【完結】艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話 作:しゅーがく
資料室に着いた私たちは、夕立さんの先導で中に入りました。
中は、何処か学校の図書館を彷彿とさせる様な、独特な香りが立ち込めています。そして、本棚に目を向けると、恐ろしく分厚い本が何冊も何冊も並んでいました。
「これが、戦術指南書ですか?」
「そうよ。だけどこれでも1/4くらいかしら?」
そう言って首を傾げる夕立さんの後を着いて、資料室の棚を眺めていきます。
なんと、図書館であるような本棚が16個くらいに、戦術指南書が収められていました。
どれくらいの数が置かれているのか分かりませんが、とりあえずかなり多いということだけは分かります。百科事典全巻集めても、到底足りない数ですね。
そんな、とてつもない数の戦術指南書を目にした私は、絶句してしまってました。
「やっぱりそういう反応だよね。うん、分かってたさ」
時雨さんは、私の目の間で手を振ってそう言います。
この反応はテンプレなんでしょうかね。
数秒して戻ってきた私に、夕立さんは話をしてくれます。
「他にも普通の文庫本とか漫画も置いてあるわ。最初のは紅提督が買ってきたものだったけど、空襲で焼失してからは寄贈品ね。今じゃ収まりらなくて、隣の空き部屋も資料室にしてるくらいだから」
夕立さんは本棚の間を歩きながら、そんな事を話します。
本棚を眺めながら歩いていると、ある一角が目に入りました。それは机と椅子が並べられているところです。
そこには艦娘が、本とにらめっこしていたり、ノートを開いていたりしていますね。見える範囲では由良さん、翔鶴さん、満潮さんですね。翔鶴さんは本を読んでいるだけみたいですが、由良さんと満潮さんは勉強をしているようでした。
そんな3人を流し見して、私は夕立さんに訊いてみます。
「由良さんと満潮さんは何をしているんですか?」
「あれは勉強よ。由良は多分、魚雷の特性について。満潮は艦砲についてだと思う」
イントネーションだけでは判断出来ませんが、満潮さんがやっているのは多分、軍艦に装備されている主砲の事についてでしょうね。
「そうなんですか?」
「多分よ、多分」
そう言って夕立さんは私と時雨さんを少し離れたところで待って欲しいと言うと、由良さんと満潮さんの方に行ってしまいました。
数分話をすると、こっちに戻ってきて私に小声で教えてくれます。
「由良はただの戦術だったわ。だけど、満潮は違った。何だか家事に関して勉強してるみたい」
そんな風に、夕立さんは言います。
だけど、何だが満潮さんの事を言う時だけ、ぶっきらぼうになっていました。気に入らなかったんでしょうかね?
「そうだったんですか」
「うん。まぁ、いいわ。少し、どこかで話でもしましょうか」
そう言って、私たちは資料室を後にした。
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特段、私はこの2人に聞きたいことはありませんでした。
情報収集も、結局鈴谷さんと話したところで、完了したのも同然でしたからね。巡田さん曰く、『報告書は要らないです』ということなので、口頭で伝えるだけで済みますからね。
行く宛も無く、歩く私と夕立さん、時雨さんは廊下を歩きながら、平凡な会話をしていました。とは言っても、2人が紅くんの事を聞いてくるだけですけど。
特に夕立さんの食付きが凄まじく、まさに機関銃の様にあれやこれやと訊いてきます。
好きな食べもの、好きな本、好きな遊び、好きなスポーツ……根堀葉掘り訊かれて、私も紅くんの嗜好を知り尽くしている訳でもありませんので、かなり頭を使いました。
「あっ……ごめんなさい。つい色々訊いちゃったわ」
そんな風に、夕立さんは言います。質問が鉛弾の様に飛んでき始めて大体20分くらい経った頃でした。
私ももう、結構疲れてきて居たので、ここで気付いてくれた事がありがたいです。
「いえ、大丈夫です」
「そう?」
私は少し、窓から外を望みながら話を聞きます。
「そういえば……」
数秒間の沈黙の後、夕立さんはそう切り出します。
「こっちに来て、なんか変わったこととかあった?」
「……どういう意味ですか?」
一瞬、夕立さんの言った言葉に疑問を感じました。
何が変わったのかという事を聞きたいのか、分からないんです。
「そのままの意味よ」
私が答えを出せずにいると、時雨さんが私に言いました。
「そんな風に訊いたって分からないよ、夕立。……ましろさん」
「はい」
「理不尽な事が起きなかったか、って事を聞きたいんだ。例えば……そう、自分でやった事がそっくりそのまま返って来た事とか」
聞きたい事は分かりましたが、なんと答えればいいのか分かりません。
世の中、理不尽な事ばかりですから、そんな事も考えた事もありません。ですけど夕立さんが聞きたい事は、多分そういうことではないんだと思います。
もっと違う、『何かが起きてないか』ということではないのでしょうか。
「……ないです」
私はそう考えたとしても、思い出せませんでした。特にこれと言って、良くない事が起きた事は、こっちに来てありませんからね。
それを訊いた夕立さんは、何だか安心した様な表情をして話します。
「なら良いわ……。それで、ましろはどうするの? 今後」
夕立さんは訊いてきます。今度は『理不尽』云々では無いみたいですから、私も少し考えただけで答えを出します。
「『柴壁』で気長に紅くんを待つつもりです。ですけど、何か動きがある時は、私も動くつもりではあります」
「そう……その時は夕立も動くわ」
「勿論、僕もね」
夕立さんと時雨さんはそう言います。
それからは夕立さんと時雨さんとは別れました。もう、聞く事もありませんし、何より本来の目的である『艦娘の精神状態の調査』は終わりましたからね。
後は報告をするだけです。
まぁ、それまでは鈴谷さんが頼んできた奪還作戦の事でも考えましょう。
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奪還作戦について考え始める前に、私はある人のところに足を伸ばしています。
赤城さんのところです。
どうやらこの横須賀鎮守府艦隊司令部の長である紅くんが居ない今、全権を握っている訳ではありませんが、ある程度の指示を出しているのは赤城さんみたいです。ですから、奪還作戦を遂行するにしても、赤城さんに一声掛けなければなりませんからね。
こんな事をするのも、何だか変な感じですが、しなければならない事です。
「赤城さん」
「はい、何でしょうか」
赤城さんは、執務室に居ました。
どうやらファイルを見ていた様です。
「……赤城さんって、ただ待つ事と、自分から動くとどっちが良いですか?」
そう、私が遠回しに聞きます。
何故なら、この場に翔鶴さんが居ますからね。ここで、本題を言うわけにはいきません。
それに、赤城さんもこれだけでどういう意味か分かる筈です。
少し間を置いた赤城さんは、私の顔を見ます。その表情は温かい笑顔ではなく、とても真剣な表情でした。
「動きますよ、私は」
そんな主語の無い上に、傍からみたら意味の分からない会話を繰り広げている私と赤城さんを、翔鶴さんは不思議そうに見ています。
「あの、どういう……」
そういう翔鶴さんを私たちは無視をして、話を続けました。無視というか、聞こえていなかった、と言った方が正しいのかもしれません。
「”紅葉狩り”は”私たち”で行ってきますね」
「……成る程。では、私にその”紅葉”を1枚」
「否。赤城さんにあげる訳にはいきませんね」
「ふふっ」
「では。予定を立てて来ます」
私はそう言って、赤城さんの前から立ち去ります。
どうやら、意図は伝わったみたいですね。だからあんな事を言ったんでしょう。
『では、私にその”紅葉”を一枚』
きっと、そういうことなんでしょうね。
赤城さんはやっぱり、そういう感情を持っていたということですね。
私は普通なら喜ぶべきことなのだろうと思いつつも、面白くない気分になっていました。
盗られるような気がして、なくしてしまうような気がしてなりません。
前回からまたもや時間が経ってます(汗)
ずっと忙しく、レポートを書いたりしてますのでなかなか書けないんですよね。
それはさておき、遂に動き出します。
言い回しやらが面倒だと思った人もいらっしゃるかもしれませんが、分かる人には分かりますよね?
先日、ある二次創作物のおすすめ作品を紹介しているサイトにて、本作を紹介していただきました。管理者の方、誠にありがとうございます。
前作も紹介していただいていますので、本当に感謝がしきれません。
ご意見ご感想お待ちしています。