【完結】艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話   作:しゅーがく

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After Story 日本皇国最期の盾の話⑥

 

 私たちが陸軍大宮基地に着くと、そこには散り散りになった部隊が集結していた。

あちこち損傷が目立つが、深海棲艦との攻防で被弾したんだろう。それに、今後の戦闘には支障はない程度に見えた。

 私はトラックから下車し、陸軍大宮基地の司令部へと歩き始めた。

 

「新瑞大将」

 

「なんだ?」

 

 その横をトラックの運転をしていた中尉がクリップボードを持ちながら報告をしてくる。

 

「各部隊、損害軽微。戦闘に支障なしとの報告です。それと、途中で降ろしたZ1とプリンツ・オイゲンは回収。こちらに向かってきています」

 

「現在確認されている、ここの破棄物資は?」

 

「ハーフトラックが12両、対空銃座が3門、87式自走高射機関砲6両。小火器・武器・弾薬は相当数あります」

 

 悩みどころだ。87式自走高射機関砲を拾えるとは思わなかった。

 各地の対空陣地に配備されている87式自走高射機関砲だが、今回の撤退戦では、第二方面軍に配備されていたものの殆どが破壊若しくは破棄されたという報告があったのだ。

ここに来てまさかの破棄されたモノを拾うとは、私も流石に予想などしていなかった。

 あいにく、部隊の中にこれを扱える兵は居ない。

私はある指示を出しておく。

 

「87式自走高射機関砲に燃料弾薬を補給しておけ。それと、松代に連絡。陸軍の87式を装備出来る部隊に取りにこさせてくれ。直掩機は出す」

 

「了解しました」

 

「ハーフトラックと対空銃座、装備等々はこちらが接収する。それぞれを纏めて置き、使えないものは破棄しろ」

 

「了解しました」

 

 中尉はクリップボードの紙にそれらを書き込みながら私に付いて歩く。

 

「ハーフトラックは8両をここに置いておく。4両は連絡用だ。対空銃座はここで陣地を構築。対空陣地を形成しておけ」

 

「まだ調査が終わってませんが、他の物資が出てきた場合は?」

 

「逐次私に報告。指示を出す」

 

「了解しました。では、失礼します」

 

 中尉はそれを聞くと、私のもとから離れていった。通信部隊に連絡を取り、色々と私の指示を部隊に浸透させてくれるだろう。

 私はというと、『番犬艦隊』を乗せているトラックのところに向かっていた。

Z1とプリンツ・オイゲンがいなくとも、他の艦娘は居る。そちらに話があるからだ。

 トラックのボディをノックし、声を掛ける。

 

「新瑞だ。ビスマルク」

 

 そう呼んで出てきたのはビスマルクではなかった。

アイオワが出てきたのだ。

 『番犬艦隊』の中でもとっつきやすい性格の彼女だったが、荷台から出てきた彼女にはいつもの様子は感じられなかった。

 

「ビスマルクなら隣のトラックよ」

 

「あ、すまない。間違えた」

 

「いいわ」

 

 そう言ってアイオワはトラックから飛び降りる。

 少し背伸びをしたあと、口を開いた。

 

「そういえば気になったんだけど」

 

 そう切り出した。

私は静かに聞く。

 

「私たちの補給があるらしいけど、妖精さんのところに持っていく必要があるから、ここにそれ専用の部屋を用意した方がいいわよ」

 

「……一応、確保してある。倉庫だが、一番状態の良いところを頼んである」

 

「そ。……それと、レーベやマックスは良いと思うけど、私たちの主砲弾は用意出来たかしら?」

 

 少し間が開く。

 主砲弾。380mmや16inch50口径のことだろう。

少し考え、回答する。

 

「この前出してもらった砲弾から採寸して作った。横須賀鎮守府製とあまり変わらないはずだ」

 

「203mmは多分、大丈夫ってオイゲンも言っていたし……」

 

「あぁ。大丈夫だ。……問題はそこじゃないんだがな」

 

「どういうこと?」

 

 そう。私がビスマルクに話をしに来たのには、ちゃんとした理由があるのだ。

 今の今まで考えていなかった、グラーフ・ツェッペリンの艦載機の補充だ。

横須賀鎮守府ではどうしていたのかも聞かずに、この作戦に参加させてしまったのだ。それに、ただボーキサイトを補給しただけで新しい艦載機が出てくるとも思えない。

 

「艦載機の補充だ」

 

「それね。……工廠が必要よ」

 

「しまった……」

 

 完全にミスを犯してしまった。

艦載機の搭乗員は、撃墜されても帰ってくることは聞いていた。だが、艦載機の補充のことは何も聞いてなかったからだ。

 

「……グラーフ・ツェッペリンの航空隊は練度はまちまちよ。Ju-87、攻撃隊はそれなりにあるけど、戦闘機隊はね……」

 

 そう言ったアイオワの声を遮るかのように、グラーフ・ツェッペリンがアイオワが降りてきたトラックの隣にあるビスマルクのトラックとは反対側に止まっていたトラックから降りてきた。

 

「私の戦闘機隊は、赤城や加賀などの手練の航空隊との連携が想定された訓練しかしていない。零戦や烈風が居ない演習の経験はあるが、やはり成果を挙げることは難しいだろう」

 

 話は聞いている。

 赤城航空隊の実力は、完全に常識から外れていたことを。

一度飛べば、無傷で帰還。一見無茶だと思われる戦闘機動をこなし、深海棲艦を翻弄する。攻撃隊も基本的に常識から逸脱。エアブレーキを使わず、空中分解寸前の速度で降下し、爆撃を敢行する。雷撃は海面スレスレを飛行。投下後は巨体であるにも関わらず、空戦に参加する。

 頭がおかしいとしか言えない。

 

「配備しているFw-190は確か……」

 

「魔改造されて超高機動だが、それでも少々不安がある」

 

「……航空教導団もいる。ある程度は助力になるだろう」

 

 自分で言ってて思うが、航空教導団が”助力”だ。

それほど、深海棲艦との戦闘に艦娘は効果的な一撃を加えることが出来るのだ。

 私は少し姿勢を崩し、話を続ける。

 

「丁度良い、グラーフ・ツェッペリン」

 

「なんだ?」

 

「ここ、陸軍大宮基地で艤装を出してもらう。とは言っても、敷地外だ」

 

 そう言って、私は方角を指差す。

 

「近くに川がある。その近くに展開してくれ」

 

「了解した」

 

「傍に通信部隊と、少数だが対空陣地と物資の集積所を用意してもらう。今後のこちらからの司令は、通信部隊から受け取ってくれ。横須賀奪還に乗り出すのと同時に、全軍はそちらが接収することになっているから、部隊の配置は好きにしていい」

 

「それは前聞いたぞ」

 

「分かっているのならいい」

 

 そう言って私は川に向かったグラーフ・ツェッペリンを見送り、ビスマルクのトラックのボディをノックした。

 

「ビスマルク。新瑞だ」

 

 そう言うと、ビスマルクは無言で降りてきた。

 

「なに?」

 

「グラーフ・ツェッペリンには指示を出したが、『番犬艦隊』への指示だ」

 

 そう言うと、ビスマルクの顔は引き締まる。

 

「ここを囲むように艤装を展開してくれ。それと、配置はこちらで指定しない。グラーフ・ツェッペリンの方に1人までは置いてもいい」

 

「了解したわ」

 

 それを聞くと、ビスマルクはアイオワに指示を出した。

 

「私はレーベとマックス、オイゲンを呼んでおくから、地図を借りてきてくれない? 配置を伝えるから」

 

「分かったわ」

 

 私がここに来た用事も済んだ。離れようとすると、ビスマルクに止められた。

 

「さっきの話し声が聞こえていたけど、工廠は横須賀にあるわ。奪還が叶えば艦載機の補充も利くし、なんなら無傷の艦載機を旧羽田に運べば、臨時で使えると思うけど?」

 

 またとない話だ。

私はすぐに回答する。

 

「旧羽田……航空教導団の基地か。……横須賀鎮守府を奪還する際に奪還するので、問題ない。それと、先ほどの話は本当か?」

 

「えぇ、本当よ。増産はできないだろうけど、工廠にあるお古の艦載機がね」

 

「助かる」

 

 そう言って私は再び歩き出した。

これから、この基地の中を歩き回り、情報収集をして今後の方針の詳細を伝えるためだ。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 全部隊の確認。陸軍大宮基地で放棄された装備品の確認。基地周辺への『番犬艦隊』の展開を終わらせ、部隊配置も完了した。先行させてインフラの整備も始まっている。

あちこちに部隊が出ていき、電気や水の確保が始まっていた。

そして、私は残された部隊に号令を掛ける。

 

「これより、大本営の奪還を目指す」

 

 見渡す部隊の面々に少しの疲労を感じさせられるが、作戦行動に支障はないだろう。

 

「歩兵はトラックを降車し、徒歩で移動開始。全軍は一斉に大本営を目指す」

 

 誰一人として身体を動かさない。

そんな緊張感が私の身体に突き刺さる。

 

「航空教導団とグラーフ・ツェッペリンの航空支援。『番犬艦隊』による弾着観測射撃があるとはいえ、気を抜くな。私たちに撤退の言葉はない」

 

 ふと、私は海軍海兵の部隊の方を見た。

彼らの顔付きは他の部隊員とは異なり、能面かなにかを連想させるような表情をしていた。

狂気をも感じさせるその表情はきっと、あの撤退戦を生き残った兵や各地から集められた海兵の場数を物語っているのだろう。

 この辺りでなくとも、海兵というのは基本的に猛者ばかりだ。残っていた海兵は特に。

 

「全軍前進開始。目標、大本営」

 

 こうして私たちは陸軍大宮基地に陸軍第一五連隊の通信部隊を残し、出撃した。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 ここが東京だとは、現状を見た誰もはそうは思わないだろう。

私が東京に入ってからの感想だ。

 建物は穴だらけで、アスファルトは捲れ、生きた街とは到底思えない惨状だった。

そこら中に乗り捨てられた乗用車や軍用トラックが残っており、破壊された戦車や、白骨化が始まっている兵士の亡骸もある。

 地獄だ。

だが、この光景を目の当たりにすることは覚悟していた。

 撤退戦での犠牲者は正確には分かっていない。軍人だけでも5桁はある。民間人もそれと同等の数がここで死んでいる。

それだけの魂の抜けた器はここにあるのだ。

 多くは神奈川の南に住んでいた人や、ただただ逃げ遅れた人たちだ。

そんな人たちを、国民を守ることの出来なかった私たちはまた、その地に足を踏み入れる。

 

「平坦な道を選びつつ、前進」

 

 私が隊を直接指揮している訳ではない。

 私が同行しているのは、海軍海兵の臨時第一大隊と陸軍第四方面軍第六戦車連隊第九中隊。海兵が戦車を取り囲むようにして展開している。

 指示を出しているのは、臨時第一大隊の大隊長。

経験は浅いが、聡い人間だと私は思い、指揮官に任命している人間だ。

 

「……こんな東京、見たことない」

 

 そう呟くのは、各地で招集された海兵の1人。

この現状を生で見たのは初めてだ。

 

「ここらは……練馬の辺りだ」

 

「そうなのか?」

 

 倒れた電柱にも、それを示唆する標識がある。

 

「まだマシだな。この辺りは」

 

 そう呟くのは、撤退戦に参加していた兵だ。

彼もまた、身体を覆い隠すくらいの装備を背負って逃げてきた兵の1人。

 

「……そうなのか?」

 

「あぁ。酷いところはもっと酷い」

 

 そう言って、歩く歩兵からは声が聞こえなくなる。

 皆、路端を見ては目を反らしているから、そういうことなのだろう。

私も目を何度も反らしたが、そうもしてられない。

ここに倒れている兵、民間人は逃げ遅れたり、遅滞戦闘をしていた者たちだ。

私の命令で死んだ兵、避難活動もままならない状態で、爆弾や弾丸が降り注ぐこの一帯を、徒歩で逃げさせた。全て、私の一声で死んだ人々だ。

 私は目を背けてはならない。

現実を受け止める。そして、悲しんではいけないのだ。

 

「っ?! 深海棲艦の艦載機っ! 路端に身を隠せっ!!」

 

 突然上がる指揮官の怒号。

私も共に路端に飛び込み、瓦礫に身体を隠す。

戦車は停止して、エンジンを止めていれば、壊れているものだと思われ、見逃される。

なので、戦車は道のまん中で、砲を適当に回転させて、停止させる。

 聞き慣れたくないエンジン音が遠ざかり、私たちは路端から這い出る。

そして、再び隊列を取り直して、行軍を再開する。

 大本営までは、この調子で行けば数時間かで着くだろう。

私はそう考えつつも、他のことも考える。

大本営に着き、一段落付いたら、全軍の指揮権は私から外れる。そして、ビスマルクら『番犬艦隊』に委譲されるのだ。

 これを決めたのは私。今更変えろなんて言えない上に、私よりもより柔軟な策を考えているに違いない。そう考えつつ、私は荒廃した街を眺める。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 大本営に到着したのは、練馬で襲撃に遭ってから数時間後のことだった。

私たちよりも先に着いて、着々と準備をしていた部隊が居たのでありがたい。

 指揮官が部隊に休息の指示を出し、私は先に来ていた部隊の指揮官に声を掛けた。

 

「どれくらい前に着いた」

 

「つい30分前くらいです。……ヘリが先に来て、物資を投下していってくれていたみたいで、既に作業は始まっています」

 

「そうか。……他の隊が着くまで、作業が終わり次第待機。別命を待て」

 

「了解しました」

 

 私は指示を出し、大本営へと入っていく。

 中は荒れたまま。血痕も残ったままだ。死体や、床の血溜まりは無くなっているが、それでも、あの”事件”からは何も変わっていない。

見覚えのあるところを見ながら、内部と歩く。

いつも休憩に訪れていた場所や、いつも執務をしていた場所。会議をしていた場所。資料保管庫。色々と見て周り、その度に、あの時のままだということを知らされる。

 飛沫は固まり、深紅から赤茶色に。

それと共に、私の目で見たあの光景を思い出す。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

『どうしたッ?!』

 

『はッ! 横須賀鎮守府に下った兵が反乱をっ!!』

 

『なにっ?!』

 

 穏やかな日、いつもと変わらない日だとばかり思っていた。

 

『憲兵は完全武装し展開せよ!』

 

『既に展開していますが、ことごとく突破されてっ……』

 

 鳴り響く銃声、悲鳴。

何が起きているのか、秘書から受けた報告を飲み込むのにはかなりの時間を要した。

 

『……ひっひひひひひ』

 

 護身用に携帯していた拳銃を握りしめ、少しずつ外を目指す。

何が起きているのかも理解できないこの状況で、私はある”者”を見た。

 

『っ?!』

 

『死ね、死ねっ。……死ね……死ね……死ね……死ね……死ね……死ね』

 

『がああぁぁぁぁぁ!! 痛い、痛い、痛いっ!』

 

『死ね、死ね、死ね、死ね……』

 

『痛い、痛いっ! 助けて、くれ! 助けてくれ!!』

 

『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね』

 

『た、すけ……て……』

 

 その光景を目の当たりにし、無表情、否、薄ら笑いを浮かべながらナイフをそれまで言葉を話していた”それ”に突き立てていた”者”に、照準の定まらない拳銃を向けていた。

 カタカタと鳴らして居た私の方をブツブツと呟く”者”は、見て動きを止めた。

私の方に顔を向け、上から下へと私を舐めるように見る。

 

『新、瑞……長官……』

 

 私を見た”者”は、見てくれはBDUを来た兵士。深緑のBDUを赤色に染めていた兵士。しかも、女性兵士だ。

髪や顔にまでかかった返り血を拭おうともせず、十数秒かそれ以上、私の顔を見る。

私も同じく、その女性兵士の顔を見た。

 その顔には見覚えがあった。

言葉を交わしたこともある兵士だ。

 

『貴方は……殺、せ、ない……です』

 

『何っ』

 

『貴方、は、”知って”いたっ……』

 

『南風少尉っ……』

 

 南風少尉。海軍屈指の特殊部隊。海軍部直轄『諜報機関』の実働部隊であった彼女は、1回目の天色暗殺事件後の横須賀鎮守府警備部員の補充に志願した内の1人だ。

施設系任務は得意ではないそうだが、それ以外はそつなくこなすらしい。

有能な兵士の1人。

 私的にも話したこともある。

その時は、落ち着いた雰囲気の女性だと感じた。少々タレ目なところを気にしているようだが、そこがチャームポイントとも言っていいだろう。

 

『私、たち……『闘犬』、はっ……、”裁きを下す”、たい、しょうを、……自ら、の、意思……で、……そし、て……、”生きる”べき、人、と……はん、だん……でき、る、の……なら』

 

 血塗られているところ以外は、至って普通の容貌をしている。

だが、そんな彼女の背後に見えたその姿は、人ではなかった。

私には興奮した犬、狼、またそれと近い”何か”に見えていたのだ。

 

『ころ、す……な、と……命令、され……て、い……ま……す』

 

『南風少尉っ!』

 

『どう……か、”紅”、提督が、のこ……した、まも……た、この……国、を……よろ……し、く……おね……が、い……し、ます』

 

 そう言った南風少尉は見るからに刃こぼれしているナイフと、拳銃を片手に走り去ってしまったのだ。

 その後、私は『闘犬』には南風少尉と同じようなことを言われ、兵士には逃げるように言われながら、大本営の敷地外にあった鎮圧部隊の司令部に辿り着いたのだ。

 

『海軍部の新瑞長官ではないですか!』

 

 私の下に走り寄ってきたのは、鎮圧部隊を指揮していて私の顔を知っている陸軍のある部隊の中隊長だった。

 

『お気を確かにっ! あのような地獄をどうやってっ……』

 

 私の肩を持ち、朦朧とする意識の中、私に必死に話しかける中隊長の声だけが届く。

 

『長官っ?! しっかりして下さいっ?!』

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

「……新瑞大将っ!」

 

「はっ?!」

 

 目を開くと、そこは大本営の広場にあるテントの中だった。

そこは司令部としている場所。そこで、憲兵の中尉が私の肩を揺らしていたのだ。

 

「すまない。寝ていたようだな」

 

「えぇ。被害状況やら損耗した部隊への補給、休息等の指揮をした後、寝てしまわれたんですよ」

 

「そう……だったのか?」

 

「えぇ。……『番犬艦隊』への引き継ぎが完了しましたので、報告しておきます」

 

 そう言って中尉はクリップボードに挟まっている紙に目線を落とした。

中尉の報告を聞きながら、私は考え事をする。

 先ほどのは夢だったのだ。

ここで見た光景の再現がなされていたのだ。

そして、何故今頃になってこのような夢を見てしまったのだ。

 

「ここからは、『番犬艦隊』の戦になりますね」

 

「そうだな。……全軍の統率は執れているのか?」

 

「はい。海軍は言わずもがな、陸軍もちゃんと指揮下に入りました。空軍は元より横須賀鎮守府直掩の部隊ですから、海軍と同じです」

 

 指揮系統が変わり、艦娘に移ったことで何かしらの行動があるのかと思っていたが

、どうやらなかったようだ。

陸軍もおとなしく従ったらしい。それは良いことだ。

というよりも、こうやって報告に来た中尉も、そんな素振りは見せていない。

 

「新瑞大将。大将も指揮下に?」

 

「そうなるな」

 

 そう訊かれて、ただ一言だけ答える。

決めていたことだし、彼女たちも了承済みだ。

 

「大将は松代にお戻りになった方が良いのでは?」

 

「何を言う」

 

「海軍の将官は大将だけなのですよね?」

 

 中尉はそう訊いてきた。

 

「だからどうした」

 

「大将を失えば、海軍は完全に崩壊してしまいます。もし、この作戦で大将を失ってしまったら、私たち日本皇国は深海棲艦に抗う術を完全に失ってしまいます」

 

 そう食い下がってきた。

 同じことは私も考えていた。私がもし戦死してしまえば、日本皇国の海軍は完全に無くなってしまうのだ。

それはなんとしても避けなければならないことなのではないか、と。

だが、考えても不毛だったのだ。

私は海軍の長。海を奪われたのなら、取り返す義務がある。というのは、建前だ。

死にたい訳ではない。生きていたいに決っている。なら何故? それは、指揮官は兵と共に、前線で指示を出さなければならないからだ。

ただそれだけだ。

 

「ふっ……心配ない。私はしぶとく生き残ってみせるさ。陛下のため、日本皇国のため、何より国民のため、妻や子のために」

 

 そう言うと、中尉は何も言わずに目を閉じた。数秒閉じたあと、開くと私に一言だけ言って立ち去ったのだ。

 

「私たちの海を取り返しましょう」

 

 

 





 書き溜めがあるからといって、定期的に更新できるとか言っていたような気がします。
まぁ、そんなことは置いておきましょう。
今更なんですけど、このアフターストーリー、軽んじている人も居るのではないでしょうか?
と、ここで色々とネタバレをしておきます。
本来ならばトゥルーエンドに入れるべき内容が、このアフターストーリーには含まれています。
 盛大なネタバレはさておき、あと少しで作業環境が整います。
更新速度やネタの充実度、作り込みがよくなる可能性が微妙にあります。
ですので、頑張って残りの周辺機器を買いますよ(メタ)

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