【完結】艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話   作:しゅーがく

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第20話  作戦立案

 

 赤城さんに一言伝えた私は、本部棟の執務室に居座ることにしました。どうやら、私が来てない時に金剛さんと大井さんは来ていた様です。もう今日は艦娘がここに近づく事は、ほとんどないと思いますのでね。

 ソファーに腰を掛け、レポート用紙と筆記用具を出して、奪還作戦の概要を考え始めました。ここまで来る途中で、ある程度はざっくりと頭の中で決めてしまっていたので、それを書き出します。

 奪還作戦とはいえ、現状を鑑みると、私たちには圧倒的に情報がない事が明確でした。

閉鎖的な環境にある横須賀鎮守府から出る人間等、0に等しいと言われていますからね。出るのは任務として、情報収集に出かける『血猟犬』だけですからね。

そうはいっても、実際に動くのは『柴壁』ですので、あまりそういった事を考慮する必要は無いんですよね。

 

(最初は情報収集ですよね)

 

 戦に於いて、情報戦が肝と誰かが言っていた気がします。ですので、最初にしなければいけない、事を書き出します。

最初にするべきことは、紅くんが収容されている軍病院の特定、軍病院の警備状況や施設内詳細図の入手。軍病院に至る課程は、特定するのと同時にやればいいでしょう。

そこから様々な視点から見たりして、練っていきます。

レポート用紙に書き込んでは、斜線を引いたりする事、約3時間。素人ではありますが、一応、書き終わりました。

私は今出来上がったものの、おおまかな流れを見直します。

最初は、巡田さんら『血猟犬』による軍病院の特定。その後に情報収集。軍病院の特定が終わったのと同時に、赤城さんによって大本営へ紅くんの容体を言及してもらいます。

その際の回答によって、今後の動きを左右します。

もし素直に回答があったのなら、場合により『血猟犬』は撤退です。無かったのなら情報収集を続行します。

『血猟犬』による情報収集が完了次第、本格的に作戦を動かします。

第一段階。横須賀鎮守府に毎日来ているコンボイを奪取し、兵士に偽装した『猟犬』二個中隊が軍病院へ出撃。

第二段階。『猟犬』二個中隊の出撃と同時に、『番犬』数人が横須賀郊外、都市部で騒ぎを起こします。騒ぎの内容は、『横須賀鎮守府から艦隊が出撃した』。横須賀鎮守府は勿論、戦闘行動を停止していますから、かなりの騒ぎになるはずです。

第三段階。『血猟犬』『猟犬』共に、軍病院への突入開始。但し、殺傷兵器の使用禁止。

銃はラバー弾、ナイフの携行禁止。非殺傷性手榴弾にて、軍病院の拠点を制圧。

第四段階。紅くん、救出。『猟犬』が乗り付けたコンボイによって。横須賀鎮守府へ帰還。

 これが、おおまかなあらすじです。

3時間で作った内容ですが、正直これで出来るのかと不安で仕方ないです。

机上では上手くいったとしても、現実でそう動くとは限りません。プログラムではなく、常に状況は刻々と変化していきます。

今作ったものでは、必ずどこかで問題が発生するでしょう。ですが、奪還作戦をしようと思うと、こういった事以外に手は無いのではないかと思いました。

ハイリスク・ハイリターンではありますが、『奪還』となると強硬策を取るしかありませんからね。他に手があるのでしたら、きっと私がこうやって作戦立案する前に作戦が実行されているでしょうからね。

 今ある不安を解消するには、第二段階で艦娘たちに本当に出撃してもらう事です。そうすれば、かなりの目を引き付けることになりますからね。

 

(まだ足りないんでしょうけど、少し寝かせてみましょうか)

 

 私は色々と書いたレポート用紙を纏めて、ソファーから立ち上がります。

執務室とはいえ、誰かが来てもおかしくない時間ですし、『血猟犬』も半数は帰還してくるでしょうからね。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 戻ってきていた『血猟犬』の中に、巡田さんがいましたので、結果報告をしました。

その際、巡田さんはどうやらこの状況を予測していた様で、特段驚く事はありませんでした。

ですが、その予想も最悪に近いようです。まだ、大々的に私が名前を明かせる状態ではない事を忠告してきました。

勿論、調べていたのは私ですので、身を持ってそれは体験してますし、感じてます

 報告が終わった私には、待機命令が出ました。他の『血猟犬』は情報収集を続行するみたいですが、巡田さんと戻ってきた数名がそのまま鎮守府に残るそうです。

残り組に南風さんも残っていました。というか、残った大半が女性でした。これから夜になりますし、そういった面を考慮した結果なんでしょうね。

 

「ましろさん。そちらの任務はどうでした?」

 

 戻ってきた南風さんの横を歩きながら、話をします。

 

「『柴壁』に入る前、ある程度艦娘に接触していましたので、それなりにしやすかったですよ」

 

「そうなんですか? 私も最近話しをしてないですが、熊野さんとは仲が良かったんですよ」

 

 そんな事を話します。

熊野さんというと、鈴谷さんの姉妹艦ですね。元居た世界でのビジュアルを覚えていますので、どんな外見をしているかは分かります。

 

「そういえば、今日会った艦娘に鈴谷さんがいましたね」

 

 そう私が思い出したかのように言うと、南風さんは驚きました。

 

「えっ?! 鈴谷さんって……」

 

「紅くんが撃たれた現場に居た、と言ってましたね」

 

「自分からそんな事を言ったんですか? 鈴谷さん」

 

 続けざまに、更に驚いています。そんなに驚くことなんでしょうか。

 

「はい。色々教えてくれましたよ」

 

 私は、自分が本名を名乗ったとは言ってません。だから、あまり会ったことのない人間に対して、そこまで砕ける事が驚きなんでしょうね。

 

「やっぱり、紅提督のお姉様だからでしょうかね?」

 

「それは……どうでしょうね。彼女たちが、見ただけで判断出来るとは思えませんし」

 

 私はそう言って誤魔化します。

こうでも言わないと、本名を教えてしまっている事が知られてしまいます。

 

「勘、でしょうか?」

 

「かもしれませんね」

 

 私がやらずとも、南風さんが逸らしてくれました。私としてはありがたいです。

そのまま私たちは、寮に戻ります。

夕食を食べるのと、休息を取ります。その後も、自室で作戦の練り直しをします。

手を抜く訳にはいきませんからね。幾らこちらが、非殺傷兵器を使うとはいえ、あちらも合わせてくれるとは限りません。こちらのリスクは出来るう限り、減らしておきたいんです。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 寮の私室に戻った私は、持っていたレポート用紙を出してまた、作戦を練り始めました。夕食は先ほど、南風さんと食べてきましたので、もうこの部屋から出る事はお風呂の時以外はありません。そういえば、さっき南風さんから聞いた事なんですが、近々、大きく動く事になると、巡田さんに言われたそうです。それが何を意味しているのかは、私の手の内にある奪還作戦の事以外なら分かりません。まさか、今日から始まったこの作戦立案が、ずっと外に居た巡田さんに知られているはずがありません。

 暑い上着を脱ぎ、ノースリーブになった私は、机に向かいます。

レポート用紙を広げ、執務室で書いていたものと共に、新しい紙も出します。

見直して、修正を重ねます。

私はそんな事をして、過ごしました。

 

 





 今回はキリの良い所で切りましたので、短いです。ご了承下さい。
そして、今回は会話が少ないです。大体が、ましろの心理描写のつもりですので。

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