【完結】艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話   作:しゅーがく

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第59話  大本営にて②

 

 大本営に初めて行ってから、1週間後。私は再び、大本営に来ています。

目的は本作戦の概要と要項の回収と、私のDNA検査の結果です。

 新瑞さんの執務室に入り、ソファーに腰掛けていました。

今日は赤城さんと私、フェルトさんが来ています。

 

「来たか」

 

 私たちが来た時には外出中だったみたいで、案内した兵に言われて座っていたら戻ってきました。

 

「早速だが本題に入ろう」

 

 新瑞さんは机から何かを取り出し、私たちに目の前に置きました。

 

「作戦のあらすじだ。何かあれば連絡してくれ」

 

 新瑞さんは私たちの正面に座りました。

ちなみにフェルトさんは、私と赤城さんの背後で立っています。艤装を身に纏っていますから、そもそも座れないらしいんですけどね。

 

「……DNA鑑定の結果が戻ってきた」

 

 新瑞さんは上着の内ポケットから封筒を出し、私に渡してきました。

開封積みの封筒の中から、紙を出します。

 公告など何も入っていない淡白な中身。1枚の紙を広げ、内容を見ます。

一字一句目で追い、全てを読み終わった後に机に置きました。置いたものを赤城さんが見始めます。

 

「このことは総督……果ては陛下にお伝えさせて頂いた」

 

 表情を変えません。私も内容を見ても心は動きませんでした。

なぜなら『天色 紅と天色 ましろが姉弟であることを認める』と書いてありました。それにこのDNA鑑定は法的なモノです。裁判所や公正証書が云々という時に使うためのものです。

 

「この話をするのは"全てを終わらせてから"だ。……赤城。そこに入っている書類にあるが、作戦開始日時丁度に動けるようにしておいてくれ」

 

「分かりました」

 

 全員が立ち上がります。もう用事は終わりましたからね。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 鎮守府内が慌ただしく動き出します。作戦に向けて、準備が始まっているのです。

そんな中、私と赤城さん、武下さんや艦種代表と霧島さんは警備棟第1会議室に居ました。

 

『全隊の指揮を執るのは新瑞さんですが、司令部の位置が良くありませんね』

 

 霧島さんのその発言から、こういう事態になっていました。

帰って来てから、一度艦種代表と霧島さんが集められて、作戦書の内容の共有を行っていたんです。

その時、霧島さんが作戦書の内容に違和感を持ったんです。総指揮を行う新瑞さんの配置がおかしいことに。

書類上では、新瑞さんの配置は陸上部隊後方。最前線とまではいかないものの、全隊の指揮官がそんなところに居ていいはずがないということでした。

その霧島さんの意見に便乗して、赤城さんが言ったんです。

 

『呉司令支部で指揮を執って貰った方が良いと思いますよ』

 

 ということで、連絡を入れようとしている次第です。

 

「横須賀鎮守府艦隊司令部の航空母艦 赤城です。海軍部長官の新瑞さんを……はい、お願いします」

 

「作戦の件でお電話させていただきました。……はい。はい。……新瑞さんの配置を変えましょう。陸上部隊後方よりも呉司令支部の方が良いと思います。作戦室もありますよね?」

 

「……分かりました。では、そのようにお願いします。それと、ましろさんも作戦室に」

 

「理由ですか? 横須賀鎮守府から作戦艦隊や部隊が出て行くことによって警備が手薄になります。それならば、作戦中は司令部に居た方が安全だと……。ありがとうございます。ではそのように」

 

 話は終わったみたいですね。

 私たちの準備に与えられた時間は1週間です。この間に出撃出来るようにし、1週間後に横須賀鎮守府を出発しなければなりません。

その間にやることは幾つかあります。主に『柴壁』ですけど。

 今回の作戦に参加するのは『血猟犬』と『降下猟犬』です。

『血猟犬』は既に準備を始めています。先に呉司令支部に向かい、そこから倉敷島に先行して入る予定です。そこからは工作やら色々とありますので、先に『血猟犬』には作戦を伝えてあります。

巡田さんは部隊を纏めて、もう移動用意をほとんど済ませているみたいです。

『降下猟犬』のすることは沢山あります。

乗り込む艤装に自分らの装備や荷物を運び込み、場所を確保すること。倉敷島攻略が決まる前にも何度かやっていますが、降下訓練を行っておくこと。今まで鎮守府になかった装備を使うので、それの促成慣熟訓練(NVD:暗視装置、HK416/光学照準器)を済ませること等など。

 私は特にすることはありません。作戦書と作戦艦隊の動きを頭に叩き込むこと。あと、万一のために拳銃を片手で撃てるようにしておくことくらいでしょうか。後者に関しては、武下さんに言われました。

私くらいの体格の女性兵士でも、拳銃なら片手で撃てるそうです。念のため、ということで私は1週間みっちり訓練をすることになりました。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 大本営から帰ってきてから2日が経ちました。鎮守府の中は静かです。それは悪い意味ではありません。いい意味で静かなんです。

ざわざわしているだとか、落ち着きがないとかそういうものではありません。

そんな鎮守府の中を、私は歩いていました。拳銃片手射撃訓練の後ですので、右手が凄く痛いです。

 警備棟と寮の間を『降下猟犬』が往復していること以外は、至って普通の光景ですね。

その普通というのは、艦娘たちがよく出歩くようになってからの普通です。今もグラウンドで遊んでいる駆逐艦の艦娘たちの姿が見えますし。

 散歩するかのように、私はフラフラと埠頭に来ていました。

海を見ていると結構落ち着くんですよね。何と言えばいいのか分かりませんが、落ち着くんですよね。ただぼーっと海を見ていると、心が静かになります。

 埠頭ということもあり、艦娘の艤装が大量に浮いています。

その中にある艤装の周りに、『降下猟犬』の皆さんが集まっていました。赤城さんと加賀さんの艤装でしょうか。多分そうです。

私はそこに向かいます。

 

「これより、降下訓練を行うッ!!」

 

「「「「はッ!!」」」」

 

 綺麗に整列した『降下猟犬』全隊が分隊毎に並び、敬礼をしています。前に立っているのは指揮官ですね。

 

「今回の訓練は全隊降下。よって、赤城さんと加賀さんに海に出てもらい、横須賀鎮守府に降下する!!」

 

 ここに降下するんですか。訓練することは知っていましたが、それは知りませんでしたね。もし建物とかに当ったり、変なところに着地した時はどうするんでしょうか。

 

「分かっているとは思うが、もし施設の屋上に着地したり、万が一壁にぶつかるようなことがあれば、他の予備隊員に入ってもらうからな!!」

 

「「「「はッ!!」」」」

 

 予備隊員が居たんですか……。ちょっとその辺は分かりませんね。編成は武下さんがやりましたし、詳細は私も知りませんから。

 

「では赤城さん。お願いします」

 

 『降下猟犬』隊長の横に立っていた赤城さんが、話をし始めました。

 

「皆さん、怪我をしないように気を付けてください。それと今回の集結ポイントはグラウンドです。降下開始から5分以内に集結し、点呼を行って下さい」

 

「「「「了解ッ!!」」」」

 

「では、乗艦しそれぞれの流星に。解散!!」

 

 『降下猟犬』全員が走り出し、赤城さんと加賀さんの艤装に分かれて登っていきます。全員が行った後から、赤城さんも艤装に入っていきます。

 

「あ、ましろさん」」

 

 その途中、私のことに気付いたみたいです。

 

「すみません。少し観てました」

 

「構いませんよ。……今から降下訓練なんですが、観ていきますか?」

 

「はい」

 

 私は赤城さんの艤装に登り始めます。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 赤城さんの艤装の中を、赤城さんに付いて歩きます。

中は無骨ではありますが、掃除が行き届いており、清潔を保たれています。そして足元を妖精さんたちが走り回っています。

 数分か十数分歩くと、格納庫にたどり着きます。

中では『降下猟犬』の皆さんが作業をしています。と言っても、そこまで人数は居ませんね。40~50人程度でしょうか。多分、残りは加賀さんの方に居るんでしょうね。

 

「アレが改造した流星です」

 

 今までは流星と言われても何がなんだか分かりませんでしたが、今初めて目にして理解しました。独特な形状をした艦載機です。珍しく細身なんですね。

 

「新瑞さんから頂いた作戦書には、『降下猟犬』の配置に関しての詳細な記述はありませんでした。ので、私たちの方で指定をしました。『降下猟犬』は第一航空戦隊の艦攻・艦爆隊が担います。理由としましては練度ですかね。生存率を上げるために選びました」

 

 理解しました。

 倉橋島に派遣される艦娘は多いです。

赤城さん、加賀さん、蒼龍さん、飛龍さん、翔鶴さん、瑞鶴さん、長門さん、陸奥さん、扶桑さん、山城さん、金剛さん、比叡さん、榛名さん、霧島さん、高雄さん、愛宕さん、摩耶さん、鳥海さん、最上さん、鈴谷さん、熊野さん、川内さん、神通さん、那珂さん、大井さん、北上さん、大淀さん、吹雪さん、白雪さん、磯波さん、叢雲さん、綾波さん、敷波さん、白露さん、時雨さん、村雨さん、夕立さん、島風さんです。

それらをいくつのも部隊に分けて運用するとのこと。

その中でも『降下猟兵』を降下させられるのは、第一・第二・第五航空戦隊のどこか。赤城さんの言う通り、この3つの航空戦隊から考えると、降下成功率は第一航空戦隊でしょうね。

練度や技量からしてみても。

 

「今回は思う存分に、使いたい艦載機が使えるので嬉しいです。護衛に出す予定の戦闘機隊は烈風と震電、雷電改(前作に登場)の私のお気に入りから選び放題です!」

 

 そう言われ、私は流星以外の艦載機に目を向けました。

さっき挙げた艦載機が全部居るんじゃないですか? 3種類くらいありますし。

 

「艦橋に行きましょうか」

 

 笑顔の赤城さんに付いて、艦橋に行きます。

 艦橋は映画で観るようなセットそのものです。そして窓からは鎮守府と海、飛行甲板が見えます。

何やら妖精さんたちが慌ただしく動いていますので、そろそろ出発するんでしょうか。

 

「全館放送をお願いします」

 

 赤城さんは妖精さんにそう言って、無線の受話器っぽいものを片手に話し始めます。

 

「これより降下訓練を行います。『降下猟犬』は爆弾倉に入り、待機。艦載機隊はエレベーターを使い、飛行甲板に」

 

 更に妖精さんたちがけたたましく動き始め、音が鳴り始めます。

 

「全艦、前進微速。面舵20°」

 

「前進微速! 面舵20°ようそろ!!」

 

 動き出します。船体が傾き、波の揺れが激しくなりました。

 

「舵戻し、前進強速」

 

「舵もどーし! 前進強速!」

 

 窓から後ろをみます。加賀さんも同じ動きをしています。

 

「ましろさん」

 

「何ですか?」

 

「これ、戻るのに結構時間が掛かりますけど、良いんですか?」

 

 どういうことでしょう。

艦載機隊を発艦させた後に、こっちに戻ってきて艦載機を回収するんじゃないんでしょうか。

 

「全機発艦まで時間が掛かりますし、艦載機を収容してからじゃないと埠頭に戻りませんけど……」

 

「あっ……」

 

 ということは凄く時間がかかるということでしょう。

射撃訓練の後には、特に何があるわけでもありませんでした。ですが、帰ってくるのはどう考えても陽が落ちてしまいそうです。

埠頭に来た時は午後2時過ぎでしたし。艦載機の収容や埠頭への接岸もかなり時間がかかるでしょうから……。

 

「ま、良いじゃないですか。"豪華客船"でクルージングです!!」

 

「そ、それもそうですね……」

 

 この後、私が埠頭に帰ってきたのは陽が落ちて1時間後の午後7時前でしたとさ。

 ちなみに降下訓練は成功でした。時間内にグラウンドに集合出来たみたいですし、怪我人も無しです。艦載機の着艦・収容も滞りなく進みましたからね。

面白みに欠けるかもしれませんが、全てが順調に進む方が良いに決まっていますからね。

 

 




 今回以降、数回は同じスパンで投稿します(書き溜めもありますので)。どういうスパンかというと、3日に1回投稿します。

 メタな話はこれくらいで。
 DNA鑑定の件ですが、感想でも少し聞かれました。
DNA鑑定をした研究医は大本営附属の医療機関です。ですので『海軍本部』の手の者が侵入して、細工するのではという懸念がされていました。
今回の場合はそのようなことはありません。紅に対する銃撃から、大本営は『海軍本部』の息が掛かった組織などの制圧をしていますので、存在しないと考えて下さい。
 本来ここで話すことではありませんでしたが、本文中にこの説明を入れることはどうしてもできませんので、あとがきに書かせていただきました。

 ご意見ご感想お待ちしています。

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