【完結】艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話 作:しゅーがく
金剛さんが横なぐりの鉛雨の中に残されて、私だけは陰に隠れることができました。
不安で心配で仕方ありません。自らよりも私を優先してくれた金剛さん。
アレだけの銃撃を受けたらひとたまりもないんじゃないか、私はそう思いました。
艦橋にいるであろう鈴谷さんを見上げます。
さっき居たところを見ますが、その姿は見えませんでした。と思った瞬間、鈴谷さんが出てきました。
「銃撃を受けてるのっ! 明らかな攻撃だってば!」
「……手出し無用っ?!」
独り言のように言っているということは、多分赤城さんと話でもしているんでしょう。それよりも、話の内容です。
明らかな攻撃。これは分かります。勧告らしき勧告はありませんでしたが、攻撃を受けていることに変わりはありません。
ですが、それに手出し無用だと言われたみたいです。反撃するな、ということでしょう。
「攻撃許可は出せないの?」
「……了解。……んもうっ!!」
地団駄踏んだ鈴谷さんは、艦橋に戻っていきました。
攻撃許可が降りないということは、このまま現状待機ということになりますね。
それよりも気になるのが攻撃された理由です。
私たちは後ろめたいことは確かにしています。ですけど、それが攻撃にどう繋がるんでしょうか。
私には分かりませんでした。
状況を進展させるために、私はこの場を離れます。銃声は未だ止まることを知らず、一方的に撃たれている状態です。
私が目指す場所は地下司令部。赤城さんと話をしに行きます。
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地下司令部に駆け込んだ私は、赤城さんの前に立ちました。
「ましろさん……」
「……はぁ……はぁ。……攻撃命令が出ないのはどうしてですか? あの銃撃の中には金剛さんが居るんですよ?」
「……知ってますよ」
「知っているのならどうしてっ?!」
私は赤城さんに詰め寄ります。
どうして、反撃して金剛さんを助けようとしないんでしょうか。紅くんのやり方で行動するのなら、味方が一方的にやれているのを無視出来ない筈です。紅くんなら助けに行く筈です。
「ここで私が手を出してしまえば思う壺です。それに、これで徹底的に銃撃・砲撃をしてくれたのなら、こちらに大義名分が生まれます」
「大義名分?」
「ここは治外法権です。つまり、日本皇国領内でありながら、日本皇国の三法に影響されない。”外国”なんですよ」
私は気付きました。今、私が立っているこの場所がどういうところなのか。
「私たちを攻撃した時点で、その覚悟が出来ているということです」
赤城さんの目つきが変わりました。
いつも温かい雰囲気で、優しい性格である赤城さんが豹変しました。目には完全に殺気しか感じられません。どう考えても憤怒しています。
ですがその一方、赤城さんは落ち着いていました。何かを考え始めたかと思うと、赤城さんは指示を出し始めます。
「通信妖精さん! 横須賀鎮守府全体に警報発令。非戦闘員はシェルターへの避難勧告を出して下さい!」
非戦闘員。多分、酒保の従業員と事務棟の人のことを指しているんでしょう。
「武下さんっ! 非戦闘員の避難誘導をお願いします!」
「分かりました」
鎮守府全体に警報が鳴り響きます。サイレンです。よくテレビドラマや映画であるような、戦争の話でよく聞く空襲警報みたいなサイレンです。
『艦娘は集合せよ! 繰り返す。艦娘は集合せよ!』
通信妖精さんの声で、それがスピーカーから響いてきました。
どこに集合かは知らせないみたいです。それもそうでしょうね。相手にもこの警報は聞こえている訳ですし。
「鈴谷さん! 聞こえますか?」
独り言が始まりました。どうやら、鈴谷さんとの通信が始まったようですね。
「艤装を身に纏って、正門から200m後退して下さい」
「……後で分かりますから、今は従って下さい!」
どうやら終わったみたいです。次は、『柴壁』に指示を終えた武下さんに再び指示を出しました。
「武下さん。『柴壁』は待機です。こちらから攻撃命令を出します」
「……分かりました」
少し不服そうな顔をした武下さんは、再び受話器を取りました。
どうして不服な表情をしたんでしょうか。理由は私には分かりません。
きっと、何かあるんでしょう。赤城さんの選択に良くないことでもあったんでしょうか? たしか、鈴谷さんがそんなことを言っていたんです。それを武下さんは危惧しているんでしょうか。
「待機中の全部隊へ。別命あるまで待機」
それを聞いた赤城さんは次の手を打ちます。
「次は……金剛さんですね」
赤城さんは独り言を言い始めました。
「金剛さん、聞こえますか?」
「……やはりそうでしたか。そのまま鈴谷さんのところまで後退して下さい。攻撃はダメですよ?」
どうやら金剛さんは大丈夫だったらしいです。それにしても、どうしてあんな銃撃の中で無事で居られたんでしょうか。
考えられるのは、鈴谷さんみたいに艤装を出したことくらいですが、そんな様子は微塵もありませんでした。
「赤城さん」
「金剛さんですか? 金剛さんはどうやら、銃撃を瞬間に艤装を身に纏ったみたいです。気付いていたのかと思いましたが、違いましたか?」
赤城さんは小首を傾げます。どうやら、私がここに来たのは、金剛さんに言われてきたものだと思われていたみたいですね。
「い、いいえ。初めて聞きました。この状況を一刻も早く口頭で伝えるべきだと思って、走ってきたんですが……」
「そうでしたか。……とりあえず、この状況を好転させる必要がありそうですね」
赤城さんはまた考え始めました。次は何の手を打つんでしょうか。
その一方で、私は別のことを考えていました。
鈴谷さんが言っていた、赤城さんのことです。赤城さんが作戦を考えると、かならずどこかに穴があるという。
それを早急に見つけて、手を打たなければなりません。そうしないと、何か不具合が起きるに違いありません。
私は考えを巡らせます。
様子を思い浮かべて、私はあることに気が付きました。
この対処は相手が侵入してくることを前提にしています。現状況が分からない今、このような手を打つとかえって危険な状況に陥る可能性があります。
例えば、相手が門を超えて侵入してこなかった場合です。相手の目的が、ここの破壊だったとします。そうするならば、わざわざ侵入しなくても砲撃やら空爆でなんとでもなった筈です。
私は彼らの意図を掴もうと考えます。
どうして機械化歩兵部隊だけで来たのか、どういう意図でここを攻撃するのか……。
「赤城さん……」
「ん? 何ですか?」
「私は再度、艤装を出すことを勧めます。相手の攻撃をこちらの建物などに被害を出さないためです」
「……分かりました。鈴谷さんと金剛さんへ伝えます」
1つ目は素直に受け入れてくれました。問題は2つ目です。
「あともう1つ」
赤城さんの目を捉えて、私は言いました。
「鈴谷さんと金剛さんには一切の攻撃をさせないで下さい」
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私は地下司令部を一度出て、あることを確認した後に戻ってきます。
「攻撃してはダメですよ? それと加賀さんに」
「え、えぇ……」
少し動揺を見せた赤城さんですが、私はそんなことを気にもとめずに話を進めます。
「加賀さんに艦載機発艦を。全艦載機です」
「え?」
「空中待機と偵察です。相手は機械化歩兵部隊なんですよね? 空に向かってる銃やミサイルらしきものも見当たりませんでした」
「……分かりました」
赤城さんは独り言を話し始めます。
加賀さんに連絡を取って、艦載機を出してもらうんでしょう。
「ましろさん」
「はい?」
そんな時、赤城さんが突然話しかけてきました。
「加賀さんからです。流星もですか?」
「流星って何ですか?」
「艦上攻撃機。爆弾と魚雷を落とします」
「なるほど……流星もです」
返事をした赤城さんは加賀さんに伝えると、また私に訊いてきました。
「彗星と流星の爆装は? だそうです」
「爆装って何ですか?」
「艦載機は爆弾を付けて任意の場所に落とすことが出来るんですよ。それで今訊いているのは、爆弾の大きさです」
「戦車が壊せるくらいで良いと思います」
「分かりました」
一通り伝え終わった赤城さんは、一息吐くと私に訊いてきます。
「突然どうしたんですか?」
そう訊いてくる赤城さんは、どうやら気付いてないみたいです。
相手がそう簡単に釣れる訳ないと。
「もし、あの配置で引き込めなければどうするつもりだったんですか?」
私は聞きました。
そうすると、赤城さんは口をすぼめます。どうやら気付いたようです。
「なるほど……ありがとうございました」
「いいえ」
私は回し過ぎた頭を冷やし、スクリーンを眺めます。
スクリーンには何も映ってないです。銃撃後の煙で見えないみたいです。徐々にその煙は薄れていき、カメラが本来見えていた視界が映し出されました。
穴だらけの地面、門の向こう側は光を放っています。どうやら薬莢が太陽の光を反射しているみたいです。
一息吐いて、武下さんにあるものがあるかと訊きます。
「武下さん」
「はい」
「私、携帯電話とか持ってないんですが、ありますか? そういうの」
このタイミングで何を言っているんだ、と言いたげな表情をしました。それは当然の反応でしょう。ですけど、すぐに気付いたんです。
「携帯無線機ならありますよ」
「貸して下さい」
「……それをどうするつもりで?」
「また出てきます」
私は受け取りながら答えると、そのまま走り出しました。
きっと止められると思ったからです。携帯無線機の送受信機を空いているポケットに押し込み、マイクとイヤホンのコードを肩に掛けて付けました。
外へ飛び出し、相手から見えないであろうところまで走り抜け、視覚から隠れている『猟犬』に合流しました。
「あれ? ましろさん。どうしたんですか?」
「少し色々ありまして……。状況は?」
私はこの場の『猟犬』一個中隊を任されている仲の良い人に話し掛けました。名前は江島さんです。30代前半で家庭を持ってるそうです。家庭には休日にしか戻れないらしいですが、それは軍に居た時と変わらないそうで、奥さんも納得してくれているそうです。
「相手さんが正門の憲兵と交渉しているところです」
「ということは……」
「ほぼ確実に乗り込んでくるでしょうね。横須賀鎮守府は空軍でも使わない限り、塀の外からズタボロにするなんて無理ですから、入ってくるのは当然ですよ」
分かっていたかのように言う江島さんは、説明してくれました。
「……赤城さんの判断は?」
言った後、不安そうに私に訊いてきます。どうやら私が地下司令部から来たことは分かっている様ですね。江島さん同様、中隊員の全員が此方に耳を傾けています。
「……分かりません。ですけど、『猟犬』に出てくるように言ったってことはそういうことですよね?」
私も怖いです。『猟犬』が出てくる意味は私も理解しています。『柴壁』の一員ですから当然ですけど。
私の言葉を聞いた中隊員は顔を歪めます。
「さっき、金剛さんとあちらさんが話している声が聞こえていたんですよ……」
5人くらい挟んだ向こう側の女性中隊員が話し出します。
「陸軍第46機械化歩兵師団……。名称こそ普通だけど、独立部隊。単独で戦地に赴いて活動できる、いわばレンジャーとかコマンド部隊って云う……」
中隊にわずかながらどよめきが起きました。
コマンドが分かりませんが、レンジャーは分かります。今は軍隊ですが、自衛隊の中でも屈強な人たちがなるというやつです。よく分かりませんが。
「長政……」
「あぁ……」
長政という名前が聞こえ、私はそっちに耳を傾けます。
「お前、大丈夫か?」
「大丈夫……。たとえ俺の原隊だったとしても、もう辞めたんだ。それに、みんなに比べたら俺なんて弱い方。こんな事でへこたれてたらここが守れなくなる」
長政さん。私が『柴壁』に入った時、3人の教官の1人として付いてくれた人です。
「第46機械化歩兵師団の師団長は分別と”こういうこと”が分かる人だと思っていたんだが……俺が期待していただけだったのか」
「辛かったら下がってても良いんだぞ?」
「いいや、いい。馬鹿の目を、原隊のみんなの目を覚まさせるのは俺の仕事だ」
それを聞いた私はぐっとこらえ、江島さんの方を向きます。
「すみません」
「いいえ」
「『柴壁』の人間はこういうことが結構あるんですよ。ただの歩兵部隊出身者がいないものですから。……ですが、やることはちゃんとこなしてみせますよ」
私はそれを聞いて前を向きます。
恐怖心、後ろめたさで動悸が激しくなるのを我慢し、拳銃を力強く握りました。
きっと赤城さんから指示が来るはずです。彼らが正門を超えたその時に。
1週間位期間が空いてしまいましたね。忙しかったので、こうなってしまったんですけどね(言い訳)
Twitterの方では事前に知らせてありますが、この作品の最初から今までで分かっている日本皇国軍の組織図を作りました。投稿先や出し方について悩んでいるところです。
小説にそのまま投稿する気はないので、そのうち手を打ちます。
奪還作戦どころじゃない状況です。コレに関して色々意見が来そうですけど、世の中そんな上手くいかないよって意味ですので、この状況に意見のある方は、私が納得できる意見を下さいね。色々あってからでは、私としても面倒なので先に釘を刺させていただきます。
ご意見ご感想お待ちしています。