【完結】艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話 作:しゅーがく
私が第5通用門の警備を任されてから2週間が経った頃、警備棟に招集が掛かりました。
招集が掛かったということは、大本営からのコンタクトがあったということ。つまり、遂に動き出す時が来たということでしょうか。
時間は昼前でしたが、警備から少し外れて警備棟に走り込みます。
中では艦娘の往来もあり、『柴壁』の構成員もいつもは見ないほどに動き回っています。
「ましろさん、こちらです」
往き交いの激しいロビーで、赤城さんが私のことを呼んで手を振っています。
私は人を避けて赤城さんに走り寄り、一応分かっては居ますけど状況を聞き出します。
「大体検討は付きますが、状況をお伺いしても?」
「はい。先ほど大本営より速達で郵便が届きました」
となると、やはり倉敷島の話でしょうね。
「内容は?」
「大本営の方から倉敷島攻略の正当性の確立と、参加部隊の招集が完了したという報告です」
正当性……。つまり、私たちが攻撃することの正しさの声明をしたということでしょうか?
よく分かりませんが、今までも『海軍本部』の傘下部隊襲撃はしてきていますから、必要ないと思うんですけどね。
「国営放送で声明をしたそうです。録画したものがあるので、後で見ましょう」
「はい」
「話を戻します。大本営の報告に伴い、私たちも部隊の本編成と配置を行います。それに加えて一緒に送られてきた、攻略作戦の概要を共有し、私たちの動きを確認します」
何やら厚木飛行場の時とは違い、大事になっているように感じます。いや、大事なんですけどね。
そんな話をしていると、第1会議室に到着します。
ここに艦種代表や武下さんたちが集まっているとのことです。
「失礼します」
まだ艦種代表が揃ってないみたいですね。
「……まだ揃ってないみたいですから、国営放送の録画を見ましょう」
赤城さんはテレビに近づき、操作をします。そうするとすぐに、再生が始まりました。
『私は大本営海軍部長官 新瑞だ』
『親愛なる国民の皆も知っていることだろうが、ここ半年近く、軍内部で動乱が起きている。我々、大本営及び海軍部を主体とした側と、今はなき『海軍本部』の構成員だった者たちの側だ』
『この二者の対立は約1年間も続き、度々人々に不安を煽いだ』
『だがこれだけは言っておく。『海軍本部』のしていたことは許されることではない!!』
『非力な我々に代わり、戦争を請け負った艦娘たちへの不当な扱いの数々。自らが決めた制約の中で、不都合が出たら排除を行う蛮行を覚えているだろうか』
『軍法会議で処罰を下したのにも関わらず、彼らは蛮行を続けた。その結果が現状の我々だ!!』
『資源の供給が途絶え、時より深海棲艦による航空爆撃に怯える日々……。あの平和だった日本を忘れてしまっている』
『平和を取り戻すため、我々は一歩を踏み出すのだ!! その為に、彼ら『海軍本部』を根絶やしにする!!』
『皆は平和を望むか? 何に怯えることなく、日々の暮らしを過ごしたいか? 軍の戦闘車が多く行き交う道を見たくは無いだろう!!!!』
テレビの中で、新瑞さんと名乗った人は壇をダンと叩いた。
『この動乱を収め、我々は再び前を向いて歩き出すのだ!!』
『……今ならまだ間に合う。『海軍本部』の者たちよ。我々に投降し、その蛮行を償え。もし投降しないのなら、我々が振り下ろす正義の鉄槌を受け、その贖罪を自らの命で償うが良いッ!!』
多分、近くに兵士が居るのだろう、向こう側で叫び声が聞こえる。
そしてこれで終わりのようだった。
ニュースの速報として取り上げられていたみたいだ。
「ということです。具体的に攻略作戦が発動するかという言葉を言ってませんが、暗にそのことを伝えています」
「それは聞いていて分かりました。……そろそろ集まったみたいですよ」
「では、始めましょうか」
テレビから視線を外し、私たちは集合した艦種代表と私、武下さんらを交えた会議を始めます。
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作戦の方針に関して、大本営から送られてきたものを共有しました。
それと、参加部隊などを伝えることになりましたが……。
「赤城、さん?」
「はい」
私は自動車に揺られています。
理由は簡単です。今、大本営に向かっているところです。
要件は、参加部隊の伝達です。手紙や電話でしても良かったんですけど、こればっかりは直接の方が良いだろうということで、向かっているところです。
来ているのは、運転手で警備から引き抜かれた西川さん。赤城さんと警備の都合で面識のあるビスマルクさん。そして私です。
ビスマルクさんは警備ですが、そういう感じで良いんですかね? 艤装を身に纏っていますけど。
「私って必要なんですか?」
「はい」
「必要なんですか?!」
「そうですよ。……今まで大本営には黙ってきましたけど、そろそろましろさんのことも伝えておく必要がありますからね。それに、今は忙しいですけど今以外にタイミングがありません」
そう言われてしまうと、なんとも言えませんね。
抵抗しても仕方ないですし、覚悟を決めましょう。
乗っているのは、普通の軍用トラックです。護衛は無し。
結構長い間走ってますから、そろそろ着く頃じゃないですかね? どこに大本営があるのか知りませんけども。
気付いたら、かなり栄えた街中を走っていました。
よく外を見ると、どうやら東京都に入ったみたいです。道で度々立っている案内標識を見ればどこなのかが分かります。
やがて、高いビルが立ち並ぶ落ち着いたところに入ってきました。大きな門を潜り、トラックが止まります。
「着きましたよ」
そう言われ、私が降りたのは大本営です。
警備の兵士があちこちで立っています。そんなところに出た途端、兵が集まってきました。
小銃に銃剣が付いたものを肩に掛け、敬礼をします。
「お迎えにあがりましたッ!!」
「ありがとうございます」
なんですかね、これ。
まぁ、いいです。来た目的を果たしに行きましょう。
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ーーー
ー
大本営の中を歩き、付いたところは海軍部長官室でした。ということは、出て来る前に見た録画のビデオの人ですね。
確か、新瑞さんとか言ってましたね。
そんな部屋に、赤城さんは何のためらいもなく入っていきます。ビスマルクさんもです。私はその後に続いて入っていきます。
西川さんはトラックで待っているとのこと。そもそも西川さんには入るここまで来る許可は貰ってないらしいです。
私はどうなんでしょうね。
「ご無沙汰しています」
「あぁ。久しぶりだな」
テレビで見たのと同じ人が、私の目の前に居ました。そして入ってきた人の顔を見て、赤城さんに話を振ります。
「要件はさっき聞いた。早速始めようか」
「えぇ」
そう言われ、赤城さんは懐から書類を出します。
「作戦艦隊及び参加部隊の詳細です。作戦艦隊は深海棲艦の海域奪回のための出撃ではないため、出せるだけの部隊を出すことになります。鎮守府の防衛も必要ですから、それだけの部隊を出すことが出来ます」
「水上打撃部隊の第一~第三戦隊。第一、ニ、五航空戦隊。第一~四水雷戦隊に旗艦も独立か……」
「はい。作戦艦隊は作戦によって柔軟に編成を変えますので、今回の作戦にはそのような編成になります」
「それで……私設軍事組織の方は?」
「はい。諜報実働系特殊部隊と空挺降下部隊を」
「空挺……だと?」
途切れることなく、話は進んでいきます。
「こちらの方で編成しました。精強な兵のみで構成された空挺降下部隊です」
「それは分かっているが……これだけの戦力を出せるということか?」
「はい」
どうやら終わったみたいですが、新瑞さんは少し考え始めます。
「……理想の作戦が立案出来そうだ」
「というと?」
「こちらが用意出来た部隊は憲兵師団より派遣される憲兵約一個大隊と海兵一個師団、機械化歩兵一個師団、航空教導団だ。他は志願しなかったのだ。空挺部隊が志願してさえくれれば、制圧をより確実且つ重厚なものに出来たんだが」
「それなら願ったり叶ったりですね」
「あぁ。ちなみに規模は?」
「95名。約二個小隊です」
少し新瑞さんが渋い顔をします。思っていたよりも数が少ないことが気になったんでしょうね。
「……分かった。そちらの編成を控えた。次の話に移ろう」
新瑞さんがこちらを向きます。
BDUを着てはいますけど、武装はしていません。ナイフも置いていくように言われていますから。
そんな私を新瑞さんは変なものを見るような目で見た後、赤城さんに言いました。
「……そちらでこの顔は見たことが無いんだが、一体誰なんだ?」
「天色 ましろさんです」
「天色……だと?」
明らかに表情が変わりましたね。焦りというよりも、何か別のことを考えているような表情です。
その後すぐに、新瑞さんは受話器を取って何処かに電話を掛けます。
「私だ。彼が療養中の軍病院に"天色"という看護師が居ただろう? 今居るか? 様子を訊きたい」
「……海軍部の新瑞だ。様子はどうだ? ……あぁ、そうか。……分かった。ありがとう。手間を取らせて悪い」
受話器を置きます。
そして両肘を机に付き、うなだれてしまいました。
「……DNAを採取させてもらっても良いだろうか?」
「本人確認、ですね?」
「あぁ。貴官が『天色 ましろ』であることを証明してもらう」
そう言って、また新瑞さんは何処かに電話を掛けます。
その数分後、この部屋に1人、荷物を持って入ってきました。格好からすると、何処かの研究医みたいですが。
「DNAの採取を行います」
「はい」
研究医がキットを取り出します。DNAを採取するキットです。
DNA鑑定のために、私の頬の内側の粘膜を採取し、そのまま走って部屋を出ていきました。
「1週間以内に結果が出る。それまでは、私は君を『碧 葵』と呼ぼうか」
「っ!?」
そりゃ、ここに滞在する云々で書類を出していますからね。知らない訳がありません。
「それで、碧。君が『天色 ましろ』だとして、何故ここに居る? どこから来た?」
「紅くん……天色 紅と同じ世界から、失踪した弟を追って来ました」
「……」
新瑞さんは黙ってしまいました。
次に口を開くのは赤城さんです。
「私たちと親族でしか知り得ないことを、この方は知っています。DNA鑑定をするにしても、結果は見えていますよ」
「そうなのか?」
「はい」
新瑞さんは顔を上げました。どうやら話は終わりみたいです。
そのまま私たちは帰るように言われ、大本営を後にしました。
1週間後にまた来るように言われました。多分、DNA鑑定の結果でも知らせてくれるんでしょう。
それに、作戦の概要が完全に完成するころでしょうし、それも渡すつもりなんでしょうね。
今まで普通だったことが覆りそうになる……。そういうことってありますよね(唐突)
このエンディングも始まってから14話目ですね。気付けば結構書いてますし、書き溜めも溜まってきています。2,3週間分くらいあります。
それは置いておいて、取り敢えず新瑞さんのスピーチには少し……はい、注目して欲しいですね。
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