「ちゃおッス」
家に1人きりでただ茫然としていた私の目の前に彼は、いや彼らは突如として現れた。そして、彼らとの出会いは私にとって運命の分かれ道だと確信した。
ある日の事、その日は何時もの様に学校へ行き友達と一緒にお喋りをして詰まらない授業を受けて家に帰る。それは変わらない日常だと信じていた。両親は時空管理局員だった。
両親は時空管理局の仕事によって第32管理世界で起こっている連続殺人事件の調査、解決の任務をしていたそうだ。けれども両親は私と兄さんを置いて殉職し、莫大な保険金が手元に来た。
兄さんは両親の代わりに私を育てながら時空管理局の地上本部で職員として働き始めた。そんな兄さんの姿を見て私も早く働けるようにと勉強を頑張った。何時でも優しく、そして射撃の命中が凄くて兄さんの友達は何時でも悔しそうにしながらも笑っていた。
私もそんな兄さんの事を誇りにしてずっとこんな日々が続くものだと思っていた。
けれど、運命は残酷で兄さんは女性連続殺人事件の犯人を捕らえるという任務に就いていたそうだ。よく兄さんの同僚から聞く嫌な上司の方も一緒で兄さんはあと一歩のところまで犯人を追い詰めた。
でも、犯人の人は近くにいた女性を人質にして兄さんからデバイスを取り上げ、兄さんのデバイスを使い、兄さんを撃ったと同僚の人から泣きながら言われた。
犯人は他の同僚が捕まえる事は出来たけれど、兄さんは数十分後に死んだ。
そう、死んでしまった。ワタシヲ置イテ
私にあるモノは兄さんと一緒に暮らすこの家と、その日兄さんが持っていた遺品だけだ。不思議なことに私は一緒に住んでいて見た事が無いモノだった。
デバイスとグローブは解る。今は壊れているけれど兄さんが愛用にしていたものだ。けれどこの7つの指輪だけは知らない。兄さんの同僚によるとその日兄さんがグローブ下の指に着けていたそうだ。
6つは同じようなデザインで、どこかの騎士の盾の様な形に貝殻が3つ、その下に雷や太陽、雫、雲、竜巻、あと良く解らない模様が付いていた。そして残りの1つだけ青いガラス玉?に解らない文字が書かれていた。
これは、一体なんなのだろう? と考えていたけれど知っているだろう兄さんはすでに……。
遺品は兄さんの部屋に置いて、その日から私は呆然と生きる日々が始まった。
兄さんがお墓の中に入ってから数日、何をするでもなく、ただ生きるだけ。
適当に出来合いのモノを買って、食べて、シャワーして、おトイレいって、寝る。それ以外は何もしない。何もする気が無かった。考えようとしてもすぐにやめて寝る。家から出たくはなかった。出れば近所の人たちが変な眼で見るから。けれど死にたくもない。
結局、3日分買って、無くなったらもう3日分を買う。それだけ外へ出た。寝るときは兄さんの部屋でだ。兄さんが寝ていたベッドに入れば兄さんの匂いがする。落ち着くんだ。せめて夢の中だけは兄さんと居たい。
そんな変わらない日々を続けていた時だ。
兄さんの机の上に置いていた指輪から声がした。
『やれやれ、ティーダもこんなやつを継承の相手にするとはな』
「え?」
『だが、オレは約束を守る主義だからな。』
「ゆ、指輪が、しゃべって!?」
指輪が一人でにしゃべりだした。インテリジェントデバイス!? そんな高価なものを兄さんが持っているなんて、なら何で使わなかったの!!? と自分自身でもわかるほど混乱していると1つの指輪からオレンジ色の小さな炎が出た。
瞬間――炎は一直線に私のオデコにぶつかった。私はぶつかった衝撃と痛みで意識を手放した。
意識を取り戻すとそこは兄さんの部屋だった。うん、変わりようがない。先ほどのは夢だったのだろうか? 夢に違いない。もしインテリジェントデバイスを兄さんが持っていたら、死ぬことはない筈だ。たぶん。
「おい、何時まで呆然するつもりだ」
「だ、だれ!?」
私しかいない筈の家に私以外の声、兄さんの声とも違う幼い声に扉の方を見る。
そこには
「あ、あかちゃん?」
あかちゃんだった。ただし黒いスーツを身に着け、黒い帽子をかぶっている紳士風のあかちゃんだ。帽子の上に小さな緑色のカメレオンがいる。
「ちゃおッス」
「ちゃ、ちゃおっす?」
なんだか変わった挨拶だ。
ミッドチルダや他の知っている次元世界でも使われて無い。
「オメーがティーダの妹のティアナだな?」
「兄さんを知っているの?」
「まぁな、オメーの事はティーダから聞いているからな」
「兄さんから、でもキミが兄さんと知り合いなんて聞いた事が無い」
そう、私は兄さんと一緒に住んでいたけれど兄さんからこの子の事は一切聞いてない。でも、わからないのはあかちゃんなのに何でこんなにも大人の様に思えるのだろう?
学校に行っている間や仕事の間に会っているかも知れないけれど、兄さんなら楽しそうに教えてくれるはずだ。
「ティーダとの約束でな」
「兄さんと、約束?」
「ティアナ、オメーを一人前のヒットマンにしてやるゾ」
これが、私、ティアナ・ランスターのFATE(運命)が変わった瞬間だった。
裏話を1つにするために出来ました。
これからは第3章の裏話はすべてここに移ります。