キャスター『━━続いてのニュースです』
キャスター『先日現れた、ランドウと名乗るテロ集団により、世界各地で混乱が続いています』
キャスター『ランドウのものと思われる機械兵器群、通称メタルビーストがイスラエルなど紛争地域に出現し、政府軍や対立する組織など見境なく攻撃を行い、民間人や市街地に多くの被害が出ています』
キャスター『この他、ランドウは国連加盟国の主要都市にもメタルビーストを出現させており、各国の軍隊が対応に追われています━━』
~~~ 新早乙女研究所 談話室 ~~~
奈緒「━━…結構派手にやってるな。ランドウの奴等」
李衣菜「どこの国だって、復興とかで忙しいのに、それもお構いなしなんて…」
加蓮「まるで世界を混乱させて楽しんでるみたい。…ムカつく」
橘 「…ランドウ…、まさか本当に生き延びていようとは…」
李衣菜「橘博士、ランドウの事知ってるんですか?」
橘 「うむ。彼も元は、私と同じ科学者だよ」
李衣菜「科学者…。確かに白衣着てるし、それっぽいけど…」
晶葉「アルヒ・ズゥ・ランドウ。ドイツ出身。機械工学、遺伝子工学…ありとあらゆる分野に精通した正に、天才科学者だった」
加蓮「ふぅん。晶葉も知ってるってことは、よほど有名な人だったんだ?」
晶葉「有名なんてものじゃない。科学者を目指す人間ならば誰しも耳にする。ベガゾーン構想と共に、悪い意味でな」
李衣菜「ベガゾーン構想?」
奈緒「宇宙船の都市に、バーチャルアイドルでも出てくるのか?」
加蓮「何それ?」
橘 「北極基地ベガゾーン…。今から30年ほど前にランドウが世界に向けて打ち立てた一大プロジェクトの礎…」
晶葉「世界中の企業から資金を集め、優秀な科学者、軍人、技術者を一堂に介し、来たるべき新世紀の軍事、経済に至るまでの技術開発を一手に行う世界意思統率構想…。それがランドウが世界に発した構想理念だった」
橘 「ランドウの言葉によれば、人類は種族、思想、国境の垣根を越えて団結することで、多くの人々が思い描く理想の未来の実現を可能とする。ベガゾーンとはそのための礎なのだと」
加蓮「成る程ね~。理屈は分かりやすいけど、それって詐欺っぽくない?」
晶葉「あぁ。事実、その通りだった」
橘 「ランドウは、彼の理念に賛同し、世界中から集った科学者や軍人に人体改造を施し、自らの手駒となるように仕向けたのだ」
奈緒「うわっ…。…やることが外道だな」
晶葉「結局、ランドウの企みは国連の放ったスパイによって暴かれ、ベガゾーンは制圧。首謀者だったランドウも、逃走を図ろうとしたところを狙撃され、その行方は北極の海に沈んだ」
加蓮「それが今になってまた出てきたって訳」
晶葉「残された当時の資料に、ランドウが死んだとは明記されていなかったが…」
李衣菜「でも、北極の寒い海に落ちたら、誰だって死んだと思うよね」
橘 「ランドウには、自身の遺伝子技術で生み出した忠実な配下がいたと言う。通常の生物よりも遥かに強化された肉体を持つ配下に助けられたのならば、合点もいく」
晶葉「更に自信の肉体にまで改造を施して…、今のランドウは世界を制するという野望の他に、世界に対する復讐心もあるのかもしれない」
李衣菜「何それ?勝手な逆恨みじゃん!」
晶葉「李衣菜の言うとおりだ。逆恨みで世界を滅ぼされたあげく、ランドウに明け渡すわけにはいかない」 パサッ
テーブルの上に資料を置く。
奈緒「何だ、これ?」
晶葉「以前お前達が戦闘した、メタルビーストとそれを操っていた者の検査結果だ」
加蓮「やっと~?結構時間掛かったね」
晶葉「何分未知のテクノロジーも多く使われていたからな。構成材質は間違いなく無機物だが、ナノマシンの集合体で、生物のような動きが可能になっている」
橘 「ふむ…。構成するものが機械と言うだけで、インベーダーに似ている、と言うことかね?」
晶葉「大まかなところは。メタルビーストを生み出す際に参考にしたんでしょう」
橘 「成る程…」
李衣菜「それで、これを操っていた人って、…やっぱり人間?」
晶葉「李衣菜達に重要なのはそちらだろうな。先ずは結果から。コックピットと思われる部位から回収された者を調べてみた結果、エドワードと言うカナダ人の軍人であることが分かった」
奈緒「やっぱそうなるよな…」
加蓮「人間が相手だもんね」
晶葉「あぁ。だが、身元を確認していく上で、彼は湾岸戦争時に戦死している事が分かった」
奈緒「はぁ?…どう言うことだ?」
橘 「人体蘇生…。ランドウはそれについても研究していたと聞く」
李衣菜「じゃあ…!死んだ人間を蘇らせて、手駒にして使っているってこと!?」
晶葉「分りやすい蘇生ならば、まだ生易しいのだがな…」
加蓮「…どう言うこと?」
晶葉「言った筈だ。メタルビーストは生物と同等の動きを可能にしている。だが、実際に生物の動きは、コンピューターのような正確さでは動いていない」
橘 「まさか…!」
晶葉「ランドウは人間の…生物の頭脳を、メタルビーストの制御中枢として利用している」
加蓮「何それ…。人間でもなんでもお構い無く、道具と一緒ってこと?」
晶葉「だろうな。実際、ある意味で言えば、生体部品は恒久的な生産可能だ。しかも、死んだ人間から再利用可能となれば、場合によってはそちらの方が供給の手間は掛からないだろう」
加蓮「本気でそんなこと言ってるの?」
奈緒「加蓮、落ち着け。何も晶葉がそう思ってるって訳じゃないんだからさ」
加蓮「……っ。…ごめん」
晶葉「気にしていない。私も、科学者である前に人間であるつもりだからな」
橘 「最早、ランドウの研究は狂的領域まで達している」
晶葉「誰かがこの暴挙を止めなくてはならん」
奈緒「それがあたし達って訳だな」
李衣菜「言われなくたって!マッド・サイエンティストに、人間も世界も好きにさせるわけにはいかないよ!」
晶葉「うむ。ランドウに利用されている者には申し訳ないかもしれんが、生きている人間でない以上遠慮はいらん」
奈緒「あぁ…!生命を粗末にしたらどうなるか、ランドウに教えてやろうぜっ!」
「「「……」」」
奈緒「あ、あれ…?」
李衣菜「あ…ごめん…。まさか奈緒がそんな熱い感じで締めるなんて思わなくて…」
奈緒「な、何だよ~!あたしだって冷血じゃないんだ。晶葉からそんな話聞かされて、黙って頷くだけでいられるかって!」
李衣菜「そうだよねっ、ごめん。気持ちはみんな一つだから…」
奈緒「だったらもう少しノッてくれよ~!」
加蓮「……」
スタスタ…
李衣菜「加蓮?」
加蓮「ごめん、ちょっと頭冷やしてくる。話はもう大体済んだよね?」
晶葉「あぁ。あまり気負うなよ」
加蓮「…分かってるよ。それじゃあ━━」
李衣菜「…大丈夫かなぁ。加蓮」
奈緒「まぁ、アイツも複雑だった時期があるからな…」
橘 「それ故、命に対しては特に敏感になるのだろう」
李衣菜「私だって、さっきの話、スゴい嫌な感じしたくらいだし…、ねぇ」
晶葉「まぁ、もう少し経ったら様子を見に行ってやってくれ。チームメイトのケアは、チームメイト同士、だぞ」
李衣菜「分かってる。……」
━━。
~~~ 新早乙女研究所 外 ~~~
加蓮「━━…うん。うん…。それじゃ、明日。頑張って」
プツッ━━
李衣菜「こんなトコいたんだ」
加蓮「…リーナ」
李衣菜「夜は冷えるよ。上着くらい持ってかないと。はいコレ」 つココア
加蓮「あ、ありがとう…」
李衣菜「苦い方が良かった?」
加蓮「ううん。今はこっちの方が落ち着くかな」
李衣菜「そっか…」
加蓮「……」
李衣菜「……」
加蓮「…そう言えば奈緒は?」
李衣菜「晶葉と橘博士と、これからの打ち合わせ」
加蓮「あぁ…」
李衣菜「私達のチームだと、そう言うのは一番適任でしょ?」
加蓮「それは…、そうかも。で、リーナは追い出されてきたんだ?」
李衣菜「ちょ…、違う違うっ。打ち合わせを円滑にするために抜けてきただけだから」
加蓮「それ、あんまし変わんないから」
李衣菜「うぅ…。っと、それより!さっき、誰かと電話してたみたいだけど、もしかして前に会った…」
加蓮「うん。明日手術なんだって」
李衣菜「そっかぁ…。私もあの日に会って以来、一度も会えてないなぁ」
加蓮「拓海はたまに来てたけど?」
李衣菜「え?ホントに?」
加蓮「うん。トランプとか、ゲームとか持って来て。ずっと病院にいたからね…、あの子にはなんでも新鮮みたい」
李衣菜「へぇ…。何か、意外…」
加蓮「それ、拓海の前で言ったらまたぶん殴られるよ?」
李衣菜「ははっ…。それは勘弁」
加蓮「……」
李衣菜「……。上手くいくといいね。明日の手術」
加蓮「うん…」
李衣菜「そうだ!明日何もなかったら、私達でお見舞いに行こうよ!」
加蓮「えっ」
李衣菜「私ももう一回会いたかったし、今度は奈緒も連れて、手術が終わった頃を見計らってさ」
加蓮「うん、いいかもね。それ」
李衣菜「うんっ!よぉーっし、そうと決まったら明日が楽しみになってきた!明日だけは出てこないでよ、ランドウ!メタルビーストーーッ━━!」
━━ 翌日。
李衣菜「ほら奈緒!早く早く!」
奈緒「そ、そんな焦んなって!入院してるんだし、どっかになんて行きっこないだろ?」
李衣菜「だーけーどー!ほら、加蓮はもう行っちゃったよ?」
奈緒「マジか?見当たらないと思ったら…」
ガシャン ブー
無慈悲な改札。
奈緒「……。もうっ!何であたしばっかりこうなるんだぁー‼」
~~~ 私立病院 エントランス ~~~
加蓮「━━…はぁ…はぁ…はぁ……」
院長「……」
加蓮「……あ、院長先生っ!」
院長「…あ…ほ、北条くん…」
タッタッ
加蓮「しゅ、手術は…!あの子は…!」
院長「……」
加蓮「…先生?」
院長「……すまない!」
加蓮「……え?」
院長「最高のスタッフで臨んだ。機材に不備もなく、全てが万全の状態だったんだ…!だが、術中に予想以上の出血があって…」
院長「…いや、言い訳は見苦しいね。全て私が至らなかったんだ…」 ガクッ
加蓮「ちょ…ちょっと先生…。何言ってるのか、全然分かんないよ…?あ、あの子は…」
院長「彼女は……死んだよ」
加蓮「……」
李衣菜「━━…加蓮待ってったら~…。もう、一人で行くんだから…」
奈緒「待て、李衣菜」
李衣菜「何?」
奈緒「…様子が変だぞ」
李衣菜「様子って、何か呆然としてて院長が項垂れて…。まさか…!そんな!」 ダッ
ガッ
李衣菜「っ!?ちょっと奈緒、離して…!」
奈緒「待てって。あたしらはあっちで待ってよう」
李衣菜「え…。でも、加蓮は?」
奈緒「今はそっとしといてやろう。な?」
李衣菜「う、うん…━━」
数分後。病院出口。
加蓮「……」
李衣菜「か、加蓮…」
奈緒「よ」
加蓮「……2人共どこ行ってたの~?あんまり遅いから、迷子にでもなってるのかと思った」
李衣菜「え…」
奈緒「逆だろ?お前が見当たらないから、その辺を探してたんだよ」
李衣菜「ちょっと…?2人共…?」
加蓮「そうだったんだ…。ごめんごめん。お詫びになんか奢るからさ。それで許して?」
奈緒「もぅ~、しょうがないなぁ。じゃ、とっとと行くぞ~」
加蓮「うん」
スタスタ…
李衣菜「あ…。……」
「やぁ」
李衣菜「え?あ…」
男 「また会ったね」
李衣菜「この間の…」
男 「今から、ちょっと時間あるかな?…少し話がしたいんだ。ネオゲッターのパイロット、多田李衣菜くん?」
李衣菜「っ…!?アンタ、何者?」
男 「ここじゃあちょっと。怪しいものじゃないって事だけは、信用してほしいな」
李衣菜「……」
奈緒「李衣菜ーー!何やってんだーー!?早く来いよーーーっ‼」
李衣菜「奈緒…!」
男 「コレから食事かい?なら丁度いい。私が奢るよ。メンバー3人に、聞いてもらいたいことだしね」
李衣菜「……」
李衣菜「奈緒ごめんー!ちょっと急用!先に行っててーー‼」
奈緒「はぁ!?」
李衣菜「すぐ終わるからー!お店決まったらメールで教えてー‼」
奈緒「…ったく、仕方ないな!先行ってるぞーー‼」
スタスタ…
李衣菜「メンバーの一人は、今ちょっと…。だから私一人で行くよ。良いでしょ?」
男 「あぁ。それでも勿論構わない。着いてきてくれ」
━━。
~~~ 喫茶店 ~~~
李衣菜「……」
男 「煙草臭い所で申し訳ない。だが、こう手狭な店の方が、かえって安心するんだ」
李衣菜「そう…ですか」
男 「私も一本、良いかね?」
李衣菜「…どうぞ」
男 「あはは…。そう警戒しないでくれ」
李衣菜「……」
男 「…ふぅ……」
李衣菜「おじさん、何者?」
男 「おじさん…。まぁいいか。今さら隠す必要もない。私は、政府諜報機関の人間さ」
李衣菜「諜報機関…?漫画とかによく出てくる?」
男 「似たようなものだと思っていい。私は、ある筋からの情報で、あの病院の調査をしていたんだ」
李衣菜「ある筋の情報…?」
男 「それは教えられない。知れば、私は君の自由も奪わなくてはならない」
李衣菜「……」
男 「……。以前にも君達をあの病院で見掛けたが、あの病院には…」
李衣菜「……友達が、入院してたんです」
男 「していた…?…そう言うことか…。立ち入ったことを聞いてすまない」
李衣菜「いえ…」
男 「しかし、それなら君に、少し辛い話をすることになるかもしれない」
李衣菜「え…?」
男 「私があの病院を調査していた理由だがね、あの病院には、ランドウと関わっている可能性がある」
李衣菜「っ…!」
男 「いや、あの病院はランドウと関わりを持っている」
李衣菜「ど、どう言うこと…!?」
男 「…この写真を見てくれ。これは、私があの病院に忍び込んで撮影したものだ」
李衣菜「これ…?…っ!?」
男 「病院の地下…。霊安室よりもずっと深く、通常のエレベーターではいけない階層に存在した研究スペース…。それはそこで収めたものだ。写真にもある通り、ランドウへの報告書も確認できた。それと…」
李衣菜「……っ」
男 「グロテスクなモノは苦手だったかな?」
李衣菜「っ…そ、そんな事は…」
男 「嫌なら無理をする必要はない」 スッ…
李衣菜「……」
男 「ランドウは病院という体面のいい施設を使い、遺体を使って人体実験をしている。これはその証拠なのさ」
李衣菜「そんな事…、そんな事って…!」
男 「信じる信じないは任せるさ。けど、病院の件は上に報告した。結果、病院の強硬制圧がされることになる。ランドウが関わっている以上、抵抗もあるだろう。病院は、この街から無くなるかもしれない」
李衣菜「……どうして、その話を私に…?」
男 「君も、この国を守るゲッターのパイロットだからね。相手の遣り口は知っておいた方がいいだろう?」
李衣菜「……」
男 「連中には大人も子供も関係ない。人間を都合のいい道具と勘違いしている。今まで多くの非人道的なやり方をする連中を見てきたが、その中でもこれは一線を画している」
男 「…言いにくいことだが、君の友達も、ランドウに利用されるだろう」
李衣菜「…分かってる。こんなの…許しておけないよ」
男 「今この国に、実力行使でランドウを打倒できるのは君達しかいない。自分よりも子供にこんな事を言うのは間違っていると思うが…」
李衣菜「ううん。おじさんの気持ちは伝わったよ」
男 「…本当にすまない」
李衣菜「いいよ。…ランドウは必ず倒す…!それは、誰かに言われなくったってもう決めたことだから」
━━。
━━ 深夜、新早乙女研究所。寝室。
李衣菜「……」 Zzz…
ウゥゥゥン… ウゥゥゥン…ッ
李衣菜「……!?…な、何…っ!?」 ガバッ
奈緒「何って、警報が鳴ったら出撃だろ!」
李衣菜「しゅ、出撃ぃ…!?こんな夜遅くに?」
奈緒「相手がそんなの考えてくれるわけないだろ!…ほら、加蓮も早く起きろ!」
加蓮「う~…ん…。ぐっすり寝てたトコなのに~…!」
奈緒「のんびりしてる時間なんてないぞ!布団から体起こして、目を開けて!」
加蓮「……夜更かしは肌の天敵だし、爪のノリも悪くなっちゃう…」
奈緒「文句と怒りはランドウにぶつけろ。早く帰ってこれれば、早く寝られるから」
加蓮「…分かった」
李衣菜「奈緒は加蓮の着替え手伝ってあげて!私は先に行ってるから!」
奈緒「お、おう!」
ダッ
━━ ネオイーグル号コックピット。
橘 『李衣菜くん、体の調子は大丈夫かね?』
李衣菜「橘博士!ちょっと眠いけど大丈夫です!戦ってれば覚めますから!」
橘 『そうか…。敵の出現ポイントだが、市街地の真ん中だそうだ』
李衣菜「どうしてそんなところに…!?」
橘 『分からん。時間も遅かったからか、人的被害も少ないそうだ。が、これ以上被害を増やしていいと言うものでもない』
橘 『出撃準備が整い次第、出撃を急いでくれ』
李衣菜「了解!」
李衣菜(…敵の出現位置…。おじさんが病院に強硬制圧するって言ってたけど、何か関係があるんじゃ…)
奈緒「待たせたな、李衣菜!」
加蓮「2号機、3号機、両方スタンバイOKだよ」
李衣菜「加蓮、目は覚めた?」
加蓮「何とかね~。早く迎撃して、ランドウには早いトコお帰り願おうよ」
奈緒「賛成だ。夜襲だなんてされたら溜まったもんじゃないしな」
李衣菜「そうだね。夜更かしはアイドルの敵だしね」
李衣菜(病院の事、2人には言ってなかったけど、言った方がいいのかな…?)
奈緒「何してんだ?とっとと出撃するぞ!」
李衣菜「分かってる!」
李衣菜(…ううん。出撃前に変に動揺させたりしちゃったら嫌だし…、帰って、夜が明けたら落ち着いて話そう!)
李衣菜「━━ネオゲッターチーム、発進!」
~~~ 市街地 ~~~
奈緒「ひゃ~…!何だよ、これ…。街が煙と炎で、まるで地獄みたいだな…」
李衣菜「…人に被害は出てないって言っても、街中に出られたら…」
奈緒「折角復興したのに…。メタルビーストは何処だ?」
李衣菜「……。いた!あそこ!
加蓮「…ッ!あの場所って…。私立病院のある場所…!?」
李衣菜(……!やっぱり…)
奈緒「あれじゃあ、入院してた患者だって…」
加蓮「…っ」
李衣菜「これ以上被害を増やすわけにはいかない。合体するよ!」
李衣菜「ゲッターチェンジ!」
タコのように、無数の触手を生やしたメタルビーストと対峙する。
李衣菜「行くよ━━!ショルダーミサイルッ!」
ショルダーミサイルを命中させて動きを抑え、
李衣菜「やぁあああッ‼」
ネオゲッター1を走らせ、前部と思われる部分から、二股に生える巨大なトカゲの頭を躱し、メタルビーストに飛び付く。
李衣菜「この距離まで近づけば、例え触手持ってても、頭の顎がおっきくても…!……えっ!?」
加蓮「あれって、コックピット?」
奈緒「人が乗ってるのか!?」
加蓮「ガラス越しに見えてるのって、嘘…!」
「その声は、やはり北条くん達かい?」
加蓮「院長先生!どうして…!」
院長「ふふふっ…。後少しのところまで来ていたんだが…。肝心なところで、この国の覚悟を侮っていたよ」
加蓮「どう言うこと!?」
院長「彼らが悪いんだ。私の崇高な研究の邪魔をするから…。報いを受けるのは当然なんだよ」
奈緒「報い…?研究ってなんの事だ!?」
院長「それは…ね!」
李衣菜「ぐっ…!」
メタルビーストが胴体を動かし、病院の跡地へネオゲッター1を横倒す。
李衣菜「くっ…!このぉっ…!」
加蓮「何…これ…!?」
李衣菜「っ…!見ちゃダメ!」
モニターに映ったのは、メタルビーストによって破壊された手術台らしきもの。更には培養液の詰まった、内臓器や脳を露出させた人の入ったカプセル。バラバラに解剖され、手足と臓器、胴体などに分けられた人々の残骸など。
一部の人体には、機械を埋め込まれた形跡があった。
奈緒「うぅ…っ。何だよ、これ…!」
院長「蘇生体だよ。ランドウ様は私に与えて下さった、神にも等しい実験の成果さ」
加蓮「ランドウ…!?」
奈緒「何が神にも等しい実験だ!ただの人体解剖じゃんか!」
院長「生体部品は有用なモノもあるが不要なモノも多いからね。だから、必要なくなったものを機械で代用して蘇らせるのさ」
奈緒「機械で蘇らせる…、サイボーグゾンビって訳か!」
院長「それの何が悪い?機械部品に交換する事で、生前以上に身体能力も強化される。死や病に恐れる事のない理想の肉体…。それが手に入る、素晴らしい事じゃないか?」
李衣菜「そんなの医者のする事じゃないよ!医者だったら、病気に向き合って患者と一緒に病気に立ち向かうものでしょ!」
院長「そうさ。これはもう医学を越えた、人類進化の極地に至る実験なんだよ」
李衣菜「何…?」
院長「人間は脆い。病に倒れ、体に欠損が出れば、すぐに身体機能に弊害が出る。何より、死は逃れようのない運命だ」
院長「それら全ての問題を解消し、死を超越する!それこそ人類が思い描く最大にして究極の夢だろう!?」
奈緒「何が夢だよ!人間の体を玩具かプラモデルみたいに…!フランケンシュタインだってもっとマシな外見してるぞ!」
院長「外見はこれから改良していくさ。死んだ人間も生き返る。もう誰も不幸になることはない。死の哀しみを受け入れる必要はないんだ」
加蓮「……っ」
少女だったもの。
加蓮「っ…」
李衣菜「もしかして、あの女の子も…!」
院長「……。彼女に身寄りはなかった。実験のモルモットにするには丁度いい」
李衣菜「ふ、ふざけないで!それで救える命を、アンタは…!」
院長「何を怒っているんだい?技術の進歩には犠牲も付き物。蘇生体の実験が成功すれば、彼女は蘇る!何も心配する必要はない!」
李衣菜「本気で言ってるの…?」
奈緒「ダメだ。最初から思考回路が狂ってんだよ!コイツは…!」
院長「尤も、研究施設を軍の特殊部隊に破壊されてしまったから、それももう叶わないけどね」
加蓮「……」
院長「北条くん、君なら分かるだろう?幼い頃から病弱で、何時も死の危機に直面していたことのある君になら、いかに私の実験が素晴らしいか」
李衣菜「加蓮…」
加蓮「……。確かにね。外で私と同い年位の子達が走り回ってる時に、それが出来ない…。こんな体なら要らないって、ちっちゃい時は思ってたかも」
奈緒「おい!」
加蓮「だけどね、辛い事も、嫌な事も乗り越えるから、人は強くなれるの。それが分からないアンタに、助けられる命を助けないアンタに、医者を名乗る資格はない…!」
李衣菜「加蓮の言うとおり。人間は死があるから、今を精一杯生きようと思えるんだ!」
院長「……はぁ、残念だよ。私の理想が理解できないとは」
奈緒「命を命とも思わない奴の考えなんて、分かってたまるか!」
加蓮「アンタは医者なんかじゃない。勿論、神様なんかでもない。命を弄ぶ人間のクズだよ!」
院長「ならば話は終わりだ。死ねッ!」
李衣菜「━━ッ!」
振り下ろされた前肢の触手を、後転で躱し、勢いのまま立ち上がって体勢を直す。
李衣菜「加蓮、ネオゲッター3にチェンジするよ!」
加蓮「…え?」
李衣菜「加蓮の怒り、アイツに思い知らせるんだ!」
加蓮「……。分かった…!」
李衣菜「オープンゲット‼」
加蓮「ゲッターチェンジ‼」
加蓮「━━ふっ!」
院長「ぐぉっ!?」
上空で合体したままメタルビーストに目掛け落下。のしかかる。
加蓮「~~~…!そこを…どいて!」
両手でメタルビーストを抑え、病院の位置から引き離す為に引き摺り倒し、車道へ。
院長「ぐぅ…!」
加蓮「はぁああっ‼」
力強く握った拳に勢いをつけ、渾身のゲッターパンチを叩き込む。
院長「ぐあああああっ!?」
奈緒「良いぞ!その調子でやっちまえ!」
院長「う…うぅ…!君達、本気か…!?本気で私を殺す気か!?」
李衣菜「何を今さら…命乞いする気!?」
奈緒「散々命を奪ってきておいて、そんな都合のいい話があるか!」
院長「君達はそれでいいのか!?自分達の手を血で汚すことになる!血塗られた手でマイクを持って、ステージに立つのか?」
奈緒「それは…!」
院長「フハハハハ…!それにだ、君達の都合で私を殺せば、結局は私と同じ側の人間になると言うことだぞ?君達はそれでいいのかな?アハハハッ!」
李衣菜「コイツ…!構う事ないよ、加蓮!」
加蓮「……!」 ガッ
ネオゲッター3の手で、コックピットブロックを鷲掴む。
院長「ヒィッ!」
加蓮「ッ!」
ズルンッ
メタルビーストからコックピットブロックを引きちぎる。
奈緒「加蓮、お前…」
加蓮「殺しはしないよ。コイツにはちゃんと、法の罰を受けてもらうから」
院長「は…ははっ」
李衣菜「それでいいの?」
加蓮「ホントは今すぐにでもコレを握り潰したいくらいだけどね。アイツの思い通りになるなんてゴメンだし」
奈緒「ま、何はともあれ、これで一件落着か…?コックピットは引きちぎったんだし…」
李衣菜「待って…。メタルビーストの様子が変だよ!」
加蓮「━━!?」
メタルビースト『━━‼』
全身を回転させ、ネオゲッター3を振りほどく。
加蓮「きゃっ!」
コックピットブロックが手から離れ地面に転がる。
加蓮「うぅぅ…っ!」
奈緒「どう言うことだ!?コックピットは切り離したのに…!」
院長「あはははははははッ!」
李衣菜「!?」
院長「本当にここがコックピットだと!?各触手には独自の攻撃システムが組み込まれている。ここはただ目標を指示している謂わば指令室の様なものさ!」
奈緒「何だって…!それじゃあ…!」
院長「目標へのコントロールを失ったら、メタルビーストは暴れだすぞ!もうその暴走を止めることは出来ん!」
加蓮「厄介な事してくれるね…」
李衣菜「引きちぎったのは私達だけど…」
院長「ハハハハハハッ‼やれぇ!私のメタルビースト!私の研究を受け入れない世界なぞ全て破壊してしまえぇえ‼」
メタルビースト『━━!!!』
奈緒「ヤバイ…!アイツ、滅茶滅茶に暴れ回ってる!何とかしないと…!」
加蓮「分かってるから、ちょっと静かにしてて!舌噛んでも知らないよ!」
加蓮「━━タンクモード!」
ネオゲッター3の脚部を車輪に変形させ、突進。
加蓮「このっ…!」
両の拳を叩き込み、抑え込もうとするが、
メタルビースト『━━!?‼』
加蓮「きゃあっ!」
即座に回転して暴れるメタルビーストに引き離される。
加蓮「ッ…フィンガーネット!」
ネットをメタルビースト上空から四方に展開し、捕縛。
加蓮「リーナ!エネルギー出力を最大に!」
李衣菜「分かった!」
加蓮「━━スパークッ!」
ネットに放電。メタルビーストを包むネットで、全身を焼いていく。
メタルビースト『!!!』
メタルビースト、ネットを破壊。
加蓮「ッ」
すかさず、巨大な二股の頭部の内、一つを両手で抑え、そのまま小脇にホールドし、
加蓮「…やぁああ!」
根本から引きちぎる。
メタルビースト『!?!!~~!』
奈緒「よっしゃあ!いい調子だな、加蓮っ!」
李衣菜「このままトドメだ!プラズマブレイクを使うよ!」
加蓮「分かってる!プラズマ…!」
院長「フフフッ…。殺す…。そうか、君達はあの子を殺すのか!」
奈緒「アイツ、この期に及んで何を!」
李衣菜「…!まさか、アンタ…!」
院長「君達だって、メタルビーストの解析は進んでいるんだろう?なら、アレが何を使って制御されてるか、既に知っているはずだ」
加蓮「っ…!」
奈緒「おい…。まさか、その女の子の頭脳を、制御中枢に…!」
院長「生体部品は入手が容易でいいが、個々に適正や適合があってね。特に大人のものはなかなか…」
院長「その点、子供はいい。素晴らしい順応性と適応力で、すぐにメタルビーストのボディに馴染んでくれた」
李衣菜「さっき、女の子を蘇らせるって…!あぁ言ったのは嘘だったの!?」
院長「まぁ、君達を動揺させるための方便、かな?」
李衣菜「外道…!」 ギリッ…
院長「ところで、私に気を取られていていいのかな?」
加蓮「!?━━…きゃあっ!」
真正面から、メタルビーストの頭部が殴打し、ネオゲッター3をビルへと押し倒す。
奈緒「ぐっ…!」
李衣菜「加蓮、立てる?」
加蓮「…っ…!……ッ‼」
李衣菜「加蓮!しっかりして!」
院長「あはははは…!いいぞ…!多少予定は狂ったが、ゲッターを倒せば再起の切っ掛けが掴める!やれッ!私のメタルビーストォ‼」
メタルビースト『!!!!』
院長「へっ?━━」
グシャァアッ
暴走するメタルビーストの触手が、院長の乗ったコックピットブロックを叩き潰した。
加蓮「あ…」
奈緒「因果応報、自業自得…。その両方だな」
李衣菜「…そうだね。加蓮、後はメタルビーストを止めるだけだ」
加蓮「……」
李衣菜「私達であの子を助けてあげなきゃ」
加蓮「助けるって、どうやって?」
李衣菜「それは…」
奈緒「加蓮、李衣菜に全部言わせんな。…出来るのか?出来ないのか、どっちだ?」
加蓮「……」
メタルビースト『━━‼』
━━『お姉ちゃん!』
加蓮「……ゴメン、アタシには、出来ない」
奈緒「……」
加蓮「リーナ、お願い…!」
李衣菜「……いいよ。その為の仲間だもん!」
メタルビースト『━━‼』
加蓮「オープンゲット!」
振り下ろされた頭部による一撃を、ゲッターを分離させて回避。
李衣菜「ゲッタァァーーチェェェィンジッ‼」
ネオゲッター1が着地。メタルビーストと対峙。
李衣菜「ソォォードトマホォォォクッ‼」
両拳を突き合わせ、ソードトマホークを抜き打ち、体のやや右側に両手で構える。
李衣菜「プラズマソード…!」
バチン、と青白い稲妻が弾け、ソードトマホークの刀身がプラズマエネルギーを帯びる。
李衣菜「行くよ…!」
加蓮「…うんっ」
一歩踏み込み、メタルビーストに接近。
メタルビースト『!!!』
李衣菜「━━ッ!」
一刀。迫った頭部を両断。
メタルビースト『~~!?!!』
李衣菜「ッ!」
二刀。メタルビーストの右側の無数の触手を一度で全て切り払う。
李衣菜「ッ!」
三刀。左側の触手を切り払い、これでメタルビーストの動きを封じた。
メタルビースト『…!…!…!!』
李衣菜「…えいッ!」
未だもがき、抵抗しようとするメタルビーストの中枢ど真ん中に、ソードトマホークの刀身を深々と突き立て、
李衣菜「うあ゛ぁああああああッ━━‼」
咆哮と共にネオゲッター1を跳躍。メタルビーストの前部から背中を周り、後部に掛けてソードトマホークで斬り裂いた。
李衣菜「……っ!」
ソードトマホークを振り抜き、メタルビーストの後方に着地。ソードトマホークの切断面から、青白いプラズマエネルギーが弾けている。
奈緒「……や、やったのか…?」
李衣菜「うん…。コレで全部終わりだ」
ザザ…ザ……
奈緒「何だ…?通信が…」
李衣菜「?研究所から連絡?」
奈緒「いや、そんな感じじゃないな…。これ…」
『ザ…ザ…オ…オお…ネ…オ姉ちゃ…ザザァ…』
李衣菜「この声…!でも、どうして…!?」
奈緒「まさか、プラズマのショックで!?」
加蓮「…嘘……」
『━━ザザ…ザ……バいばイ━━』
爆発。
メタルビーストは、消滅した。
奈緒「━━…何だよ…。何だよこれ…。こんな後味悪いのって…」
加蓮「……。病院でさ、リーナ、見ちゃダメって言ってたでしょ?」
李衣菜「え?…うん」
加蓮「知ってたの?」
李衣菜「うん…。今日の夕方くらいに、聞かされたんだ」
奈緒「あの人か…」
加蓮「それまで、何でアタシ達に黙ってたの?」
李衣菜「変に動揺させたくなかった。あと、出来れば嘘だと信じたかった」
加蓮「…そっか。……」
加蓮「クッ…うぅ…っうっ……!」
李衣菜「加蓮…」
奈緒「……。そっとしておこう。今は心を整理する時間が必要だろ。お互いにさ」
李衣菜「うん…」
奈緒(……)
李衣菜(……)
加蓮「うっ…グスッ…。ごめん…、ゴメンね…!」
李衣菜(……。人の想いも、生命さえ弄んで、争いを拡げるランドウ…。許せない…!)
李衣菜「絶対に許さないッ!私とネオゲッターで、必ずアンタらを倒してみせる━━!」
つづく
次回予告
アメリカで建造された、巨大戦艦テキサスが、長期航行訓練の過程で日本へとやってくる。
テキサスが日本に滞在する間、テキサスの護衛任務を託されたネオゲッターチームの面々だったが、来航初日早々、ランドウのメタルビーストの襲撃を受ける。
対応に出撃したネオゲッターロボは、そこで戦艦テキサスを守る1機スーパーロボットに出会う━━!
次回、ゲッターロボ×CG 第3部
第5話『アメリカンヒーロー、テキサスマック参上‼』に、チェンジゲッター!