久しぶりにライの部屋に来た…‥
以前にライの部屋に来たのは2ヶ月も前の事だった…‥
(もう4ヶ月になるんだ…‥)
モニカとライが付き合い出してもうそんなに時が過ぎているとは思ってもいなかった…‥
別に1度も異性と交際をしたことが無いわけではないが、こんなにも時間を忘れるぐらいに一人の異性の事を想った事は無かった。
今までは父親への建前として、交際をしてきた。
それであの父親が満足するならと…‥
ただの機嫌とり…‥
そんな考えでいた…‥
だが、今回は違う…‥
自分で選び、選ばれた。
これがモニカの中で一番重要な事だった…‥
ライはキッチンに行っていた。
今、ライは二人で食べる夕食を作っている。
恥ずかしい事にモニカは料理が出来ない。
貴族の家系に生まれ、回りには世話をしてくれる人がいたし、何より自分は女を捨てて生きてきた。今まではそれでいいと思っていたが、今はそんな事を考えていた自分を恨んでいた…‥
(料理が出来れば一緒に作れるのに…‥)
「モニカは嫌いな物はある?」
「…‥ないわ」
ライはモニカの変化が嫌になるほど伝わってきた…‥
(また不機嫌に…‥これじゃあ雰囲気なんてあったもんじゃない…‥)
ライは夕食を作る手をとめ、ライはモニカの前に来た…‥
そしてライはモニカの唇を無理やり奪った
「っん!?…‥ん…‥」
モニカは一瞬驚いたが、直ぐに受け入れた…‥
唇をはなし、ライはモニカに言った
「言ってくれないと分からないよ?」
ライの本音だった。
ライは昼間のように気持ちに鈍い所がある事は自覚していた。
だからまた彼女を傷付けてしまったか不安だった…‥
それを今まではキスで誤魔化してきた…‥
お陰様で最近はキス魔になってしまった…‥
「ごめんなさい…‥」
「…‥夕食を食べてからでもいいから話して欲しい」
そう言い残し、ライはキッチンに戻っていった…‥
モニカはライの優しさに困惑していた…‥
ライはすぐにモニカの気持ちに気が付く…‥
それは嬉しい事だが、同時に恥ずかしい事だった…‥
(私ってこんなに分かりやすい人間だっけ…‥)
モニカは他人と距離を取る生き方をしてきた。
だからモニカの気持ちを隠す技術は誰にも見破られない程に完璧だと自負していた。
現に今まで本当に見破った人間はいなかった。
所がライは意図も簡単にモニカの気持ちを見破った…‥
最初に会った日にライはモニカに言った。
「何故そんなに隠すんですか?僕は本当の事を言ってもらった方が信頼出来ると思いますよ」
それを言われた時、モニカはライに恐怖を覚えた…‥
ライの観察眼と洞察力は異常だった…‥
まるで人を疑う事を日常的にしているのではないかと思ってしまうほどだった…‥
それが今はその洞察力に助けられてもいる…‥
だが、その洞察力を全く使わない女性関係には頭を悩ませてもいる…‥
ライはモニカにとって特別な者になりつつあった
だからこそ、ライのアーニャへの態度が『同僚』へのモノではなく『女性』へのモノだと気が付いた。
しかもそれは自分への態度に近いものになりつつあったのだ…‥
それはつまり…‥
(ライはアーニャが好き…‥)
だが、ライはどうやら自分の気持ちに気が付いてはいないようだ。
モニカはこの事をどうすればいいか悩んでいた…‥
ライに話すのが恐かった…‥
ライがアーニャへの気持ちに気が付いたら…‥
(私は…‥私はどうなるの…‥)
恐かった…‥
どうしても勝てない相手がいる事は理解し、何とか受け入れられた…‥
だが、今回は違う。
相手はアーニャだ…‥
ライがモニカよりアーニャが好きだったらと考えると心が壊れそうな程不安になった…‥
「出来たよ!さぁ食べよう!」
「えぇ。頂くわ」
テーブルには、パスタとサラダが二人分、向かうように置かれていた。
モニカはライと一緒に席につき、夕食を食べ始めた
夕食を食べている間、二人は一言も喋らなかった。
いや、喋られなかった…‥
モニカはライにアーニャへの思いを確認するべきか…‥
ライはモニカが自分をどう思っているのか…‥
二人ともそれが気になり、自ら声をかけられないでいた…‥
夕食の間、互いの口が開く事はなかった…‥
食器を洗い終わり、ライはモニカがいるベッドへ向かった。
モニカの隣に座るとライは自分の重い口を開いた…‥
「モニカは…‥いったい何を思い悩んでいるだい…‥」
優しく問いかけた…‥
このあとどうなるかも分からないで問いかけた…‥
「…‥貴方の想いが誰に向いているのか考えているの」
ライは一瞬意味が分からなかった…‥
てっきり、料理が出来ないことや、ライに気持ちを見抜かれる事を恥ずかしがって言ってくると思っていた…‥
なのに言われた事は想像より何倍もシリアスな内容だった。
モニカが言っている事が徐々に理解していき、すぐさま応える
「そんなの君に決まっているじゃないか!」
「本当に!!本当にそう言い切れる!!本当は他の女性じゃないの!!」
モニカは涙を流しながらライを睨んでいた
ライはモニカのそんな表情を視たことを無かった…‥
それは殺意にも似ている…‥
それは嫉妬であり、憎悪であり、憤怒、それらが入り雑じっていた…‥
「モニカ…‥急にどうして…‥」
ライは頭が真っ白になった…‥
ワカラナイ…‥
モニカは何に嫉妬し…‥
何に憎悪し…‥
何に憤怒しているかがまるで分からなかった…‥
「…‥ライはアーニャをどう想っているの?」
「え…‥」
アーニャ?
今はモニカの気持ちを聞いているはずなのに何故にアーニャの名前が出てくるのか全く分からないでいた。
アーニャは確かに大事に思っている。
守ってあげたいと感じている
だけどそれはモニカに関係はないはずだと思った
だが、モニカの言葉を聞き、何故モニカがアーニャの事を口にしたか分かった…‥
「ライ…‥貴方はアーニャの事が好きなのよ…‥自分が気が付いていないだけ…‥」
「僕が…‥アーニャを…‥」
そう言われると自分の気持ちに徐々に気がついていった
なぜ、自分がアーニャに嫌われたくないか…‥
なぜ、アーニャの事を考える時があるのか…‥
アーニャを助けてあげたいと思うのか…‥
アーニャの涙を見ると胸が苦しめられるのか…‥
かつてブラッドリー卿にされた質問思い出した。
「お前の大切な物はなんだ?」
その時に何故モニカとアーニャが頭に浮かんだのかライはやっと気が付いた。
自分はモニカと同じ位にアーニャが好きだった…‥
気が付いたら駄目なのに…‥
考えては駄目なのに…‥
モニカはライが気が付いた事に気が付いた…‥
「それで…‥貴方は…‥私を…‥私より…‥」
モニカが何を言いたいか分かった。
だがそれを言わせるわけにはない。
それを言ってしまったら彼女は壊れてしまう!
「モニカを一番に想っている!!アーニャよりも君が好きだ!!」
今はそう応えるしかなかった…‥
どちらが一番かは今重要では無かった…‥
彼女が気にしているのは恐らく…‥
ライの中に『自分の居場所があるのか』だ…‥
彼女は孤独だ…‥
父親に愛されず…‥
周りにいるものを愛せなくなった…‥
だから今再び愛する事が出来るようになり、愛されている事を感じることが出来るライに陶酔していた…‥
孤独になりたくない…‥
ライにモニカの心が伝わってきた…‥
ライも孤独の恐怖を知っていた…‥
記憶をなくし…‥
家族も、兄妹も、仲間も居ない…‥
ただ1人でいる…‥
その恐怖を今、彼女が味わっている事が分かった…‥
ライはモニカに何故に惹かれたか、そしてアーニャに惹かれたか理解した…‥
二人とも同じだった…‥
自分と同じだった…‥
だから惹かれた…‥
それと同時に救われたかった…‥
きっと彼女もそうなんだと気が付いた…‥
「本当に?」
モニカは自分でこんな話をしたのに、ライに救いを求めた…‥
自分で勝手に傷付いて、勝手に相手に救いを求める…‥
(私…‥最低…‥ライなら応えてくれるのが分かってる…‥)
でも失いたくはない…‥
愛されている事を実感したい…‥
愛している事を伝えたい…‥
モニカはただそれだけに支配された…‥
「あぁ。愛してるよ…‥モニカ」
「なら…‥私を愛して…‥」
そう言ってモニカはライを求めてきた…‥
言葉より行動で示して欲しかった…‥
言葉は信じれなかった…‥
ただ、ライが欲しかった…‥
ライはモニカの唇に自分の唇を重ねた…‥
「…‥あ…ん…‥」
唇を重ねて、モニカの方から舌を突きだした…‥
ライも気持ちに答えるように舌を出した…‥
舌を絡ませ、相手を求め、理性がゆっくりと溶けていくのが分かった…‥
モニカの温もりを感じたい…‥
どんな事よりも…‥
どんな物よりも…‥
何をおいても今はモニカが…‥モニカだけ欲しかった…‥
「ライ…‥」
「モニカ……」
ライは再び唇を重ねながら、モニカをベッドに押し倒した。
モニカは両手をひろげ、ライを誘う。
ライはそれに応える…‥
二人の着ていた衣服が床に落ちていく…‥
「此処は…‥」
目を覚ましたモニカは不思議に思った…‥
自分の屋敷ではない…‥
何故自分の屋敷ではない所で眠りについていたのか…
その理由は隣に寝ている大切な人を見て思い出した。
(そうか…‥私、ライと…‥)
ベッドの近くの棚にある時計に目をやった。
『AM 02:18』
ライと繋がったあと、どうやら疲れてそのまま眠ってしまったようだ。
実際、ライもモニカも服を着ていなかった。
ライの寝顔を見ながらモニカは考えた
(どっちが好きとかどうでもいい…‥ただ…‥貴方が居てくれれば…‥)
モニカはライがアーニャと自分、どちらも同じ位に愛している事に気が付いた…‥
本当は自分を選んで欲しい…‥
でも傷つきたくない…‥
そんな矛盾が心を支配している
今はここで妥協するしかないと自分の心に言い聞かせた…‥
ただ、彼の心をもっとも支配している人物は自分達ではない…‥
(カレン…‥いったいどんな女性なんだろう…‥)
彼にこんなにも想われている女性に興味が湧いた。
自分やアーニャには勝ち目がない相手…‥
彼女が彼の目の前に現れたら私はどうなるのだろう…‥
彼が彼女を選んだら私はどうなるのだろう…‥
また、そんな考えが頭を支配し始めるが、彼女はもう答えを見つけていた。
(たとえ貴方がどんな人間になろうと…‥私は最期まで貴方と共に居る…‥絶対に…‥)
そう心に誓い、眠っているライにキスをした…‥
この時、彼女は考えてもいなかっただろう…‥
まさか自分が心に誓ったことが本当に起きてしまう事になるとは…‥
ライが今と違う立場になってしまうことに、ライ自身も想像していなかっただろう…‥
運命はまた動き出す…‥
その渦巻く運命にライが翻弄されていく…‥