【完結】艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話   作:しゅーがく

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第49話  艦種代表会議

 会議の会場に到着しました。

そこは艦娘寮の一室で、誰もいない部屋を使うみたいです。

 

「さて……」

 

 赤城さんが音頭を取り、会議を始めます。

 

「これより、厚木飛行場制圧作戦の作戦会議を始めます」

 

 ここに集まっている殆どの艦娘が首を傾げました。

この作戦は私たちと『柴壁』の一部の人間しか知らないですから、それも無理もないことでしょう。

 

「分からないであろう皆さんに説明します」

 

 赤城さんは事細かに、現状を報告しました。

 ここに集まっている艦娘は長門さん、高雄さん、五十鈴さん、吹雪さんです。他には私とビスマルクさん、フェルトさんも同席しています。

 

「その前に訊いても良いか?」

 

 手をスッと上げた長門さんが、赤城さんに質問します。

 

「どうぞ」

 

「この会議が艦種代表を集められた会議であることは分かっている。だがそこにビスマルクとフェルトが居ることに疑問がある上、更に『柴壁』の『血猟犬』がいる等、どういうことだ?」

 

 長門さんは私の顔をちらっと見た後、吐き捨てるかのように言いました。

 この会議というよりも、集まりの意味を私は分かっていません。何を話すのかは分かっていますけども。

艦種代表が集められた会議というのは、本来、別のことを決定するためのものだということは、長門さんの言い方で分かりました。それにビスマルクさんたちが含まれていない理由です。

ビスマルクさんらは沖に出れません。と考えるとこの会議の存在は、紅くんから下された作戦を遂行するにあたっての詳細決定がなされていたのではないでしょうか。指定艦はあったでしょうけど、攻略作戦に低練度艦を出すとは思えません。となると、代表かもしくはそれに近い艦が出撃することになります。

何の情報もない海域への攻略作戦に細かい手を打つため、この会議が存在していると私は考えました。

 私は言わずもがな、今日始めてこっちに来て長門さん等をみました。この場に集っている艦娘のほとんどは、今日が初見です。

 

「それは厚木飛行場制圧作戦だからです。沖にて艦隊行動を取らない訳ですから、ビスマルクさんら『番犬艦隊』にも出撃命令が出せるんですよ」

 

 赤城さんは簡潔に説明します。というよりも、普通に考えれば赤城さんの言うようなことに行き着くはずです。

 

「それとこの方は……あれ? 言ってませんでしたっけ?」

 

 赤城さんは艦種代表の顔をなぞって見た後、訊きました。

ちなみにビスマルクさんとフェルトさんは知っています。

 

「私はさっき会いました。ですけど、『柴壁』には居ない顔ですよね? 赤城さん。新しく雇ったんですか?」

 

 吹雪さんがおずおずと手を挙げて発言します。

 確かに先ほど吹雪さんには会いましたね。ビスマルクさんがフェルトさんを押し付けたんです。『今から食堂に行って、こいつ(フェルトさん)が食べれるだけ食べさせておいて』と言いつけてそのまま放置したんです。

去り際に吹雪さんは嘆いていましたが、結局食堂に強引に連れて行ってくれたみたいです。ここに到着したフェルトさんは、紙ナプキンで口元を拭きながら入ってきましたからね。

吹雪さんに引きずられながら。

 

「確かに『雇った』ことにはなってますね」

 

 はて、どこから説明したものかと赤城さんが首を傾げている横で、私の方をビスマルクさんが叩きました。

 

「赤城はね、こういうことをよくやるのよ」

 

「あぁ。うっかりさんなんですよね。以前から噂は聞いてますよ」

 

「そう。今日もどうやら、皆に集まるようには言ったけど、貴女の説明をしなければならないことは忘れていたみたいね」

 

 ビスマルクさんはそう言って、少し溜息を吐きました。

 

「こんなのも変わってないとなると、合わせる顔がないわね。赤城」

 

 そんな独り言を言った後、ビスマルクさんは赤城さんに話しかけました。

小さい声で聞こえませんでしたが、赤城さんはすぐに段取りを戻します。

 

「えぇと……取り敢えず、本題の前に紹介しておきます。……自己紹介をお願いできますか?」

 

 赤城さんは私にそう言いました。ですので、私は自己紹介をします。長門さんたちの方を向いて。

 

「私設軍事組織『柴壁』 『血猟犬』所属、天色 ましろ二等兵です」

 

 『柴壁』に入って以来、私は昇進してません。まぁ、当たり前ですよね。

防衛戦にも参加してません。そもそも、新入りは私が最初で最後みたいなものらしいですから、皆さんには良くしてもらっています。

 自己紹介をした私は、ぎこちない敬礼を降ろします。

その時、ビスマルクさんが私に小声で言いました。

 

「赤城は違うことも言って欲しいみたいよ」

 

「あ、分かりました」

 

 ビスマルクさんに言われて、私は付け足すようにあることを言いました。

 

「日本皇国海軍横須賀鎮守府艦隊司令部の天色 紅は私の実の弟です」

 

 見事に、艦種代表は全員フリーズしてしまいました。私が紅くんのお姉さんというだけで、こんな反応を取られるのはこの世界だけですよね。

私はそのままスッと1歩後ろに下がります。

 

「とまぁ、そんな訳です。話を端折って説明してしまいますと、ましろさんはこの世界に紅提督と同じように転移してしまったみたいですね。それと直接聞いてはいませんし、私の推測ですが、ましろさんはあちらの世界で失踪した紅提督を探していた際に転移したかと思われます」

 

「間違ってませんね」

 

「更にですが、どうやらここへの補給部隊と一緒にいらっしゃったみたいですし……」

 

「はい」

 

 赤城さんは『転移した際にはある程度の情報を持っていたかと』と続け、話を戻しました。

 

「皆さんも言われて早々と信頼できないかもしれませんが、少なくとも私や金剛さん、鈴谷さん、武下さんは信頼しています」

 

 咳払いをして、赤城さんは元の話に戻りました。

 

「厚木飛行場制圧作戦の概要を説明します」

 

 口頭での説明を開始します。

 

「本作戦の目的は『海軍本部』傘下部隊の制圧及び情報収集。試対人戦闘を行います」

 

 初耳の話です。対人戦闘とはどういうことでしょうか。

以前、艦娘と兵士による戦闘は何度か行われていました。私が転移してくるまでに数回あったそうですが、私もよく分かりません。そもそも対人戦闘と言って、誰と戦ったんでしょう。

 

「第一段階。『海軍本部』傘下部隊、海軍海兵厚木駐屯地所属第3海兵師団指揮所に、ある偽装書類を送り込みます」

 

「内容は今から読み上げます。『発大本営。宛第3海兵師団。師団駐屯地へ、定期慰安会を執り行う』です。定期慰安会とは大本営が設けた制度で、時の芸人などのトークショーを行ったりミュージシャンがライブを行うことを言います」

 

 軍隊ですからそういうものはあるでしょうね。なんだか楽しそうです。

ですがこれは嘘の書類です。本当は執り行われません。

 

「この定期慰安会を促す知らせが届いた基地は、早急にその準備に取り掛かります。そうすることで、警備部隊や歩哨の数は激減すると思われます」

 

 赤城さんはそう言って、机上に封筒を置きました。

それは大本営の印字がなされた封筒です。おそらく中身は今、赤城さんが言った偽装書類が入っていると思われます。

 

「第二段階。偽装書類到着・開封が確認されてから数日後に作戦艦隊を厚木飛行場へ派遣。地形の再確認と暗記を行います。暗記が終了次第、第三段階へ移行」

 

 赤城さんは机上に広げられた厚木飛行場の地図の上に、将棋の駒を置きます。

どうして将棋の駒なんでしょうか。何で表しているかはさておき、それがどういう意図で置かれたのかは分かります。

 

「第三段階。作戦艦隊は定期慰安会の前日に作戦開始。準備が終了している会場の確認及び、忍耐力のある大型艦の艦娘は物資に紛れて先行。小型艦の艦娘は周辺警戒」

 

 おそらく会場を表しているであろう将棋の駒入れを置き、その中に駒をいくつか入れました。

 

「第四段階。定期慰安会の開催と同時に小型艦の艦娘は会場に向けて前進開始。この時、大型艦の艦娘は待機です」

 

 遠くに置いてあった、残りの将棋の駒を駒入れに近づけさせます。

 

「最終段階。定期慰安会が開催し、進行がある程度進んだ頃に作戦艦隊は一斉に艤装展開。会場を包囲します」

 

 駒入れに入っていた駒も出し、駒入れの回りを取り囲むように将棋の駒を立てます。つまり艤装展開を意味しているのかと。

それと同時に、あることがなされました。

 

「この時、同時進行で『柴壁』の『血猟犬』が飛行場内に潜入。哨戒中の海兵を捕縛。叶わなければ攻撃。ただし、殺しはしません」

 

 将棋の駒が乱雑に地図の中に入れられました。侵入経路や行動は不確定ということでしょう。

 

「会場で全員の投降もしくは制圧が完了することで、本作戦を成功とします」

 

 一応、作戦概要の説明は終わったみたいですね。

少し時間を置き、質疑に入りました。ですが、質問は1つしか出てきませんでした。

 

「なぁ、赤城」

 

「はい。長門さん」

 

 少し困った表情をしている長門さんが、赤城さんに質問をしたんです。

 

「作戦立案者は誰だ?」

 

「金剛さんです」

 

「ならいい」

 

 2言目で終わってしまった。そこまで赤城さんの作戦立案に信用が無いんでしょうかね。

 それはともかくとして、これを艦種代表に伝えたことによって、本格的に作戦艦隊の編成が可能となります。

こちらで作戦艦隊の編成が完了次第、艦種代表に伝達。そして該当艦に連絡が向かうということらしいです。

 この作戦、私にも仕事が与えられています。正確に言えば、私を含めて数人です。

その仕事内容というのは、定期慰安会の会場で進行役や出し物を行う役者役をします。わざわざ、本物を呼ぶのもアレですから、こちらで用意させてもらうことになりました。

私は幸いにも顔が割れていませんので、ハッタリをかましてもバレる可能性が限りなく低いということです。ですので、最初の出し物の時に偽って出ていくことになっています。

 

「では、各代表は心に留めておいて下さい。以上」

 

 解散の号令です。皆さん、それぞれは黙って部屋から出ていきました。

そして最後に私たちが出ていきます。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 全艦娘への伝達はその日のうちに完了したみたいです。

艦種代表が全体への連絡を終えたことが、赤城さんへ伝えられたみたいです。それにより、艦娘たちの行動パターンは変化します。私がこの世界に来る前の生活に戻ったみたいです。紅くんがいないため、一部の仕事はないみたいですけどね。それでも規則正しい生活に戻り、今朝から外で艦娘たちの姿を何度も見ました。

 赤城さんは現在、工廠に篭っているみたいです。流星の改造に着手。白衣妖精という、工廠の研究・開発を担っている妖精と話し合いをしているみたいですね。

金剛さんと鈴谷さんは作戦艦隊に参加させる艦娘の選抜を行い、武下さんは『柴壁』へ作戦の通達。

 進展したことと言えば、偽装書類を発送したことくらいです。大本営経由で送り届けられたその書類が無事届けられたことも確認しました。

それに伴い、『血猟犬』を向かわせて偵察中です。

 作戦開始まで、もう少しです。

やっと、私たちは紅くんの救出に動き出すことになります。

 

 




 前回の投稿から2週間くらい経ってますが、一応基点になります。
 春休みに入ったということもあり、時間もありますが同時に忙しくなると思います。執筆速度は今までとほぼ同じになることを予定していますが、ばらつきが出てくると思います。

 物語に関してですが、方針が出来上がってはいるものの、どれだけ時間を掛けるか悩んでいます。
前エンディングではアフターストーリーが必要な内容であったために、アレほどの長さになっていますが、今回はアフターストーリーを書く予定はありません。ですが、それに関しても色々悩んでいるところです。
ということですから、本話投稿の前日に活動報告を書いていると思いますので、そちらを御覧ください。
よろしければ意見が欲しいです。

ー追記ー
 書いてませんでしたね。申し訳ありません。

 ご意見ご感想お待ちしています。

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