第1話『新たなる力!発進、ネオゲッターロボ!!』
第1話『新たなる力!発進、ネオゲッターロボ!!』
~~~ 早乙女研究所 外 ~~~
凛 『それじゃあ、ここでお別れだね』
卯月『はい…。あの、未央ちゃんにはよろしくお願いします』
凛 『うん。未央の事は任せて。…ゲッターの事も』
卯月『……はい』
凛 『ほら、可愛い顔が台無しだよ?これからアイドルとして復帰するんだからさ』
卯月『分かってます…。分かってますけど…私、自分が情けなくて』
凛 『そんな事ないよ。卯月は一生懸命頑張ったじゃん。ただ、今回の仕事は卯月の性に合ってなかったって、ただそれだけ』
卯月『それじゃあ、凛ちゃんは大丈夫なんですか?』
凛 『私は……大丈夫だよ。それに、この仕事は私達のプロデューサーが私に残してくれた、最後の仕事だから』
卯月『そうですか……。あの、私がこう言うのは可笑しいかもしれないけど、━━頑張って下さい』
凛 『うん。卯月も』
卯月『はい。それじゃあ……』
凛『うん。━━』
━━さよなら。
晶葉『行ったか』
凛 『晶葉。━━うん』
早乙女『彼女を失ったのは人類にとって大きな痛手になるかもしれんぞ』
晶葉『早乙女博士……』
凛『関係ないよ。たった一機のロボットに人の人生を左右させることなんて出来ない。卯月は、自分の意思でゲッターを降りたんだ』
凛『なら、後はここに残った私達だけで頑張るだけだよ。卯月が言ったようにね』
晶葉『卯月を失った分は、これまでの戦いの経験で何とかするしかない、か』
晶葉『しかしそうなると、またメンバーを一から集め直さないといけないな』
凛 『分かってる。また一から作ろうよ。前の私達のチームに負けない最高のゲッターチームと……』
凛 『━━新しいゲッターロボを……!』
━━━━━1年後。
「━━…ゃん……?…づきちゃん…━━」
「卯月ちゃん!」
卯月「うぇ…っ!あ、あぁはい!おはようございます!……響子ちゃん?」
響子「ようやく目を覚ましてくれました……。おはようございます。卯月ちゃん」
卯月「えへへ……。ごめんなさい、響子ちゃん、…美穂ちゃん」
美穂「いえ……!別に謝られるようなことでは……」
響子「でも、いつもはしっかりしてる卯月ちゃんが、ライブ前に居眠りなんて珍しいですね?」
美穂「昨日お家で何かあった?緊張で眠れなかったとか……」
響子「卯月ちゃんに限って、そんな……」
卯月「あはは……。緊張で眠れなかったって訳じゃないんですけど、実は昨日、友達と電話を……」
響子「電話って、どのくらいですか?」
卯月「えっと…、3時間くらい…かな?」
美穂「さ、3時間!?」
響子「そんなに一体、何を話してたんです!?」
卯月「え……?普通に世間話とかだけど……」
響子「世間話で3時間も電話で話さないですよ……」
卯月「そ、そうかな……?」
美穂「あっ…!そろそろステージに移動しないと、時間がありませんよ?」
響子「えっ?もうそんな時間!?」
卯月「い、急いで移動しましょう!」
卯月(恐竜帝国との戦いから、一年が経ちました)
卯月(世界は、一応の脅威も去って、少しだけ残った恐竜帝国残党との小規模な戦いが続いてる程度で、普通に私の周りで暮らしている人達には何の影響もないくらい安全で、平穏としています)
卯月(私は、ゲッターロボから降りてから一年。早乙女研究所を離れて、新しくなったプロダクションでアイドルとして活動を復帰させてもらいました)
卯月(復帰する時は色々と立て込んでましたけど、今はそれも落ち着いて、新しいプロデューサーの元でほんのちょっとだけ後輩の小日向美穂ちゃんと五十嵐響子ちゃんの二人と共に、新たなアイドルユニットを結成し、今はアイドルとして、順風満帆です!)
卯月(━━ただ……)
卯月(正直なところ、この一年間、ゲッターのパイロットをしていた皆さんとは、一度も連絡出来ていません…)
卯月(皆さん、アイドルとして少しずつ活動を再開していると言うことは、風の噂で耳にします。だけど、時にはレッスンをお休みしたり、ドタキャンが入ったりもあるみたいで、やっぱり皆さんは、まだ……)
卯月(ゲッターに乗っているのかな…━━)
~~~ ライヴ会場 ステージ裏 ~~~
卯月「遅くなりました!…プロデューサーさん!」
新P「ん?おぉ、やっと来たか」
美穂「遅れてしまってごめんなさい!」
新P「良いよ別に。遅れたっつって、まだ5分前だ。充分、優等生じゃねぇか。━━それよりもだ」
響子「はい!」
新P「今日のライヴは散々打合せしてっと思うが、要はお前らのCDの販促ライヴだ。規模はあまり大きくねぇが、まだまだお前ら『ピンク・チェック・スクール』を知らねぇ奴らに知ってもらうチャンスでもある。バシッっと決めていってこい!」
3人「「「はいっ!!」」」
新P「よし、行け!」
━━━━━ライヴ中。
卯月『ねぇ聞いて、素敵な恋をしてるの━━♪』
卯月(ファンの皆さんの前で歌って、踊る。みんな笑顔で、拍手をくれて…)
響子『DOKIDOKI超えて━━♪』
美穂『BAKUBAKUしてるハート━━♪』
卯月(響子ちゃんとも、美穂ちゃんとも、前の事を気にしないで仲良くできてる。…これで良いんだ。これで……私のやりたかった事は……)
「……」
卯月「━━っ…!」
響子「━━? 」
美穂「……?」
卯月(今のは……)
「……」
卯月(間違いない……。あれは…━━」
━━━━━ライヴ終了後。通路。
卯月「凛ちゃん!」
凛 「…卯月」
卯月「……。来てくれてたんですね……」
凛 「たまたま通り掛かって、ポスターが見えたから」
卯月「…そう、ですか……」
卯月「……あの……!」
凛 「良いライヴだったよ」
卯月「え……あ、はい。ありがとうございます」
凛 「また、笑えるようになったんだね」
卯月「それは……!」
凛 「嬉しかった」
卯月「っ……!」
凛 「実はね、私もまた、アイドルとして復帰するんだ」
卯月「ホントですか!?」
凛 「ホント。ほらコレ、デビューライヴのチケット」
卯月「へぇ……『トライアドプリムス』……」
凛 「良かったら来てよ。私の用事はそれだけ。それじゃ……」
卯月「あのっ……!」
凛 「……」
卯月「凛ちゃんがアイドル復帰するってことは、恐竜帝国は滅んだんですよね?私達の戦いは、終わったんですよね!?」
凛 「卯月……」
卯月「……」
凛 「それは違う」
卯月「え……?」
凛 「でも……」
卯月「でも……?」
凛 「卯月には関係ない」
卯月「そんな…関係ないって……凛ちゃん!?ちょっと待って下さい!凛ちゃん!!」
「……」
~~~ 市街地 ~~~
「おっかえり~」
凛 「……加蓮」
加蓮「旧友との再会は楽しかった?」
凛 「何か言いたげだね」
加蓮「べっつにー?凛が昔のチームメンバーに未練残してても、アタシには関係ないし?」
加蓮「ただ、今のメンバーはアタシ達なんだから、その辺は分けて貰わないと。一応、『トライアドプリムス』のリーダーとして、ね?」
凛 「……。分かってる。別に卯月に未練があるわけでもないよ。…卯月には、スポットライトのステージの上の方が似合ってるし」
加蓮「そう?じゃあ私達にお似合いなのは空飛ぶ棺桶の中?」
凛「……」
「おい加蓮。その変にしてやれって」
加蓮「奈緒。…ごめん、つい調子に乗っちゃったかな?」
奈緒「からかい過ぎるの、お前の悪い癖だぞ」
加蓮「だからごめんって。でも、今のメンバーのアタシ達をほっぽって、凛は昔の女に会いに行ってたんだよ?奈緒を寂しくないの?」
奈緒「あ、アタシは…別に……?」
加蓮「ふぅん。アタシは、寂しいかな?」
奈緒「はぁ!?お、お前……」
加蓮「ふふっ。奈緒も偶には、素直になった方がいいんじゃない?」
奈緒「な……加蓮!凛をからかうのやめたからって、アタシをからかうのはやめろよ!」
加蓮「あは♪バレたか」
奈緒「バレるよ!」
凛 「……」
奈緒「ちょ、おい凛。お前も何も言わずに勝手に行くなって!」
凛 「コレから帰って訓練だよ。私達には、ゆっくりしてる時間なんてないんだから」
加蓮「流石、我らがリーダーは熱血だね~」
凛「…何?」
加蓮「何もー」
スタスタ
奈緒「おい凛!加蓮も!…ったく、少しはチームワーク考えろよなあ!!」
~~~ 控え室 ~~~
新P「オーッス島村。遅かったな」
卯月「すいません!実は、その…道を聞かれてて」
美穂「……」
新P「そうか。ま、別に理由はなんでも構わねぇんだが。コレで全員か」
新P「取り敢えずは、ライヴお疲れさん」
3人「「「お疲れさまです(っ)!!」」」
新P「ふっ、相変わらず元気な奴らだ。もう一つくらい仕事入れても大丈夫そうだな」
響子「えっ?まだお仕事出来るんですか!?」
新P「あ~、冗談だよ冗談。いくら俺でも早々直ぐに仕事なんか入れられねぇっての」
響子「そんなぁ……」
卯月「残念ですね……」
新P「ったく、からかいがいのねぇ。真面目なのは良いんだがよ」
美穂「えと…それじゃあ、今日はもうお仕事終わりになるんですか?」
新P「だな。折角だし、飯でも食い行くか?奢ってやるぞ」
響子「良いんですか?」
新P「おう。遠慮なんかすんなって。どうせ金なんざあっても、使う時がねぇんだ。こんなときくらい、奮発しねぇとな?」
美穂「そんな…悲しいこと言わないで下さい…!」
新P「はっは!悲しいことなんざ一つもねぇよ?俺が忙しくしてんのは、お前らを一人前のトップアイドルにするためだからな」
新P「夢を作るってのはつまらねぇ事じゃねぇ。今は充実してるし、お前らもこうして結果だしてくれっから、金使って遊ばなくても充分楽しいぜ」
響子「プロデューサー…」
新P「で、どうする?行くか?」
卯月「えっとそれじゃあ…ご馳走になりますか?響子ちゃん、美穂ちゃん」
響子「そうですね。打ち上げにはピッタリだと思います!」
美穂「私も、この後特に予定もないから大丈夫だよ」
新P「おし、決まりだ。んじゃ俺は車表に出してくっから、お前らは帰る支度して待ってろよ」
3人「「「はいっ!!」」」
━━━━━移動中。
卯月「えっと…次の交差点を右、ですね」
新P「おう。ナビしっかり頼むぞ島村」
卯月「はい。任せて下さい!」
響子(プロデューサーの助手席…いいなぁ……)
美穂「……」
響子「?美穂ちゃんどうかした?」
美穂「あ、ううん。何かどんどん街が賑やかになってるなぁって」
響子「街?あぁ、疎開先からたくさん人が帰って来てるって事ですか?」
新P「そうだな。お陰で復興も早く進んで、この辺はもうほとんど元通りだからな。仕事先も増えてきたし、ホント平和さまさまだな」
響子「でも、東京はこうですけど、他の都市や、…千葉の方は……」
新P「あぁ、テレビで見たが、ありゃあ酷ぇもんだ。とても人の住める場所なんかありゃしねぇ」
卯月「……」
響子「あ…ごめんなさい。卯月ちゃんこういう話は……」
卯月「う、ううん……!いいんですよ!全部、ホントの頃ですから」
響子「でも……」
卯月「本当に大丈夫です!それに、もう関係ないことですから」
卯月「私には、関係ないことですから…━━」
美穂「……」
~~~ その日の夜。 自宅 卯月自室 ~~~
卯月「━━…はい……はい、ふふっ。そうですね、そろそろ……」
卯月「はい。それではまた明日。学校でお会いしましょう。お休みなさい」
卯月「……」
携帯電話を手放し、ベッドへ。
卯月「ふぅ……━━」
卯月「……」
卯月「……」
prrrrr prrrrr prrrrr
卯月「!?━━…っは、はい!もしもし、卯月です!」
新P『おう、島村。俺だ。やっぱまだ起きてやがったか』
卯月「ぷ、プロデューサーさん!?」
新P『ったく…夜更かしで長電話すんのも大概にしろって、何時も言ってんだろ』
卯月「す、すいません……」
新P『……まぁいいや。今回はそんなことで説教するために電話した訳じゃねぇしな』
卯月「そうでした。そう言えば、ご用件は……」
新P『あぁ、単刀直入に聞くぞ━━』
新P『━━お前、まだゲッターパイロットに未練があるか?』
卯月「━━っ!?…ど、どうしたんですか?いきなり……」
新P『あの時お前は誤魔化してたけどな、偶々見てたんだよ。お前が渋谷凛と話してんのをよ』
卯月「…そうだったんですか」
新P『その後も復興の話をしてる時も気にしてたみてぇだしな。ともかく、渋谷凛に会ってたことを俺達に隠すってのは、お前の中に申し訳なさがあるからだ』
新P『何が申し訳ねぇかは、ゲッターのパイロットに戻りゃ、今の仲間を裏切ることになるっつう不安だ。どうだ?間違ってっか?』
卯月「……私の事、よく見てくれているんですね」
新P『担当アイドルのケアも、俺の仕事の1つだからな』
卯月「…私は━━」
新P『……。いいか、島村。1つだけ言っとくぞ』
卯月「はい」
新P『お前がどういう想いで、今アイドルやってるのかは知らねぇ。けどな、半端な覚悟でいんのなら、ステージに上がんじゃねぇ』
卯月「━━」
新P『それは、小日向にも、五十嵐にも、アイドルそのものに対しても侮辱してるようなもんだ』
卯月「…はい」
新P『いいか、必ず答えを出せ。直ぐにとは言わねぇ。が、お前がだらだら続けるつもりなら、こっちから遠慮なく切らせてもらう。━━分かったか?』
卯月「……はい」
新P『俺が言いたかったのはそれだけだ。出来る事なら、お前の一番の初志を忘れずにいてもらいたいもんだ』
卯月「分かり、ました……」
新P『おう、それじゃあな。しっかり休めよ』
卯月「はい。プロデューサーさんも。━━お休みなさい」
プツン━━
卯月「……」
卯月「……私の初志、か━━」
卯月(それは……)
卯月「━━…ん?外に…誰か……。あれは……」
美穂「……」
卯月「美穂ちゃん!?」
~~~ 外 ~~~
卯月「美穂ちゃん!」
美穂「…卯月ちゃん……。ごめんね?こんな時間に……。電話したんだけど、繋がらなくて」
卯月「そ、それは、別に構わないんですけど……」
卯月(どうしよう……。私が長電話してたせいだよね……)
卯月「それより、寒くないですか?良かったら私の部屋に上がっていって下さい」
美穂「ううん。いいの。外の方が、その…二人きりになれるから」
卯月「え?」
美穂「あ、えぇと、変な意味じゃないよ?ほら、今家には卯月ちゃんのお母さんとかいるでしょ?」
卯月「あぁ、なるほど…。ママやパパに聞かれたら、不味い話なんですか?」
美穂「ううん。そういう訳じゃないけど…その……」
卯月「?」
美穂「ちょっとお散歩しない?気分転換って訳でもないけど……」
卯月「?…はい……、良いですけど━━」
━━━━━数分後。
卯月「……」
美穂「……」
卯月(美穂ちゃん…ずっと考え込んでるみたいだけど……)
美穂「あ、あの…!卯月ちゃん……!」
卯月「っ!な、何ですか?」
美穂「あのね、聞きたいことがあるの」
卯月「聞きたいこと?はい。何でしょう?」
美穂「あのね…その、卯月ちゃんは…私の前からいなくなったりしないよね?」
卯月「…それは……どういう、意味ですか?」
美穂「ん…あ、ごめんね。いきなり変な事聞いて」
卯月「い、いいえ!私も、ちょっと意味が分からなくて…ごめんなさい」
美穂「……。実は、私…友達がたくさん疎開しちゃって、まだみんなこっちに戻って来てないんだ」
卯月「……そうなんですか」
美穂「私の地元の…熊本の方でも、この前戦闘があったみたいで、そっちの友達も逃げ遅れて…重症で病院にいるって連絡があって…それで……」
卯月「……」
美穂「今日のライヴの後、卯月ちゃん遠い目をしてた……」
卯月「…そう、ですか?」
美穂「うん。プロデューサーさんに食事に連れていってもらったくらいから、何だか、遠くを見てるみたいで……」
美穂「何だかそのまま、私達を置いて遠くに行っちゃいそうな、何となく、そんな気がして……」
卯月「そんなこと!そんな、こと…━━」
美穂「……。卯月ちゃんが、前はゲッターに乗ってたって言うのは知ってるよ?卯月ちゃんが、人一倍責任感や使命感が強いのも」
美穂「けど、それだって前の…昔の話だよね?今は関係ないことだよね?」
卯月「美穂ちゃん……」
美穂「私、ヤだよ。卯月ちゃんがゲッターに乗って、私達の知らないところで戦って、傷ついて、遠くに行っちゃうのなんて…」
美穂「私一人だけ残されるのなんてヤだよ!卯月ちゃんには傷ついてほしくないし、戦ってもほしくない。ゲッターになんて、乗ってほしくない!」
美穂「私を…置いていかないで……!」
卯月「…美穂ちゃん……」
美穂「う…っぐ……うわぁぁぁぁぁ━━!!」
━━━━━。
美穂「━━…っく……ごめんなさい……。私、気が動転しちゃって…」
卯月「いいんですよ。誰だって、置いていかれるのは怖いですから」
卯月(私も…あの時、未央ちゃんがゲッターを自爆させた時に……)
美穂「卯月ちゃん?」
卯月「みんな同じです。みんな、恐竜帝国との戦いで大切な人と離れ離れになって…、辛くて泣きたくて、そう言うのを我慢して生きているんですよね」
卯月「だから、そういう人達を、私達が歌って、励ませればって、今は思ってます」
美穂「卯月ちゃん…それじゃあ……!」
卯月「どんなことがあっても、美穂ちゃんや、響子ちゃんを見捨てることなんてありませんよ!」
美穂「良かった……」
卯月「ふふっ。それじゃあそろそろと帰りましょう?随分遠くまで来ちゃいましたし」
美穂「うん、そうだね。ここ、何処だろう?」
卯月「話ながら、夢中で歩いている内に知らないところまで来ちゃいましたね…」
美穂「本当…。あ、丁度あそこに人がいますよ。ここが何処かだけでも聞いてみましょう?」
卯月「そうですね━━…いえ、ちょっと待って下さい」
美穂「? どうかしました?」
卯月「あの人、ちょっと様子が可笑しくないですか?」
男?「フシュルゥゥゥ……」
美穂「え……?」
男?「しまムら…ウヅき……」
男?「見つケた……!」
美穂「きゃっ……!」
卯月「爬虫人類…!こんな街中にまで!?」
爬虫人「ご、ゴール様の仇ィィィィ!!」
美穂「いや…こっちに……!」
卯月「逃げましょう!早く!!」
美穂「う、うん!」
爬虫人「フシュルァアアアア!!」
美穂「は、速い…!」
卯月(やっぱり身体能力は爬虫人の方が……何かあれば━━)
卯月「!」
美穂「お、追い付かれちゃう!」
卯月「美穂ちゃん!頭下げて!!」
美穂「卯月ちゃん!?」
卯月「コレで━━!!」
爬虫人「クアァッ!!」
卯月「てぇい!」
爬虫人「!?」
近くの側溝の上に乗せられていた重石代わりのコンクリートブロックを、勢いよく爬虫人に叩き付ける。
爬虫人「ウギャアアアァァァ!!」
美穂「す、すごい……」
卯月「さ、今の内です!早く行きましょう!!」
美穂「そうだね!」
タッ タッ タッ
━━━━━。
美穂「はぁ…はぁ…はぁ……。こ、ここまで来れば……」
卯月「はぁ……っ。いえ、爬虫人類の嗅覚は人間の何倍とありますから…引き離したくらいだと逃げきれないと思います」
美穂「そんな!じゃあどうしたら……?」
卯月「それは……」
美穂「そうだ!もうすぐ行けば繁華街に出れそうだよ?人通りの多いところに逃げ込めばあっちも手を出してこれないんじゃ」
卯月「ううん向こうにとっては人の数なんて関係ありません。寧ろ被害が増えちゃうかも…。何とかして、被害を出さずに逃げきらなきゃ」
美穂「でも、バスはもう最終過ぎてるし…今何処にいるかも分からないと、電車の駅だって!」
卯月「……」
卯月「…私が時間を稼ぎます。美穂ちゃんはその内に」
美穂「え…?な、何で……」
卯月「あの人の狙いは私です。なら、姿を見られても目的さえ果たせれば、きっと美穂ちゃんを追うことはしない筈…。だから……」
美穂「そんなの嫌だよ!私が卯月ちゃんを置いていくなんて!」
卯月「でもそれしか!どちらかが生き残るには今はそれしかないんです!このまま一緒に逃げてたら、美穂ちゃんだって狙われるかもしれないんですよ!?」
美穂「でも、やっぱりヤだよ!独りにしないって、さっき約束してくれたじゃないですか!」
卯月「それじゃあ響子ちゃんを独りにするんですか!?」
美穂「っ━━!」
卯月「今ここにいない響子ちゃんが、私達を失ったらどうするんですか?響子ちゃんだけじゃない、プロデューサーさんだって、みんな!」
美穂「……だけど、それは卯月ちゃんだって!」
卯月「二人いれば、悲しみも分け合えます。私と、恐竜帝国とのいざこざに美穂ちゃんは関係ないですから」
美穂「そんな…ヤだ……」
爬虫人「フルシュゥゥゥ……!追イ付いたゾ…。追イカケッこハ終ワリか?」
美穂「は、爬虫人……!」
卯月「来ました。さ、美穂ちゃんは早く行って下さい」
美穂「ヤだ…嫌だ……!」
卯月「早く!!」
美穂「っ……!」
美穂(本当に…本当に、逃げるしかないの……?)
爬虫人「死ネェェェェェ!!」
卯月「っ!?」
美穂「嫌…逃げるのも死ぬのも…━━」
美穂「いやぁぁぁぁあああ!!」
「卯月!」
卯月「この声…凛ちゃん!?」
凛 「そっちの子も!目を閉じて!!」
美穂「?」
卯月「美穂ちゃん、言うとおりに!」
直後、爬虫人と卯月の間に投げ落とされる小さな物体。
━━カッ!
物体が破裂した瞬間、辺り一面をまばゆい閃光が包む。
爬虫人「ギャアァァァァッ!!」
美穂「う、うぅ……」
卯月「閃光弾…これは……」
凛 「今の内に!早くこっちへ!」
卯月「凛ちゃん…。分かりました!いきましょう、美穂ちゃん!」
美穂「うん……!」
━━━━━。
卯月「助けてくれて、ありがとうございます!」
凛 「礼を言われることは、何もしてないよ。こっちも準備するのに、ちょっと手間取ったし」
卯月「私達が襲われてるって、分かってたんですか?」
凛 「うん。一応、見張りはつけてたし」
美穂「それって、ずっと卯月ちゃんをつけてたって事ですか!?」
凛 「そうだよ。こんなことがあった時の為にね。卯月だって、分かってたでしょ?」
卯月「…はい」
美穂「でも、卯月ちゃんはもうゲッターに乗ってないのに…」
凛 「そんな事情なんて向こうはお構いなしだよ。例えゲッターから離れようと、恐竜帝国を討ち滅ぼしたのが卯月じゃなくても…卯月はゲッターロボのパイロットだったんだ。向こうにとっては、それだけで恨むに足る理由になるんだよ」
美穂「そんな……」
凛 「着いたよ。コレに乗って」
卯月「コレって、研究所でも使ってたジープ……」
凛 「うん。コレで奴の追跡逃げるよ」
卯月「コレなら、あの人から逃げられそうですね!」
凛 「そう上手く行くといいけど…。ほら、あんたも乗って」
美穂「わ、私も……」
卯月「行きましょう。ここでお別れするのは危険ですから」
美穂「そうだね。それじゃあ、失礼します…」
「お、卯月ちゃん久し振りッス!」
卯月「あ、古田さん!」
美穂「えーっと…」
卯月「美穂ちゃん、この方、研究所でゲッターの整備をやってる古田さんです」
古田「よろしくッス」
美穂「ど、どうも……」
古田「いやぁ卯月ちゃんの活躍は聞いてるッスよ~」
凛 「古田さん、世間話は後で良いから、出して」
古田「了解ッス!」
ブロロロロロ…ン
卯月「どこまで行くんですか?」
凛 「一先ずは研究所まで。あそこが一番安全だしね。あそこまで逃げきれれば、向こうも一度手を引いてくれると思うけど…」
美穂「引いてくれると、思う…?」
凛 「そこまで何事もない筈が…━━」
直後、ジープの背後からけたたましい破壊音が響く。
凛 「ないか。やっぱり」
美穂「メカザウルス…本物の……」
卯月「一体何処から……」
古田「地下ッスよ。あいつら、自分の力で仕留め損ねた時の為に自分のメカザウルスを近くに隠しておいてるんス」
爬虫人「フギャァァァァアア!!」
人型で頭に2匹のトカゲをくっ付けたメカザウルス・ドバが卯月達を乗せたジープに迫る。
古田「あのメカザウルス、ボロボロッスね~。所々継ぎ接ぎッスよ」
凛 「応急処置での修復ってことは、また単独で行動してる残党か。ゲッターなら何てことないけど…」
爬虫人『死ネ!死ネ!死ネェェェェェ!!』
ドバの胸から放たれるミサイルが、ジープの走るアスファルトを破壊していく。
凛 「車じゃ不利か!」
卯月「ど、どうするんですか!?このままじゃ逃げきれませんよ!」
凛 「予定変更だね。古田さん、想定Bの合流地点に!」
古田「了解ッス!」
卯月「合流地点、ですか?」
凛 「安心して。向こうがメカザウルスを使ってくるくらい、こっちも予想済みだよ。その為の下準備だったからね」
卯月「…?」
凛 「先ずは奴を市街地から遠ざける!」
古田「フルスロットルで行くッスからねー!しっかり掴まってて下さいよーー!」
~~~ 廃工場 ~~~
卯月「だいぶ郊外まで来ましたね。それに、ここは…」
凛 「ここは恐竜帝国との戦いの時に放棄されたんだ。今は誰も使ってない」
古田「中も入り組んでるし、逃げ込むには最適って訳ッスね!」
美穂「め、メカザウルスが来ちゃうよ!?」
凛 「大丈夫。それも計算の内だから。古田さん、次の角を右に」
古田「はいッス!」
美穂「きゃあ!」
卯月「美穂ちゃん、大丈夫?」
美穂「卯月ちゃん…うん、急にハンドルを切ったから、よろけちゃった」
凛 「もう少しだから、あとちょっと頑張って」
卯月「でも、さっきからどんどん奥に向かってますけど、この先って……」
最後の角を曲がり、行き止まりに突き当たり停車。
美穂「い、行き止まり!?」
卯月「どういうことですか?凛ちゃん!」
爬虫人『グゲゲ…。今度こソ、追い詰メた』
美穂「あぁ…今度こそ終わりです…」
卯月「本当にここで良かったんですか!?凛ちゃん!」
凛 「うん。ここで、大丈夫」
爬虫人『終ワリだァ!!』
ドバの頭部に収まったトカゲの片方から、その巨大な尻尾が振り下ろされる━━!
ギュルリィィィィィン…
爬虫人『ギャッ!?』
ジープに向かって真っ直ぐに振り下ろされた尻尾。その尻尾を上空から急降下してきた赤い機影が断ち切る。
卯月「このロボットは……」
ジープとドバの間に着地し、落下時の衝撃で発生した煙幕が晴れたあと、そこに姿を表したのは、
美穂「ゲッター…ロボ……?」
「りーん!どうだよ、アタシの登場のタイミングは?」
凛 「バッチリ。絶妙だったよ。奈緒」
卯月「……奈緒、ちゃん……?」
奈緒「へへっ……!」
加蓮「ま、空の上でずっと待機してたら、タイミングなんて測りたい放題だもんね?」
奈緒「ちょっ…それは言うなよ……」
爬虫人『忌まわしきハゲッターロボ!ゴール様の仇ィ!!』
加蓮「仇なんて言われても、アタシ達知らないんだけど」
奈緒「ドリルアームガン!」
爬虫人『グギャッ!?」』
赤いゲッター2の両腕のドリルの先端から放たれた光弾が、ドバを地へと平伏す。
凛 「奈緒。今の内に」
奈緒「分かってるって。宜しく頼みますよ!リーダー!」
奈緒「オープンゲット!!」
ゲッターが三機のゲットマシンに分かれる。
卯月「凛ちゃん……」
凛 「あれは、ネオゲッターロボ」
卯月「ネオゲッター?」
凛 「一年前の戦いで大破したゲッターの代わりに、その戦闘データを流用して開発された、正真正銘戦闘用の、新しいゲッターだよ」
卯月「新しいゲッター…。あれが…!」
卯月「うっ……!」スゥ…
凛 「卯月…!?その、顔の傷は……?」
卯月「ダイとの戦いで出来た傷です。普段は目立たないんですけど、今みたいに感情が昂ったりするとこんな風に……」
美穂「ライヴの時は、メイクで隠してるんですけど…」
凛 「卯月…。……」
一機の蒼いゲットマシン、ネオイーグル号が凛の目の前に降下してくる。
凛 「……」
来ていた衣服を脱いで、全身を隙なく覆う、蒼いスーツ一枚の姿になる。
美穂「パイロットスーツを、何時も着込んでるんですか?」
凛 「このゲッターはある事情でね、パイロットスーツを着ないと、乗れないから」
古田「はい、凛ちゃん。これ」
古田が手渡したのは、重厚な大きめのジェラルミンケース。
凛 「ありがとう」
素早くケースを開け、中に入っていた白い装甲板のようなものを、体の決められた位置に着けていく。
凛 「━━よし」
パイロットスーツを着込み、ネオイーグル号へ向かう。
卯月「凛ちゃん……」
凛 「卯月。よく見ていて」
卯月「は、い……?」
凛 「私達の戦いは、まだ終わってない」
卯月「っ!」
古田「卯月ちゃん達はこっちへ!ネオゲッターチームの戦いの邪魔にならないように避難するッスよ!」
卯月「ネオゲッターチーム…」
古田「そうッス。あの三人が今の人類を守る、最高のゲッターチームッスよ!」
━━━━━。
ネオイーグル号が上昇する。
凛 「お待たせ」
奈緒「凛の割りには、随分遅かったな?」
凛 「茶化さないで。積もる話もあったんだからさ」
奈緒「ま、そういうことにしといてやるよ」
加蓮「早く終わらせよう。夜更かしはお肌の天敵だよ」
凛 「…かもね。フォーメーション123、ネオゲッター1で片を着ける」
奈緒&加蓮「「了解(!)」」
凛を乗せた蒼いネオイーグル号を筆頭に、赤いネオジャガー号、黒っぽいネオベアー号が続く。
加蓮「!」
先ずはネオジャガー号とネオベアー号がドッキング。ネオベアー号のエンジンが伸びて脚になり、ネオジャガー号のエンジン部は背中の位置へと格納される。
奈緒「凛!」
凛 「いつでもいいよ!」
凛 「ゲッターチェンジ!!」
━━ガキィィン
最後にエンジンを両腕に、機首を頭部に変形させたネオイーグル号がドッキング。ゲッターの両目に火が灯り、合体を完了。
爬虫人『グギャァ……。出たナ、ネオゲッターロボ…!』
空中で合体を終えたネオゲッター1が地上に降臨する。
爬虫人『ウルギュァァァァァアア!!』
凛 「━━ショルダーミサイル!」
口から火炎、胸からミサイルと放たれたドバの一斉砲撃に、ネオゲッター1は、背中のバーニア上部を開いてミサイルを合わせる。
爬虫人『グギャァ……』
凛 「━━っ!」
砲撃とミサイルが弾けた、煙幕の中をネオゲッター1は怯むことなく駆ける。
━━ガンッ
肉薄と同時に右拳を突き出し、ドバを仰け反らせ、
ガンッ!
続けて左のローキック。ドバの足を払い、転倒させる。
凛 「━━っ!はぁああ!!」
倒れ伏したドバの鳩尾に、渾身の拳を突き入れる。
爬虫人『グギヤァァァアア!!』
加蓮「ヒューー!凛、やるぅ♪」
凛 「フッ。加蓮のリクエストに応えるよ。これでトドメを刺す!」
凛 「チェーンナックル!」
ドバに突き入れた拳をスライドさせながら射出。ドバを工場の壁面へと叩き付ける。
鎖で繋がれた拳は、役目を終えるとネオゲッター1の元へと戻った。
凛 「奈緒、加蓮。ネオジャガーとネオベアーのエネルギーをネオイーグルに!」
奈緒「おし、了解!」
加蓮「きっちり仕留めなよ?リーダー?」
凛 「分かってる!」
ネオゲッター1を巡るプラズマのエネルギーが両腕部へと収束。ネオゲッター1が両手を合わせることでそのエネルギーは凝縮され、大出力のプラズマ球となる。
凛 「プラズマ…サンダー!!」
ネオゲッター1は、それを槍投げの要領で投擲。実際の槍のように鋭く延びたプラズマ球は、立ち上がったばかりのドバの胴体を貫き、破壊した。
爬虫人『ゴ、ゴール様……ッ!』
最後の呟きを残し、メカザウルス・ドバは爆炎に包まれた。
━━━━━。
戦闘は終わった。
卯月(ネオ、ゲッターロボ。新しいゲッター…新しいゲッターチーム……)
━━凛 『私達の戦いは、まだ終わってない』
美穂「卯月ちゃん……」
卯月「凛ちゃん……!」
煌々と燃える炎の中に立つネオゲッター1を見上げる。
卯月「私は━━」
つづく
次回!
新たなるゲッター、ネオゲッターロボと、恐竜帝国残党との戦いを目の当たりにした卯月だったが、凛は、卯月がゲッターのパイロットに復帰することを拒絶する。
凛に拒絶され、アイドルとしても、プロデューサーへの答えの期日が迫るなか、アイドルプロダクションにメカザウルスが強襲する━━!
次回!ゲッターロボ×CG第2部
第2話『決意!戦いの渦へ!!』に、チェンジゲッター!