ゲッターロボサーガ デレマス版   作:E.T.c

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第21話『胡蝶の夢』

~~~ 早朝 寮室 ~~~

 

「━━…うぅ…ん……んっ…」

 

ピピピッ ピピピッ ピピピッ カチッ

 

「うぅ~…ん……。…よしっ!」 ムクリ

 

ゆっくりと身を起こして伸びを1つ。カーテンを開け、日差しを受け、

 

響子「ん…んん…!今日もいいお天気!このお日様に負けないくらい、私も頑張らないとっ」

 

歯磨き、着替え、洗顔…。素早く身支度を終え部屋を出る。

 

━━ 食堂。

 

響子「おはようございます!」

寮母「おっ、おはよう、響子ちゃん。今日も朝から仕事かい?」

響子「いえ、今日は夕方からなんです!だから、学校に行く前に事務所に寄って、プロデューサーさんにお弁当を渡さないと」

寮母「忙しいね。こっちの支度は終わってるから、台所は好きに使いな」

響子「ありがとうございます!」 トタトタッ

 

小走りに台所に入り、昨日の打ちに作っておいたお弁当用のおかずを冷蔵庫から取り出して弁当作りを開始する。

 

寮母「相変わらずの手際だね~、ホント。響子ちゃんをお嫁さんに貰う男が羨ましいよ」

響子「えへへ…。寮母さんにそう言ってもらえると、嬉しいですっ♪」

寮母「ホント、何だってアタシは女に生まれちまったんだろうね」

響子「で、でも、寮母さんが毎日作ってくれるご飯は、私なんかじゃ足元にも及ばないくらい美味しいですし、遅い時間に帰ってもお夜食用意してくれたり…。寮母さんがいなかったら、私もみんな、困っちゃいますよ!」

寮母「あはは!そうかい?ま、それしか取り柄がないからねぇ」

響子「この前晩御飯に出してくれた煮物の作り方、今度のお休みに教えてもらっていいですか?」

寮母「勿論さ。響子ちゃんになら、アタシの知ってる料理の作り方、全部教えたっていいんだから」

響子「ホントですか!?」

寮母「あぁ。そしたら、響子ちゃんが2代目寮母さんで、アタシャ引退だね」

響子「そんな…。出来ますかね?」

寮母「あはははっ!アタシにだって出来るんだから、響子ちゃんならみんなのお母さんになれるよ!」

響子「みんなのお母さんに……」

 

ガチャッ

 

美穂「ふわぁ…おはようございまし……あふっ…」

 

寮母「おはよ。って言っても、まだお眠さんだね」

響子「美穂ちゃん!こっちに帰ってきてたんですか?」

美穂「うん…。今日は哨戒任務のシフトじゃないから…。溜まった着替えとか取り替えるのと、ついでに……」

寮母「その年で軍人の真似事は堪えるね。昨日なんて夜遅くに帰ってきたんだよ」

響子「そうなの?」

美穂「寮に帰ろうと思って支度してたら、出撃の警報が鳴っちゃって…」

響子「大変なんだね…」

寮母「ささ、朝御飯は出来てるよ。先ずは1日のエネルギーを摂って、シャキッとしな」

美穂「はひぃ…。ありがとうございま…ふぅ……」 Zz…

寮母「コイツはダメだね。今日も学校で居眠りかい?」

響子「あ、あはは…」

寮母「…と、響子ちゃん、時間はいいのかい?」

響子「ホント…!急いで準備しちゃわないと…!」 パタパタ…

寮母「あ!ゆっくり食べてる時間はないだろうけど、ほら、おむすびくらい持っていきな」

響子「よ、用意がいいんですね…」

寮母「時間ない娘向けだよ。ここには、時間にルーズな娘も多いからねぇ」

響子「あははっ。ありがとうございます!」

 

響子「それじゃ、行ってきます!」

 

寮母「ん。いってらっしゃい」

美穂「いってらっしゃい、響子ちゃん。……」 Zzz…

寮母「美穂ちゃんも!あんまりゆっくりしてた遅刻だよ!」

美穂「あぁ…!はいぃ…!」

 

タッタッタッ…━━。

 

~~~ 百鬼要塞 ~~~

 

胡蝶鬼「……」

 

鉄甲鬼「また諜報員の持ち帰った映像鑑賞か」

胡蝶鬼「あぁ。アンタは、何だい?虫の居所が悪そうだね?」

鉄甲鬼「人間共から手に入れたゲッタードラゴンの量産に平行して、百鬼メカも量産される事になった」

胡蝶鬼「へぇ?ま、人間共の技術で出来たものよりも、そっちのがノウハウがあるんだ。当然と言えば当然さね」

鉄甲鬼「一角鬼達が魂を掛けて操ったものを、能力の劣る将兵風情が乗りこなせる筈があるまい」

胡蝶鬼「あっははは!何だい?そんな事で腹を立ててたのかい?」

鉄甲鬼「当然だ!百鬼メカとは云わば我々の分身。それを易々と兵達に与えようとは…。ブライ大帝も何を考えておられるのか…」

胡蝶鬼「そんなもの、連中との決戦に決まってんだろ?この日本とか言う小国を支配するにも、もう何人も百鬼衆を犠牲にしてるんだからねぇ」

鉄甲鬼「手数を揃えたところで、小兵の乗った百鬼メカであのゲッターを打ち破れるとでも?」

胡蝶鬼「さぁね?もとより、百鬼衆ったって戦術知略は専門じゃないんだ」

胡蝶鬼「勝負は時の運。なる時は何とかなるもんだよ」

鉄甲鬼「相も変わらず悠長な事を…」

 

画面『━━♪』

 

鉄甲鬼「こやつは…!」

胡蝶鬼「ん?人間に知り合いがいるのかい?」

鉄甲鬼「…以前、早乙女研究所を襲撃した時に会った、確か名前は…川島瑞樹と言ったか」

胡蝶鬼「へぇ?そんじゃ、ゲッターのパイロットってのは、アイドルもやってるもんなんだね」

鉄甲鬼「あいどる?」

胡蝶鬼「こうやって歌って踊って、同じ人間の男共を喜ばせる連中の事だよ。人間はそう呼んでるらしいね」

鉄甲鬼「ふむ…。アイドル…」

 

瑞樹『━━何が待ってるの?迷ったその先、行ってみたい━━♪』

 

胡蝶鬼「ふふっ、アンタも興味が湧いてきたかい?」

鉄甲鬼「まさか。俺が興味があるのは、あくまでゲッターに乗った連中だ」

胡蝶鬼「……はぁ…。まったく、何でここの連中と来たら、揃いも揃って頭ン中が戦いばっかなのかね」 スクッ

鉄甲鬼「どこに行く?」

胡蝶鬼「ちょっとした気分転換さ。戦い以外の話題しかない男共の相手なんてしてたら、こっちの気が滅入っちまうよ」

 

胡蝶鬼「じゃあね。そっちもせいぜい頑張るんだよ」 ヒラヒラ

 

鉄甲鬼「…何を考えている…?胡蝶鬼…━━」

 

~~~ 夕方 某ビル 楽屋 ~~~

 

響子「……」

智絵里「……」

 

ガチャッ

 

新P「おう。何だ?今をときめくアイドルが2人揃って。死刑執行直前の囚人みてぇな顔しやがって」

響子「プロデューサーさん…。質悪いですよ」

新P「つったって、もういつもの事だろうが。いい加減、お前らも慣れろよ」

響子「……慣れたくありません」

新P「はぁ…。やれやれだな。ったく」

智絵里「それで…!プロデューサーさん!卯月ちゃん達は…」

新P「今連絡が来たトコだ。戦闘は無事終了。卯月も美穂も、もちろんかな子も。誰1人ケガ人もなく、今こっちに向かってるそうだ」

智絵里「良かったぁ……」 ホッ…

響子「智絵里ちゃん達のユニット『ピンキーキュート』のデビューが、流れなくて良かった~」

新P「そこは俺も一安心ってトコだがな。卯月達の到着を待つ都合上、先方に話して歌唱順も入れ替えってもらった」

新P「智絵里達は、トリだ」

智絵里「と、トリ…ですか…?」

響子「わっ…。責任重大ですね…」

新P「向こうもこっちの都合を汲んでくれた上で、本来トリを飾るはずだったアーティストも納得してくれた上で、決まった事だ」

新P「そうそう融通なんて利かせられねぇ。覚悟を決めんだな」

智絵里「…はいっ」

新P「へっ、緒方にしちゃぁいい返事だ」

響子「智絵里ちゃん、ホントに大丈夫?」

智絵里「だ、大丈夫…ですっ!私達がこうやっている時間も、卯月ちゃん達が守ってくれた時間だから…!だから、私もちゃんと、応えなきゃ…!」

智絵里「だから、きっと…大丈夫…!」

新P「おう、その意気だ。心配ねぇ。今日この日まで、緒方は人一倍努力してきたんだ。努力は人を裏切らねぇ」

新P「だから、自分を信じろ。緒方!」

智絵里「…はい!」

響子「頑張ってね、智絵里ちゃん!」

新P「おいおい、他人事みてぇに言ってるが、頑張んのは五十嵐も一緒だろが」

響子「え?私ですか?」

新P「緒方の前には五十嵐のステージがあるのを忘れたか?」

新P「五十嵐がソロで立つのは今日が初だからな。後輩の心配すんのは分かるが、自分の事に気を回したって誰も責めねぇぜ」

響子「あははは…。ソロの事は、勿論覚えてますけど、やっぱり卯月ちゃんも美穂ちゃんも立つ、みんなのステージの方が気になりますよ!」

響子「もしステージが失敗しちゃったら、きっとみんなと同じくらい悔しいし、大成功なら、みんなで喜びを分かち合いたいじゃないですか!」

新P「お人好しだな。五十嵐は」

響子「えへへ…。それが私の取り柄ですからっ♪」

新P「しっかし、上手く事が運んでくれたもんだ。島村達も収録時間ピッタリに納めてくれたみてぇだしよ」

智絵里「パイロットのお仕事もして、アイドルまでなんて…。大変じゃないんでしょうか」

響子「きっとスゴく大変なんでしょうけど、私達には全然、そういう素振りを見せたりはしませんよね」

新P「俺達に心配かけさせたくねぇってのはあるんだろうな。ともかく、トンでもねぇ奴等だ」

新P「今度、政府から表彰されるみてぇだしな」

響子「…何だか、どんどん遠くの存在になってるような気がします」

新P「不安か?」

響子「はい…。卯月ちゃん達がどんどん遠くに行っちゃって、私達の手の届かないところに行っちゃうんじゃないかって。そんな気がするんです」

新P「大丈夫だ」

響子「プロデューサーさん…」

新P「アイツらは自分が何のために戦ってるかちゃんと分かってるよ。アイツらが戦えてんのは、帰ってくる場所がちゃんとあるからだ。それは、家とか学校とかそういう当たり前のところだけじゃねぇ。ここも、だ。分かるな?」

響子「…はい」

新P「だから、余計な心配なんかすんじゃねぇ。俺達はただ、何でもねぇって帰ってきた島村や小日向、三村。あと多田もか。ソイツらに、何でもねぇようにおかえり、って言ってやりゃぁいいんだ」

響子「━━はいっ!」

 

スタッフ「島村卯月さんと、小日向美穂さん、到着しましたァ!」

 

智絵里「…思ったより、早い…?」

響子「スタッフさんの人、何か慌ててましたね。もしかして…」

新P「アイツら…、またゲッターで飛んできやがったな!交通整理大変だっつってんのに…!」

 

━━そして、収録終了。

 

~~~ 寮前 ~~~

 

響子「本当に、今日はお疲れ様でした!」

美穂「お疲れ様ですっ、プロデューサーさん!」

新P「お疲れはお前らの方だろうが。特に小日向、出撃直後の撮影だってのに、失敗もなしでよく頑張ったな」

美穂「い、いえ…。プロデューサーさんが気を遣ってくれて、歌唱順を入れ替えてくれたお陰です。それで、緊張する前に、少しリラックス出来て…」

新P「そか。ま、俺としちゃ今日本がどうなってるかも分かるんだが、アイドルの方にもちゃんと精を出してもらわねぇとよ」

美穂「はい…!頑張ります!」

新P「仕事の方も順調に増えてきてる。テレビを作ってる側も、百鬼帝国なんぞに負けられねぇって息巻いてる」

響子「学校でもどこでも、不安や心配を抱いてる人が沢山いますよね…」

新P「それを和らげるのがお前達アイドルの仕事だ。俺達の仕事は、今の時代だからこそ活きるんだよ」

響子「分かりますっ!戦場に出て戦うだけじゃない、みんなの日常を守るお仕事ですよね?」

新P「そういうこった。これからも頼むぞ、2人共」

響子「はい!」

美穂「こちらの方こそ、よろしくお願いします‼」

新P「おう。…んと、それと五十嵐、ほら」 つ弁当箱。

響子「あ、どうも。今日も完食ですか?」

新P「五十嵐のは店に出てるもんと違って上手いからな」

響子「プロデューサーさんって、いつも残さず食べてくれるから、作りがいがありますっ♪」

新P「また明日も頼むぜ。つっても、時間がねぇなら、無理しなくてもいいからな」

響子「はいっ♪よろしくお願いしますね!それじゃあ、また…」

美穂「おやすみなさい、プロデューサーさん!」

新P「おう、2人も、ゆっくり休んでくれ」

 

ブロォォ…ン

 

響子「……」

美穂「…ふふっ」

響子「な、何…?」

美穂「あ、ごめんね?でも、よかったね、お弁当褒めてもらって」

響子「こ、これは…。あの人、放っておくとインスタントとか、そういう、体に悪いものばかり食べちゃうから…。だから、別に変な意味なんてないですよ?」

美穂「ふふ。そう言うことにしておいてあげる」

響子「あー…、ほら!今日はもう遅いですし、早く部屋に戻って休みましょう?明日の支度とかもしておかないと…」

美穂「あ!響子ちゃん待って!」

 

タッタッタッ… ガチャリ━━。

 

~~~ 繁華街 ~~~

 

男A「よぉよぉねぇちゃん~。1人寂しく、何してんの~?」

男B「もしかしてカレシにフラれた~?ならさ~、俺らと遊ばない~?」

 

女 「……」 ツカツカ

 

男A「おいおいシカトかよ~?」

男B「全ッ然退屈させないからさァ~。ね、ちょっとくらい時間あるでしょ?」

 

女 「……」

 

男A「おい、マジ聞こえてんのか?ねぇちゃんよぉ!」

男B「金髪きれいだねぇ~。ひょっとして外人さんかな?」

 

女 「……」 チラッ チラッ

女 「何だい?ひょっとして、アタシに話しかけてたのか?」

男A「他に誰がいるってんだよ?」

女 「悪いねぇ。てっきりアタシの後ろに、とんだアバズレでもいたのかと思ってさ」

男A「アァン!?ねぇちゃん舐めてんのか?」

男B「よせよ!折角振り向いてもらえたのに、またチャンスを棒に振る気か?」

女 「ははっ!悪いけど、三ピンと飲む気はないよ。声掛けるんなら、自分の顔と位をよく考えるんだね」

男A「テメェ‼」

男B「よせって!女相手に警察沙汰とか勘弁だぜ!お前今月何回目だよ!?」

男A「っるせぇ!ここまでコケにされて黙って引き下がれるかよ!」

男B「だーかーらー━━!」

 

「おい」

 

男A「あん?…━━ヘブッ」

 

打ち上げた拳が、男Aの体を跳ね上げて吹き飛ばす。

 

男B「ひっ…!あ…あっ…!」

「おい」

男B「ひぃ…っ!は、はいぃ…!」

「とっとと失せろ」 ギロッ

男B「は、はひぃ~~!し、失礼しましたぁ~~~‼」 ダァーーーッ

 

「…ったく、あんな輩がまだのさばってんだな。見ててイラつくぜ」

「そこの、手ェ出されちゃいねぇか?」

女 「お陰様でね。何かされそうになった手前で、アンタが助けてくれたからねぇ」

「そうか。そいつぁ良かった」

女 「で?何も見返りなしで茶々入れに来た訳じゃないんだろ?」

「まぁな。へっ」

女 「何をしてほしいんだい?アンタならそうだね…。顔は悪くないから、お酌くらいなら付き合ってやるよ」

「まさか。酒は好かねぇんだ。飲み飽きてるからよ」 ニッ

「先ずはご挨拶だ。俺は、こういうもんでね」 つ名刺

女 「…?芸能プロダクション…アイドルプロデューサー…?」

 

新P「そう。アイドル、やってみるつもりはねぇか?」

 

━━。

 

新P「━━…と、言うわけで、これから俺んとこでアイドル活動していく事になった、胡蝶蘭さんだ」

胡蝶「よろしく頼むよ」

 

一同「「「(よ、)よろしくお願いします!」」」

 

響子(スッゴい…キレイな人…)

 

胡蝶「…何だい?」

響子「あっ、いえ…何でもない、です…」

胡蝶「……ふぅん」

新P「あー、胡蝶は田舎から出てきたばっからしくてな、まだこの辺りの事に疎い。最近の流行りとか、まぁ若者のお前らが上手くフォローしてくれ」

卯月「分かりました!それで、お休みの日に呼んだんですね」

新P「あぁ。正直悪いと思ったんだが、顔合わせは早い方がいいのと、親睦を深めるなら丁度いいと思ってな」

新P「尤も、お前らの方で他に先客がなきゃ、の話だがな」

響子「私の方は大丈夫ですよ!お部屋のお掃除したかったな、くらいで」

智絵里「私も…、予定とか、全然決めてなかったです」

かな子「私達も同じだよね?」

美穂「そうだね。この間出撃があったばっかりで、警戒待機も瑞樹さん達と李衣菜ちゃん達がやってくれてるから…」

胡蝶「…出撃……?」

新P「そういや言ってなかったか。そっちにいる島村と三村、小日向。あと今日はここにゃいねぇが多田李衣菜って奴も、みんなまとめてゲッターロボのパイロットをやってる」

胡蝶「こんな子供達がかい?」

卯月「えへへ…。自分でも不釣り合いな事してる、って思う事はあるんですけど…」

胡蝶「何か理由があるんだね?」

卯月「はいっ!明日のため、みんなのために頑張るって決めたんです!ね?」

かな子「はい♪」

美穂「うんっ!」

胡蝶「へぇ、何にせよスゴいじゃないのさ。言って簡単に出来る事じゃないよ」

新P「ま、その分急な出撃とかでスケジュールが狂う事が多々ある。これからそう言うことも出てくるだろうから、予め把握しといてくれ」

胡蝶「あいよ」

美穂「ホントに、プロデューサーさんにも響子ちゃん達にも目一杯迷惑かけっぱなしで、申し訳ないです…」

智絵里「そ、そんな事…、全然気にしてないよ…!」

響子「智絵里ちゃんの言うとおり!今日は1日お休みなんだし、ゲッターの事も忘れて遊びましょ?」

卯月「はいっ!今日はみんなで、親睦会です!」

新P「おう、くれぐれもトラブルだけは起こすなよ」

かな子「プロデューサーさんは行かないんですか?」

新P「女所帯に俺だけ混ざれるかよ。それに、俺には俺の方で、仕事が残ってるしよ」

響子「日曜日なのに、大変ですね…。体だけは怖さないでくださいね?」

新P「心配されるまでもねぇよ。社会人は体が資本なのは分かってんだ」

新P「お前ぇらこそ。大人にあんま気ィ遣わなくていいから、今日は思いっきり羽を伸ばしてこい」

卯月「プロデューサー…!はいっ♪」

響子「それじゃあ、行ってきます」

新P「おう、車と百鬼帝国には気を付けてな」

 

胡蝶「……」

 

━━。

 

卯月「それじゃあ、先ずはどこから行きましょうか?」

かな子「あ、それなら、私ずっと行ってみたかったケーキバイキングのお店があるんですけど…━━」

 

胡蝶(…まさか、こんなところでゲッターのパイロットに出会えるなんてね。なんて運命の巡り合わせだい?)

 

卯月「━━?」

美穂「━━♪」

 

胡蝶(まるで隙だらけじゃないか。これなら、今ここでアタシ1人でもこいつらを━━)

 

卯月「━━…あ、胡蝶さん」 クルッ

胡蝶「(気付かれた?)…な、何だい?」

卯月「改めましてですけど、よろしくお願いします!」 ニコッ

胡蝶「…!?……あ、あぁ…よろしく…」

 

胡蝶(何だ…?コイツの、さっきの表情…。闘志が削がれて、気持ちが…安らいでいくような……)

 

響子「胡蝶さん、どうかしたんですか?」

胡蝶「な、何でもないよ…。ちょっと気が抜けちまってね…」

かな子「あ、分かります~。私も最初の挨拶の時は緊張したな~」

智絵里「私も…。芸能界は怖いところってイメージがあったから…」

美穂「考えすぎだよ。確かに怖い人もいるけど…」

響子「今、プロデューサーさんの事考えませんでした?」

美穂「し、してないしてない…!確かに顔は怖いけど、優しい人だし…」

響子「でも顔は怖いって思ってるんじゃないですかー!」

卯月「きょ、響子ちゃん落ち着いてー!」

胡蝶「……」

 

胡蝶(…不思議なもんだね。これがこいつらの日常、って奴なのかい)

 

智絵里「あ、あの…!」

胡蝶「ん?どうかしたかい?」

智絵里「良かったら、これ…」

胡蝶「これは…?」

智絵里「四つ葉のクローバー…。その集めるのが好きで、栞にしてみんなに渡したりしてるんです」

胡蝶「へぇ…。栞か…」

智絵里「こんな時代だし、幸運のお守りなので…。良かったら」

胡蝶「幸運のお守りかぁ…。いいね。貰っといてあげるよ」

智絵里「あ、ありがとうございますっ!」

胡蝶「いやいやこちらこそ。幸運のお裾分けだなんて、お前は優しいんだね」

智絵里「そんな事…」

胡蝶「さ、ほら、みんな行っちまうよ?急がないと」

智絵里「は、はい!みんな待ってください~!」 パタパタ

胡蝶「……」

 

胡蝶(幸運のお守り、ね…。こんなモン、アタシらの間じゃ何の意味もないけど、人間はジンクスを大事にすんだねぇ)

 

卯月「胡蝶さーーーんっ‼」

胡蝶「あぁ、今行くよ」

 

胡蝶(ま、殺すなんて何時でも出来るし、こいつらといるのは楽しそうだ)

 

胡蝶「しばらくの間は、様子見だよ━━」

 

~~~ 数日後 ~~~

 

トレーナー「よし、そこまで!1時間休憩だ。各自、レッスン後のケアを怠るなよ」

響子「はいっ!ありがとうございました!」

トレーナー「ん。それじゃあ1時間後にな」 スタスタ…

 

智絵里「はぁ…はぁ…はぁ……」

胡蝶「スゴい汗だね。大丈夫かい?」

智絵里「は、はい…。ちょっと休憩すれば…」

胡蝶「張り切り過ぎだよ。アイドルがやるライブってのは、この前終わったばっかりで、まだしばらく予定がないんだろう?」

智絵里「そうですけど、でも、ライブだから頑張るとかじゃなくて、いっつも頑張ってないと…。私、変なところでドジしちゃうから…」

胡蝶「自分に自信がないんだね。もうちょっとしゃんと胸を張ってしっかりしないと」

智絵里「あぅ…。プロデューサーさんにもいつも言われます…」

響子「でも胡蝶さんもスゴいですよね?歌もお上手だし、ダンスも体力も…。今のレッスンだって、全然息切らしてませんでしたし」

胡蝶「体を動かすなんてのはね、コツなんだよコツ。無駄な動きをなくせば、自然とどれだけ動いても息が上がらなくなるもんだよ」

智絵里「そ、そういうものなのかな…?」

響子「少なくとも、私が見た中でレッスンで息切らさなかったのって、卯月ちゃん達くらいでしたよ」

智絵里「卯月ちゃん達は、ゲッターに乗ってるから…。スゴいですよね…」

響子「ひょっとして胡蝶さんも前に何かしてんですか?」

胡蝶「え?あ、あぁ、運動を少し、ね」

響子「へぇ~、やっぱり体を動かすのって大事なんですね!」

智絵里「このプロダクションにも、アイドルやる前は、スポーツをやってたり、体動かす仕事してた人も、結構いますよね」

胡蝶「でも、女は愛嬌なんて言うだろう?アイドルは愛嬌を売る仕事なんだし、そんな考えすぎないで、気楽にやるのが吉さ」

 

ガチャッ

 

新P「おす、お前ら、休憩中だな?」

響子「プロデューサーさん!」

智絵里「お、お疲れ様ですっ」

胡蝶「サボりかい?」

新P「なわけねーだろ。ほれ、差し入れだ」

胡蝶「ふぅん。いいね、気が利く男はモテるよ」

新P「ありがとよ。気を利かせる事が仕事みてぇなモンだしな」

胡蝶「あっははは!何だい?そんな人の顔色窺うみたいな仕事で、ヤになったりしないのかい?」

新P「誰かにコキ使われたりするよかマシだぜ。ま、要するに慣れだな」

胡蝶「慣れねぇ…」

新P「そういうそっちはどうだ?もう慣れたか?」

胡蝶「あぁ。お陰様で、先輩方も優しいんでね」

新P「何だ、お前ら。年上だからって気ィ遣ってんのか?先輩なんだからもっと遠慮しねぇでガツンと言ってやれ」

智絵里「え…あ、はい!」

響子「いや、ここは素直に返事しちゃダメなところだと思うよ智絵里ちゃん?」

胡蝶「プロデューサーからパワハラの強要ってのはどうかと思うよ?」

新P「別にパワハラでもねぇだろ」

新P「まぁ、お前がここに馴染めてるっつうんなら一つ安心したぜ」

胡蝶「アンタが安心してくれるのはいいけど、アタシも舞台に上げてもらわないとね」

胡蝶「舞台袖でお預け喰らうのもいい加減にしてもらいたいよ?」

新P「おう、そこは待ってな。お前はスジがいいからな。黙ってたって仕事は入ってくるよ」

胡蝶「本当かい?嘘だったら後が酷いよ?」

新P「へっ、胡蝶みてぇなべっぴんさんに責められるんなら、悪くねぇかもな?」

胡蝶「言ったね?その言葉、よく覚えときなよ」

 

響子「……」

智絵里「…仲良いですよね、プロデューサーさんと胡蝶さん」

響子「それは、胡蝶さんここに来て日が浅いし、プロデューサーさんが気に掛けるのは当然じゃないですか?」

智絵里「そ、そうなのかな…?」

響子「はじめて事務所に来て何日かは、私もそうだったし、智絵里ちゃん達だって同じでしょ?」

智絵里「う、うん…。…でも響子ちゃん、どうかしました?」

響子「べ、別に…?何時もと変わりありませんよ?」

智絵里「そうかな?何だか、ちょっと元気ない…というか、機嫌が悪そうです」

響子「そんな事ないですよ~。今レッスン終わりでちょっと疲れちゃってるだけで、機嫌なんて悪くありませんから」

智絵里「で、でも…」

響子「ほら、プロデューサーさんの差し入れ、頂いちゃいましょう?駅前のあの店のシュークリームですよ」

智絵里「う、うん…」

 

━━━夕方。

 

智絵里「それじゃあ、お疲れ様でした!」

胡蝶「あぁ、智絵里達も気を付けて帰るんだよ」

智絵里「はい!また、明日ですっ!」

 

タッタッタッ…

 

胡蝶「ふっ、ホントいい子だよ。……」

 

胡蝶「いるんだろ?とっとと出てきな」

 

鉄甲鬼「……」

 

胡蝶「まったく…。さっきまでいい気分だったのに、そんな辛気臭い顔を見せられちまったら興も冷めちまうね」

鉄甲鬼「何をしている。胡蝶鬼」

胡蝶「見ての通り、さ。変わった事は何もしちゃいないよ?」

鉄甲鬼「人間社会の偵察なら諜報員に任せておけ。我々百鬼衆の出る幕ではない」

胡蝶「……はぁ~。仕事、役割、務め。ホント、そんな風にしかものを考えられないんだね」

鉄甲鬼「何が言いたい?」

胡蝶「見てみなよ。ここに生きてる人間って奴は、みんな自由に生きてる人間」

鉄甲鬼「……」

胡蝶「仕事、役割なんてのはあるかもしれない。だけどここの連中は、それ以上に多くのものを持ってる」

鉄甲鬼「それ以上のもの、だと…?」

胡蝶「友達と長電話、日向ぼっこ、家事をしてみたりお菓子を作ったり…後、四つ葉のクローバー集めなんて言ったっけ」

胡蝶「何一つ知らないだろう?同じ役割をこなすでも、アイツらはその合間に好きな事をしてる。人間は趣味、って呼んでるみたいだけど」

胡蝶「ただ戦いのために生きてるアタシらとは違う。アイツらにとっては、アイドル活動だってそんな”趣味”なのかもしれない」

鉄甲鬼「…くだらん。自ら晒し者になる事に何の意味があるか」

胡蝶「意味なんて求めてる内は答えなんて出ないよ。みんな、好きだからやるんだ」

胡蝶「んで、好きなものを守るために戦うんだ」

鉄甲鬼「…それが奴等の強さの所以か」

胡蝶「おっと、やらせないよ。ここは今、アタシの居場所になりつつあるんだからね」

鉄甲鬼「フンッ、侮るな。元よりそんな卑怯な真似などするつもりはない」

鉄甲鬼「強者は正々堂々、正面から倒してこそ名が上がるというものだ。ゲッターの強さの拠り所が分かった。今はその事実だけでいい」

胡蝶「殊勝だね」

鉄甲鬼「人間の言う”シュミ”…。それがどんなものか分かるつもりはないが、俺にとっては戦うことがシュミのようなものだ」

鉄甲鬼「ならば、思いきり楽しまなければ損、そういうものなのだろう?」

胡蝶「ははっ!…アタシは見逃してくれるのかい?」

鉄甲鬼「元より、人の話など聞かぬ癖に…。好きにするがいい。ヒドラー元帥には、俺から話しておく」

胡蝶「すまないね、迷惑掛けるよ」

鉄甲鬼「思ってもない事は口にしない事だ。ではな。念のため、提示連絡は忘れるな」

胡蝶「あいよ。それじゃあね」

 

胡蝶「……はぁ、と」

 

━━ ダッ

 

胡蝶「やれやれだね…。まったく……」

 

━━。

 

響子「━━…はぁ…っ、はぁ…っ、はぁ…っ…!……キャッ!」 ドテッ

 

足をもつれさせて転ぶ。

 

響子「はぁ……はぁ……はぁ……。そんな…胡蝶さんが…!」

響子「連絡…!誰に…プロデューサーさん…!」

 

響子「……」

 

咄嗟に携帯を取り出して、しかし手を止める。

 

響子「……私、嫌な子だ…」

 

「大丈夫かい?」

 

響子「ひっ…!こ、胡蝶、さん…!」

胡蝶「やっぱり、アンタだったんだね…。響子」

響子「ヤ…イヤ…!お願いですから、殺さないで…!」

胡蝶「……」

響子「やぁ……いやぁ……っ」

胡蝶「はぁ…。そんなに怯えられると、流石に堪えるね」

響子「…え……?」

胡蝶「命乞いなんてしなくても、別に殺しやしないよ」

響子「…ど、どう…し…て……?」

胡蝶「殺さないでと言ったくせに、面白いこと言うねぇ。殺す理由がないからさ」

響子「で、でも…!私、いま…!プロデューサーさんに連絡しようとしたんですよ?」

胡蝶「でもしなかったね。何故だい?」

響子「それは…」

胡蝶「ん?」

響子「……。やった、って思ったんです」

胡蝶「やった?」

響子「可笑しいですよね?胡蝶さんは最近来たばっかりの、まだ新人で、プロデューサーさんがそっちに目を掛けるのは分かってる。智絵里ちゃんにも、自分でそう言ったのに…」

響子「でも、悔しかったんです。胡蝶さんの方が、私よりずっとキレイだし、年もプロデューサーさんと近そうだし。私なんかより…ずっとプロデューサーさんの隣が決まってて…」

胡蝶「……」

響子「だから、さっき見た事、全部話しちゃってそうすれば、胡蝶さんもいなくなって、またプロデューサーさんの隣に立てるのかな、なんて」

響子「あはは…。何でだろう…?こんな風に言っちゃったら、殺されちゃうかもしれないのに…。でも、言ったらスッキリしちゃったぁ……。あははは…」

胡蝶「……」

響子「もう、良いのかな…。こんな汚い、イヤな子は鬼に殺されて、当然だよね」

胡蝶「……バカだねぇ、アンタ」

響子「はい…」

胡蝶「何も取りやしないよ。アンタから、命も、男もね」

響子「え…?」

胡蝶「ははは…!可笑しな勘違いをさせちまったね。安心しな。アタシの好みは、もう少し手の上で転がせそうな奴だから」

響子「違っ…!胡蝶さんが悪いんじゃなく…!」

胡蝶「それに、だ」

響子「っ……」

胡蝶「さっき、殺す理由がないなんて言ったけどね。殺さない理由ならあるんだ」

響子「殺さない理由…?」

胡蝶「あぁ。アンタらと出会ってね、まだほんの何日かかもしれないけど、アンタらに情って奴が沸いちまったんだ」

胡蝶「だからね、プロデューサーなんて男に比べたら、よっぽどアンタらの方が好きなのさ」

響子「胡蝶さん……!」

胡蝶「もしアンタがここで、プロデューサーに全部言っちまうってんなら、そりゃアンタの自由だよ。アタシは大人しくここから去るさ」

胡蝶「けど、もし許されるんなら、もう少しここで、アンタ達と一緒にいたいかねぇ」

響子「……。…そう、ですか…」 スッ

胡蝶「プロデューサーに連絡しなくていいのか?」

響子「百鬼帝国って、スゴく…怖いと思います。あんなおっきなロボットに乗ってやってきて、街もみんな壊しちゃって。卯月ちゃん達も連れてっちゃって」

響子「だけど、胡蝶さんは、怖くありませんから…!」

胡蝶「━━フフッ。そうかい」

 

~~~ プロダクションビル 屋上 ~~~

 

胡蝶「━━…あはは、何だい?プロデューサーの事、好きだって言ったのに、まだ告白もしてないのかい?」

響子「だ、だって…。実際に言うのは、恥ずかしいし…。それに…」

胡蝶「それに?」

響子「……」

胡蝶「まさか、向こうから言ってきてくれたり、なんて思ってんじゃないだろうね?」

響子「うぅ…」

胡蝶「バカだねぇ。あの手の男は自分から好きになろうが、相手にそんな事言うタイプじゃないよ」

響子「ですよねー…」

胡蝶「分かってんだったら、ドカンと一発、派手にいかないとね」

響子「自分から、ですか?」

胡蝶「何を怖じ気づいてんだよ。あんだけの観客を前にしたライブの時は好きだの愛してるだの言い回って歌ってるくせに」

響子「あれは…!そう言うのと違いますよ~!」

胡蝶「似たようなもんだろ。アンタが歌ってる歌は、誰に対して歌ってるもんだい?」

響子「それは…。あぅ……」 カァ

胡蝶「あっはは!顔を真っ赤にしちゃって、可愛いねぇ

響子「か、からかわないでください!」

胡蝶「からかっちゃいないよ。アタシは本気さ」

響子「胡蝶さん…」

胡蝶「いいかい?命ってのはたった一つ。替えの利くもんじゃないんだ」

胡蝶「なら、そのたった一つの命で、やって後悔するのがいいか、やらないで後悔するのがいいか、考えてみたら分かることだろう?」

響子「…はい」

胡蝶「こんな時代、だろう?そうしたのはアタシらだけどさ。けど、こんな時代だったら、他の女に取られちまうより、二度と会えなくなっちまうなんて事もあるんじゃないか?」

響子「…はい…」

胡蝶「ならさ、幸せになりな」

響子「し、幸せに…」

胡蝶「”命短し恋せよ乙女”だよ。あの男と会えなくなるのが嫌だと思ったんなら、幸せになりな」

響子「胡蝶さん…はいっ」

胡蝶「いい返事だよ。あとはそれを実行に移す、度胸だけだね」

響子「あぅぅ…。それは言わないでください…」

胡蝶「あっはは。それはまぁ、アンタが自分で頑張んなよ」

響子「うぅ~…、卯月ちゃんじゃないですけど、頑張ります…。━━って、胡蝶さん?」

胡蝶「何だい?」

響子「どうかしたんですか?涙が…」

胡蝶「え?あぁ、顔に出ちまってたのかい。コイツは良くないねぇ」

響子「…やっぱり……」

胡蝶「あっはは!だーかーらー違うんだよ。これはそう言うんじゃないって」

響子「じゃあ、何なんです?」

胡蝶「んー?…んや、ちょっと、ね…」

胡蝶(自分の生まれの不幸って奴を、呪っちまってね…━━)

 

~~~ 数日後 某ビル ~~~

 

響子「ついにこの日が来ましたね!胡蝶さん!」

胡蝶「アタシの舞台だってのに、何だってアンタが張り切ってんだい?」

響子「私だってその舞台に上がるんですよ!張り切って当然です!」

胡蝶「…ったく、いいのかねぇ…。新参のアタシが、売れっ子を後ろにおいて立っちまって」

美穂「気にしないでください。どんな形だって、ステージに上がれるのは、嬉しい事ですから」

卯月「ライブが出来る機会も限られてますからね。胡蝶さんのステージにたくさんの人が来てくれるきっかけになれれば…」

胡蝶「まったく、先輩の気遣いに嬉しくて涙が出るよ」

響子「頑張って下さい!胡蝶さんなら、プレッシャーにも負けないって、信じてますから!」

胡蝶「ありがとうよ。ま、せいぜい期待には応えるさね」

卯月「━━ふふっ。それにしても、京子ちゃんと胡蝶さん、すっかり仲良くなりましたね?」

響子「え?そうかな」

美穂「うん。横から見てると、まるで姉妹みたいだよ」

胡蝶「ふふっ。アタシと響子はマブだからね。ねぇ?響子」

響子「ま、マブ…?」

美穂「何ですか、それ?」

卯月「あ、でも私前に菜々ちゃんが言ってるの聞いたことありますよ」

胡蝶「おっと、そんな古い言葉じゃないと思ったんだけどねぇ」

 

スタッフ「━━アイドルの皆さん、準備お願いしまーす!」

 

卯月「あ、はーい、分かりました!」

胡蝶「っと、もうそんな時間か」

美穂「い、いよいよ本番かぁ…」

胡蝶「おいおいお、何で先輩のアンタが緊張してんだい?」

美穂「だ、だって、こう言うのは何時まで経ってもなれないよ…」

胡蝶「初々しいねぇ。覚悟は出来てんだろ?しっかりしな」

美穂「は…はい!」

卯月「ふふふっ。どっちが先輩か分かんないですね?」

美穂「もう~、卯月ちゃ~~ん!」

胡蝶「あっははは!」

響子「あの、胡蝶さん」

胡蝶「何だい?」

響子「このライブが上手く行ったら、どこか行きませんか?」

胡蝶「どうしたんだい?いきなり」

響子「ほら、胡蝶さんにとっては初めてのステージだし、お祝いしたいんです!」

胡蝶「そうかい…。じゃあ、買い物にでも付き合ってもらおうかね」

響子「買い物…?」

胡蝶「あぁ。どうやらアタシはセンスがちょいと古いみたいだからね」

胡蝶「だから、若者のアンタに色々教えてもらおうと思ってね」

響子「…はい!そう言うことなら、微力ながらお手伝いさせていただきます!よろしくお願いします!」

胡蝶「おいおい、よろしくされるのはこっちだよ」

 

ズズズズズズズズ…

 

響子「━━…きゃっ!」

胡蝶「大丈夫かい?響子」

響子「は、はい…。でも急に…、地震?」

卯月「いえ、これは多分地震なんかじゃありません…!」

美穂「卯月ちゃん!外を見て!」

卯月「あれは…!百鬼メカ!」

胡蝶「…アイツは……」

響子「胡蝶さん…。知ってるんですか?」

胡蝶「とにかく避難だ。ここにいたんじゃ戦闘に巻き込まれる。そうだろ?卯月」

卯月「はい!」

 

━━ タッタッタッ… ガチャンッ

 

新P「お前ら!全員揃ってっか!?」

かな子「卯月ちゃん!」

 

卯月「プロデューサー!かな子ちゃんも!」

胡蝶「丁度いいね。今避難しようってとこだよ」

卯月「かな子ちゃん、研究所の方には?」

かな子「連絡しました!待機中だった凛ちゃんが、ライガーで飛んでくるそうです!」

新P「なら、卯月達はそっちに合流だな。残りは俺に着いてこい」

響子「はい!」

美穂「卯月ちゃん、頑張ってね」

卯月「はい!今日のライブは、必ず無駄にはさせません!行きましょう、かな子ちゃん!」

かな子「はいっ!」

 

ダッ

 

━━━ゲッターGコックピット。

 

卯月「…んしょっと」

凛 「卯月、かな子。準備出来た?」

かな子「はい!パイロットスーツに着替える時間はありませんでしたけど、大丈夫です!」

卯月「それで、どうしますか?」

凛 「ん。別に私はこのままでもいいんだけど、相手が妙だね」

卯月「…全く動かないって事ですが、ですか?」

凛 「うん」

かな子「私達が準備してる時から、微動だにしてませんからね」

凛 「最初はゲッターを待ってるのかとも思ったけど、ゲッターが到着してからも動かないとなると、なんかあるね」

卯月「罠、ですか?」

凛 「うん。先ずは分析してる晶葉の結果待ちだね」

かな子「それにしても、ホントに動きませんね…」

卯月「ちょっと近付いてみませんか?」

凛 「……。そうだね。晶葉にデータを送るには、くまなく見回した方がいいか」

 

ゲッターライガーを前進させ、百鬼メカに近付ける。

 

卯月「近付いても、攻撃してきませんね」

凛 「武器は内蔵式かと思ったけど…」

かな子「武器どころか、動くための足とか、そういうのも見当たりませんね」

卯月「でも、これは地下から現れたんですよ?」

凛 「……。頭頂部みたいなところに、切削機関のようなものだけ着いてるのかもしれない」

かな子「けど、今ほとんどゼロ距離ですよ?これだけ近付いても何もしてこないなんて…」

卯月「ほら、触る事も出来ますよ?」

凛 「端からパイロットなんて乗ってないのかもね」

卯月「どう言うことです?」

凛 「武器と言う武器はなし。移動してきたのも、地下を掘り進んできただけで、それから面立った動きもなし。…となると」

かな子「なると?」

凛 「コイツ自身が、兵器」

卯月「…コレが爆弾か何か、って言うことですか?」

 

晶葉『待たせたな。悪い知らせだ』

 

かな子「晶葉ちゃん!…悪い知らせって、何です?」

晶葉『こちらでその百鬼メカの分析をした。結果、そのメカの内部から高濃度の濃縮ウランとほぼ同様の反応が確認された』

凛 「濃縮ウラン…。って事は……」

卯月「原子爆弾━━!」

 

━━ 避難シェルター。

 

響子「じ、自雷鬼…!?百鬼帝国の戦略兵器ですか!?」

胡蝶「しっ。声が大きいよ」

響子「あっ…。ごめんなさい…」

胡蝶「……ブライは、この街ごとゲッターを葬り去る気だよ。あれが爆発したら、こんな都市一つ、まるごと焦土さ」

響子「な、何とか出来ないんですか…?」

胡蝶「無理だね。一度起動した自雷鬼を止める手段はない」

響子「そ、そんな…」 ガクッ

胡蝶「……」

 

胡蝶「…いいかい響子。何があっても、絶対にここから動くんじゃないよ」

 

響子「え…?胡蝶さんは…」

胡蝶「アタシは…。アタシに出来ることをするさ」 ダッ

響子「えっ…!胡蝶さん、待ってください!胡蝶さあああんっ‼」

新P「五十嵐!胡蝶がどうした?」

響子「プロデューサーさん…!私…、私…!」

新P「五十嵐…━━」

 

━━。

 

卯月「━━…それじゃあ、迂闊に攻撃したら…!」

晶葉『ゲッターGもろとも、都市一つ木っ端微塵だ』

かな子「そんな…!」

晶葉『尤も、時限装置のようなものも確認されている。我々がここで手をこまねいていても、いずれ爆発するだろう』

凛 「……」

かな子「ど、どうすればいいんですかぁ!」

卯月「凛ちゃん、ドラゴンにチェンジしてください」

凛 「考えている時間はないか」

かな子「え…?」

凛 「オープンゲット!」

 

卯月「チェーーンジ、ドラゴンッ!」

 

ゲッタードラゴンにチェンジし、自雷鬼に掴みかかる。

 

かな子「まさか、ゲッターで百鬼メカを空まで運ぶんですか!?」

凛 「私達3人で、東京に住む数百万人の命を守れるなら、安いものだよ」

卯月「かな子ちゃんごめんなさい…。覚悟を決めてください!」

かな子「…はいっ!」

卯月「マッハウィーーング‼」

 

背中の翼が開き、ゲッタードラゴンが宙に舞い上がる。

 

晶葉『卯月、高度3万メートル以上まで上がれ。そこまで上がれば、都市に放射能の被害もないだろう』

卯月「ありがとうございます、晶葉ちゃん」

晶葉『…考えてみれば、コレが百鬼帝国の狙いだったのかもしれないな』

凛 「こうすれば、私達だけでも倒せるって訳…」

かな子「これだけの重量の百鬼メカ…。ゲッタードラゴンかポセイドンじゃないと運べませんからね…」

凛 「連中の術中にはまるのは癪だけど…!」

卯月「だからって、大勢の人を犠牲になんて出来ません!」

 

「相変わらず、言うことは甘ちゃんだねぇ」

 

卯月「━━!?…この声、胡蝶さん…?」

晶葉『卯月、後方から所属不明機の反応。恐らく百鬼メカだ!』

凛 「新手?」

かな子「も、もしかして乗ってるのは胡蝶さんですか?」

胡蝶「そうだよ」

かな子「ど、どうして…、胡蝶さんが…!?」

胡蝶「考えれば分かるだろう?そう言うことさね」

卯月「……」

凛 「マズいよ…。このまま狙い撃ちされたら…!」

胡蝶「……」

卯月「きゃあっ!」

 

自雷鬼からゲッタードラゴンを引き剥がし、代わりに自身が張り付く。

 

胡蝶「選手交替だよ。ゲッターロボ!」

凛 「…何のつもり?」

胡蝶「ふっ…。ありがとうよ。お前達のお陰で、初めての本気で笑顔になれた気がするよ!」

かな子「な、何の事を言ってるんです?」

胡蝶「こっちの話さ。お前達のその笑顔、無くすんじゃないよ!」

卯月「胡蝶さん…!」

胡蝶「勘違いはするんじゃないよ!ゲッターロボには、アタシだってたくさんの同僚を殺されちまったんだからね」

凛 「ならどうするの?なんならこの場で決着を着けても…」

胡蝶「遠慮しとくよ!アタシにもね、守ってやりたい奴が出来た。ただそれだけの事さね!」

卯月「胡蝶さん!」

胡蝶「丁度いいや。卯月、響子に、約束を守れなくて悪かった、って伝えといてくれ」

かな子「ま、待ってください!」

胡蝶「鬼のアタシが言えた義理じゃないが、長生きするんだよ!」

 

メカ胡蝶鬼が、高度を上げていく。

 

胡蝶(ふふっ。可笑しなもんさね。アタシが誰かのために、命を投げ打つなんて…)

胡蝶(━━響子…)

 

胡蝶「次に生まれ変われるとしたら、人間になりたいもんだね━━」

 

━━ ドワッ

 

卯月「……ぁ!」

凛 「……」

かな子「あぁ…!」

 

腹の底に響くような重低音。太陽と見間違えるような白く激しい光円。

地球と宇宙の狭間に瞬いた光は、ほんの数秒の間、直下の都市を照らし出した━━。

 

~~~ 早乙女研究所 ~~~

 

卯月「━━…それじゃあ、響子ちゃんは胡蝶さんが百鬼帝国の鬼だったって、知ってたんですね」

響子「…はい」

凛 「…何をしたか分かってる?敵のスパイを匿って…!」

響子「そんなんじゃありません!胡蝶さんは、そんな事のために私達のところに来たわけじゃ…」

凛 「確証はないよ。私達の情報が、百鬼帝国に流れたかも」

卯月「やめてください、凛ちゃん」

凛 「…卯月」

卯月「私も、胡蝶さんはスパイ活動をするために来たんじゃないと思います」

卯月「だって、私達とレッスンしたり、一緒に仕事してる時の胡蝶さんは、本当に楽しそうにしてましたから」

凛 「……」

卯月「少なくとも、響子ちゃんと胡蝶さんは友達だったんです。そうですよね?」

響子「……ライブが終わったら、買い物に行くって、約束したのに…!……バカ…!」

卯月「…それなら、今はほんの少しの間でも、一緒に過ごした仲間として、悼みたいんです……」

凛 「……」

凛 「…分かったよ。この事は、私の胸に閉まっておく。晶葉には報告しないでおくから」

卯月「ありがとうございます。凛ちゃん」

凛 「私の事はいいから。しばらくは、響子の傍にいてあげて」

卯月「…はい」

凛 「それじゃ」

 

ガチャ バタン…

 

卯月「…響子ちゃん」

響子「……確かに、胡蝶さんは、私達にとって、敵だったかもしれません」 グスッ

卯月「そうですね…」

響子「でも…、だけど…!友達だったんです…っ!大切な人だったんですよぉ…!」

卯月「はい…。よく、分かりますよ」

響子「う…うぅ…!うあぁぁぁあああ━━‼」

卯月「響子ちゃん…」

卯月(いろんな人の、大切な人を奪っていく…)

 

卯月(絶対に許しません…!百鬼帝国…!━━)

 

━━━。

 

~~~ 街中 ~~~

 

鉄甲鬼「……」

 

鉄甲鬼「…作戦は、失敗に終わったか。しかし…」

 

イヤァタイヘンダッタネェ オレマジビビッタワァ ケッキョクヒャッキテイコクッテナニシタカッタノ? アハハ──

 

鉄甲鬼(胡蝶鬼…。貴様は、何故そこまで━━)

 

~~~ 後日 ~~~

 

響子「……」

 

━━胡蝶『あの男と会えなくなるのが嫌だと思うんなら、幸せになりな』

 

響子(胡蝶さん…)

 

響子「!」

 

ガチャッ

 

響子「おはようございまーすっ!」

 

新P「━━おう、五十嵐。おはよう。相変わらず朝早いな」

響子「プロデューサーさん!今、1人ですか?」

新P「? おう。この時間にここに来てる人間なんざ、俺と五十嵐くれぇなもんだろうな」

響子「そうですか…」

新P「五十嵐?」

響子「……」

 

スゥ…

 

響子「あのっ!私、プロデューサーさんに聞いてもらいたい話があるんですっ!」

新P「いきなり改まって…。何だ?」

響子「そのっ、実は、私━━」

 

つづく




次回予告‼

地殻変動の影響で、数千年の時を越え、姿を現したのはアトランティスの古代都市だった。
直ぐに古代都市の調査が開始されるが、古代の超科学を狙う百鬼帝国に、古代都市は占領されてしまう。
古代都市を奪回すべく、ゲッターロボGと百鬼帝国の激しい戦いが繰り広げられる中、古代都市の地下から甦る、巨大な影の正体とは━━?

次回! ゲッターロボ×CG 第2部
第22話『アトランティスの守護神!』に、チェンジゲッター!
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