての恋人の事を想って居ることが分かった時、ライには「少し妬けちゃうわ」と言いはしたが、内心は嫉妬の炎が激しく燃え上がっていた。
そして、エリア24から帰る途中寝ていたライの寝言がさらにその炎の火力を強めた……ライが呟いた……カレンと……
(恥ずかしくて……悔しくて……何を話せばいいのか解らない……)
自分でも分からないこの気持ち……何処にぶつけていいものか分からずシミュレーターにぶつける事にした。
ふと、画面に新しいKMFが映った。
(グロースター一機だけ?こんな設定なんてあったかしら?)
グロースターはこちらにランスを向けて突撃してきた。
モニカはそれを躱し、グロースターにスラッシュハーケンを打ち出したがグロースターはハーケンをランスで弾いき、アサルトライフルをこちらに向け撃ってきた。モニカはブレイズルミナスを展開し弾丸を防いだ。そしてグロースターに向けてライフルを撃ち返した。
(これで終わり……結構厳しい設定だったわね……)
だがグロースターは倒されなかった。グロースターは飛んできた弾丸を紙一重で全て躱した。
その動きでグロースターの正体が分かった。ナイトオブラウンズの個人データはシミュレーターには設定されていない。つまりあのグロースターは彼本人が操作している事になる。モニカはシミュレーターを強制終了し、シミュレーター室から逃げるためシミュレーターから出た瞬間、彼はそこに立っていた……
「何処に行くんだいモニカ。一緒にお昼でもと思って迎えにきたんだけど」
「ライ!やっぱり貴方だったのね今のグロースターは……」
そう言ってモニカはライから顔を背けた……とても彼の顔を見れなかった……
「……私は要らないから……ひとりで行って……」
それは明確な拒絶……だがライは引かなかった……モニカの気持ちを確認したかった……
「モニカ……君と話がしたいんだ…‥一体何時ならいいんだい?」
「なら……今日の夜ならいいわ……」
モニカは自分でもズルいと思った……ライが今日の夜シュナイゼル殿下に呼ばれているのをマリーカから聞いていた……
(これで少しは時間を稼げるわ……)
モニカは心の中でそう確信したが、ライは予想外の行動をとった。
「分かった。ちょっと待ってて!今カノンさんに連絡をとるから!」
そう言ってライは携帯を取りだし、モニカの前で電話をかけ、目の前でシュナイゼル殿下との約束をキャンセルした。
モニカは唖然とした……目の前で皇族との約束を断ったのだから……
「よし!これで大丈夫だね!」
「何で!何でそんなに私に合わせるの!私が貴方を拒絶してるのが解らないの!」
モニカは怒りを露にした。
何故ライが自分にここまでしてくれるのか解らなかった……理解できなかった……ライはモニカが会ってきたどの男性とも違っていた。自分の家柄を使わず、自分の富を使わず、ただ純粋に心から自分を想ってくれるライにモニカは自分みたいな人間がどうしてこんなにも想われているかが理解できなかった……
「どうして!どうして……私を大切にするの……私を利用すればいいのに……」
今まで自分に近づいてきた連中のように自分を利用するために、陥れるために、自分を飾り立てるために近づいてきた連中の様にしてくれればこんな気持ちを抱く事もなかったと思ったのに……モニカは自分の気持ちを整理できずにいた。
「それは君が大切だからだよ。君を愛しているから……」
そう言ってライはモニカを抱き締めた。
優しく……力強く抱き締めた……
(なんで貴方は私を大切にするの……優しくするの……愛してくれるの……貴方には私より想っている女性がいるんじゃないの……)
その心の中を読んだ様にライはモニカに自分の気持ちを伝えた
「僕はカレンを想っている。けどそれは大切な人間としてだ。モニカ僕は一人の女性として…‥愛する者として君を想っているよ」だから大丈夫だよとライはモニカに囁き、唇を奪った。そして再びモニカを抱き締めた。優しく……逃げてしまわない様に……抱き締めた
それを聞いて安心したのかモニカはライの腕の中で泣いていた……
一頻り泣いたモニカはライの腕の中から離れた。
逃げる為ではなく謝るために…‥
「ライ……ごめんなさい。私、不安で苦しくて、今まで男性にこんな気持ちを抱いた事がなかったから」
モニカの本当の気持ちを聞いて安心したライはモニカの手を優しく握って言った
「いいよ別に。モニカはカレンに嫉妬していただけなんだよね。なら悪いのは僕の方じゃないか」
普通に考えればそうだ。モニカは何も悪いことはしていない。ライがカレンの名前を出さなければ今回の様なことは起こらなかった。ライは今回の出来事で深く反省した。
「モニカ。良かったら一緒に暮らさないか?」
「え?」
ライはかつてモニカに言われたことを改めて自分の口から言った
「やっぱりこういう事は男性の方から言ったほうがいいよね」
「バカ……」
そう言ってモニカはライにキスをした。
それがモニカの答えだった……