【完結】艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話   作:しゅーがく

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第56話  束の間の休息④

 

 周囲にも分かる程の緊張感が辺りを包み込みます。他のレジ打ちのおばちゃんや、近くで荷運びをしていた若い男の人も。出店を当番しているおじさんもです。

 そんな状況でも、沖江さんだけが気付きません。

スイーツやお菓子に舞い上がっているのかもしれません。

 私は口を開きます。

 

「……『メス犬』とは、何のことでしょうか」

 

 一瞬、空気が変わりました。すぐに戻りましたが、私の視界内にいる誰かが別の思考をしたんでしょう。

それが何かは分かりません。ですけど、私のこの状況が悪いのは理解出来ます。

見かけは普通の女の人ですが、コレを脱いでしまえば横須賀鎮守府艦隊司令部所属 私設武装組織『柴壁』の構成員です。

外でどう思われているのか、まだハッキリと分かっていませんが、よく思っていない人も少なからずいるはずです。

日本皇国軍の特殊部隊員や模範であるべき憲兵が総辞職し、横須賀鎮守府の私兵になったんですからね。それを加味してしまえば、この雰囲気はきっと”よく思っていない”方の人間が作り出す空気です。

その空気の発生源は私の目の前にいるおばちゃんに違いありません。

 おばちゃんはその質問を聴き、返答をします。

 

「あの子女を戦争に駆り立てているク◯男の配下のこと。……なんでもその組織の名前は『柴壁』って言われているそうじゃない?」

 

 合っていますね。私は黙ったまま聴きます。

 

「その『柴壁』は部隊を犬になぞらえて分けられている、そう聞いたわよ。『番犬』やら『猟犬』やら、ね」

 

 合っています。『血猟犬』がないのは、あまり表立って動いていないからでしょうか。

 

「”あの犯罪者”が死んでもなお、忠誠しているんでしょ? それに貴女みたいな女性部隊員は奴に”何をさせられているのやら”……」

 

一部、 強調して言いました。

この言い方だと、私が既に『柴壁』の構成員だということを決めつけた上での発言であることは間違いないでしょう。

 それにさっきから言っている『◯ソ男』や『あの犯罪者』というのは紅くんのことを指しているんでしょうか。

 

「……この辺りで拳銃を持っている人間は2種類よ。あんたらみたいな『メス犬』を見張っている皇国軍の憲兵さんたちか、出歩いている『メス犬』よ。憲兵さんの顔は覚えているし、貴女の顔は初めて見たわ」

 

 カバンに手が伸びそうになるのを、理性が押さえつけました。

殺意、でしょうか。紅くんが悪く言われていることが無性に腹が立つのです。それに、この眼の前のおばちゃんが生きていられるのは、その紅くんのお陰で横須賀鎮守府の皆のお陰だということを知らないんでしょうか。

 私は自分に言い聞かせます。押さえつけます。湧き上がる殺意を。

『拳銃を抜け』、『このババアを殺せ』と、私に怒鳴り付ける憎悪を。

 

「……”アレ”が異世界から来たとか知らないけど、日本皇国が戦争をしているですって? してないわよ、そんなこと」

 

 ガチガチと手が震えます。渾身の力を握りこぶしにぶつけ、耐えます。

私の立ち位置からは、このおばちゃんには握りこぶしが見えないはずです。

 

「あーあ、死んでもらって清々したわ!! だけどね、要らない置き土産を置いていって欲しくなかったわッ!! 輸送される食料が”しんかいせいかん”? とかいう”犯罪者”の戦争相手が爆撃していくのよ!! 貴女、説明してもらえる? 頭がヤられていても、それくらいは分かるでしょ?」

 

 この人は何も理解していません。

 今回、外に出て分かったことがありました。

私がこの世界に来た時に居た場所。そこは灰色をしていました。賑やかなはずのデパートの屋上には対空銃座が置かれていたんです。

ですが、横須賀鎮守府の第5通用門から出た景色はどうだったでしょう。普通に人が行き交い、横須賀鎮守府の高い塀がある以外は至って平和な街でした。

もちろん、このスーパーマーケットのある辺りもです。

 この辺りは横須賀鎮守府が近いことから、深海棲艦による輸送隊襲撃がなされていないんです。

もちろん、別の街からの情報は入ってくるでしょう。ですけど、緊迫性が足りないんです。直に体験していないから、このようなことが言えるんです。

 

「私たちを巻き込まないでくれるッ!? 戦争はよそでやってよ!! 私たちの平和な生活を返してッ!!」

 

 ついに私の我慢も限界に達したその時、沖江さんが私の前に立ちました。

袋はどうやら置いてあるみたいです。

 私の位置からは見えませんが、私を通せんぼしている左手は見えていますが、右手が見えません。

沖江さんの利き手は右手です。

 

「貴女……この人が何をしたと言うのですか?」

 

「あ、さっきのお客さん! この人は”あの”横須賀鎮守府の『メス犬』で……」

 

 そう言いかけた刹那、おばちゃんの語りが止まります。

 

「『メス犬』? あぁ、あの天色 紅とかいう海軍将官の私兵のことですか?」

 

「そ、そうよ!! それがそこにいるのよ!!」

 

 沖江さんの背中で見えませんが、沖江さんが滲み出させているオーラは分かります。

完全に殺意です。それも、突発的に現れるようなものではありません。親の敵を見るような、憎悪に満ち満ちた殺意です。

 

「そうですか。……私も軍属ではありますので、お話は上官や同僚からかねがね聞き及んでおります」

 

 ですが、声色は普通なんですよね。

 

「そうなんですか!! なら兵隊さん!! そこの『メス犬』捕まえて軍法会議に放り込んで下さいな!!」

 

「そうですね。軍法会議になれば、この私兵は即刻有罪。処罰ですね。……私は憲兵ですので、なんとなくその辺は分かっていますよ。この私兵がどうなるか」

 

 普段の沖江さんの口調、声色が続きます。

ですが、オーラはそのままなんです。否。どんどんそれはドス黒く、辺りの光を吸収するが如く、膨張していっています。

 

「刑はおそらく銃殺刑か終身刑ですね……ですけど」

 

 いきなり沖江さんの纏うオーラが巨大化します。

私もそのオーラに飲み込まれてしまいそうになります。

 

「……聞いたことがあるんです。こういった若い女性軍人が重罪を犯した時、あちこちの部隊に移送されては[自主規制]され、移送されては[自主規制]されると。おそらく、横須賀鎮守府の私兵というのなら、そういう判決が下る可能性が高いですね」

 

「そ、そうなの? 軍もそんなことをするのねぇ……。ま、いい気味だわ」

 

 沖江さんは動きません。それにさっきの話は本当なのでしょうか。

外のことも知りませんし、軍のことはもっと知りませんでした。沖江さんがどういう意図でそれを言ったのかは分かりませんが、必要だから言ったんでしょう。

 

「と、とにかく、そのアマを捕まえて軍法会議に……」

 

 そう言ったおばちゃんに呼応するかのように、沖江さんはこっちに振り返りました。

 そして私は見てしまったんです。

 

『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すす殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す………………』

 

そう小さい声で呟いている沖江さんを。

 そしてすぐに言ったんです。

 

「……さっきの軍法会議の話は嘘です。大本営と軍法会議からは、私たちをそういった内容で処罰するような発表はありません。それと、手を組んでおいて下さい」

 

 そう言った目の色がおかしい沖江さんは、またおばちゃんの方を向きました。

 私は言われた通り、腕を組みます。

 

「……さ、そのク◯アマを肥溜めに放り込んでちょうだい。汚れるわ」

 

「分かりましたが、応援を呼ばせて下さい。一応、拘束はしましたが、横須賀の私兵は基本的に戦闘力の高い兵士が多いですので」

 

 沖江さんは自分の肩から掛けていたカバンから、携帯電話を取り出します。

そして操作し、電話を掛けました。

私の位置からは呼び出し音が聞こえてきます。

 

『こちら横須賀鎮守府艦隊司令部 私設軍事組織『柴壁』』

 

「沖江です。◯◯スーパーマーケットにて”最優先事案”につき、部隊派遣を具申します」

 

『了解。30分待機せよ』

 

「了解」

 

 “最優先事案”がどういうことなんのか分かりませんが、今の事案のことを指しているんでしょうか。

どういう想定の上での、この措置なんでしょうか。

 静寂が辺りを包みます。

 

「部隊が来ます。30分この場で待機しますが、よろしいですか?」

 

「え、えぇ」

 

 レジ打ちなのに、そんなことを勝手に決めてよかったんでしょうか。

近くで見ていた若い男の人が、運び荷を力一杯押してどっかへ行ってしまいました。

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 そろそろ30分が経とうとしています。

30分前に急いでどこか行ってしまった若い男の人が、何やら偉い人を連れてきたみたいですが、その2人がおばちゃんと沖江さんの間に入る勇気はないみたいです。

それに、このおばちゃん以外にこの場に立ち会っている人間は全員、今の状況を理解しているみたいです。沖江さんが纏っているオーラのことも。

 やがて、屋内が騒がしくなります。そして、その騒がしさが近づいてきて、沖江さんに話しかけました。

 

「ご苦労様です」

 

「……では、我々は」

 

 そう言った見るからに『番犬』の1個小隊が、私たちを囲みます。

 『番犬』の姿は、普通の人間が見ても日本皇国軍の兵士と『番犬』とは区別が付きません。言動や行動などで見分けるらしいです。

この状況下で、『番犬』たちが私兵か軍人かなど、おばちゃんが見分けられるはずもないです。

 

「憲兵さん、この人ですッ!!」

 

「状況から、どういう事態なのかは把握していますよ」

 

 そう言った構成員の1人が、私たちを囲んでいた陣形から離脱。

そのまま、近くに居た偉い人のような人に話しかけます。

 

「我々はこういう者です」

 

「おぉ、やはりそうでしたか!!」

 

 ここから、構成員が何を見せたかは分かりません。ですけど、何か身分証明証みたいなものを出したことに違いありません。

 すぐにその構成員は陣形に戻ります。

そして、私の近くに居た構成員が話しかけました。

 

「そろそろ力を抜いて下さい。ここは”勢力圏内”です」

 

 言葉の意味が分かりませんでしたが、私はそのままずっと立っていた場所から移動します。近くの机の上にカゴとカバンを置き、机に凭れ掛かりました。

そんな私を見たおばちゃんは、一気に気が動転します。

 

「え、ちょっと、貴女っ?!」

 

 そんなおばちゃんの前に、偉い人っぽい人が構成員を分けて陣形に入り、立ちました。

そしてこう言い放ったのです。

 

「貴女を今ここで首にする。すぐに出て行け」

 

「へ?」

 

 そんな中、若い男の人が私に近づいてきました。

 

「横須賀鎮守府の人ですよね? すみませんでした、ウチに”ガン”があったみたいで……。ずっと立ちっぱなしで疲れたでしょう? 椅子にどうぞ腰掛けて下さい」

 

 そう言った男の人は、私の近くに折りたたみのパイプ椅子を出してくれました。

私は思わずそれに腰を掛けます。

 一方、目の前では偉い人っぽい人がおばちゃんに向かって言っていました。

そして、構成員の持っている獲物を見て気付いたんです。

持っていたものは、鎮圧用のラバー弾を撃ち出すショットガンです。

 

「ちょ、ちょっと!! どういうことです?!」

 

「貴女、分かっていてここでパートしていたんですよね? どこの手が回った人間ですか?」

 

「どこの手がって……」

 

「どこの政党、組織の手かと聞いているんです」

 

 まだ、状況が飲み込めていないみたいです。

しどろもどろしているおばちゃんに、今度は構成員が声を掛けました。

 今更ですが、ここに来ている一個小隊は『番犬』で、全員が顔を隠しています。おばちゃんから見えているのは、精々階級章と目の光くらいでしょうか。

 

「自ら吐いたのなら、執行猶予も実刑も無くなるぞ」

 

 カシャと、暴徒鎮圧用ラバーショットガンが音を鳴らします。

既に銃口はおばちゃんの方向に向けられていたるんです。

 これでようやく状況を飲み込めたのか、急に捲し立て始めました。

 

「あ、貴方たちっ!! ま、さかっ?!」

 

「えぇ、貴女曰く『子女を戦場に駆り立てる犯罪者のメス犬』ですよ」

 

 バキッと音がしました。

どうやら誰かがショットガンの銃把を握りつぶしたみたいですね。

 その音の発生源は、ショットガンを肩に掛けたみたいです。

 

「どんなことを吹き込まれて、信じたかは知らない。だが、今も”陛下”は貴女みたいなのをこの世に残しておくつもりは無いぞ」

 

「う、嘘よ……」

 

「勅命は今でも有効だ。聴いてないのか? 国営放送で陛下が勅命されたことを」

 

 沖江さんはスカートを捲り、腿のホルスターから拳銃を抜きました。

そして薬室に弾薬を装填します。銃口はおばちゃんの眉間に向けられました。

 

「おバカなテロリストが1人……。『兵士』の前にノコノコと現れました」

 

 ゆっくりと銃口がおばちゃんの眉間に近づいていきます。それに伴い、沖江さんも近づいていきます。

 

「おバカなテロリストは言いました。『私たちを巻き込まないで』、『戦争はよそでやって』、 『私たちの平和な生活を返して』」

 

 銃口がおばちゃんの額に触れ、吐息も完全に当たる距離まで沖江さんは近づいています。

 

「『兵士』は何も言いませんでした。ですけど、あることをしたのです」

 

 もう、おばちゃんの目に触れるのではないか、という距離にまで口を近づけて囁いたのです。

 

「天色 紅中将が下した命令に従い、本来殺されるべきテロリストを……」

 

 刹那、沖江さんの拳銃がおばちゃんの額から離れます。そして、銃口は天井に向けられました。

ですが、沖江さんは離れません。そのまま、自分の目をおばちゃんの目に目一杯近づけたんです。

 

 

 

 

 

「死なない程度に痛めつけました」

 

 

 

 

 

 異様なほどに、沖江さんの口角が上がります。

そして、それを合図に構成員が動き出します。

 腰から結束バンドで作られた簡易手錠を出し、おばちゃんを拘束しました。

 

「アッハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!! 良かったですねぇ~。地獄へはまだ行けませんよ? 貴女にそう吹き込んだ奴らを吐くまで、”お話”、しましょうねぇ?」

 

 拳銃をくるくると回しながら変に口角を上げ、今までに見たことのない嗤いを浮かべている沖江さん。

 そんな沖江さんを、私は初めて『怖い』と感じました。

沖江さんの顔を目の前で見ていたおばちゃんは、身体をガタガタと震わせています。一言一言が余分な意味を持たない沖江さんの言葉に圧倒されたんでしょう。

 

「い、いや……」

 

「何が?」

 

 ドライアイスの中に閉じ込められたように感じます。

 今の声、沖江さんが出したんです。

 

「ど、ど、どう……どういうこと? え? まって、貴女……憲兵なん……でしょ?」

 

「”元”憲兵です」

 

「さっきの話って……」

 

「本当ですよ。ちなみに、現役の憲兵に貴女を引き渡しても良いですよ?」

 

 沖江さんは何を言っているんでしょう。

ですけど、すぐに分かったんです。今のこの国では、このおばちゃんの言うことは通用しないんです。

 沖江さんの言葉を聞いたおばちゃんは、心底安心した顔をしました。

彼女の中では、現役憲兵、つまり日本皇国軍は横須賀鎮守府を排斥したがっていると信じ切っているんです。さらに、政府もそれを推しており、陛下もそれを勅命としている、と。

ですから、今のこの状況から脱出し、”日常”に戻ることが出来る期待をしたんです。

 

「ほんと?! とか言って引き渡す時に後ろから撃ったりだとか……」

 

「そんなことはしません」

 

「貴女たちみたいなのが、そんな風に憲兵さんに首洗って出ていくなんて面白いわね」

 

 一斉に『柴壁』がおばちゃんに詰め寄りました。隙間なく。そして、ショットガンを構えたまま。

 その時、ここに近づいてくる足音がありました。

そしてそれが私とは、少し離れたところで止まります。

憲兵です。しかもBDUを着ていない、制服を着ているので分かりました。門の前でたまに見ますからね。

 その姿を見たおばちゃんは『柴壁』を強引にかき分け、その憲兵に訴えます。

 

「憲兵さんでしょ? この状況を聞いて来てくれたのよね? ここに横須賀のメス犬がたくさん居るわ!! 連れて行ってちょうだい!!」

 

 憲兵は歩き出します。

 その憲兵に遅れてか、BDUを着ている憲兵がゾロゾロと辺りを囲みました。

そして私たちとは違う獲物、実弾を撃つための小銃を構えたのです。

 

「私はこの辺りを担当している憲兵です。私の顔はご存知で?」

 

「えぇ!! えぇ!! もちろんよ!!」

 

 細身のその憲兵が手を挙げます。そうすると、周りを囲んでいたBDUの憲兵たちが動き出し、それに呼応するかのように『柴壁』がおばちゃんから離れていきます。

その状況についていけないおばちゃんは、取り敢えず助かったと思ったんでしょう。その場に尻もちをつきました。

 

「さ、コイツらを連れて行ってよ!!」

 

 若干興奮気味におばちゃんは訴えました。ですが、それは一蹴されてしまいます。

 

「それは出来かねますね」

 

「ならこの場で射殺?」

 

「それも出来かねます」

 

「じゃあどうするの?」

 

 そう言ったおばちゃんの声を合図にしたかのように、BDUを着た憲兵たちから次々とカチャリと音が聞こえてきました。安全装置を解除したんでしょう。

 

「貴女が推している政党や組織はありますか?」

 

 そんな状況にも関わらず、憲兵は訊きました。

その問に戸惑いつつも、おばちゃんは何かの組織名を口にします。

 それを聞いた憲兵さんは嘲笑いました。

 

「はははっ。その組織は2ヶ月前に消えましたよ」

 

「え?」

 

「今上天皇の勅命により、ここに刑を言い渡す」

 

 BDUを着た憲兵がおばちゃんの両脇を抱えて立たせました。そしてそのおばちゃんに有無も言わさずに手錠を掛け、膝を折らせます。

 

「反政府勢力に加担、妨害工作を行ったとし、執行猶予無しで……」

 

 空気が一瞬で絶対零度まで下がりました。

 

 

 

 

 

「銃殺だ」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 あの後、おばちゃんは憲兵に連れて行かれました。かなり乱暴に。抵抗はしていたが、蹴られて引き摺られていったのです。そして何かを叫んでいたようでしたが、よく聞こえませんでしたね。憲兵たちの装備の音で聞こえなかったのです。

 沖江さんが呼び出した『憲兵』たちもすぐに戻り、その場に残ったのは私と沖江さん。偉い人っぽい人と若い男の人だけになってしまいました。

 

「……重ねて申し訳ありませんでした。私どもの店にはああいった輩は居ないように調整していましたが、どうやら紛れ込んでしまっていたみたいです」

 

 この人の言い草だと、多分店主かそういうものなんでしょう。

 その言葉に、沖江さんが対応しました。

 

「いやいや、こちらこそ申し訳ありません。こんな物騒なものを出してしまって」

 

 沖江さんは拳銃に安全装置をかけました。

 

「本当にすみませんでした」

 

「こちらこそ」

 

 そう言って、一応解散となりました。

 ちなみに買い物は終わっていたので、そのまま横須賀鎮守府に帰りました、特段何があったみたいなことにはなっていませんでした。

それよりも驚いたのは、あの沖江さんです。

一体、どうしてしまったんでしょう。あの時の沖江さんはどこかおかしいとかそういうものではなかったんです。完全におかしい人でした。

ですけど、すぐに元に戻ったんです。一体、どうしてでしょう。

 

 

 





 少々長いですが、まぁ、スッキリさせるにはこれくらいがちょうどよかったんです。

 サブタイに反する内容ではありましたが、まぁ、仕方ないですよね。
おばちゃんが悪いんです(トオイメ)

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