【完結】艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話   作:しゅーがく

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第50話  厚木飛行場制圧作戦①

 

 艦種代表との作戦会議から3週間後。

全ての準備を整えた私たちは、『血猟犬』の報告を待っていました。

昨日の夕方に向かった『血猟犬』の帰りは、今日の午前中。今は午前11時。もうそろそろ帰ってきても良い頃だ。

 私と武下さんは赤城さんと共に、報告に戻ってくるのを警備棟の執務室で待っていました。

 

「帰還しました」

 

 戻ってきた『血猟犬』から報告を受けます。

 

「準備は着々と進んでおります。あちらにも数人残しておりますので、無線機にて随時最新情報を取得可能です」

 

「休息を取れ」

 

「了解しました」

 

 『血猟犬』の1人は、敬礼をした後に部屋を出ていきます。

この場には、待っていた時と同じだけの人数が残りました。

 

「厚木飛行場制圧作戦開始! 該当空母の艦娘は埠頭に艤装を出し、航空隊の準備を始めます!」

 

 赤城さんの声が挙がります。それに呼応するかのように、私たちは部屋を出ていきます。それぞれの任務を果たすために。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 私はこの世界に来て、横須賀鎮守府の人間になって初めて外を出ました。

正門を出ていったトラック3台の内の1台は『血猟犬』が使い、残りは作戦艦隊が使用します。

初回では『血猟犬』16人と、作戦艦隊は水上打撃部隊から選抜。大型艦を中心に艦娘18人による包囲網を作ることになっています。

 『血猟犬』16人は出血サービスですね。構成員の半分以上を投入しています。その中には仲良くしてもらっている人とかも居ますので、正直色々心配ではあります。

作戦艦隊には霧島さん、榛名さん、扶桑さん、山城さん、妙高さん、那智さん、足柄さん、羽黒さん、川内さん、神通さん、那珂さん、夕張さん、白露さん、時雨さん、夕立さん、村雨さんが参加します。

その後、手頃のいい場所を本陣として取り、地形を暗記。作戦開始に備えます。

 

「……一個師団ですか」

 

 南風さんが、そう呟きました。

 

「はい。海兵です」

 

 静かなトラックの荷台に、私と南風さんの声だけが聞こえてきます。

 

「私たちは施設侵入と制圧を命じられていますが、どこの施設でしょうか?」

 

 小銃をカタリと音を立て、鼻の上まで被っていたフェイスマスクとずり下げました。

BDUを着ていなければ普通の女性にしか見えない南風さんですが、今は目だけが違っています。『血猟犬』という部隊名が付くだけありますね。まさしく猟犬そのものの目をしています。今だけかもしれませんが。

 南風さんが訊いてきたことですが、答えられないんですよね。現場に着くまでは。

そういうものなんですよね。きっと。それに武下さんなどにも言わないよう、言われていますから。

 

「それは到着するまで云えません。ですが、到着してしまえば分かると思いますよ」

 

「そうですよね。……一応、この作戦は極秘。おいそれと作戦内容に関わることは。すみませんでした」

 

 南風さんは小銃を持ち直し、揺れる車内で目を瞑りました。

私も考え事を始めます。

 今回の作戦は艦娘たちからしてみても、『柴壁』からしてみても、私個人としてみても初の作戦です。各々が初めてのことばかりで、緊張はしています。ですがそれでも、ここで失敗はしてられないんです。

どこまで勢力を伸ばしているのか分からない『海軍本部』。それと息の掛かった組織。それを虱潰しに潰していかなければならない一連の動きというのは、”意図”は理解しているつもりです。

完全な安全の確保。それが条件だと言われた紅くんの開放は、私たちが力を貸すことで加速されることなんです。一刻も早く紅くんに会いたい私と艦娘たち。その思いを原動力に動いていますが、もし、それが途中でなにかあったのだとしたら……。

 私は頭を振ります。余計なことを考えてしまっています。

ネガティブな思考にシフトしてしまっているので、私は別のことを考え始めました。

一応、地形を覚えるのに2日間の猶予があります。その最中には、かなりの精神的な疲労があるのではないか、という武下さんの言葉がありました。

意図が分かりません。ですが、それだけ精神的疲労が積まれるということでしょう。そのために、補給物資の中には、このご時世では珍しいお菓子が含まれています。横須賀鎮守府は補給物資納品が優先的に行われていますから、もしコンボイが攻撃されたとしても、すぐに代わりのコンボイが来るみたいなんですよね。

ですから、食料や日用品、雑貨に関して横須賀鎮守府は日本で有数の在庫を保有しているらしいです。精神安定剤的な意味も込めて、甘いモノを持ってきているということです。

 

「到着しました。周辺の安全を確認してきます」

 

 トラックの運転席から顔を覗かせた、トラック運転手もまた『柴壁』の人間です。今回は私たちを降ろしたら、すぐに鎮守府へ戻るような手はずになっていますけどね。

 

「お願いします」

 

 私たちと艦娘を乗せていたトラックは、軍用の非武装トラックではありますが、民間車に見えるように偽装されています。塗装は変わり、軍用であることを示している印は全て取り除いています。ですから、ここに着くまでには軍隊だとは思われなかったでしょう。

 トラックの運転手をしていた『柴壁』の人も作業着っぽいものを着てもらい、万全の態勢で運転しています。もしものために武装もしていますが、小銃なんかは持っていません。拳銃のみです。

 トラックから降りていた運転手が戻ってきて、私にあることを伝えます。

 

「大丈夫でしたので、倉庫に付けます。外からは見えないようにしますのでお待ち下さい」

 

 そう言って動きだすトラック。

 今は厚木飛行場に隣接する廃工場に居ます。この辺には軍事施設ということもあり、ゴロツキはいないみたいですし、最近使われなくなったものらしいので勝手に使っても大丈夫でしょう。一応、フェイクのために解体業者が来ることになってますから。

私たちが作戦開始するまでに、状態調査などをする手はずになっています。もちろん、これもフェイク。大本営から派遣される、偽装した兵が行います。

 そうこうしていると、荷台を屋内に入れたみたいで、空気が変わります。

少し油の臭いが臭ってきました。運転手が降り、荷台を下ろすと、私たちは工場の中へと飛び降ります。

 

「確認後、私に報告して下さい」

 

 そうは言っても、見れば数えられる人数です。私が自分で数え、その後の報告と照らし合わせるだけです。

 

「では、私は戻ります」

 

「えぇ。ありがとうございました」

 

「ご武運を」

 

 そう言って敬礼した運転手は、トラックに乗り込んでそのまま立ち去って行きます。

残されたのは私と『血猟犬』、作戦艦隊に編成された艦娘だけです。

 

「シャッターを閉めて、場所を取ります。物資は隅に固めて下さい」

 

 指示を出し、行動に移します。既に作戦は開始しているんですから。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 廃工場の中は割りと温かく、寝床なども男女で分ける等が出来るほど状態も良かったです。

私は『血猟犬』所属の女性隊員数名と作戦艦隊の艦娘たちで集まって、結構大きな寝床を用意しています。

定時報告などは男性の寝床に集合し、情報交換や横須賀鎮守府からの連絡はそこで受け取りをしていました。それ以外はずっと、見つからないように高台に登って確認したり、陽が落ちている時には外へ出てある程度の実物を確認したりして過ごします。

そして今、新たな動きを始めようとしていました。

 

「じゃあ、行ってくるね」

 

「はい。隠れられそうな場所に身を隠して下さいね」

 

「分かってる。作戦があって物資が所狭しとあるんだから、どうにかなるでしょ」

 

 定期慰安会の当日の未明。午前3時前。私たちは作戦のため、先行する小型艦の艦娘たちを見送っていました。

 

「……艤装を身に纏った状態での潜入と潜伏。全部が初めてだけど、必ず成功してみせるからさ! じゃあ、行ってきます」

 

 川内さんら7人の艦娘たちは、そう言って艤装を身に纏った状態で廃工場から出ていきます。向かうのは厚木飛行場の海兵が使用している区画です。

 

「……榛名さん。川内さんとの交信状況は?」

 

「良好です。周辺の警備もやはり目論見通り薄いようですね。どうやら準備に手間取り、最低限度の歩哨しか出していないようです」

 

「そうですか。引き続き、定時連絡の報告をお願いします」

 

「了解しました」

 

 私たちもそろそろ準備を始めましょうか。

 見送ったらそのまま、男性の寝床へ集合。横須賀鎮守府からの情報で、作戦に変更が生じたので意思疎通を図る必要がありました。

 

「さて、川内さんたちには後で連絡しますが、作戦変更を伝えます」

 

 作戦に参加している人たちを確認した後、地図を囲むように座った私たちは話を始めました。

 横須賀鎮守府からの情報というのは、出て来るまでに話が付かなかった空軍との協力です。一応、大筋の作戦の脇に色々と小物がある訳ですけど、その中の一つに『作戦艦隊が包囲網を敷く際、艤装を出すか出さないか』というものがありました。

これは空軍に滑走路を壊してしまうことを認めてもらう必要がありましたが、回答を保留にされていたんです。それがようやく、回答が返って来たということです。

回答は『許可する』です。つまり、滑走路を壊してしまっても構わない、ということになりますね。

空軍厚木飛行場所属の部隊は、横須賀鎮守府を好意的に思っているみたいなので、そういうことも出来るのでしょう。

 ということで、展開する場所を決定するため、地図を囲んでいるのです。

 

「空軍より艤装展開許可が降りましたので、想定していたものと変更させていただきます」

 

 地図の上に石を用意しました。個数は16個。作戦艦隊で来ている艦娘と同じ数です。

 

「会場を取り囲むように三面包囲を敷き、空砲による威嚇射撃をする予定ではありますが、いかがですか?」

 

 一応、現場指揮官が私ということになっていますが、それでも全員の意見を統一する必要があります。全員の意思を尊重し、全員が納得する手を使うつもりでいますから。

 皆さんに返答をさせるような言葉を使いましたからね。霧島さんが手を挙げました。

 

「霧島さん」

 

「はい。時刻を鑑みて、周辺の住民に迷惑を掛けるかと思われます」

 

 定期慰安会の開始時刻は午後7時。確かに、帰宅してきていて夕食などを取っている時刻ではありますね。

 

「ですので私は空砲ではなく、探照灯照射を提案します。私たちと『血猟犬』の皆さんの視界を確保するのと同時に、作戦艦隊の存在を的確に伝えられるかと思います」

 

「……皆さん、どうですか?」

 

 全員の顔を見ます。どうやら意見はないみたいですね。

 

「私の空砲を撃つというのを取り消し、探照灯を使用するとします」

 

 まだ話すことはあります。

 

「投降を促す方法も皆さんに訊いておきたいと思います。予定では慰安会で使用するプロジェクターで投降を促すつもりではありますが、他にも手を打っておく必要があると私は考えます。ですので、意見をお願いします」

 

 そういうと、『血猟犬』から1人、手が挙がりました。

 

「はい、どうぞ」

 

「定番ではありますが、拡声器を使用してはどうでしょう。確か、艤装に拡声器が装備されていましたよね?」

 

 『血猟犬』の隊員は、霧島と榛名の顔をみました。一応、作戦艦隊の指揮艦は2人になっていますからね。

 

「はい。確かに付いています」

 

「それを使用し我々の所属と目的を言うことで、無駄な発砲を避けれるかと」

 

 それに続けて、『周辺住民には定期慰安会が行われることは知らせてありますから、そういった行為は事前に知らせてありますので、迷惑行為にはならないかと』と言いました。

 

「皆さんはどうでしょうか?」

 

 誰も意見する人はいませんでした。

 

「では、探照灯と拡声器を使うこととします。先行した川内さんたちにも情報をリークして下さい」

 

 全員が行動を始めます。そして、私は立ち上がりました。

 

「そろそろ私たちも行きましょう」

 

「はい」

 

 私と南風さんは定期慰安会の司会役として先に正面から厚木飛行場に入ることになっています。

私と南風さんが選ばれたのには、明確とした理由がありました。まずは私ですが、横須賀鎮守府の人以外には誰だから分からないからです。せいぜい、何処かで雇ってきた人間だと思われるように仕向けるつもりではあります。

南風さんですが、彼女は出自からしても海兵に顔を知られているということはあり得ません。それに言わなければ軍人であることも分からないでしょう。

そういった点を考慮しての人選でした。

 

「では皆さん。ご武運を」

 

 静かに敬礼をし、私たちは荷物を纏めて廃工場を出ていきました。もちろん、出ていった時の格好は民間人です。BDUは脱いで来ました。

 

 





 今週はインフルエンザになっていたため、寝込んでいました(どうでもいい)

 それは置いておいてですね、遂に作戦に入りました。いうことはないですね。戦術・戦略に詳しい人とかが読まれたら物凄くツッコミどころ多いかと思いますが、そこは流して下さい。双方の人間が云々って話になりますから(汗)
 それはともかく、皆さんも体調にはくれぐれも気をつけて下さい。
作者みたいにインフルエンザにならないように(ちなみに受診して2日で熱は下がりました)

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