【完結】艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話 作:しゅーがく
結局、鎮守府で労働の出来る場所は、見つかりませんでした。
あちこち回ってみたものの、どこも手が足りているみたいですね。余分に必要ということも、特に言われませんでした。
それでも私は、働き口を探しました。
まだ行ってないところに足を運び、声を掛けます。ですが、やはり、ダメみたいですね。そんな事が続き、歩いていると、ふとある事を思い出しました。
昨日、赤城さんが言っていた『柴壁』という民間軍事組織です。『柴壁』に入る事を一時は、私は嫌でしたが、もうそんな事も言ってられません。ここに残るためには、何が何でも労働しなければなりませんからね。
(警備棟に行きましょうか……)
腹を括りました。もう探し回っていても、見つかりませんでしょうからね。いたずらに時間を使うよりも、割り切った方が絶対良いに決まってます。
(腹を括ります。もう、四の五の言ってられませんからね)
なんとか働かないと、追い出されますからね。
私は、警備棟に向けて重い足を前に出しました。
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警備棟に入り、入り口の社員さんに会釈をします。昨日とは違う人が立っています。
私は片方の人に声を掛けました。
「すみません」
「はい? どうされました?」
「武下さんにお会いしたんですが」
そう私が言うと、快く答えてくれます。
「分かりました。連絡を入れますので、少々お待ち下さい」
その場で肩にぶら下がっている何かを手に取ると、話し始めました。多分、無線機でしょう。
少し話すと、無線機をぶら下がっていたところに引っ掛けました。
「これからご案内します。付いてきて下さい」
「はい」
私は後を付いて行きました。
着いたところは、昨日と同じ会議室です。昨日は巡田さんでしたが、今日は武下さんです。
「天色さん。御用とは何でしょうか?」
そう、武下さんは訊いてきます。遠回しに言っても伝わらなかったら意味がないので、私は率直に伝えました。
「私を『柴壁』で雇っては頂けませんか?」
「はっ?!」
流石に想像を超えていたみたいですね。凄く驚いています。
ただ、それだけ伝えただけでは足りませんので、その経緯を付け足しました。
「ここに滞在するつもりなんですが、大本営が労働を条件に許可を頂けたんです」
「ほぉ……」
「他は手が足りているみたいで、ダメ元で来ました」
これは嘘です。
「そうなんですか……。ちなみに、他には何処に行かれました?」
「事務棟と酒保です。その他にも回ってみましたが、全て空振りでした」
捉え方によっては、『仕方なく来た』とも思われてしまうでしょうけど、しょうがないですよね。
「……分かりました。ですが」
武下さんは、そう言ってくれました。
「私たちの雇い主、横須賀鎮守府艦隊司令部から採用されないことにはどうにも……」
横須賀鎮守府艦隊司令部が採用しているなんて、初耳です。ですけど、どういった仕組み何でしょうか。紅くんが居ない現状、それを代わりに処理する人でも居るんでしょうか?
「それって、紅くんが雇い主という事でしょうか?」
そう私が聞くと、意外な回答が帰って来ました。
「いいえ。艦娘ですよ」
「はい?」
私はその回答に驚き、思わず、聞き返してしまいました。
「私たちの雇い主は艦娘です」
武下さんはハッキリ言いました。
艦娘に雇われていると考えると、かなり変な話ですね。というより、艦娘にそれだけの財力があるんですね。
「そうなんですか……」
私はそう言って考えます。誰に言えばいいのか、分からないんです。艦娘といっても、横須賀鎮守府艦隊司令部に所属している艦娘はかなりの数が居るように思えます。
イベントなどで手に入るレア艦はほとんど居ないようですが、ある程度の艦娘は居るみたいです。
「それで、『柴壁』で働こうとお考えで?」
これまでの話を聞いていれば、そう考えてしまうのも無理ないです。
というより、今のところ、『柴壁』以外の場所が見つかってないんですよね。酒保の方も結局、ダメだったみたいです。それに雇い主は艦娘だとも言ってました。『柴壁』と同じですね。
私はもう一度、武下さんに伝えます。
「はい。ですので、どうかお願いします」
私は頭を深々と下げました。
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結論から言うと、私は『柴壁』で雇ってもらえる事になりました。
武下さんの推薦状(?)を片手に、赤城さんに会いに行って、趣旨を伝えたんです。
そしてたら、とてつもなく心配されましたが、それまでの経緯は知っていますので、納得してもらえたんです。
推薦状(?)を赤城さんに渡すということは、『柴壁』やら、酒保の雇い主は赤城さんになっているという事なんですかね?
こうして、私は『柴壁』に加わりました。この事は、大淀さんを通じて、大本営海軍部に書類が送られているそうですので、もう、条件の1つ目はクリアです。
「あっ、天色さんっ?! その格好は?!」
『柴壁』に入ったと言うことで、私は新人教育を受ける事になりました。
ガイダンスは一応、ありましたが、ほんの10分で終わってしまったんです。理由としては、『ここでの勤務は、基本的に外部から侵入する”敵”を排除する事です。と言っても、そんな事で働いた事は2回しかありませんけどね』ということで、特に説明する事はない、とのことこです。訳が分かりませんけど、それ以上に説明することがないとの事でした。
「本日付で『柴壁』に入社(?)しました、天色 ましろです。よろしくお願いします」
「新人って、天色さんでしたか……」
私の指導教官を務めるのは、西川さんです。その他にも2名居ます。長政さんと、沖江さんです。6月の頭だというのに、長政さんは顔が隠れるくらいに顔に何かを巻いてます。
特に意味はないらしいですけどね。ちなみに、沖江さんは女性の方です。『柴壁』には一定数、女性の方も在籍されている様ですね。
「はい。それに、この鎮守府には”天色”は2人いますので、下の名前で読んで下さい」
「分かりました。ましろさん。提督のお姉様ということですが、遠慮はしませんよ」
「はい」
そんなこんなで、私の新人教育が始まりました。
一応、民間”軍事”組織ということなので、体力作りから始まります。
運動は専門学校卒業以来、やってないですので、身体が動くか心配でしたが、案外動きました。まだ20代前半だからでしょうね。
テレビでやっている様な、訓練を永遠とやります。と言っても、走るだけですけどね。
何時間か、走り込みをすると、警備棟の部屋に通され、座学が始まります。
何を習うのかというと、ここで働くには欠かせない物の扱い方や、整備方法等など。それ以外には、ここでの決まり、ルールみたいなものでしょうか。
「ここまでの座学は正直、必要ないと思って貰って結構です」
西川さんは、そう言いました。ここまでの座学、約2時間は何だったんでしょう。
「今からは、横須賀鎮守府艦隊司令部に居る限り、必要な知識をお教えします。ですので、よく覚えて下さいね」
ここに居る限り必要な知識とは、仕事で使う知識とはまた違うんでしょうね。ですけど、仕事よりも優先順位が高いように思えます。
そんな事があるんでしょうか。
「横須賀鎮守府艦隊司令部はその特殊さ故、治外法権が適応されています」
私は初っ端から、意味が理解できなくなりました。
国の組織である筈なのに、治外法権が適応されてるとは、ここは日本皇国の軍事施設じゃないって事になります。
「日本皇国国内で最も、武力を保有しているのは他でもない横須賀鎮守府だということを先にお伝えさせていただきます。それを踏まえて、横須賀鎮守府がどういった施設なのかを、説明させていただきます」
紅くんが提督をしている横須賀鎮守府は、ただの日本皇国の軍事施設ではないみたいですね。
「率直に言ってしまえば、紅提督の着任から治外法権が適応されました。その理由といたしましては、艦娘による提督への過度な保護欲によるものです」
話を聞いていて思うことがあります。その過度な保護欲がありながら、紅くんを守る事が出来なかったんです。艦娘は。
「私たちは『提督への執着』と呼んでいます。彼女たち艦娘曰く、『提督に振りかかる火の粉、水しぶきは全て私たちが払う』だそうです」
『だそうです』ということは、定かではないということですね。ですけど、こうやって教えている時点で、定かではないが、信憑性のある情報という事でしょう。
「ですので、艦娘の目の前で紅提督への暴言や暴行は勿論、不快に思わせる様な行動はしない様にお願いします。最悪、その場で殺されます」
本当に最悪です。ここは思っていた以上に、とんでもない世界だったみたいですね。艦これの世界だと侮っていました。まぁ、紅くんが暗殺云々でそれは気付いていましたけどね。
「ですので、横須賀鎮守府艦隊司令部には治外法権が適応されています。ここでの法律は紅提督にありますことを、ご理解ください」
本当にとんでもないところです。
「次に、艦娘たちへの接触方法です」
先にそれを話すべきでは、と言いそうになりましたが、飲み込みました。
「彼女たちを、人間の女性同様に扱う事を心がけて下さい」
これに関しては、聞きたいことが出てきました。
「以前は人間の女性として扱われていなかった、ということですか?」
「はい。以前の鎮守府は、いうなれば『檻』でした。艦娘はここに帰って来て食事をして寝るだけでしたからね」
『檻』という表現が合ってますね。ということは、戦闘をずっとやらされていた、ということになりますね。ブラック企業もいいところです。
「という説明を致しましたが、ましろさんが紅提督のお姉様だとすれば、この知識はあまり必要ないかも知れませんね」
「そうなんですか?」
散々、説明しておいて、そう西川さんは言いました。
私なら、今の話を覚えている必要がないとは、どういう意味なんでしょうか。
「はい。理由は挙げられませんが、そういう事になるというのは、分かります」
そう言って、西川さんは話に戻りました。
次は、紅くん着任からこれまでの出来事に関してです。
聞いていて思ったことですが、率直に感想を言えば、『濃い』半年間だったと思いました。
様々な事が起こり、行って来た半年間だったみたいですね。大きな事件だけだ、と西川さんは言いましたが、それでもかなりの量の出来事です。
小さな事を含めたら、とんでもない数の事件が起きたんでしょうね。
私は、西川さんの話を聞きつつ、そんな事を考えてました。
何日振りの投稿でしょうね。まぁ、リテイクしてからは文体等、色々変わりましたので、ご容赦下さい。それに、作者の負担も減りました(汗)
ここで本編の話をしてもいいんですが、ネタバレしてしまいそうですので、控えさせていただきます。
だた言えることは、提督代理にはなりませんでした!
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