【完結】艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話   作:しゅーがく

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第8話  謝罪

 

 私が何を言おうか考えていると、赤城さんは顔を下げたまま、話し始めました。

 

「……紅提督がこちらに"呼びだされた"のは、9月初旬です」

 

 確かに、紅くんが失踪したのは、9月1日です。間違ってませんね。

 

「"呼び出した"理由ですが、私たちを直接指揮をして頂くためです。元より、私たちは印刷機から吐き出される指令書で、作戦行動を取っていました」

 

 部屋を見渡すと、確かに大きなプリンターが置いてあります。埃は被ってませんが、長く使われてないみたいですね。

 

「ある条件をクリアした私たちは、"提督を呼び出す力"を行使。紅提督をこの世界に"呼び出し"ました。それからは、ずっとここに」

 

 私は、赤城さんを見ます。かれこれ6分くらい、頭を下げたままなんです。

どういう意図で土下座するに至ったか、分かりません。ですけど、紅くんは自分の意志でこの世界に来た訳ではない事は、自明でした。元居た世界に伝言や痕跡も残さずに消えたんですから。

 

「着任歓迎会、第四艦隊開放、軽空母戦隊によるカムラン半島強襲、娯楽品や施設の設置、暗殺未遂事件、軍法会議、観艦式、運動会、ジャム島攻略作戦、様々な新戦術、リランカ島空襲、鎮守府初空襲、空襲からの復興、鎮守府文化祭(仮)、ドイツ艦の移籍、雷撃作戦、技術革新による噴進機構搭載戦闘機開発、大晦日、お正月、『アルフォンシーノの魔法』作戦、『タイフーン』作戦、バレンタインデー、デモ隊との衝突、アメリカとのコンタクト、ホワイトデー、紅提督が初めて怒った日、『FF』作戦、大規模作戦の頓挫、紅提督の暗殺……思い返せば、私たちは紅提督から貰ったモノは計り知れません。指揮や作戦、私生活でも色々と楽しいことをさせていただきました。イベントをやって頂いたり、皆さんで騒いで寝たり……。ですけど、私たちは何も紅提督に返せてないんです。それなのに……」

 

 話しを聞いている限り、約半年間で色々な事をしていたという事みたいです。

紅くんが中心になっていたみたいですけどね。

 

「私たちは、紅提督の為に戦うと誓ったのにも関わらず、何も出来ませんでした。私はただ、紅提督が撃たれるのを見ている事しか出来なかったんです」

 

 赤城さんは顔を上げませんが、どんな表情をしているかなんて、想像するのは容易です。

 

「散々ご迷惑をお掛けして、心配をお掛けして、それでも信じて頂いていたのにっ……」

 

 刹那、赤城さんが顔を上げました。

額から血が滴り落ち、大粒の涙が流れています。

 

「守ることも出来ずに、生死も分からないんです……。しかも、紅提督のお姉さんがこうして探しに来てしまわれました……。異世界から誰かが来たと聞いた時、もしやと思いました。わざわざ、ここにいらっしゃったんですから……」

 

 なんとなく、分かってきた事があります。紅くんが中心に色々な事をしてきてはいましたが、艦娘と共にやってきた事だったんです。ですから、こんな風に赤城さんが私に土下座してまで、謝っているのではないんでしょうか。

 

「そうですか……」

 

 何も答えないのも酷ですので、何か言おうとします。ですけど、言葉に詰まりました。何を言っていいのか、未だに分からないんです。約半年間のこちらでの出来事は、とても濃かった筈です。そんなところに、部外者である私が何か言えるなんて思えません。

 

「横須賀鎮守府艦隊司令部所属の艦娘は皆、紅提督が亡くなられたと思ってます。軍病院に連れてかれてしまってから約1週間は、酷かったですからね」

 

 赤城さんは遠い目をして、そんな事を言いました。

そして、赤城さんたち艦娘もまた、紅くんが死んだと決めつけていました。巡田さんと同じです。考えてみれば、生きている事だって可能性としてはあり得る事なのに。

 

「亡くなった。本当に、そう思っているんですか?」

 

「はい……もう1ヶ月経ちます。軍病院からの連絡はありませんし、こちらから掛けてもはぐらかされますから……」

 

 巡田さんと、同じ事を言いました。多分、共通意識で皆、そんな事を思っているんでしょうね。

 

「もし、紅くんが死んでしまっていたのなら、大事になりますよね? 分かりますか?」

 

 私はそう、赤城さんに言いました。

赤城さんはきょとんとしています。

 

「えっと……そうですね……。紅提督は日本皇国では『救国の英雄』と呼ばれていますから」

 

「でしたら、そんな紅くんの情報は全てシャットアウトする……違いますか?」

 

「違い……ませんっ」

 

 私は赤城さんにハンカチを渡します。まだ使ってないものですから、良いでしょう。

 

「なら、紅くんは生きてます。きっと、軍病院で隔離されているに違いありません」

 

 そう言って、赤城さんに手を伸ばしました。

 

「さぁ、立って下さい。帰ってくるまでに、皆さんがこんな風だと、紅くんも困るんじゃないですか?」

 

 そう言いますが、赤城さんは戸惑っているみたいです。

状況は飲み込めてはいるみたいですけど、追いつけてないところがあるみたいですね。

 私の勝手なイメージですが、赤城さんはひたむきに努力して、何事も冷静に考えるタイプだと思ってました。艦これでのボイスはちょっとアレですけども。押し付けでしたかね?

 

「あっ、あのっ……私っ」

 

 キャラがブレている赤城さんに、私は止められました。

 

「もう謝るのは無しです。それと、そろそろ額の血、拭った方がいいですよ? 服に付いてしまいそうです」

 

 そう言って、私はソファーに座り直しました。

話はまだ続きそうですからね。

 赤城さんは、額の血を拭うと、私の対面に再び座りました。

 

「紅提督が戻ってくるって……本当ですか?」

 

「はい。確率は『0』ではありません」

 

 そう、『0』では無いんです。ですけど、帰ってくるかも分かりません。先ずは、生死を確かめないといけませんからね。

 

「生きているか、死んでいるか、どちらかです。私的には勿論、生きていて欲しいですけどね」

 

「勿論ですよ。では、このことは他の艦娘に……」

 

 そう赤城さんが立ち上がったのを、私は止めました。

 

「待って下さい。まだ、早いですよ」

 

「どうしてですか?」

 

 少し頬を赤くした赤城さんは、ソファーに座り直しました。

 私が赤城さんを止めたのは、理由があります。

今、そう言い回ったところで、信じる艦娘がどれくらい居るか、です。巡田さんと赤城さんは私の本名を信じましたけど、信じない事がほとんどですからね。言ったところで『それで?』と、なりますからね。

ですから止めたんです。

 

「徐々に広めていった方が良いと思います。いきなり広めると、半信半疑から何が正しいのか分からなって、混乱させてしまいます」

 

 苦し紛れです。これで、赤城さんが止まってくれればいいんですけど。

 

「……本当ですか? 」

 

「はい。現に、赤城さんだって……」

 

 そう。赤城さんも混乱していたんです。

 

「ですから、徐々に相手を選んで話して行った方がいいです」

 

「……はい。そうしてみます」

 

 どうやらこれで、終わりみたいですね。赤城さんも、私に聞くことはないみたいです。

 

「ありがとうございました」

 

「いえ。私も、ここで紅くんが何をしていたか聞けて良かったです」

 

 私はそう言って執務室を出て行きました。

赤城さんは湯のみやらの片付けをすると行ってましたので、手伝うといったんですが、『客人にそんな事はさせられませんよ』と言われてしまいました。

どうやら、私はここでは客人扱いみたいです。

 





 リメイクからの初投稿ですね。結構、第7話の内容を忘れていましたので、にらめっこしながら書いてました(汗)
なんだか本当に、1話1話の時間の進みが緩やかですよね。

 ご意見ご感想お待ちしてます。
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