【完結】艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話 作:しゅーがく
武下さんとの話は終わり、会議室を出ました。
私は今、本部棟の中を歩いています。執務室に用事がありますからね。
警備棟から執務室へは、歩いて10分程掛かります。とは言っても、普通に歩いたらの事ですが、私は歩くのがそこまで早くありませんので、15分くらい着くまでにかかってしまいます。
執務室まで行く道のり、本部棟の中で数名艦娘とすれ違いました。そんな艦娘に私は、敵意を出してしまっていたかもしれません。あんな話をした後です。当然かもしれませんが、何も知らない艦娘からしてみれば、とんだ迷惑な話ですよね。
そんなすれ違った艦娘の中には、私からにじみ出る違和感に気付いていたかもしれない艦娘もいます。足を止めて、私の方を観察していましたからね。
その艦娘とは、叢雲さんです。
鈴谷さんと赤城さんとで話していた時に出てきた艦娘ですね。何でも、初期から紅くんの事を”気付いていた”艦娘の1人だとか。
ですが、立ち位置がよく分からない艦娘であったことには変わりないらしいです。詳しい話は知りませんが、赤城さんたち艦娘や紅くんからも監視されていたことだけは知っています。何かやらかした訳でもないらしいですが、詳しいことは聞けませんでした。
そんな考え事をしていると、執務室に着きました。扉に手をかけて開くと、中には誰も居ません。当然でしょうね。普段からここには艦娘は来ないと聞きましたから。
私がここに来たのには訳があります。
悪いことではありますが、この部屋で一際大きな机の中を見るためです。あくまで私の予測ですが、大きな机は紅くんが使っていたのではないかって考えています。
ここは執務室ですし、紅くんの仕事部屋でもあった訳ですからね。部屋の主、はたまたま、横須賀鎮守府の主がこじんまりとした小さな机を使うとは思えません。
とは言っても、紅くんが好き好んで使っていたとは言いがたいですけどね。
引き出しを見てみても特に何かある訳でもありません。提出する必要のない書類や、ボールペンの換え、使っていないノート、国語辞典、モバイルバッテリー、イヤホン……そんな物が入っていました。
そんな中、机の一番下の引き出しを開けてみると、そこにはこれまでに見なかった物が入っていました。
使われているノートです。題名は無し。
私は興味に惹かれて、手に取って中を見てみました。
中には私の記憶には程遠い、高校で習うような数式や英文がびっしりと並んでいます。よく見てみると、上の引き出しには付箋の貼られた参考書が出てきました。
私は一瞬にして、頭の中に考えを巡らせます。一体、紅くんが何をしていたのか。何の目的で、ここで勉強をしていたのか。
答えは簡単でした。紅くんが元の世界で失踪した時期を考えてみれば簡単です。大学入試が近づいていたからですね。いつか帰れると考えてか、はたまたこっちで大学に入学するつもりだったかは知りませんが、大学入試に向けた勉強をしていたことには間違いありません。
一番下の引き出しにびっしりと押し込まれているノートを見ていきますが、どれもこれも白紙のページはありません。そして大学入試に必要であろう科目は、全部やってありました。ただし、政治経済はやってなかったみたいですけどね。
それもそうでしょう。今いる世界の日本は、元居た日本とは全然違いますからね。政治体制だって変わっているでしょうし、経済体制もおのずと変わっている筈です。
この世界で政治経済を勉強する意味がありませんからね。ですけど、この世界で大学に入学する事を見据えていたのか、一応、政治経済の参考書は入っていました。付箋は全く貼ってありませんでしたけどね。
私は一通り見たノートと参考書を引き出しに仕舞い、その場に座り込みます。
ずっとかがんだままで見ていたので、腰が疲れたんですよ。
そしてその体勢のまま、ある事を考えます。
紅くんは執務と両立して勉強にも取り組んでいたんだと。
しかも、引き出しに入っていたノートは尋常じゃない量です。これを約半年で全部使うのは、相当勉強していたんでしょうね。
それなのに、鎮守府で催し物を発案したり、実行したり、作戦を考えたりしていたんです。紅くんは自分を酷使しすぎなんですよ。
私は内心、そんな風に吐き捨てました。
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執務室から出た私は、自室に戻っていました。
机には作戦草案を纏めた冊子が投げ出され、その横にレポート用紙とボールペンを出しています。今から私は、作戦実行に伴うリスクについて考える事にしたんです。
理由としては、武下さんの反応でした。私はリスク計算をしていなかったんです。
早速、レポート用紙にリスクをリストアップしていきます。
一番大きなものとしてはやはり、『血猟犬』の運用です。情報収集に長けた部隊を動かす事は、基本ですけどそれを行う為に他が疎かになってしまうと、本陣ががら空きになってしまうとの忠告を考慮したものです。
それを考えると、私たちが収集できる情報はもっぱら、インターネットや雑誌等で手に入れられる情報ばかり。奪還作戦に有用なのかは、根本的に用途が違いますので、使えないと判断できます。ただし、軍病院内の地図を手に入れる事は簡単ですね。
そう考えると、地図だけで作戦を立てなければならなくなりますね。
そんな事を考えていると、あることを思いつきました。
紅くんが収容されていると思われる軍病院は、わざわざ『血猟犬』が探さなくても見つけることが出来ます。
軍上層部に掛け合えばいいんですよ。これは赤城さんに頼めば、聞き出すことも出来るでしょう。
私は次々と書いていきます。
その中には、『外部の人間に依頼する』『非殺傷兵器を使うのはいいが、あちらは殺しに来るだろう』『捕まった場合、どうなってしまうか』があります。
失敗した場合、実働部隊が捕縛された場合を考えると挙がったものです。
米特殊部隊を損害なしで全滅させたとかいう噂のある『柴壁』ではありますが、あくまで噂でしかありません。信用しない方向で考えるべきです。
作戦草案では『殺傷兵器を使用しない』とありますが、これは改正する必要があるかもしれません。
場合によっては、こちらが一方的に嬲り殺しに遭う可能性だってありますからね。
(改善点が一杯ありますね……)
そんな事を内心呟きながら、私はレポート用紙に書き込んでいきます。
正直、パソコンのメモ帳か何かで打ち込みたいですが、プリンターが執務室と警備棟にしかないですので、事務作業という名目で警備棟に篭もるしかありません。
その上、警備棟で篭もるにしても、同じような事をしている『柴壁』の人間がいると考えると、この作業はひと目に触れずにしたいものですから、警備棟では出来ないんですよ。
今、手元にある作戦草案だって、警備棟にあるパソコンでレポート用紙に書き込んだ内容を清書しただけですからね。
打ち込むのを見ていた他の『柴壁』の人は、凄く驚いていましたが、そんな事を気にする暇もないほど、見せれるものではありませんでした。
結局、リストアップしたリスクの改善点は挙げていきましたが、採用されるかは分かりません。そこは追々、相談ということですね。色々な方面から出してもらう戦力でありますから、そちらの相談する必要がありますからね。
そんな事を考えていると、私の部屋を誰かがノックしました。
返事をしてレポート用紙を片付けてて出てみると、そこには沖江さんがいました。
格好はいつのもように、BDUを着ています。
「紅提督がいらっしゃらなくなって初の、警戒態勢ですよ! BDUに着替えてそれぞれの部隊で点呼です! 走って!!」
私は沖江さんが言った状況を飲み込めないまま、指示を聞いて外に走り出します。
部屋の電気を消して、部屋に唯一持ち込める殺傷武器であるナイフを腰にぶら下げます。
ちなみに、私はナイフ格闘術を習っていません。というか、近接戦闘の一切を習っていません。というか、私が受けた訓練自体が促成プログラムだったらしいです。
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訳も分からずに沖江さんの後を走って付いて行った私は、走りながら沖江さんに状況を訊きます。
「何が起きたんですか?!」
「門兵からの連絡で、不審者が門を強行突破しようとしているらしいんです!! もし、強行突破しようものなら、私たちがに与えられている”逮捕権”を執行します!!」
「逮捕権ですかっ?!」
沖江さんは走りながら丁寧に答えてくれました。
「紅提督が権利開放して下さったんですよ。それ以来、私たちには逮捕権がある代わりに、攻撃する事が出来ないんです」
何だかよく分からない事を話していますが、気付けば集合場所に着き、それぞれ整列します。私は『血猟犬』の列に加わりますが、『血猟犬』の点呼の人数が合いません。
どうやら夜に出ている巡田さんらの数人が戻ってきてないみたいですね。
「巡田らは計算に入れなくていい! 現在、門兵が警戒態勢にある。我々は武装し、それぞれの門の増員として立て!」
武下さんが怒号で、指示を出していきます。
それを聞いた他の人らは走り出しますが、私は立ち往生します。オロオロしていると、武下さんが私に話しかけてきました。
「ましろさんは別行動です。警備棟に私と戻りますよ」
「え?」
私に有無も言わせない気なんでしょう。そのまま私は武下さんと共に、警備棟に向かいました。
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警備棟に着くと、そのまま私は武下さんの指示で地下の射撃場に行きます。
理由は聞かされませんでしたが、『柴壁』の総意らしいです。よく分かりませんね。『柴壁』で使役している以上、こういった場合も出るものだと思うんですけど。
射撃場に入る前に武下さんから聞いた話によると、射撃場の上には番犬が数人居るらしいです。というか、警備棟などの施設の入り口と内部には番犬数人が立っている様ですね。もしも、侵入された時のことを想定しているんでしょう。
私も射撃場に入るなり、小銃を持たされてますからね。満タンに入れられた弾倉を4つ、BDUのベルトに押し入れています。
もし撃つことになると、私が引き金を引けるのかと不安になりますが、急所を狙わなければいいんです。戦闘不能にさせるだけの腕はありませんが、ひるませたりする事は可能でしょう。それに、隠れて奇襲することだってできるんです。
そう思い、射撃場の階段から入る入り口の近くの物陰で座り込んで、息を潜めました。
何日振りでしょうか。唐突にこんなことを言うのも、まぁ、気の迷いみたいなものですよ。
最近、プロットを考えながら講義中に寝ています(何の報告だよ)。
んでもって、暑さで体力が奪われていってますので、帰宅後は速攻寝てしまってますので、更新速度がガタ落ちすると思います。多分。
本編の事ですが、今回はましろの心理描写というか、考えている事ばかりが出ましたね。
最近読み返しているんですが、偶に変なところがあることに気付きました。
読者の方々は気付いているんでしょうか? ちなみに、3周目で作者はやっと気付きました。ですが、修正する気はないです(←オイ)
修正しなくても影響はないですからね。
ご意見ご感想お待ちしています。