第1話『Beat Soul,& Rocking my Heart』
~~~ 早乙女研究所 跡地 ~~~
晶葉(防護服)「……」
作業員「いやぁ、ホントに一日で全部なくなっちゃったんですね~」
晶葉「一日じゃない。一瞬だった」
作業員「はい?」
晶葉「何でもない。…で、何のようだ?」
作業員「あ、はい。早乙女研究所跡地の封印作業、完了しました」
晶葉「そうか。ゲッター線漏れの危険性はないな?」
作業員「はい。計器によるチェックを何重にもして、抜かりはありません」
晶葉「うむ。……」
眼下、ゲッタードラゴンが開けた、巨大な穴を塞ぐように設けられた、分厚い鋼鉄盤に目を落とす。
晶葉「埋め立てるよりは楽でいいか」
作業員「地下数千メートルに及ぶ空洞ですからね…。勿論ただの鉄板じゃないですよ」
晶葉「確か、中央にゲッター線を吸収する装置が取り付けられているんだったか」
作業員「この周囲に拡散した高濃度ゲッター線を吸い取ることで、理論上は約10年で無害化できます」
晶葉「それでも10年も掛かるのか」
作業員「環境汚染の中では早い方ですよ」
晶葉「…それもそうか。しかし、何もない更地に鉄板一枚とは、随分殺風景だな」
作業員「管理棟を建設しますよ。ゲッター線吸収装置にトラブルが起きてはいけませんし、何より、今でもあの鋼鉄盤の真下では、消失したゲッタードラゴンの残した残留ゲッター線が、核融合炉のように渦巻いてますから」
晶葉「正に、地獄の釜の蓋だな」
作業員「パンドラの箱かもしれませんよ。ゲッターエネルギーは、私達の希望でもあります」
晶葉「君はゲッターに肯定的な考えを持っているのか?」
作業員「自分も、自分の親も、恐竜帝国と百鬼帝国の戦いで、二度ゲッターに命を救われました」
晶葉「そうか…。私も同じだ」
作業員「だから、このままゲッターが社会から排除されるのは、何か違うと思うんですけどね」
晶葉「仕方ないさ。目に見えない危機より、目先の危機だ。目の前に爆発するかもしれない箱があったら、遠くに避難するか、爆発しないように処理するか、そのどちらかだろう?」
作業員「それは、そうですが…」
晶葉「結局、大事なのはやって来た事、してきた事じゃない。どうやったら生き延びれるか、さ。誰だって死にたくないし、死にたくないと思ったら危険なモノを取り除く。そうする事で今日まで生き延びて来たじゃないか。私達は」
作業員「…次はゲッターの番、って事ですか」
晶葉「平和になれば、ゲッターは不要になる。ゲッターが戦力として必要とされないのは、世界が平和に向かってる証拠だな」 スタスタ
作業員「どちらへ?」
晶葉「何の思い出もない土地という訳じゃないからな。少しその辺を歩いてくる。撤収作業は任せたぞ」
作業員「はぁ…」
晶葉「作業が完了したら無線で知らせてくれればいい。ではな━━」
ザッ ザッ
鬱蒼と木々が生い茂った、道無き道を進む。
晶葉「確か、この辺りだったか…。…あった」
それは、研究所脱出の際に使った地下通路の入口。
晶葉「まさか、本当に被害を受けていないとは思わなかったな」
梯子を伝い、地下の空間へ。
晶葉「地下通路は無事、か…。だが、ゲッター線量は550…。地上の10倍以上か」
晶葉(防護服を来ていても危ないかもしれないな…)
早乙女『……』
晶葉「━━!?」 ガバッ
「……」
晶葉「誰もいない…。でも確かに人の気配が…。…あの時と同じか」
晶葉「こちらへおいで、と言うことですか。早乙女博士…━━」
ツカツカ━━
━━。
~~~ プロダクション 正門前 ~~~
李衣菜「……」
━━ 数日前。
李衣菜「━━ゲッターロボが、使用禁止~!?」
菜々「……」
かな子「……」
李衣菜「何で!?どうしてなんですか!橘博士ッ!」
橘 「…理由は、言わなくても分かると思うがね?」
李衣菜「…っ。ゲッターなしで、どうやってインベーダーと戦うんですか?」
橘 「インベーダーの弱点については、晶葉くんとの調査で判明している。戦力的な問題は何処にもない」
李衣菜「……」
橘 「今回のゲッター線暴走事件は、国内で済まされる問題ではないのだよ。既に世論だけでなく、各国専門機関からも、ゲッター線の研究と、使用に関する面で疑問視する声が上がっている」
橘 「事件の原因となったゲッタードラゴンも、マントルを越えて消息不明…。これでは、早急に原因を究明し、弁明すると言う事も出来ん」
李衣菜「でも…!」
瑞樹「落ち着きなさい。あまり博士を困らせるものじゃないわ」
李衣菜「瑞樹さん…」
瑞樹「今回の使用禁止は、あくまで一時的なもの。私達の使っているゲッターの安全が確認されれば、すぐに禁止は解かれる筈よ。そうよね?」
橘 「うむ。世間では今、ゲッター線が第二の核になるのでは、という見方もある。早乙女博士の提出した資料も少ない以上、ゲッターには何らかの危険性がある可能性も捨てきれん」
李衣菜「ゲッターの安全を証明するため、ですか…?」
橘 「そうだ。ゲッターの潔白を証明するためにも、今は我々に協力してくれ」
李衣菜「……でも、ネオゲッターまで禁止する事ないんじゃぁ…」
橘 「……。李衣菜くん…。私は、これは一つの機会だと捉えているんだよ」
李衣菜「機会…?」
橘 「巻き込んでしまったのはこちら側とはいえ、君達は元より民間人。それも、アイドルだ」
橘 「男女で仕事を分ける、と言う昔気質な言い方をするわけではないが、君達は本来、戦うべき人間じゃない」
橘 「それを踏まえて、この禁止期間中に、各々で考えてもらいたいのだよ」
李衣菜「……」
橘 「ゲッターとどう向き合っていくか…。後戻りするなら、今からでも遅くはない━━」
━━そして、現在。
李衣菜「……」
奈緒「何不貞腐れた顔してんだよ?」
李衣菜「奈緒。奈緒も、今日仕事なんだ?」
奈緒「まぁな。まさか、お前と時間が被るとは思わなかったけどな」
加蓮「あれ?李衣菜に奈緒じゃん」
李衣菜「加蓮まで…。どんな巡り合わせ?」
加蓮 「さぁ~?ゲッターの導きって奴?」
奈緒「偶然だろ。あたしは事務所で打ち合わせだけだし」
加蓮「アタシは、今日は外で仕事だから。その待ち合わせ場所って感じかな」
李衣菜「私も、プロデューサーが、何か話があるとか…」
奈緒「ほらな」
加蓮「でも、こうやって3人で顔合わせるの、久し振りだね」
奈緒「そうだな~。パイロットで研究所にいた頃は、ほぼ毎日顔を合わせてたから、余計そう感じんのかも」
李衣菜「ゲッター以外だと、意外と接点ないよね。私達って」
奈緒「でもまぁ、橘博士の言うとおり、いい機会だったのかもなぁ」
加蓮「うん。アタシはそもそも、正義とか大義名分とか?そう言うのキャラじゃないし」
奈緒「だよなぁ。適正があるからって選ばれて、それでなぁなぁに流されて乗ってるだけだったもんな」
加蓮「誰かを守るーとか。世界を救う、とかそんな大層な事出来るわけないんだし、ゲッターも量産が進んで、普通に自衛隊の人とか乗れるようになったんだもん。アタシ達はお払い箱でもいいかな?」
奈緒「李衣菜はどうなんだよ?」
李衣菜「えっ?私~?」
加蓮「リーナはゲッターに乗りたくて来たみたいな感じでしょ?やっぱりちょっと悔しい?」
李衣菜「う~ん…。確かに悔しいけど…、うん。いい機会だと思うよ」
奈緒「いい機会?」
李衣菜「うんっ。だって、これでアイドル活動に専念できるし、ライヴだって、もっと色んな事に挑戦できるって事だもんね?」
奈緒「…お、おう」
李衣菜「プロデューサーに言ったら、仕事増やしてくれるかな~?歌番組出演とか、ラジオのパーソナリティとか…。あぁ、バラエティ番組とかも出てみたいなぁ…」
加蓮「……」
李衣菜「ん?何さ、2人して。ゲッタービーム喰らったインベーダー見たいな顔してるよ」
奈緒「いやいや、どんな顔だよ…」
加蓮「何て言うか、意外だなって」
李衣菜「意外…?」
加蓮「アイドル活動に前向きなんだな~って」
李衣菜「え~…。2人共、私の事なんだと思ってるの~?私だって、過程は特殊かもだけど、アイドル活動は楽しいし。プロデューサーだって、仕事持ってきてくれるから、ちゃんと応えなきゃーとか、そう言うのはあるよ?」
加蓮「もうちょっとゲッターの事でごねるかと思ってた」
李衣菜「パイロットの前にアイドルだからね!アイドル活動楽しむのは当然でしょ!」
奈緒「そりゃぁ、そうなんだけどさ…」
李衣菜「何~?それとも奈緒は、私と会えなくなって寂しい?」
奈緒「な…っ!?ななな…な訳あるかァ!うるさいのがいなくなって、むしろ清々してるよ!」
李衣菜「…そうはっきり言われると、ちょっとショックなんだけど…」
奈緒「へ?」
加蓮「あーぁ、奈緒はそうやってリーナを傷付ける~」
奈緒「え、あ、傷付けるとか、そう言うんじゃなくてな…。え~っと、あたしだってほら、張り合う奴いないと気合いが入らない時もない訳じゃないというか…あぁ~…!何言ってんだ、あたしは~!」
加蓮「あははっ」
李衣菜「…へへっ」
奈緒「あ…あ~!また嵌めやがったな!」
加蓮「そんなぁ~。人聞き悪いよね?」 ニヤニヤ
李衣菜「うんうん。ショック受けたのは事実だし」 ニヤニヤ
奈緒「あーーーッ!もうお前らなんか大ッ嫌いだぁーーーッ!!」
加蓮「…ホントに?」
奈緒「え…。あ、あ…あ~~~っ!もうッ!勝手にしろ!!」
ダァーーーッ
李衣菜「あ、走って行っちゃった」
加蓮「いやぁ、久し振りに堪能したぁ~…」 ツヤツヤッ
李衣菜「とか言って、私よりは一緒に仕事したりしてるんでしょ?」
加蓮「んー?そうでもないよ。リーダーも不在だしね」
李衣菜「あ…。ごめん」
加蓮「いいよ。気にしてない。別に、凛が死んだなんて思ってないし」
李衣菜「だよね」
加蓮「…アタシ達が研究所から離脱する瞬間…。一瞬だけど、真ゲッターが、空間の歪みに消えていくのが見えた…」
李衣菜「生きてるとすれば、歪みの向こうか…」
加蓮「問題は、そこから帰って来れるかなんだけどね~」
李衣菜「そこ、軽く言っちゃう?」
加蓮「深刻に考えても意味ないでしょ~?だったら今は、アイドル活動に専念するだけだよ」
加蓮「アイドル活動を、精一杯やりきって、楽しい思い出一杯作って、凛が帰ってきた時に嫉妬させるくらいその話をしてあげるんだ」
李衣菜「…加蓮ってさ、前向きだよね」
加蓮「そう?…後ろ向きに考えてたって、良いことなからね」
李衣菜「それは同感。だからこの先、ゲッターがどうなったって私はアイドルを続ける。私達は、どこでだって輝ける筈だから!」
加蓮「リーナのそう言うブレないところ、アタシは好きだよ」
李衣菜「え…?」
加蓮「アタシは誰かさんと違って、素直クールなの」 スタスタッ
李衣菜「あ…加蓮!」
加蓮「もうすぐ待ち合わせの時間だから~。リーナも仕事、頑張んなよー」 ヒラヒラ
李衣菜「言っちゃった…。素直クールって、加蓮もメンドくさいトコあると思うけど…」
李衣菜「っといけない!こっちも集合時間もうすぐだった…!急いで行かないと!」
タッタッタッ━━
━━。
李衣菜「はぁ…はぁ…!節電でエレベーター使用禁止なら、初めから言っといてくれればいいのに…!」 タタッ
李衣菜「はぁ…!えー…っと、第4会議室、第4会議室…っと、あった!」
ガチャバターンッ
李衣菜「おはようございますお疲れ様です遅れてすいませんでしたー!!」
新P「おう。朝から盛りだくさんだな。おはようさん」
李衣菜「プロデューサーさん…。えっと、エレベーターが節電で使えなくて…」
新P「んなもん、俺達もここにいる時点で知ってるっつの」
李衣菜「え…あ…」
「あははははは!」
李衣菜「?」
「お前、なかなか可愛いな」
李衣菜「え…、可愛いぃ~?私が?」
李衣菜「…って言うか、誰?」
新P「んじゃ、揃ったところで話はじめっか。多田、こいつはお前より先にアイドル活動してた…」
「木村夏樹だ。ヨロシク」
李衣菜「よ、よろしく…。えっと、私は…」
夏樹「知ってるよ。多田李衣菜。事務所じゃ有名だからな」
李衣菜「そ、そうなんですか…?」
新P「世間じゃゲッターのパイロットは秘匿されてるが、事務所じゃそんな事ねぇからな。口外しなければいい」
李衣菜「へ、へぇ~…」
夏樹「でも改めて顔を会わせて驚いたよ。まさかこんな娘がゲッターのパイロットなんてな…」
李衣菜「こんなって…。これでもロックを極めるロックアイドルなんですっ!」
新P「自称、な」
李衣菜「自称は余計です~!」
夏樹「あっははは!面白いなぁ。気に入ったよ」
李衣菜「気に入ったって…。えっと、プロデューサーさん?全然話が見えないんですけど…?」
新P「んだよ…。まだ分かんねぇのか?ユニットだよ」
李衣菜「はい?」
新P「だからな、お前と、木村の2人でユニットを組んで歌うんだ。これからのレッスンも、ライヴに向けた宣伝も、スケジュールはもう用意してある」
李衣菜「私が…?夏樹さんと…?」
夏樹「夏樹、でいいよ。堅苦しいのは嫌いなんだ」
李衣菜「え…?あ、はい…」
夏樹「ははっ」
李衣菜「は…はは……っ」
━━。
~~~ 私立病院 ~~~
加蓮「━━…これでよし、と」
患者「あ、ありがとうございます…」
加蓮「いいっていいって。それよりも早く元気になって、家族の人安心させてあげて」
患者「は、はい…!」
加蓮「…ふぅ、智絵里ー、そっち、大丈夫?」
智絵里「あ、はい…!こっちはこの人で最後です」
加蓮「そっか。予想はしてたけど、結構な数だよね」
智絵里「そうですね…。怪我人が病室に収まらないで、廊下にまで、こんなにたくさん…」
加蓮「そりゃ看護師さんも数が足りなくなるわけだわ」
智絵里「…もっと、私達に出来る事、何かないのかな…?」
加蓮「…アタシ達も専門家じゃないからねー。ちゃんとした治療ってなると、責任とれないし、こうやって包帯替えるだけでも、病院の人からみたら力になれてるんじゃない?」
智絵里「でも…」
加蓮「暗い顔してちゃダメだって。アタシ達が今日病院のボランティアに呼ばれたのは、単に看護師の数が足りないだけじゃない」
加蓮「アイドルのアタシ達が、笑顔で元気なくした患者の人達を少しでも元気にさせるため何だから。ほら、笑って」
智絵里「は、はい…!」
加蓮「その調子その調子。さて、後は藍子なんだけど…」 チラッ
藍子「━━ふふっ、そうなんですか?私は━━」
加蓮「……」
智絵里「楽しそう、ですね…」
加蓮「…藍子ー?怪我人1人にどれだけ時間掛けるのー?」
藍子「加蓮さん…?皆さん、もう終わったんですか?早いんですね…」
加蓮「あのね…。マイペースなのは藍子の良いとこだけど、2時間で3人目…、そんなんじゃこの一角の怪我人の包帯替えてるだけで日が暮れちゃうよー?」
藍子「すいません…。ついつい、患者さんの話に聞き入ってしまって…」
加蓮「はぁ…。智絵里、そっちの包帯はまだ残ってるよね?」
智絵里「あ、はい…」
加蓮「じゃ、残りも手分けしてやっちゃおう」
藍子「2人共、ごめんなさい…」
加蓮「いいよ。ゆるふわなのは藍子の持ち味だからね。藍子は藍子のやり方で、患者と接してあげて」
藍子「はいっ。ありがとうございますっ」
加蓮「さて、それじゃあもう一仕事、じゃない…。もう一ボランティアやっちゃいますか!」
━━。
加蓮「…ふぅ、ようやくお昼か…」
智絵里「……」
加蓮「智絵里、お疲れ?」
智絵里「そ、そんな事ありません…!まだまだ怪我人は沢山いますから…、頑張れます…!」
加蓮「気負いすぎはよくないよ。ここに入院してる人達だって私達に倒れるまでボランティアしろって言ってるわけじゃないんだから。適度に肩の力を抜かないと」
智絵里「そう言われても…。やっぱり、頑張らないと…!今の私に出来るのは、これくらいしかないから…」
藍子「でも、この病院にいる患者さんも、ほんの一握りなんですよね」
加蓮「一握り何てもんじゃないでしょ。あれだけの戦いがあった後なんだし。病院とかに避難できた人はいいけど、逃げ遅れた人だって…」
藍子「……」
加蓮「あぁ、何かごめんね?暗い話するつもりじゃなかったんだけど…」
藍子「い、いえ…。話題を振ったのは、私の方だし…」
「いやぁ、午前のお手伝い、お疲れさまでした」
智絵里「あ…」
藍子「院長先生!」
院長「皆さんが来てくれたお陰で、院内が何時もより明るく感じるよ。本当に、感謝してもしきれない」
加蓮「…大した事は出来てないよ。院長も、アタシ達に構ってていいの?」
院長「この病院の関係者はみんな患者に係りきりだからね。院長である私が、代表して礼を言っておかないと」
智絵里「そんな…、お礼を言われるようなことなんて何も…」
院長「いやいや。怪我人の治療なんて、素人はあまりやりたがらないからね。出血の多い怪我人もいただろう大丈夫かい?」
加蓮「大変なのは分かってたから。智絵里は、はじめた頃は顔蒼くしてて心配したけど」
智絵里「うぅ…。ごめんなさい…」
院長「それが正常な反応だよ。生の肉や臓器を直視する生活には、慣れない方がいい」
加蓮「医者の先生がそれ言っちゃう?」
院長「あ…。あはは…。これは一本取られたな…」
藍子「それにしてもスゴいですよね。この病院は、あの時の戦いで出た怪我人を、たくさん受け入れているって聞きました」
院長「怪我人や病人を治すのが、医者の仕事だからね。お陰でスタッフの数が足りなくなってしまったが」
加蓮「私立病院って聞いてたけど、結構おっきいよね」
院長「規模や設備なら、その辺の大学病院にも負けないよ。スポンサーがついてくれてるからね」
智絵里「スポンサーさん、ですか…?」
院長「そう。だからウチは、民間の医療研究みたいなこともしててね。代わりに、病院を大きくしてもらえたと言うわけさ」
加蓮「成る程…」
院長「だが、戦争の被災と復興の優先で、その機材の多くも、今は使えないがね」
藍子「あ…」
布で全身を覆い隠された人を乗せた担架が運ばれていく。
院長「…今日で30人目か…」
加蓮「……」
院長「医者である自分が言うべきではないが、人間の限界を感じずにはいられないよ。どれだけ医療が発達しようとも、肝心な機械が使えなければ、途端に救える命は限られてしまう」
藍子「それでも…!もっと多くの命を救えてるじゃないですか!」
院長「そう言ってもらえるのはありがたいよ。…せめて、ゲッターがもう少し上手く、立ち回ってくれたらね」
加蓮「……」
院長「……?」
智絵里「あ…、あの、えっと…」
加蓮「別にいいよ。院長の言ってることは事実なんだし」
智絵里「でも…」
院長「どう言うことだい?」
藍子「あの…、その、加蓮ちゃんは、ゲッターのパイロットだったんです」
院長「…っ!?知らなかったとは言え、悪いこと言ってしまったね…」
加蓮「子供が乗ってると世間がうるさくてね~。いくら民間研究所だからってやって良いことと悪いことがあるでしょって」
院長「成る程。意見は十人十色だからね。だが、勘違いしないでほしい。ゲッターがいなければこの国は百鬼帝国を退けられなかっただろうし、感謝はしているよ」
加蓮「ん、ありがと。でも全然、守るものも守れてなかったのは自覚してたし」
院長「そんな事はない。事実、条約で兵器の開発を制限されているこの国じゃ、ゲッターがなければまともな防衛設備もなかったんだ。君達は頑張ったよ」
藍子「そう言ってくれるだけでもありがたいです。ね、加蓮ちゃん?」
加蓮「うん…」
院長「教えてもらったついでにもう一つ聞いてもいいかな?ゲッターロボは、確か3人乗りだろう?もしや、君以外の2人も…」
加蓮「そ。ここまで来たらいっちゃっても言いかな…。神谷奈緒と多田李衣菜って、どっちもアイドルだよ」
院長「やはり…」
智絵里「やっぱり、おかしいですよね…?アイドルがロボットに乗ってるのは…」
院長「いや、組織によって事情は様々だからね…。きっと、君達でなければならなかった理由があるんだろう?」
加蓮「まぁ、そうだけど…」
院長「なら、君達がゲッターに乗ることは、宿命付けられていたんだよ。きっと」
院長「…っとすまない。急用を思い出した。私はこれで失礼するよ」
藍子「あ、いや…。こちらこそ、貴重な時間をわざわざ割いてしまって…」
院長「いいよ。院長勤めをしていると、若い子と話をする機会もそうはないから、こっちもいい気分転換になった」
院長「君達はゆっくり休んでくれ。また午後からもよろしく頼むよ。それじゃ」
スタスタッ
智絵里「行っちゃいました…」
加蓮「……」
藍子「加蓮ちゃん、どうかしたんですか?」
加蓮「…いや、やけにあっさりゲッターのパイロットって言うの受け入れたなって。アタシ達だって、はじめて聞かされた時は、戸惑ったりするのに」
藍子「そうですね…。私も、未央ちゃんや茜ちゃんがパイロットで…、仕方ないけど、やっぱり心配ですから」
加蓮「あ…、ごめん藍子。未央の事…」
藍子「ふふっ、大丈夫ですよ。未央ちゃんからは心配するなって連絡をもらいましたから。今は離れ離れですけど、きっと必ず、前みたいに元気に帰ってきてくれるって、信じてますから」
加蓮「へぇ、信頼し合ってるんだ」
藍子「はいっ。…っと、話が逸れちゃいましたね…。何の話でしたっけ?」
智絵里「院長先生の様子がおかしい、…みたいな話、でしたよね?」
加蓮「う~ん…。でも、他人からしてみればそれだけって話だし、アタシの勘違いだったかも」
藍子「そうですね。最近、早乙女研究所での事故もあって、ゲッターへの風当たりも強いですから、それでちょっとナーバスになってのかもしれませんね」
加蓮「そうかも。さ、早くご飯食べちゃって、午後からに備えよ?」
智絵里&藍子「「はいっ」」
━━。
~~~ プロダクションビル 休憩スペース ~~~
李衣菜「……」
夏樹「どうしたんだよ?レッスンが終わってから、ぼうっとして、疲れたのか?」
李衣菜「あ、夏樹…。何て言うのかな…、アイドルしてるなー、って」
夏樹「は?そんなの今更だろ?どうしたんだ、いきなり」
李衣菜「いや、今まではゲッターのパイロットもしてたから…、レッスンしてても、学校にいても、百鬼帝国が出たら出撃しなきゃいけなくて…」
夏樹「……」
李衣菜「だけど、今日はそう言う、非常召集も掛からないし、避難のサイレンも鳴らない。ホントに平和になったんだなーって、実感が今になって湧いてきちゃって…」
夏樹「…あぁ、そうだよ。ほら…」
李衣菜「え…?」
夏樹「まだ復興は完全に終わった訳じゃない。避難所から帰ることができない奴だっているし、立入禁止で入れない場所がいくらだってある。だけどさ、リーナが守った街なんだぜ?」
李衣菜「私が守った…。うん…!そうなんだよね!」
夏樹「おう。だからこれからは、ゲッターの事はしばらく忘れて、思いっきりアイドルやってこうぜ!」
李衣菜「うんっ!なつきちとなら、楽しいライヴが出来そうな気がする!」
夏樹「なつきち?」
李衣菜「え?あぁ、ごめん…!何か言い間違えた…」
夏樹「いや、いいよ。気に入った。なつきち」
李衣菜「ホント…?」
夏樹「あぁ。じゃあ、リーナの事はダリーだ」
李衣菜「ダリー!?ダリーはちょっと…」
夏樹「ははっ。いいだろ?」
李衣菜「…まぁ、なつきちに言われるなら、悪くないかも」
夏樹「なら、決まりだ」
「お、いたいたー。夏樹ー!お前まだこんなトコにいたのか」
李衣菜「え?誰…」
夏樹「拓海!何だ、お前も仕事だったのか?」
拓海「そんなトコだ。…で、誰なんだ?そっちのちんちくりんは」
李衣菜「ちんちく…!?」
夏樹「そう言うなよ。こいつはリーナ。アタシの相棒さ」
李衣菜(相棒…)
拓海「へぇ…。こいつがなァ…。ふぅーん…」
李衣菜「な、何さ…」
拓海「何でもねぇよ。アタシは向井拓海。今んとこは夏樹のダチだ。からよ…」
ズイッ
李衣菜(近っ…!)
拓海「ダチとして言わせてもらうぜ?夏樹のステージ台無しにしたら、ただじゃおかねぇからな?」
李衣菜「い゛っ…!」
夏樹「やめろよ拓海。お前、まして凄みがあるんだから、本気でビビっちまうだろ?」
拓海「本気でビビらせてんだよ。こう言う半分弛んだ奴はガツンと言ってやらねぇと…」
夏樹「悪ィな。コイツ元レディースだから、考えがちょっとアッパー決まってんだよ」
李衣菜「はぁ…」
拓海「夏樹!余計なこと言ってんじゃねぇ!!」
夏樹「はいはい…。それで、レッスン終わりにわざわざ探して会いに来て、何かようか?」
拓海「おうそうだった。なぁ、これからゲーセン行こうぜ!」
夏樹「は?何だいきなり…」
拓海「あぁ、今日の現場な。バラエティのロケだったんだけど、そこのディレクターがまたえらいセクハラ親父でな…」
夏樹「殴ったのか?」
拓海「いや、プロデューサーの顔を立てて何とか我慢してやったぜ…。帰りにアイツを一発殴ってやったが」
夏樹「それは、プロデューサーさんも災難だったな」
拓海「でもアイツを殴ったくらいじゃ収まらねぇんだよ!最近色々鬱憤溜まることばっかだし、ここいらで発散しとかねぇと、次はあのディレクター、顔見ただけで殴っちまうかもしれねぇ」
夏樹「って言ってもなぁ…。復興で計画停電だろ?この辺でやってるゲーセンなんて…」
拓海「ココからじゃちょっと遠いけど、動くゲーム減らして上手くやりくりしてるトコがあんだよ。な、付き合ってくれよ」
夏樹「はぁ、しょうがないな…」
拓海「うっし!決まりだな」
夏樹「ホントはこれからダリーの親睦会なんて考えてたんだけどな」
李衣菜「え?」
拓海「それなら丁度いい。そっちの奴も一緒について来いよ」
李衣菜「いいの?」
拓海「あぁ。人数が多い方が気分転換になるしな!それに…」
李衣菜「…?」
拓海「面白ェ事になりそうだからよ!」ニッ
李衣菜(…何か、ヤな予感…)
━━ ゲームセンター。
李衣菜「…何だか、思ったよりも静かだね…」
夏樹「稼働してる台数が少ないからだろ。お陰で人も少ないし、アイドルからしてみたらいいけど、やってる意味あるのか?これ」
拓海「復興も人助けも大事だが、娯楽もなきゃな。…っと、あったあった!これだ」
李衣菜「…バーニングPT?」
夏樹「あぁ、確か架空のロボットをテーマにした対戦ゲーム、だっけ?」
拓海「その通り。けど、操作感覚とか、結構作り込んでるんだぜ、これ」
李衣菜「もしかして、私を呼んだのって…」
拓海「お前、ゲッターのパイロットなんだろ?いっちょ実力を見せてみろよ」
夏樹「あのなぁ…。このゲームとゲッターの操縦法が同じだとは限らないし、そういう無茶は…」
李衣菜「やるよ」
夏樹「ダリー…。いいのか?」
李衣菜「うん。何か面白そうだし、勝負挑まれたのに、受けなきゃロックじゃないって!」
拓海「へぇ、肝は座ってんじゃねぇか」
李衣菜「じゃなきゃ、百鬼相手に戦えないじゃん?」
拓海「面白ェ…。早く席に座りやがれ!」
李衣菜「分かった!」
李衣菜(…とは言ったもの…、ゲームなんてほとんどやらないし、どうすればいいのか何て全然分かんない…)
李衣菜(手元にあるのが操縦桿で、足元にペダル…。見た感じはゲッターと同じ感じだけど…)
拓海「おら、何時までも焦らしてんじゃねぇ。早くユニットを選べよ」
李衣菜「…っと、ごめん…!え~っと、ユニットって…」
李衣菜(ダメだ…。全然分かんない…)
夏樹「取り敢えず、ゲッターに似かよったのを選んでみればいいんじゃないか?」
李衣菜「似てるって言ったって、みんな華奢でゲッターと似ても似つかないし…」
夏樹「ほら、何かゴツいのがいるじゃないか」
李衣菜「これ…?えっと…グルンガスト…?確かに他のに比べたらゲッターに近い感じはするけど…。もう選んでる時間もないし、これでいっか!」
[BATTLE START]
拓海「よっしゃ!やってやるぜ!!」
李衣菜「相手のは、えーっと…、R-1…?何かちっちゃくて弱そうだな…」
拓海「言ったな…!勝負に負けた方が晩飯奢りだからな!」
李衣菜「望むところ!」
夏樹「おいおい…。いいのか、そんな安請け合いして…」
拓海「おらよッ!!」
R-1の蹴り上げ。
李衣菜「うわぁ!」
拓海「T-LINKナッコォ!!」
オーラを纏ったR-1の拳が、グルンガストを打つ。
拓海「どうだよ!念動力だか超能力だかは知らねぇが、ゲームだからお構いなしだぜ!」
李衣菜「くっそ~…!こっちはまだ操作に慣れてないのに…」
夏樹「おい、店の中であんま叫んだりするなよ。迷惑だろ?」
拓海「どーせ客の数も少ねぇんだ。少しは盛り上げてやらねぇと!」
夏樹(拓海、アイドルだっての忘れてないか…?)
李衣菜「そっちがその気なら…!」
李衣菜「ブーストナックル!!」
打ち出されたグルンガストの拳は避けられる。
拓海「お、ノってきたな!面白ぇ!」
R-1、肉薄。
李衣菜「飛び込んでくる!?」
拓海「ハジキもナイフも、武器使うのは性に合わねぇんだ!殴り合いで勝負しようぜ!」
拳と蹴り。Rーコンビネーション。
李衣菜「~~~っ!そっちに合わせるつもりは、ないって!」
拓海「!?」
李衣菜「オメガレーザー!」
グルンガストの両目から、閃光が放たれる。
拓海「へっへっ…!念動フィールドってか!」
李衣菜「バリアなんてズルい!」
拓海「正当な仕様だぁ!!」
そのままT-LINKナックル。
李衣菜「こンの~…!ファイナルビーム!」
拓海「んな大砲が当たるか!」
李衣菜「酷っ!必殺技くらい当たってくれてもいいじゃん!」
拓海「晩飯が掛かってんだ。誰が手抜きなんかするかよ!」
李衣菜「結局それ~?」
夏樹「ダリー」
李衣菜「なつきち、何!?今良いとこ何だけど…」
夏樹「そいつの必殺技それ意外にもあるっぽいぞ」
李衣菜「え…?…ホントだ。計都羅喉剣…!」
拓海「お…」
李衣菜「これだぁ!」
計都羅喉剣を抜き打つ。
李衣菜「形はちょっと違うけど、剣には覚えがある!」
突貫。
拓海「うぉっ!?」
李衣菜「でやぁああああッ!!」
計都羅喉剣を垂直に振り下ろし、振り終わりきらないタイミングで刃の向きを水平に変え、躱したR-1を追撃。
李衣菜「オメガレーザーで!」
逃げ道を減らし、計都羅喉剣の突きで追い詰める。
拓海「…くっそ…!」
李衣菜「今ッ!」
グルンガストの大ジャンプ。
拓海「…チッ」
李衣菜「必殺の~…!暗~剣ッ殺!!」
降下しながらの大上段と水平斬による十字斬り。
李衣菜「やった…!」
拓海「甘ェ!」
李衣菜「これって…」
拓海「R-1のシールドだァ!!」
李衣菜「ッ!?」
R-1が上空へ。
拓海「天上天下ァ…!」
エネルギーで出来た剣を構える。
拓海「念動!破砕剣ッ!!」
━━。
~~~ 鉄板焼屋 ~~~
拓海「いやぁ~!勝った、勝った~!」
夏樹「…武器は使わないんじゃなかったのか?」
拓海「おう。だから頑張った方だぜ?リーナはよ」
拓海「何せ、アタシに武器を使わせたんだからさ!」 ヘヘッ
李衣菜「む~…」
拓海「ははっ!むくれたってダメだぜ?奢りは約束したんだからな」
李衣菜「それは分かってるよ。だけど、あと一歩だったのになぁ…」
夏樹「まぁはじめてにしてはよくやったって。あんま落ち込むなよ」
李衣菜「ありがと、なつきち。でもなぁ~…」
夏樹「そんな事より、ホントにいいのか?拓海の奴、バカ食いしてるけど…足りるか?」
李衣菜「うん。それは本当に大丈夫。ゲッターで戦ったときに出た報酬みたいのが、結構残ってるから」
拓海「お、そいつぁ良いこと聞いたぜ。親父!お好み焼き追加。もちろん大盛りでな!」
店主「あいよッ!!」
夏樹「少しは出してやれよ。まったく…」
李衣菜「はは…」
夏樹「けど、無理矢理付き合わされたみたいになったけど、楽しかったか?」
李衣菜「うんっ。こうしておいしいお好み焼きのお店も教えてもらったし、言うことないよ」
夏樹「そっか…。なら、良かった」
李衣菜「ホントにありがと。なつきち」
夏樹「ん?アタシは何もしてないよ」
李衣菜「ううん。夏樹のお陰で、こうして拓海とも仲良くなれたし、何より、ゲッターの操縦経験がこんな形で役に立つと思ってなかったよ」
夏樹「ダリー…」
拓海「そういや、オメーは何でゲッターなんか乗ろうと思ったんだ?」
李衣菜「え?」
夏樹「確かに気になるな。ゲッターのパイロットって、どうやったらなれるんだ?」
李衣菜「それは…、何か適正があるみたいだけど…」
拓海「んじゃあ、お前はそれで選ばれたって訳か?」
李衣菜「選ばれたって言うか…。私は、ゲッターに乗りたくて…、適正があったのは、ホントに偶然って言うか…」
夏樹「ゲッターに乗りたかった?」
李衣菜「…こ、この話はやめにしない?そんな面白い話でもないし…」
拓海「いいから!ここまで来たなら言っちまえよ。勝者命令だぞ?」
李衣菜「それ…、ここまで有効なの?」
夏樹「アタシも気になるな。ダリーのこと、もっと知っておきたいし」
李衣菜「なつきち…。……」
夏樹「……」
拓海「……」
店主「はい。お好み焼きお待ち!」
拓海「お、どもっス」
李衣菜「…今から、一年くらい前かな。メカザウルスが、ロックフェスの会場に現れた時…」
夏樹「それって…」
李衣菜「何?」
夏樹「…いや、いいよ。続けて」
李衣菜「…?うん。その会場に、私はいて、ゲッターに助けられたんだよね」
拓海「へぇ…」
李衣菜「正直、情けないって思った。メカザウルスに、逃げることしか出来なくて、悔しいって…」
夏樹「でもそれは仕方ないだろ?人間の力じゃ、メカザウルスには勝てないからな」
李衣菜「それでも!私は逃げたくなかった。逃げるなんてカッコ悪いし、ロックじゃない」
拓海「ロックだぁ…?」
李衣菜「うん。私はそう思った。同じ時に、ゲッターに乗ってるのが卯月だって、私と同じ女の子だって気付いたから。だからもし私にも出来るならやってみたいって。そう思ったんだ」
夏樹「そんな事が…」
拓海「何でぇ。要するに、人任せにできないって訳か?」
李衣菜「そうかも。…へへっ」
拓海「ったく…。なかなか言いやがれねぇから、どんな大層な理由かと思ったら…」
李衣菜「昔語りとか、柄じゃないし…。それに、わたしにしたら結構恥ずかしい話なんだよ?」
拓海「そうかよ。あっ、親父ー!締めの焼きそば頼むぜ!」
夏樹「お前…、どんだけ食う気だよ…」
━━ 数分後。
拓海「ふぃー。食った食った!」
夏樹「一人で5人前は食ってりゃな…。悪いな、ダリー」
李衣菜「ははっ。でも、楽しかったから…」
拓海「ふぅ、ホント、腹パンパン。しばらく何にも入んねー。…ん?」
大男「……」
夏樹「何だ?拓海の知り合いか?」
拓海「さぁな。旧い知り合いなら心当たりが多すぎて、逆に分かんねぇな」」
李衣菜「一杯いるんだ…」
拓海「おう。仲良しってんじゃねぇが…」
大男「……」
拓海「おい!何見てんだ、テメー!どっかで見た覚えはねぇが、前にぶっ潰してやった暴走族の仕返しか?それとも何時だったか、半殺しにしてやったチンピラの仲間か?あぁこの前ゴミ箱ぶちこんだ竜神会だかの恨みか?」
李衣菜「…ホントに色々してるんだ」
夏樹「一応言っとくけど、アイドルやっている今は、ちゃんと足洗ってるぞ?」
李衣菜「ホントかな…」
大男「……」
拓海「おい!何とか言ったらどうだ!?」
大男「……」
大男「……。ただ…りいな…」
李衣菜「え…。私ぃ!?」
大男「…殺スッ!!」
ジャキンッ
李衣菜「い゛ぃっ!?」
拓海「マシンガンかっ!」
夏樹「逃げろ━━!!」
言い終わらぬうちに、大男の両脇に構えられたマシンガンから、弾丸がばらまかれる。
拓海「畜生…っ!」
夏樹「いいからこっちだ!」
身を低くして弾丸を避け、建物の影に。
拓海「…あいつ…!この国の法律知らないのかよ」
夏樹「法律の通じる相手じゃなさそうだ。ダリー、心当たりは?」
李衣菜「爬虫人類や鬼にはあっても、人間にはないよ!」
夏樹「だよなぁ…」
拓海「だが、アイツはリーナの名前を言ってたぜ!?」
大男「!!」
ガガガガッ
拓海「…チィッ!」
夏樹「今は一先ず、逃げるのが先決か!」 ダッ
路地をひた走る。
李衣菜「逃げるって言ったって、こっちの方向って…!」
視界に入る、立ち入り禁止の看板。
李衣菜「やっぱ!百鬼との戦いの被害が一番大きい地区…!」
拓海「逃げてんだ!んなもん気ぃ遣ってられっか!それにこれは…!」
拓海「飛び入りだぁ!!」
看板を蹴り飛ばして、突き進んでいく。
李衣菜「とんち利かせていいの!?」
夏樹「今はそんなの抜きだ!」
ダッダッ
大男「!!」
バラララララッ
李衣菜「逃げるって言ったって…!逃げてばっかりじゃ何の解決もしないよ!」
夏樹「ッ…!」
拓海「覚悟決めるしかねぇか…!」
廃屋の中へ。
李衣菜「こんなトコに入って、どうするつもり…?」
拓海「決まってんだろ!」
追って、大男も廃屋の中に。
大男「…?」
拓海「おい!デカブツ!」
大男「!?」
拓海「テメー…!何がなんでもリーナを殺してぇみてーだな!」
背中に鉄パイプ。その他にも斧や金槌などで武装する。
拓海「来やがれバケモノ野郎ッ!もう逃げも隠れもしねぇ!そっちがその気なら手加減も必要ねぇ!掛かってきやがれ!!」
大男「…!」
拓海「金槌でそのどたまかち割って中身グチャグチャにしてやるぜぇ!!」
大男目掛け、突進。
李衣菜「…うわぁ…。ホントにやってる…」
夏樹「拓海が時間を稼いでる内だ。予定通りにやるぞ!」
李衣菜「うん…!」
拓海「喰らいやがれ!」 ブォンッ
大男「っ!」
投擲した鉄パイプは、片手で掴まれる。
大男「…!」
拓海「へっ…!流石にやりやがるじゃねぇか!…おらよ!」
金槌を振り下ろす。
大男「あ…?」
拓海「掛かったな!」
金槌を片腕で防いだ大男の鳩尾に、直蹴りを浴びせる。
大男「うご…?」
拓海「後悔したって遅ェぞ!死んだって線香上げてやんねぇからな!」
大上段で金槌を振り下ろす。
大男「…!」
ガッ
拓海の脚を掴み、放り投げる。
拓海「ぐっ…!」
大男「殺してやる…!」
拓海「へ…へへっ…!」
大男「?」
拓海「…こっちにばっか気ぃ遣ってていいのかよ…!」
大男「…?━━…!?」
真横からきた衝撃。ワイヤーで束ねられた鉄骨で、大男が吹き飛び、壁にぶち当たって突き刺さった。
李衣菜「やった!大成功~!」
夏樹「どうだ?」
拓海「普通の人間なら死んでんだろ。…普通の人間ならな」
大男「うごご…」 ムクリ
夏樹「嘘だろ…」
李衣菜「見て!アイツの体…!」
拓海「機械…。そりゃ身に覚えがねぇわけだ」
李衣菜「だからって、百鬼帝国って訳でも、…恐竜帝国って訳でも…」
拓海「正体なんざ、倒してから調べりゃいい!」
夏樹「そうは言っても、サイボーグ相手に、どうやれってんだ?」
拓海「当たって砕けるのみ!」
鉄骨が突き刺さったままの大男に、持った斧を振り下ろす。
大男「ぎゃ…」
拓海「コイツでトドメだぁ~~!」
先端の尖った鉄パイプを振り被る。
大男?「ギシャァァアアッ!!」
拓海「んだ…?コイツの体ン中から…」
夏樹「下がれ!拓海ッ!」
拓海「ッ!?」
大男の体内から姿を見せた、蛇のような機械の怪物が、拓海の腹部を貫く。
拓海「ぐぅ…!?」
夏樹「拓海ィ!!」
大きく仰け反り、倒れ伏す。
夏樹「大丈夫か!?拓海…!」
拓海「へ…へへっ…!しょうもねぇモン貰っちまったぜ…」
夏樹「酷い出血だ…。もう喋るなよ」
李衣菜「あれが本体なの…?」
怪物「フシュルルゥゥゥ…!」
李衣菜(…何とかしないと…!このままじゃ拓海が…!)
「頭を下げろ!小娘!!」
李衣菜「!」
夏樹「誰だ?」
李衣菜「いいから言うとおりに!」
夏樹「お、おう…!」
2人が頭を下げ、腰を低くする。同時に、2人の上を飛来した弾丸が、怪物に当たって弾ける。
怪物「キシャァァアアア━━!?」
爆炎に包まれ、燃え尽きる怪物。
夏樹「やったのか…?でも、さっきの攻撃は…」
李衣菜「アンタは…!」
鉄甲鬼「…ケガはないか?小娘」
李衣菜「……」
拓海「遅ぇよ…。鬼野郎…!」
夏樹「拓海!待ってろ、今止血する」
鉄甲鬼「憎まれ口を叩ける余裕があるなら、大丈夫だな」
李衣菜「どうして、助けてくれたの…?」
鉄甲鬼「理由はない。ただ、通りがけに騒々しい物音を聞こえたから、来ただけだ」
李衣菜「そう…」
鉄甲鬼「それに、瑞樹の知り合いに死なれては、寝覚めも悪いからな」
李衣菜「え…」
Prrr Prrr…
李衣菜「電話だ…。奈緒…?」
李衣菜「奈緒…?どうしたの?」
奈緒『李衣菜っ!まだ生きてるな?』
李衣菜「いきなり何?話が見えないんだけど…」
奈緒『今さっきこっちに変な大男が来て…、いきなり襲われたんだよ!』
李衣菜「っ!?そっちも?」
奈緒『そっちもってことは、李衣菜も襲われたらしいな。加蓮も襲われたって…』
李衣菜「それで、そっちはどうしたの?」
奈緒『こっちは、ニオンが来てくれてやっつけてくれたよ。加蓮の方も片付けたって。李衣菜は?』
李衣菜「…鉄甲鬼に助けられたよ」
奈緒『鉄甲鬼…?鉄甲鬼がそこにいるのか!?』
李衣菜「うん。今のところ、仇討ちされる気配はないよ」
鉄甲鬼「……」
奈緒『そうか…。何だかヤな予感がするな』
李衣菜「やめてよ。って言える雰囲気でもなさそうだね」
奈緒『何処かで合流するか?』
李衣菜「ううん。こっちにちょっと怪我人がいるから…。だから先に病院に連れてってくる」
奈緒『そうか…。分かった。気を付けてな』
李衣菜「うん。そっちこそ気を付けて」
ガチャ
鉄甲鬼「…非常事態みたいだな」
李衣菜「まぁね。とにかく拓海を病院に連れてかないと」
鉄甲鬼「そうか。女手だけでは大変だろう。手を貸す」
李衣菜「…どうして協力してくれるの?」
鉄甲鬼「さぁな。今生きている意味さえ見つけられていないからな。だからかもしれん」
李衣菜「百鬼帝国の事はもういいの?」
鉄甲鬼「帝国の最期はこの目で見た。滅びた国のために復讐する気にはなれん」
李衣菜「そっか…」
鉄甲鬼「ほら、貸せ。俺が運んでやる」
夏樹「あ、あぁ…。悪いな」
鉄甲鬼「いい。先を急ぐぞ」
李衣菜「うん!拓海をお願い」
鉄甲鬼「言われるまでもない」
━━。
~~~ 中央病院 ~~~
[手術中]
夏樹「拓海…。助かってくれよ…!」
李衣菜「…ごめん。私のせいだ」
夏樹「それは違う。あの場にいたんだから、仕方ないさ」
李衣菜「けど…!相手の狙いは私だった。私が、引き付けて2人を逃がすべきだったんだ」
夏樹「それで、鉄甲鬼さんが来るまで持ち堪えられたかよ?」
李衣菜「それは…」
夏樹「いいか?拓海は死なない。必ず助かる。それでアタシも、だりーも、みんな助かったんだ。なら、それでいいんじゃないか?」
李衣菜「…うん」
夏樹「だから、拓海の目が覚めたら、謝るんじゃなくて、ちゃんとお礼を言うんだぞ?」
李衣菜「うんっ。分かった!」
鉄甲鬼(角隠し)「……」
李衣菜「鉄甲鬼…?どうかしたの?」
鉄甲鬼「うむ。今回の相手は、間違いなくゲッターのパイロットを狙っている。先程の電話相手もそうだろう?」
李衣菜「う、うん…。そうだけど」
鉄甲鬼「それが、簡単に諦めるとは思えなくてな…」
夏樹「まだ追っ手があるってのか?」
李衣菜「……? 地震…?」
鉄甲鬼「いや、この揺れは…」
「め、メカザウルスだぁ!!」
李衣菜「!?」
夏樹「何だって!?」
病院の正門から外へ出て、3人が見たのは、
夏樹「…嘘だろ」
李衣菜「メカザウルスだけじゃない、百鬼メカもいる!」
夏樹「じゃあ、相手は百鬼帝国と恐竜帝国の生き残りか?」
鉄甲鬼「バカな…!百鬼帝国の残党など聞いたことがないッ!」
李衣菜「よく見ると、百鬼メカもメカザウルスも、何かチグハグに修復されてる…?」
メカザウルス『キシャアアアア‼』
百鬼メカ『!!!!』
夏樹「まさか、さっきの追っ手の奴等が…!?」
鉄甲鬼「可能性はあるな…!」 ダッ
李衣菜「鉄甲鬼?何処に行くの!?」
鉄甲鬼「女一人がまだ手術中なんだろう?病院を守る!」
夏樹「アタシらはどうする?」
李衣菜「…一先ずは、病院にいよう!拓海の手術が終わるまでは、離れるのは危険だよ」
夏樹「分かった!」
李衣菜「…これから何が起こるの━━?」
つづく
次回予告
突如、街に姿を現したメカザウルスと百鬼メカの混合部隊。
拓海の手術をしている病院を守るため、孤軍奮闘する鉄甲鬼。その背中に、想いを募らせる李衣菜。
李衣菜の意思を汲んだ夏樹は、バイクに李衣菜を乗せ、早乙女研究所へと走る。
一人戦場に戻る覚悟を決めた李衣菜。避難所に避難した奈緒と加蓮、2人の決意もまた━━?
次回 ゲッターロボ×CG 第3部
第2話『不滅のマシン、ゲッターと共に!』に、チェンジゲッター!