前編『Step on Stage』
~~~ 軌道衛星 ムーンシャドー ~~~
タッタッタッタッタッ……ウィ-ン
── 内、管制室。
李衣菜「晶葉ッ!!」
晶葉「おぉ!全員、無事に帰還出来たようだな」
李衣菜「うぇ?お、ぉ……って、無事?」
晶葉「卯月、わざわざ異世界まで莉嘉の迎えご苦労だった」
卯月「へ?あ、えぇ……私と言うより、ほとんど真ドラゴンのお陰ですから」
晶葉「それでも、我々ではどうすることも出来なかったさ。宣言通り、ホントに5分で帰ってきた時は度肝を抜いたでは済まされなかったぞ」
卯月「あはは…」
晶葉「そして、莉嘉」
莉嘉「え?…はいっ!」
晶葉「戦いの最中だったことは聞いてる。実に勇気ある決断だった。そして、私の達からの側では分からなかったが、ストーカ01の消滅の為、尽力してくれたのだろう?」
莉嘉「ストーカ01……そう言えば…」
かな子「元々、その為にゲートに飛び込んだんでしたっけ。結局こっちでも、無事に止められたのか、分からなかったですけど…」
美波「けど、私達の地球が無事みたいで、本当に良かった」
晶葉「3人の活躍に対しては、私1人が頭を下げた程度では足りないな。本当に、大義であった」
莉嘉「えへへ~…。アタシ、褒められるようなことしたのかな…?」
晶葉「あぁ。ちょっと見ない間に、一人前の顔付きにもなった」
莉嘉「へへ……イッシシ☆そーでしょー、そーでしょー」
加蓮「ちょっと~、晶葉~?」
奈緒「莉嘉達が立派なのは認めるけどさ、今地球がこうして無事なのは莉嘉達だけのお陰じゃないだろ~?」
晶葉「勿論、分かっているとも。真ゲッター、飛焔……その両チームがまず起ってくれた。そのお陰で真ドラゴンも覚醒出来たし、今日の地球がある。茜をはじめ、奈緒達にも感謝しているさ」
加蓮「そうそう。凛達も感謝しなよ~?アタシ達が戦ってなきゃ、真ドラゴンだって無事に完成しなかったんだから」
未央「モチモチ~♪後でバーガーでもポテトでも、何でも奢らせてよ。未央ちゃん、腕を振るっちゃうんだから!」
凛 「未央はお金出すだけでしょ」
未央「そ。”大盤振る舞い”でね?」
凛 「……まったく。調子に乗って、後で貸してって泣きついても知らないから」
未央「もぅ、しぶりんはツレないなぁ~。…っと、復活祝いだ、茜ちんも後でカレー食べに行こ?あーちゃんと、3人で!」
茜 「勿論ですとも!我らポジティブ・パッション!堂々の復活です!!」
美穂「ふふっ、茜ちゃん、嬉しそうだね?」
アーニャ「早く、3人揃う日が、来ると良いですね?」
アッハハハハハッ
李衣菜「……」
李衣菜「…じゃなくてぇ!!」
晶葉「む?どうした李衣菜。まだ何かあるのか?」
李衣菜「あるかないかで言えば大有りだよ!何でわざわざ、私達を帰還なんてさせたの!?」
晶葉「それは……莉嘉達も異世界から帰還したんだ。状況の整理は必要だろう?」
李衣菜「そんな悠長な…!木星が太陽だよ?!インベーダーが終結して、コーウェンとスティンガーが最終決戦って時に…!」
晶葉「落ち着け。熱が入りすぎて逆に要領が分からん…」
かな子「けど、何か不穏なことは聞こえましたね」
美波「えぇ、木星が太陽、とか…」
晶葉「……。確かに、今我々が置かれている状況は、とても余裕がある、と言う状況ではないが」
莉嘉「どう言うこと?」
晶葉「先の作戦に参加した、茜達にも改めて聞いてもらいたい。これが現状の木星だ」
大きなメインモニターに、展望台のカメラで捉えた木星を映し出す。
莉嘉「何、これ…?どーなっちゃってるの?」
アーニャ「これが、今の木星、です」
凛 「正確には、メタルビースト・ドラゴンの炉心によって強引に核爆発を誘発させられた、ゲッター太陽化した木星」
かな子「ゲッター太陽…!?」
美波「これが、木星…!」
晶葉「極僅かな速度だが、今も少しずつ、核分裂を繰り返しながら赤色巨星化している。そう遠くはない内に、このゲッター太陽は太陽系そのものを呑み込むだろう」
莉嘉「太陽系を呑み込むって…!?」
美穂「太陽って言うくらいなら、どこかで安定しないのかな?太陽系を呑み込む前に」
晶葉「先ず、あり得ないだろうな。本来の太陽と異なり、これは外部からの強い圧力で
強引に核分裂されている。それが何時まで続くかも想定出来ない上に、これは宇宙空間のゲッターエネルギーまで吸収しているゲッター太陽だ。どこまで大きくなるかなど、そもそも予測出来るものでもないだろう」
美穂「そんな…」
李衣菜「分かってるなら、そのゲッター太陽を何とかしなきゃ!!真ドラゴンもいるし、アークだって帰還した!今すぐにでも木星に乗り込んで、何とかしなきゃ!!」
かな子「確かに、帰ってきて早々ですけど、そんなこと言ってる余裕はなさそうですね…!」
莉嘉「うんっ!せっかくみんなで守った地球だ、早く何とかしなくちゃ!」
晶葉「落ち着け。帰還した再確認したが、ゲッターアークは無傷じゃないだろう?」
莉嘉「それは……そうだけど…」
晶葉「損傷しているのはアークだけじゃない。李衣菜達の真ゲッターだって、外装から作り直さなければならないくらい、状況は最悪の筈だ」
李衣菜「わ、私達は奥の手を使えば…!」
晶葉「周りをよく見ろ。目先の脅威に躍起になって視野狭窄になってどうする?これは単純にお前達だけの問題と言うわけじゃない。ゲッター太陽を打開する為にこそ、今は時間が必要なのだ」
奈緒「具体的には、どのくらいだ?」
晶葉「…半年、と言うのは、流石にゲッター太陽も待ってくれないか」
アーニャ「半年…?ゲッターを整備するにしても、随分な帰還に思えますね?」
晶葉「…うむ。まだ私の構想の話でしかないが…」 ピッ
言いつつ、次にスクリーンに映し出したのは、黒い画面に緑色のグリッドラインで描かれた、何かの設計図。
奈緒「何だ、こりゃ?」
加蓮「何かの設計図……晶葉が考えたの?何かゲットマシンみたいに見えるけど…」
李衣菜「全長……1,600km!?ど、どういう規模の、何なの!?」
晶葉「木星での作戦を想定した、超々弩級ゲッター線運用戦艦だ」
莉嘉「超々度級戦艦!?」
晶葉「木星での戦いでは、ゲッター太陽を鎮静化させることは勿論だが、集結したインベーダーとの戦いとなるだろう。真ドラゴンを中核としたゲッター軍団のみならず、我々としても量産型ドラゴンの部隊を編制し、充分に想定される状況に対応したい。その為にも、我々の移動要塞となる母艦の存在は必要不可欠だ」
美波「規模の問題は兎も角として、実現可能なものなの?こんなサイズ…」
晶葉「地球の重力下では不可能でも、月面ならば可能だ。また、ゲッター運用に適した小型艇を量産するよりは、寧ろ効率が良い」
奈緒「デカいおもちゃ箱に何でもかんでも構わず入れちまえってことか…」
晶葉「簡単に言ってしまえばな」
卯月「この姿、何となくですけど合体前のゲッターエンペラー、エンペラー1に似ています」
晶葉「そうなのか?ならば、竣工した暁には肖って”エンペラー級”とでも呼ばせてもらおうか」
李衣菜「それで、実際に完成にはどのくらい掛かるの?流石に半年ってのは、私達は待てないよ?」
晶葉「……3ヶ月」
李衣菜「3ヶ月…」
晶葉「それで必ず、何とかして見せる」
美波「大丈夫なの?さっきの想定の半分で…」
晶葉「しっかり準備させてもらえるなら、1年でも10年でも時間をかけるさ。しかしさっきも言った通り、悠長に構えている余裕がないことも理解はしている」
晶葉「日本政府だけじゃない、世界中の政府にも話は理解させる。この地球と言う極限られた範囲の中で、その持てる技術力の全てを注力させよう。必ず、3ヶ月で間に合わせて見せる」
晶葉「だから、今は人類に時間をくれ」
李衣菜「……」
加蓮「どーなの、リーナ?」
奈緒「そうだ、一番に晶葉に噛み付いたのはお前だぞ、李衣菜?」
李衣菜「そんな突っつかなくたって…」 チラッ
卯月「……」
李衣菜(ここまで晶葉の話を聞いてて、卯月達は何も言ってこない…。って事は晶葉の言う通り、少なくとも3ヶ月先迄は大丈夫ってこと…?)
卯月「……?」
李衣菜(…だとしたら、これ以上喰い下がっても仕方なさそう)
李衣菜「…分かったよ」
晶葉「感謝する。全ての支度が終わるまでは……折角だ、李衣菜達も羽を伸ばすと良いだろう」
奈緒「真上にゲッター太陽があるって言うのが気にならなきゃ、そうさせてもらうよ」
晶葉「なら、地球も恋しくなってきた頃だろう。それぞれ、ゲッターを早乙女研究所に置いたら、解散だ」
一同「「「了解!!」」」
トリアエズヤスミカ-カエッタラナニシマスカ?ワタシハヒサシブリニコッチノセカイノスイ-ツバイキングデモ……ワタシハ…
雑談をはじめながら退出していくアイドル・パイロット達。
晶葉「……行ったか。……ふぅ、何とか、時間を稼ぐことは出来たな」
残された晶葉は、ドッカリと椅子に腰を下ろして大型モニターを下げ、強化ガラスの向こうに拡がる宇宙に目を写す。
晶葉「ゲッターアークの戦いは、結局その目で見ることは出来なかったな。ゲッター線も、遂に私の手を離れた、か」
晶葉「だが、それでお役御免とは、流石に”ツレない”だろう?ゲッター」
ニヤリ、と口の端をつり上げた笑みを作る。
晶葉「折角ここまで来たんだ。その戦いの行く末を、お前が何処まで向かうのかを、それを見届ける権利くらい、私にだってある筈だろう?」
晶葉「その為の場所は、私自身で用意させてもらうさ。お前達の最前線の、1分1秒をつぶさに観測出来る、私専用の居場所をな」
晶葉「お前にとっては不要かもしれないが、私は最後まで付き合わせてもらおうぞ、ゲッター…!」
晶葉「くっくっくっ…!あっはっはっはっはっは──ッ!!」
そしてあっという間に、時は流れた──。
~~~ 街角 喫茶店 ~~~
奈緒「──…で、あれから2ヶ月半、か」
李衣菜「……」 チュ-ッ
奈緒「……お前ら、あれから何してた?」
加蓮「アタシぃ?アタシはほら、学校の友達としばらく振りにあったり?里奈とか唯達とカラオケ行ったり?もぅビックリしたよ~。楽曲も流行も、全然ついてけない。気分は浦島太郎って感じ?」
奈緒「そりゃぁまぁ、そうだな。あたしらが戦ってる間にも、この国は前に向かって進んでんだなぁって」
加蓮「ねぇ。ったく、誰のお陰で、今日まで平和を享受出来てんだか」
奈緒「言うなよ。そう言うの求めて戦ってたわけじゃないだろ?」
加蓮「そりゃぁそうだけど…。にしても」
奈緒「ん?」
加蓮「ここ、良い雰囲気だね。ちょっとタバコ臭いけど」
奈緒「おぉ、アイドル3人で集まっても、周り全然騒がないしな。こんな穴場、よく知ってたな、李衣菜」
李衣菜「ん?え、あぁ。うん…」
奈緒「ん?何だよ?」
李衣菜「何でも…!何でもないよ!」
李衣菜(ランドウと戦ってた頃に、政府の人に連れてきてもらった店とは言えないなぁ~。あの時のことは、加蓮も…)
李衣菜「ほら、3人で落ち着いて集まれる場所って言われてたから。ここなら、人も少ないかなって…」
奈緒「ま、何でも良いけどさ」
加蓮「それで?わざわざアタシ達集めて、今日はなにしようって訳?奈緒」
奈緒「あ、それはだな…。まぁこの2ヶ月くらい、チームで集まることもなかったし、何してたのかなっーて」
加蓮「何?つまりは寂しかったって?」
奈緒「さっ…!寂しかったとか、そんなんじゃないって…!李衣菜もほら!この間に、夏樹達と会ったりしてたんだろ?」
李衣菜「う~ん…」
奈緒「何だよ、会ってないのか?」
李衣菜「うん…。私も、連絡はしてみたんだけどサッパリでさぁ。何か忙しいみたい」
奈緒「…まぁ、向こうもアイドルだからな」
李衣菜「にしたってさ!この2ヶ月間一度も会えないなんて、何か可笑しい気がするんだけどなぁ」
奈緒「はっはっはっ。ま、運がなかったな」
李衣菜「え~、それで済む話~?」
加蓮「そう言う奈緒は、この2ヶ月何してたのさ?」
奈緒「あたしか?あたしはまぁ、色々だよ…」
加蓮「色々~?」
李衣菜「結局奈緒も暇してたんじゃないの~?……ぁ」
奈緒「どうした?」
李衣菜「いや、今外の方…」
奈緒「外~?」
加蓮「何かあったの?」
李衣菜「いやぁ一瞬だったし、人違いかも…」
加蓮「まぁまぁ、ここで日がな1日駄弁って時間使うのも勿体無いし、折角ならちょっと見てみようよ」
奈緒「何だよ?偉くノリ気じゃないか」
加蓮「そう?」
奈緒「あぁ。お前も李衣菜と同じものでも見たのか?」
加蓮「ん~、別にそう言う訳じゃないけど…」
奈緒「けど?」
加蓮「強いて言うなら、女の勘、かな?」
── 市街地。
加蓮「…それで?李衣菜が見かけたって言うのは」
李衣菜「うん。確かこっちの方に……あ、いた!」
奈緒「あれは…」
かな子「……」
奈緒「かな子、だな。珍しいな、1人か?」
李衣菜「ね。何かお洒落してるし、これから待ち合わせかな?」
かな子「……」 ソワソワ…
加蓮「……ふぅ~ん」
莉嘉「あっ!李衣菜、奈緒、加蓮!お~いッ!!」
李衣菜「おっ、莉嘉!それに…」
美波「莉嘉ちゃん…!かな子ちゃんに気付かれちゃう…!」
奈緒「美波まで…。2人揃って、かな子の尾行か?」
美波「び、尾行とか、そう言うんじゃないの…!ほら、莉嘉ちゃんが…」
莉嘉「あ~、美波アタシ1人に責任擦り付ける気~?話聞いた時は、アタシよりノリ気だった癖に~」
美波「ノリ気とかじゃ……ただアイドルとして、かな子ちゃんが節度ある付き合いが出来るかどうか…」
莉嘉「はいはい~。分かった分かった」
奈緒「節度ある付き合いって、待ち合わせの相手は男なのか!?」
美波「そ、それもまだ決まったわけじゃ…」
莉嘉「いやそれは間違いないって!あのかな子が、わざわざアタシに連絡してきて、ファッションチェックお願いしてくるなんて、女友達とかアイドル仲間と出掛けるなら、わざわざアドバイスなんて聞いてこないって」
加蓮「確かに、莉嘉の言う通りかもね」
李衣菜「しっかし、かな子がねぇ。相手はどんな人なんだろ」
奈緒「意外だよなぁ。そんな雰囲気一切出てなかったのに。…ってか、ずっと異世界にいたろ?一体何時から…」
加蓮「全部含めて、相手見たら分かるんじゃない?」
かな子「……ぁ」
莉嘉「来たみたいだよ!」
美波「っ……!」
奈緒「一番喰い気味だったな」
李衣菜「嘘…!あの人…」
かな子「こっちです。伊賀利さんっ!」
一同「「「伊賀利さん!?」」」
かな子「……?」
サッ
奈緒「大声出すなって」 ヒソヒソ…
加蓮「ゴメンって。でもビックリしたから」 ヒソヒソ…
奈緒「そりゃぁそうだけど…」
美波「2人とも、言い争いしないで。余計に見つかっちゃう」
李衣菜「確かに、美波が一番”その気”なのかも」
莉嘉「みんな静かに!かな子達の会話聞こえない!」
かな子「……??」
伊賀利「どうかしましたか?かな子さん」
かな子「あ、いえ……何でも」
伊賀利「? そうですか。にしても、申し訳ありません。お待たせしてしまったようで」
かな子「い、いえ…。私も、今来たばかりですから」
伊賀利「そうですか?だったら、良いのですが…」
かな子「それよりもほら、行きましょう?私、今日を楽しみにしてたんです」
伊賀利「楽しみに…?本当ですか!?」
かな子「あ…。す、スイーツバイキングを、です!伊賀利さんのオススメの店だって」
伊賀利「あ…。えぇ…!かな子さんも、きっと満足頂けると思います!」
かな子「ふふっ。本当に、私、こっちに戻ってきてから、スイーツを食べるの、ホント楽しみにしてて」
伊賀利「こっちに……そうですね。かな子さんは…」
かな子「伊賀利さん?」
伊賀利「正直に、自分が情けないです。日本自衛隊の、量産型ドラゴン軍団のエースみたいに、周囲の人は言ってくれますが、実際、前回の騒動でも、かな子さん達に頼るばかりで…。自分は、市民を守る為に志願したと言うのに…!」
かな子「…伊賀利さん」 ギュッ
伊賀利「か、かな子さん……手…」
かな子「それでも、伊賀利さんは一緒に戦ってくれたじゃないですか?地球に木星の衛星が衝突しようとした時も、李衣菜ちゃん達と一緒に戦ってくれたって、聞いてます。そうやって守ってくれるから、私達だって思いきって飛び込んでいけるし、どんな場所だって戦えるんです」
伊賀利「……」
かな子「次の戦いでは、はじめて一緒に戦えますね。その時になったら、きっと、民間人も、自衛隊もアイドルも。そんな垣根なんて関係なくて、みんながみんな生きるために戦いに行くと思うんです。だから、自衛隊だから、何て気負うのはやめましょう?」 ニコッ
伊賀利「気負う……そうですね。生きる為に、未来を掴む為に。皆、同じ想いの下戦う、仲間ですよね!」
かな子「はいっ。だから、今を楽しみましょう。…エスコート、してくれるんですよね?」
伊賀利「……はいっ!」
互いに手を取り合い、雑踏に消えていく2人。
莉嘉「…ぁ、2人が行っちゃう…!追い掛けなきゃ!」
奈緒「いや、流石にここまでだろ」
美波「えぇ!?」
李衣菜「美波がそんな驚くの…」
加蓮「これ以上は、馬に蹴られて何とやら、だよ」
奈緒「相手が伊賀利さんなら、爛れた関係にもならないだろ。色々真面目そうな人だし」
李衣菜「あんまり他人のプライベートをコソコソ覗き見るのもロックじゃないし。相手が分かったなら、私もここまでかな?」
莉嘉「でも…」
奈緒「晶葉が決めたあたし達の休暇も残り少ない、そんな貴重な1日を、かな子の後を着けるだけで無駄に使うつもりか?」
莉嘉「う~……ん…」
加蓮「よ~し、莉嘉は良い子だね。代わりにお姉さんがとっておきのパフェを奢ってあげる」
李衣菜「美波も良いよね?」
美波「……流石に、私1人になってまでストーキングなんて、出来ないよ」
奈緒「しっかし、まさかかな子がなぁ…」
莉嘉「ホントだよぉ~…。今の今まで全くそんな気配出さなかったのに、一体どこで…」
美波「まぁ、伊賀利さんは自衛隊員だし。今は量産型ドラゴン軍団の隊長もしていて、私達とも、だいぶ前から接点はあったと言えば、そうだけど…」
加蓮「ま、出会い何て何時どこであるかなんて、分かんないわけだしね」
李衣菜「そういう加蓮も、カナダのホスナー兄弟とやり取りしてるでしょ?」
莉嘉「えっ⁉」
加蓮「ちょっ…!どうしてそれを知って…!」
李衣菜「え?や~……ランドウと戦ってた頃から仲良さそうにしてたし、もしかしたらそうなのかぁって…」
加蓮「……ホントにそれだけ?」
奈緒「そんな詰め寄ってやるなよ。お前だって休憩室とかでやり取りしてるの隠したりもしてなかっただろ。盗み見るつもりなくたって勝手に目に入るって」
加蓮「う~…」
奈緒「遊びか友達か、加蓮の気持ちは知らないけどさ、本気ならちゃんとどっちかに決めとけよ」
加蓮「それは……分かってるけど…。ポテトもハンバーガーも、どっちも美味しいし…」
李衣菜「ははっ。しっかり胃袋掴まれたってわけだ」
加蓮「…そう言うリーナだって、ジャックとやり取りしてるっでしょ。そっちはどうなの?」
李衣菜「えぇ?別にジャックだけじゃなくてメリーとも連絡は取ってるし、ちょっと年の離れた男友達かお兄ちゃんみたいな感じっていうか…」
奈緒「ま、李衣菜に恋愛は縁遠いもんな」
李衣菜「そういう奈緒は?シュワルツと連絡とりあったりしてないの?」
奈緒「バッ…!な、ななな何でアタシが!あんなクソ真面目のガッツリ職業軍人みたいな奴なんかと…!連絡なんか取らなくちゃならないんだよ?」
李衣菜・加蓮((怪しい…))
莉嘉「…ねぇ、何かさ」
美波「うん、莉嘉ちゃん」
莉嘉「李衣菜達がかな子を庇ったのって、向こうは向こうで余裕があったから?」
美波「私達、置いてかれちゃったみたいね。私達が異世界に言ってる間に…。うぅん、それよりももっと前から…」
莉嘉(美波が遠い目をしてる…)
李衣菜「よぉ~し、人数も増えたことだし、気を取り直してカラオケでも行きますか!」
奈緒「お、李衣菜にしては良い案出すじゃんか」
李衣菜「私にしては、どう言うこと!?」
加蓮「まぁまぁ。そろそろ目立ってきたし、場所を変えるなら早くしよ?」
オイ、アレッテアイドルノ……エ?ナンカノサツエイ?ウソ-ワタシナンノヨウイモシテナイ-
李衣菜「そ、それもそうかも…」
奈緒「とにかくここから離れようぜ」
「ん?お~いっ!!」
李衣菜「やばっ!ファンに気付かれた?!」
奈緒「いや、あれは…」
友紀「やほー。何か人だかりが出来てると思ったら、何かの撮影?」
加蓮「だったら声掛けてきちゃダメでしょーが」
友紀「あ、それもそうか。あははっ!」
莉嘉「……」
友紀「ん?どったの?アタシの顔になんか付いてる?」
莉嘉「あっ…。いや、うぅん。何でもない」
莉嘉(そうだよ。こっちの世界の友紀で、向こうの世界とは、関係ない…)
美波(莉嘉ちゃん…)
友紀「撮影でもないってことは、みんな今フリーなんだよね?だったら、お姉さんと良いところ行かない?」
李衣菜「良いところ?」
友紀「東・京・ド・ー・ムッ♡」
加蓮「…言うと思った」
友紀「ねーねー、時間あるならいいでしょー?こんだけのアイドルが応援してくれれば、最近低迷中のキャッツも盛り返してくれると思うんだ!」
奈緒「そう言われてもなぁ…」
加蓮「折角の素敵なお誘いだけど、アタシ達も先約があるんだよねぇ」
友紀「そんなぁ~…。残念…」
莉嘉「……ねぇ、友紀」
友紀「ん、何~?」
莉嘉「変なこと聞くかもしれないんだけどさ、車弁慶って人の名前、聞いたことある?」
友紀「車弁慶?」
莉嘉「うん」
友紀「へぇ~、結構渋い選手知ってるね?」
莉嘉「渋い、選手…?」
友紀「うんっ。車弁慶と言えば、70年代キャッツを支えた、名捕手だよ!」
莉嘉「名、ほしゅ…?」
友紀「そ。分かるように言えば、キャッチャーだよ。名、って言っても、何かスゴい賞獲ったとかじゃないんだけどね。けど、安定したプレイングでチームの縁の下の力持ちで、同期のツワブキ投手とも名コンビって言われてたんだよ!」
莉嘉「そ、そうなんだ…」
美波(形は違っても、こうして小さな縁は繋がっているのね…)
友紀「何々~、お父さんから聞いたのかな?莉嘉ちゃん、やっぱりちょっと野球に興味ある?何なら、莉嘉ちゃんだけでもアタシに付き合ってくれて良いんだよ?」
莉嘉「あ、や……いやぁ……そう言うわけじゃ…」
奈緒「ほらほら、あたしらに絡んでる内に、開場時間過ぎちゃうんじゃないか?」
李衣菜「そうだよ。応援してるチームの試合なら、開幕から見なくっちゃ」
友紀「それもそうだね!ゴメンっ♪」
李衣菜「また今度誘ってよ。私も莉嘉も」
友紀「その時は絶対一緒に応援してよね?絶対だよ!」
タタッ-
奈緒「……嵐みたいな人だったな」
加蓮「そだね」
莉嘉「それじゃあアタシ達も行こう!こうしてる時間も勿体無いよ!」
奈緒「お、おう…」
李衣菜「そう言えば、さっき友紀に何か聞いてたみたいだけど、あれって何だったの?」
莉嘉「こっちの話!何かもうスッキリした!」
李衣菜「そっか…」
美波「ちょっと懐かしい気持ちになったの。ただ、それだけだから」
莉嘉「さぁ、アタシ達も目的地に向かって、レッツゴー!」
奈緒「で、お前が仕切るのかよ」
──。
~~~ レッスンルーム ~~~
「1、2、3、4、5、6、7、8……1、2、3、4、5、6、7、8…!」
卯月「はっ……はっ……はっ…!」
???「やっぱり、ここにいた」
卯月「え…?……あ、凛ちゃん。未央ちゃんも…」
凛 「お疲れ。相変わらず熱心だね?」
未央「熱心を通り越して真面目過ぎるんじゃないの~?」
凛 「気持ちは分かるけど。私達にとっては、久し振りのライブだ」
卯月「はい…。私や美穂ちゃんのピンク・チェック・スクール、凛ちゃん達のトライアドプリスに未央ちゃん達のポジティブパッション。それに…」
凛 「私達3人の、ニュージェネレーション」
未央「ホントひっさびさの出番だね~」
卯月「はい。でも、この為に戦ってきたんですよね。また私達、3人でステージに立つ。その為に」
未央「私達の戦いも、ようやく報われる時が来たって感じだよね!」
凛 「ちょっと気が早い気もするけど。まだインベーダーが残ってる。それに、ライブの日だって決戦の日ギリギリだ」
未央「いーじゃんいーじゃんっ!ゲッター軍団、決戦の前夜祭!パーッっと派手に、ぶちかましてやろうじゃん?」
卯月「そうですね。……」
未央「ん?それでしまむーは、楽しみすぎて落ち着かないのかい?」
卯月「私ですか?う~ん……それもありますけど…」
凛 「けど?」
卯月「正直、不安なんです。久し振りにファンの皆さんの前で、ちゃんと上手く、踊れるのかなって」
未央「あ~ぁ」
凛 「確かに。落ち着いて考えなくても、私達には色んなことがありすぎた」
未央「ねぇ。思えば遠いところまできたもんだ」
凛 「今は元の場所に戻ってきてるけど。私達が歩んできた道のりは、普通のアイドル、只の女子高生が歩むには、ちょっと特殊だったかも」
未央「ロボットのパイロットになって、世界を救うだけならまだしも、未来の宇宙に飛ばされたり、訳分かんないとこに跳ばされたり。ホント、ハチャメチャだったよね」
卯月「私は違う世界の自分にも会いました」
未央「そういえば、そんなこともあったね」
凛 「色んなことがありすぎて、アイドルの仕事からは、確かにかけ離れてたね」
卯月「はい。今度のステージも、プロデューサーやたくさんの人達が用意してくれた、大切な舞台です。たくさんの人の努力を、たくさんの人の楽しみや思い出を、残念なものにするなんて出来ない。そう思っちゃうと」
凛 「不安、にもなるか」
卯月「……はい」
未央「も~、しまむーもしぶりんも固いんだから。大丈夫、きっと何とかなるよ!昔取ったなんとやらって奴でさ!」
卯月「未央ちゃん…」
凛 「流石。何か月も真ドラゴンの中で寝てた人は言うことが違う」
未央「ちょ~っと~?人を3年寝太郎みたいに言わないでよ。私だって、真ドラゴンの中で黙ってたわけじゃないんだから」
凛 「その割にすんなりランドウに捕まって、簡単に利用されたりして…」
未央「うぅ~…!しぃまぁむ~!しぶりんがいじめる」
卯月「あはは…」
凛 「まぁでも、未央の言うことも間違ってはいないかも」
卯月「え?」
凛 「私達はアイドル。ファンの人達は勿論だけど、もっとたくさんの人達を笑顔にするために、ステージに立つ。それなら、先ずは自分からライブを楽しまないと」
卯月「自分から、ライブを楽しむ…」
未央「しまむーは優しいから、誰かの為にって悩むのはらしいけどさ?私達は何時だって、ぶっつけ本番で何とかしてきたじゃない?だから大丈夫、何とかなるって!」
凛 「あんまり褒められたことじゃないけどね。けど、今は未央の言う通り、私達3人、それに卯月には美穂や響子達、未央にも茜や藍子、私にも奈緒と加蓮がいる。これだけの仲間がいるんだ。ライブは絶対成功する」
卯月「それを伝えるために、わざわざ?」
未央「違う違う!だから練習もほどほどにして、みんなで遊びに行こって、友人のお誘いだよ!」
卯月「友人のお誘い…」
凛 「どうかな?根を詰めてばかりでも、仕方ないと思うけど?」
卯月「……はいっ。お2人の言う通りだと思います!」
未央「それじゃあ…!」
李衣菜「おぉ!加蓮の言った通り、ホントにいた」
凛 「……」
加蓮「でしょ~?あの3人は真面目なんだから。頼まれなくてもここにいるって」
奈緒「そうじゃなくても、ここには来るだろ。今度のライブを成功させたきゃな」
加蓮「むっ?それじゃあ奈緒は、アタシ達は次のライブ、テキトーでいいから遊び惚けてるって思ってるんだ?」
奈緒「なっ…!別にそこまでは言ってないだろ…!」
莉嘉「あはっ☆何はともあれ、これで誘う手間は省けたね」
美波「みんなでフリーって言うのも少ないし、折角ならカラオケでもどうかなって、みんなで話し合ってたんだけど…」
未央「これもゲッターの導きって奴?」
凛 「ただ、行動原理が重なっただけでしょ」
卯月「私は構いませんよ。たくさんのほうが、もっと楽しいですから!皆さ~んっ!!」
凛 「……やれやれ」
未央「へへっ!」
そして──、
李衣菜「──みんな、会場の様子見た?お客さんの入り、スんゴいよ~!」
── ライブ当日。
みく「相変わらず趣がないにゃ~。そう言うのはステージが始まってからのお楽しみでしょ」
李衣菜「いやぁ流石に久し振りだしさぁ?うぅ~ん、何かウズウズしちゃうなぁ~」
奈緒「ははっ。けど、今回ばかりは李衣菜に同意かもな」
加蓮「ふふっ、この時のためにずっと戦ってきたわけだしね。悔いのないライブにしなきゃね?」
茜 「ファンの皆さんを元気にして、私達も気合を入れていきましょう!!
美穂「うんっ!ライブを成功させて、次の決戦も勝つ!」
アーニャ「Да!最終決戦の前哨戦、ですね!」
かな子「お菓子もたくさん用意しましたから、一杯食べて、ライブに備えて下さいね!」
莉嘉「言われなくても、頂いちゃってるよ~☆」
ニオン「……ふん」
凛 「何スカしてんの。お手伝いの癖にさ」
ニオン「好きでやっているわけじゃない」
凛 「それこそ何言ってんの。恐竜帝国順化の為に協力してるんでしょ。ちゃんと真面目にやんなきゃ。そっちの王様も、ニオンの働きに期待してるんでしょ」
ニオン「だが、まだ全ての戦いが終わったわけじゃない」
凛 「それは、みんな分かってるよ。だけど、戦ってばかりだと、心が荒んでいくだけだよ」
ニオン「要は気分転換というわけか。……」
凛 「まだ何かある?」
ニオン「決戦だ決戦だと盛り上げているが、今木星に集結しているインベーダーも、ごく一部の部隊に過ぎん。恐竜帝国にしても、まだ全てのマシーンランドが、穏健派の意向に恭順したわけじゃない」
凛 「……」
ニオン「本当の戦いはこれからだぞ?お前達は、それが分かっているのか?」
凛 「答えはさっき言った。それに、私達は戦う為に生きてるわけじゃない」
ニオン「……」
凛 「そっちのマシーンランドでやったっていう、莉嘉達のステージの映像、見たよ」
ニオン「…そうか」
凛 「皆、心奪われてた。ハ虫人類が知らない、私達の文明に。みんな興味を持って、耳を傾けてくれてた」
ニオン「全てのハ虫人類が、貴様らの歌に耳を傾けるわけではないぞ」
凛 「それでも、そう言うところから歩み寄っていくことが出来る。武器を手に取らず、分かりあえる可能性があるのなら、恐竜帝国との闘いだって、長く続くことじゃない」
ニオン「…前向きだな」
凛 「卯月にも李衣菜にも莉嘉にも影響は受けたからね。…ちょっと、こっち来て」
ニオン「……ん?」
凛 「ネクタイが曲がってる。今のニオンは恐竜帝国の代表でもあるんだから。あんまりだらしない姿してると、そっちの責任者に言いつけるよ」
ニオン「まったく…。こんな息苦しいものを、ずっとつけていないとだめなのか?」
凛 「メリハリは大事だから。とにかくこっち向いて」
ニオン「くっ…!おい、顔が近い…!」
瑞樹「…春が青いわね」
鉄甲鬼「それが人間的な詩的表現なのか?」
瑞樹「そんなところね。そっちはどうかしら?仕事にはもう慣れた?」
鉄甲鬼「パイロットをしていた方がよっぽど気が楽だ。気を遣う事が多いのは、どうもな…」
瑞樹「パイロットじゃなくても、元は科学者だものね。これまで全く違う仕事、何て言うのは、気苦労も多いもの」
鉄甲鬼「だがまぁ悪くない。俺が本当に戦う必要がなくなるのならば、あぁして人間のように働くのもな。…お前の近くで」
瑞樹「あら、嬉しいことを言ってくれるじゃない。なら、仕事に慣れてきたりしたら、私の専属マネージャーとして雇っちゃおうかしら」
鉄甲鬼「望むところだ。…その為にも、先ずは」
瑞樹「えぇ、このライブを終らせて…」
菜々「木星に陣取ったインベーダーを、追い出しちゃいましょう!」
スタッフ「すいませ~ん、アイドルの皆さん。間もなく開演時間ですので、スタンバイ、お願いします」
全員「「「は~い(にゃ)っ!!」」」
未央「よーし!それじゃあ今回も、この美少女未央ちゃんの魅力で、ファンのみんなを悩殺しちゃいますか!ね、しまむー?」
卯月「はいっ♪悩殺できるかは分からないですけど、島村卯月、全力で頑張りますっ!!」
未央「その意気だ!パイロットこなして、一回り逞しくなった新生ニュージェネレーション、魅せていくよ!!」
凛 「それ、アイドルとして正しい姿なの?」
李衣菜「正しくても、そうじゃなくても、私達の変わらない帰るべき場所ってね!みんなに証明しに行くよ」
莉嘉「アイドル城ケ崎莉嘉、それにみんなも!ここにありってね☆」
ニオン「意気込みは分かったからとっとといけ。ファンが待っているんだろう?」
凛 「言われなくても。……」
ニオン「ん?」
凛 「随分前の約束。私達が何の為に戦ってきたか、しっかりと見せつけるから」
ニオン「裏方では、舞台は見えんがな」
凛 「ステージ裏にくらい響かせてみせるよ。私のサウンド。しっかりとその体に刻み付けて見せるから、覚悟してよね」
ニオン「面白い。戦闘以外で、俺を沸かせてみせると言うか!」
瑞樹「まったく、見せつけてくれるわね」
鉄甲鬼「俺も期待している」
瑞樹「あら?」
鉄甲鬼「お前がどんな歌を奏でるのか、どんな舞を見せてくれるのか。かつて俺に言って聞かせてくれたものがどんなものなのかを、しかと見届けさせてもらう」
瑞樹「……これは失敗出来なくなっちゃったわね」
かな子(2人ともいいなぁ…。伊賀利さん、見に来てくれてるかな…)
美波(かな子ちゃん、伊賀利さんのこと考えてるよね、絶対…)
李衣菜「それじゃあみんな~、気合入れていくよ~!!)
奈緒(だから、お前が締めんのかよ!)
莉嘉「誰の思い出にも残る、最高のステージを作っちゃおー!」
茜・アーニャ・美穂「「「おーッ!!」」」
加蓮「結局、まとまりがないんだから…」 ハァ…
ステージの幕が上がる──。
───。
~~~ 数日後、月面軌道直下 ~~~
月面を眼下に置き、真ドラゴンを先頭にしたゲッター軍団が行く。
未央「ふぃ~…。いいライブだった…」
凛 「まだ言ってる」
未央「だって、本当に最高のライブだったでしょ?」
卯月「そうですね。観客も盛り上がって会場が一体になって……忘れられないステージになりました」
加蓮「最後のいい思い出になった?」
奈緒「おいおい。さすがに縁起でもないだろ。あたし達のライブは、あれで最後なんかじゃない」
加蓮「分かってるって。”あれ以上”のライブを、アタシ達のアイドル活動を続けていく為にも、取り敢えず頭の上のたんこぶを潰しに行く…!」
かな子「たんこぶって、ゲッター太陽が、ですかぁ?」
莉嘉「あはっ☆確かにどデカイたんこぶだ」
瑞樹「太陽何て一つで十分だものね」
みく「こっからはみく達もパイロット!…ほら、見えてきたにゃ!」
卯月「あれが…!」
ゲッター軍団の進路上に、巨大な影が姿を現す。それこそは、
卯月「ゲッター戦艦!!」
李衣菜「おっきい…」
菜々「まさか、本当に3か月で完成させるなんて…」
瑞樹「晶葉ちゃんをはじめとした、世界中の科学者達が力を結集した結果ね」
美波「けどこのサイズ……一体ゲッターが何機積めるのか…」
晶葉『想定で15万機以上だな』
茜 「晶葉さん!!」
晶葉『待たせて悪かったな。こっちは何時でも発進出来る。今ハッチを開けるから、お前達も着艦してくれ』
卯月「了解です」
李衣菜「そういや、宇宙で着艦するなんて初めてだけど…」
奈緒「おい、一気に不安になるようなこと言うなよ」
晶葉『相対速度だけ気を付けてればなんてことないさ』
李衣菜「まぁなるようになるって!当たって砕けろだ!」
加蓮「だから、当たって砕けたら駄目なんだって」
──。
~~~ ゲッター戦艦 第一艦橋 ~~~
ブォン
卯月「……」
莉嘉「……おぉ…」
晶葉「ようこそ。ゲッター戦艦”エンペラー級”1番艦、その第1艦橋へ」
菜々「…えっと、ナナ達……格納庫に着艦して、晶葉ちゃんの言うとおりに何か、白くて丸いパネルみたいなのに乗った、んですよね…?そしたら…」
瑞樹「一瞬で第1艦橋だなんて、古いSF映画ね」
晶葉「皆が入ったゲッター用の格納庫からここまでは、日本の丁度半分程の距離があるからな。通常の手段で移動していては、日が暮れてしまうからな」
奈緒「だからワープパネルって、飛躍しすぎだろ」
加蓮「奈緒はこういうの嬉しいんでしょ?」
奈緒「いや、実際に体験するとなるとな…」
晶葉「ん?ところで、1人足りないようだが…」
加蓮「……」
晶葉「?」
かな子「李衣菜ちゃんなら、医務室です」
晶葉「医務室だと?」
奈緒「あの馬鹿、格納庫に真ゲッターで頭から突っ込みやがって…」
晶葉「成る程。医務室もいきなり稼働といったところか」
未央「それで?まさかアキっちがこの艦の艦長?」
晶葉「いやいや。クルーも含め、今は打ち合わせを終えてこっちに向かっている。そろそろ戻ってくる頃だろう」
卯月「クルー?」
凛 「艦長の他にも、オペレーターとか、操舵の人達、まとめてこの艦を制御している人達の事だよ」
卯月「へぇ。一体どんな人なんでしょうね?」
晶葉「お前達もよく知っている人間だよ」
未央「へ?」
アーニャ「アーニャ達も知っている、ですか?」
美波「だとすると、またアイドル?」
奈緒「いやいやいや。ロボットの操縦ならともかく、戦艦を動かすのは流石に無理だって」
加蓮「敢えて、晶葉の言い方が意味深でも、大方、テキサスの艦長でしょ」
晶葉「さて、到着してからのお楽しみだな」 クックックッ
ブォン
「すいません。遅くなりました」
未央「え?」
晶葉「噂をすれば、艦長殿のご到着だ」
茜 「艦長、ですか…?この声って…!」
藍子「ふふっ、ビックリしちゃいましたか?未央ちゃん、茜ちゃん」
未央「あーちゃん……って、えぇ!?」
美穂「藍子ちゃんが、ゲッター戦艦の艦長さん?!」
藍子「はい。ふふっ、みんなを驚かせようと思って、黙ってました♪」
未央「い、いやでも、艦長ったって、そんな簡単に…」
晶葉「お前達が真ドラゴンの中にいる間に、色々頑張ってたんだぞ。テキサス艦長の下に、直接手解きを受けに行ったりな」
茜 「そうだったんですか!」
藍子「茜ちゃんもパイロットの方で待機になってたから分からなかったよね。ふふっ、センスがいいって褒められたんですよ?」
未央「センスがいいって、本当に…」
菜々「けど、艦長服姿も様になってますね」
藍子「ありがとうございますっ。以前にお仕事で使用したものを参考にさせてもらったんです」
晶葉「他のクルー達は?」
藍子「皆さん、もうすぐ来ると思いますよ」
美波「他のクルー?」
みく「ちょっと待つにゃ。艦長が藍子ちゃんと言うことは…」
「おぅ、オペレーターから操舵まで、お前らと同じアイドルだよ」
みく「やっぱり!」
夏樹「…っと、李衣菜の姿が見当たらないな。藍子と一緒で、ビックリさせてやろうと思ったのに」
加蓮「それなら、後で医務室にお見舞いに行ってあげて」
拓海「んだよ。また怪我してんのか。相変わらずだな」
奈緒「せっかくだから背中叩いてくれよ。パイロットとしてもっと自覚を持てって」
晶葉「夏樹は艦の火器管制、拓海は操舵を担当してもらう」
卯月「もしかして、あっちのバイクみたいになってるシートが…」
拓海「おぅ、アタシの操舵席だ。イかすだろ?」
卯月「えーっと……その…」
夏樹「バイク感覚で操舵出来ても、1人で乗ってるわけじゃないんだぞ?」
拓海「分ーってるって。デカいバイクを転がすようなもんだろ?任せとけって」
夏樹「…ホントに分かってんのかね」
瑞樹「それで、後ろの貴女達は…」
マキノ「えぇ。紹介が遅れてしまったわね」
泉 「まぁ、目立つつもりもなかったけど」
晶葉「彼女達にはオペレーティングをお願いしている」
泉 「と言っても、私は艦内管制で、みんなとあんまり関係ないと思うけど…」
マキノ「戦闘管制は私が担当するから。何方かと言うと私の方がお世話になるわね」
未央「オッケーオッケー!どっちにしても頼りにしてるよ。マキノン、イズミン!」
藍子「それでは、これよりゲッター戦艦は起動シーケンスに入ります。超弩級ゲッター炉心の臨界後、およそ一時間後には、木星を目指し、空間跳躍を行います」
奈緒「お、おいおい…!ミーティングもなしに、いきなり飛び込むのかよ…!」
晶葉「今更そんなことしなくても、目的は分かっているだろう?」
卯月「はいっ!私達の真ゲッタードラゴンに、このゲッター戦艦があれば、大丈夫です!」
凛 「2機のゲッター……正確には1機と1隻のゲッター線を集中させ、暴走状態のゲッター太陽を鎮静化させる」
未央「その後、真ドラゴンとゲッター戦艦で分けて太陽化したエネルギーを吸収すれば、事態は解決だ」
美波「そうやって言えば簡単に聞こえるけど…」
加蓮「実際は数万を超えるインベーダーの大群に、スティンガーとコーウェンもいる。ゲッター太陽に近付くのだって、簡単な話じゃないよ」
李衣菜「ゲッター太陽を真ドラゴンとゲッター戦艦のゲッタービーム射程圏内に入れるまで、護衛することが私達の目的ってことだね?」
晶葉「そう言うことだ」
藍子「パイロット各員は、それぞれのゲッターに搭乗して待機を。泉さん」
泉 「はい」
藍子「機関室に伝達。ゲッター炉心を起動させて下さい」
泉 「了解です。──機関室、聞こえますか」
かな子「それじゃあ、私達は格納庫に移動して…」
ビーーーーーッ ビーーーーーッ
莉嘉「何!?」
晶葉「予想していたが、随分早かったな」
加蓮「これだけの規模、超弩級ってことは、それだけ膨大なゲッター線を放出するってことだしね」
凛 「むしろ、今日まで隠し通せたのが不思議ってトコだね」
卯月「──っ!」
卯月・李衣菜・莉嘉「「「インベーダーッ!!」」」
つづく
予告
遂に幕を開ける、インベーダーとの最終決戦。
人類が、恐竜帝国が、地球を守る為団結する中、見送られた卯月達ゲッター軍団は一路、ゲッター太陽と化した木星へと飛ぶ。
壮絶な生存競争の果て、生き残るのは人類か、インベーダーか。
果たして、この戦いの先に待ち受けるモノとは──!?
次回、最終回
『大決戦!!』に、チェンジゲッター!