──
茜 「えっ!?」
美穂「帝王…ゴールって…」
茜 「前に日本を襲ってきた恐竜帝国を率いていた親玉でしたよね?」
美穂「うん…。卯月ちゃんが、私達がゲッターに乗って戦う切っ掛けになった、最初の敵の筈」
茜 「けど、帝王ゴールは、確か未央さんが最初のゲッターと引き換えに倒したはずでは!?」
アーニャ「けど、聞き間違える筈、ありません。あの時の…決戦の、直前…!日本全土に宣戦布告した、あの声を!」
ゴール「うあ゛ぁああああああ~~~!!サル共めェ…!よくも!よくもよくもよくも!!よくもぉ~~~ッ!!」
ラセツ「フハハハ!余興としてはよかろう?かつて倒した仇敵と戦うと言うのは」
卯月「ラセツ!貴方がゴールを、蘇らせたって言うんですか!?」
ラセツ「左様。恐竜帝国の最終決戦、ゴールがゲッターの光の前に消し去られるより以前に採集しておいた奴の細胞を、ランドウのバイオテクノロジーを用いて培養したのだ」
アーニャ「つまり、あのゴールは、クローン…。偽物、ということですか」
卯月「細胞を遺しておくなんて、そんなことに何の意味があるんですか?」
美穂「それもだけど、どうしてクローン何て…、そんなこと?」
ラセツ「恐竜帝国を百余年率いてきた帝王ゴールの威光とは、それほどのものと言うことだよ。帝国がマシーンランドで散り散りになっても、未だにゴールを信奉する者は多い」
茜 「そういう人達を利用するために、貴方は!!」
ラセツ「そう。恐竜帝国において偉大な存在感を持つ帝王ゴール。それを配下とする私の存在は、さらに神格化される!…尤も」
ゴール「ぐわぁああ!!死ね!死ね!!死ねぇえ!!私に逆らう者は、みんな死んでしまえ~~~っ!!」
ラセツ「精神の成熟には、かなり問題があったようだが」
茜 「そんなのただ尻馬に乗ってるだけじゃないですか!虎の威を借る狸とは、まさしくそのものです!」
アーニャ「虎の威を借るのは、狐、ですよ?」
茜 「あんなのは、狸で充分です!」
アーニャ「…確かに、人を化かして嘲笑う…。狸にはピッタリ、かもしれませんね」
美穂「狸にも失礼だと思うよ…」
ラセツ「なんとでも言うがいい!貴様らがどれ程愚弄したところで、私が帝国を支配する事実は変わらん!」
卯月「そんな形だけの支配が、何時までも長続きする筈がありません!終わらせます!私達が、今度こそ何も犠牲にはさせずに!!」
ズォォオオオオオッ
莉嘉「!? 何…これ?ゲッター線の出力が上がってる…?D2のダメージが…!」
ゲッターD2が淡いゲッター線の光に包まれ、表装のダメージ痕が消えていく。
卯月「倒します!命を命と思わない人を、自分の利益のために、他人の命を利用する人を!!これは、そのための力です!」
ラセツ「ふん…。まだそんな余力が残っていたか。だが、こちらのダイノゲッターとて、一筋縄ではいかんぞ」
ゴール「あぁあああああッ!!忌まわしい!忌まわしき、ゲッターの光ぃいいいい!!!」
グァッ
茜 「!! 来ます!アーニャさん!!」
アーニャ「ッ! プラズマファントム!!」 ブォンッ
ブラックダイノゲッターを翻弄しようと、高速機動を展開。無数の分身で包囲し、向こうの足を止めさせる。
アーニャ「どうですか!?」
茜 「流石です!これで、あとはこっちのペースに持ち込めれば!」
美穂「ダメだよ!早く、避けて…!」
アーニャ「えっ──?……きゃあっ!!」
ブラックダイノゲッターの貫き手が、プロト・ゲッター2の鳩尾に突き刺さる。
アーニャ「ア゛…アァ……っ!?」
ゴール「まやかしいぃいいいっ!!!!小癪小癪小癪小癪ぅううううう!!小癪な手をおおぉぉおおぉおおお!!!」
茜 「3号機の部分に直撃…!?美穂さん!大丈夫ですか!?」
美穂「──」
茜 「美穂さん!」
アーニャ「ミホ……?そんな…」
ゴール「勝つ!!勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ!!勝ったッ!!死ねぇえええ!!ゲッタァアアアアア~~~!!」
卯月「ゲッターライフル!!」
ドゥッ
ゴール「ぐっ…!あぁあああああああっ!!」
卯月「落ち着いてください、チーム飛焔!美穂ちゃんはまだ生きてます!」
アーニャ「卯月…。あ……」
茜 「…確かに、生体反応はまだあります…けど…!」
美穂「私なら、大丈夫だよ…」
茜 「美穂さん!」
美穂「えへ……へへへ…。頭を打って、ちょっと意識が飛んでただけ。大したことないよ」
アーニャ「そういうわけにはいきません!」
美穂「相手は来るよ!後退しようとしても、逃げようとしても。テキサスに帰るなら、まずは襲ってくる相手を倒すしかないよ!」
アーニャ「ミホ…」
茜 「分かりました!私達に出来ることは、美穂さんに負担を掛けないよう、なるべく速攻で片を付けるということですね!」
アーニャ「…そうですね。直ぐに終わらせます!ウヅキも力を貸してください!」
卯月「はいっ、任せてください!」
茜 「美穂さんに負担を掛けないと言うことは、ゲッター飛焔は他の形態にも変形できません!アーニャさんだけが頼りです!」
美穂「…ごめんね?足引っ張っちゃって」
アーニャ「Нет…ハンデにもなりません!」
グンッ
アーニャ「プラズマナイフ!!」
プラズマを帯びた手刀を構え、ゲッターを加速。
アーニャ「ワタシが、敵の動きを抑えます。ウヅキは、その内に狙撃して、ください!」
卯月「分かりました!行ってください!」
アーニャ「Ураааа!!」
ゴール「キシャァアアアアア!!!」
プロト・ゲッター2の手刀とブラックダイノゲッターの拳が交錯。
アーニャ「ここで…、せいっ!」
ゴール「っ!」
腕の側をなぞらせて拳を反らしつつ、上体を仰け反らせ反転。勢いよくブラックダイノゲッターの胸部中央を蹴りつけ、反動で飛翔する。
ゴール「ぬぉ~~~っ!!?」
アーニャ「ウヅキッ!!」
プロト・ゲッター2の蹴りで宙に浮く形となったブラックダイノゲッター、プロト・ゲッター2は宙へと飛び上がり、ゲッターD2とブラックダイノゲッターとの斜線上はクリアになっている。
卯月「!」
そこを、狙撃。
ゴール「うがああああッ!!!」
茜 「やりました!直撃コースです!!」
卯月「これで、致命傷を与えられれば…!」
莉嘉「待って!向こうの様子、何か変だよ!」
卯月「何か?何が…」
ゴール「うぅぅぅ……。うぅぅぉぉおおおお!!ゲッタァアアアア~~~!!!」
莉嘉「な、何あれ…。ゲッターの装甲が歪んでく…」
卯月「ゲッターが、変形してる…?」
莉嘉「他の形態になるの?」
卯月「いいえ、あんな変形の仕方なんて…。ともかく!」 グッ
ブラックゲッターを中心に置き、円の機動で水平に回り込み、
卯月「足が止まっているなら、チャンスは今ですね!」
ゲッターライフルのエネルギー弾を斉射。
バチィンッ
卯月「何ですか!?こっちの攻撃が、弾かれた…?」
莉嘉「あれ!向こうのゲッターの背中!」
卯月「背中…?……!」
莉嘉「ゲッターライフルが生えてる!」
ゴール「ゲッターなどぉ…、恐るるに足らずぅううう!!貴様の力は我のモノぉぉおおお!!」
茜 「いっ…!一体何が起こってるんですか!?」
アーニャ「ワタシ達のゲッターには、あんな能力はありません。あれは…!」
ラセツ「そう!これこそが新たなブラックダイノゲッターの力!ゲッター合金と、インベーダーの能力を併せることによって会得した、擬態能力よ!」
莉嘉「ぎたい…?」
卯月「え~っと、確か虫なんかが、鳥に食べられないように植物に姿を似せる…」
ゴール「死ねぇえええいッ!!サル共ォ!!」
アーニャ「っ…!」
隙を突いて肉薄したプロト・ゲッター2だったが、眼前目掛けて放たれたライフルの光線を紙一重で回避するため距離を取る。
茜 「何ですか、あれは!?弾速も、射撃精度も!ゲッターD2のものよりもずっと上ですよ!」
ラセツ「見た目や能力を只々コピーするだけでは芸がないだろう?ブラックダイノゲッターは、受けたダメージから火力と速度、精度を計算して弾き出し、それを凌駕する!」
卯月「こっちがブラックダイノゲッターを倒そうとして、強い武器を使えば使うほど、逆に相手を強くしちゃうってことですか…」
莉嘉「何それ!?そんなのズルじゃん!」
アーニャ「ゲッターライフルが出来ただけでも、隙がなくなりました、ね」
ラセツ「怯えろ!竦め!!全てが、ブラックダイノゲッターの力となるのだ!!」
卯月「……」
莉嘉「ど、どうするの…?こっちがどんな手を使っても無駄なんだったら…!」
卯月「それは違いますよ、莉嘉ちゃん」
莉嘉「え?」
アーニャ「ウヅキの言う通り、です。игры…勝負の勝ち負けは能力の優劣だけではありません!」
茜 「最後まで絶対に諦めない!ガッツと心です!」
ゴール「この力でぇ…ッ!!殺す!!サル共ォォオオオオ!!」
卯月「来ます!回避を!」
アーニャ「ッ!」
背中のライフルを連射し、獣染みた動きで飛び込んでくるブラックダイノゲッターを、2機のゲッターは左右に別れることで去なす。
莉嘉「こんな滅茶苦茶なのどうしようもないよう!!」
茜 「どうにかするんです!私達には、それが出来る筈です!アーニャさん!」
アーニャ「Да!もう小細工は使いません!繰り返し攻撃するのが、ダメなら…!」
プロト・ゲッター2を反転。背部のブースターにエネルギーを込める。
アーニャ「一撃で倒します!」
プロト・ゲッター2、加速。
美穂「っ…!」
アーニャ「Я сожалею…ミホ、ごめんなさい、です」
美穂「私の事は気にしないで行って!アーニャちゃん!」
アーニャ「Да!!」
瞬く間に遥か彼方に飛んで行き、光の粒に。
ゴール「何だ?何をする何をする気だ?!逃がさん!!」
卯月「ゲッターキック!!」
ガンッ
ゴール「ぐっ…!?」
卯月「どうです?これはコピーする必要もないでしょう!」
ゴール「こ…こ、ここここ小癪なぁ~…っ!!小娘ぇ~~~!!!」
卯月「貴方の相手は私です!アーニャちゃん達はやらせません!」
莉嘉「アーニャ達を逃がして、それでどうするの?援軍を呼ぶ?」
卯月「違います!あれは、逃げたんじゃありません!この戦いに、勝つための──!」
ブラックダイノゲッターとゲッターD2が豆粒ほどの大きさに見えるまでに距離を空けたプロト・ゲッター2は音速の世界で、しかし更にその速度を上げていく。
アーニャ「アカネ、ゲッター飛焔のプラズマエネルギーのコントロールをこちらに。ゲッターエネルギーは、お任せします」
茜 「任せてください!ゲッターエネルギーは、推進力に全部、ですね!」
アーニャ「Да.単純明快…お願いしますね。後は、バランサーの制御ですが…」
茜 「このスピードでゲッターがバランスを崩してしまったら、一瞬で塵芥ですからね!任せてください!体幹には自信があります!!」
アーニャ「ふふっ…。任せました。ワタシは──」 クッ
ギュオッ
アーニャ「ゴールを倒します!!」
左腕のドリルアームを構える。
アーニャ「プラズマ・ビット、展開!」
ドリルアームの根本から、3つの小型ビットが放たれ、ドリルの周囲に展開する。
アーニャ「この速度でも付いてきてくれる。流石はアキハの発明、ですね。──プラズマエネルギー、最大出力!!」
ドリルの周囲に展開したビットにプラズマが疾り、回転。膨大なプラズマエネルギーが、ドリルアームを覆い尽くしたそれは、
アーニャ「ハイパープラズマドリルッ!!」
ドリルを突き出す姿勢となったプロト・ゲッター2の全身をも覆い尽くし、巨大な光のドリルとなり、よりその速さを高めていく。
アーニャ「…パイロット・セーフティ。皆さんの姿勢を固定しますね」
パネルの操作で、シートの後ろから姿を見せた固定具が、パイロットの姿勢を固定すると同時に、加速で生じる負荷を軽減する。
茜 「少々息苦しいですね!」
アーニャ「ちょっとだけ我慢、です。ミホにも、無茶をお願いしてしまいますね」
美穂「大丈夫だよ。むしろ、こっちの方がちょっと落ち着く、かな?」
茜 「正しく、シチューにこそカツが合うって奴ですね!」
美穂「シチュー?」
アーニャ「”死中にこそ活”がある?」
茜 「それです!見せつけてやりましょう!人間の!アイドルの、私達の底力を!!」
アーニャ「行きます!!」 グッ
ギュォォオッ
ブースターの青白いプラズマの火が更に勢いを増し、その速度は高速を超え、音速を超え、
アーニャ「亜光速へ!!」
美穂「目標捕捉…。スコープ、固定するよ」
アーニャ「Спасибо、ミホ」
美穂「今の私に出来るのは、これが精一杯だから」
アーニャ「充分、です。あとは、ワタシが、決める、っだけ!」
遥か彼方に置きさった敵の機影が迫る。
ゴール「キエェェェェイッ!!!死ね!死ね!死ね!死ねぇぇぇ!!サルめがぁぁぁあッ!!」
卯月「──っ!っ!…トマホーク、ブーメラン!!」
ゴール「うぐごぉぉぉっ!!」
熊のように左右の腕を振るい、執拗に肉薄するブラックダイノゲッターの正面めがけトマホークを放り投げ、攻撃を回避させる代わりに距離を取る。
莉嘉「こっちのトマホークはもう予備もゼロだよ!どうするの?」
卯月「…スピンカッター!」
莉嘉「えっ!?」
ジャキッ、とゲッターD2の両側腕部から、回転する刃が現れる。
莉嘉(ゲッターD2の武装にスピンカッターはないはずじゃ…?)
卯月「やぁ──ッ!!」
ゴール「むうぅぅ!?」
ブラックダイノゲッターに距離を詰められるより先に懐に踏み込み、振り下ろされかけたその腕を受け止める。
卯月「くっ…ううう~~~!!」
ラセツ「力比べと言うわけか?言っておくが、ブラックダイノゲッターのパワーは、貴様らの知るダイノゲッターのものとは比べ物にもならんぞ!」
卯月「これで、いいんです」 ニコリッ
ゴール「おもろ…面白、面白い!捻り潰してくれるぅぅぅぅぅッ!!」
ギギギ…
ゲッターD2の両腕が、軋みを上げる。
莉嘉「このままじゃ、ゲッターが持たないよ!」
卯月「あともうちょっとなんです!だから耐えて…!ゲッターD2!」
莉嘉「あと、ちょっと…?」
直後、ブラックダイノゲッターの遥か後方に、光りが見える。
莉嘉「! あれって…」
卯月「今です!マッハ・ウィング!!」
ゴール「何ぃッ!?」
マッハ・ウィングを広げ、急上昇で上空へ。
アーニャ「──Ураааааа!!」
直後、ブラックダイノゲッターの背後から迫ったプロト・ゲッター2のハイパープラズマドリルがブラックダイノゲッターを穿ち貫いた。
ゴール「うおおおおおおおッ!!!?」
莉嘉「きゃああああ~っ?!」
大気を震わす亜光速の衝撃波が、上空に逃れたはずのゲッターD2をも揺るがせる。
卯月「ブラックダイノゲッターは!?敵は…!」
茜 「やりました!…か?」
ラセツ「くっ…!流石にゲッターロボ、やってくれる。だが…」
ゴール「うぉぉぉぉおおおおおのぉぉぉれぇええぇえええ!!!!!メスザル如きがぁあああああああッ!!!」
美穂「まだ、立ち上がるの!?」
卯月「破壊できたのは、下半身と右半身だけ…!」
莉嘉「どれだけ破壊しても、パーツが残ってたら再生しちゃう!」
茜 「なら再生される前に一気呵成に!」
アーニャ「ダメ、です!ゲッター飛焔は、今の攻撃でプラズマエネルギー炉がオーバーロード、してます。後180秒、ゲッターは動けません」
茜 「万事休す…!?そんな事が!」
ゴール「!?!!?!?」
突如、ブラックダイノゲッターの周囲が爆炎で包まれる。
莉嘉「何!?」
卯月「この砲撃…、私達の後ろから…!」
ボブ「俺達を忘れてもらっちゃ困るぜ!」
サム「万事休す、つったらそうなんだろうぜ。敵さんの方がよ」
卯月「ロボ・ストーン!キングダム、グスタフ、テキサスマック、ステルバー!皆さん!!」
李衣菜「私もいるよ!」 ピョコンッ
奈緒「お前は自己主張すんなって」
李衣菜「へへっ、お待たせ!」
美穂「でも、スーパーロボット部隊は、メカザウルスの対応に追われてたはずじゃあ…」
ジャック「HAHAHA!! Nice jokeダゼ、ミホ」
シャトナー「俺達があんな雑魚共相手に手を焼くかっての!」
リンダ「精々、数が多いのが厄介だったくらいよ」
奈緒「どんなに改良したって、メカザウルスじゃあ時間稼ぎが精一杯なんだよ!これで、形勢逆転だぞ!」
シュワルツ「雑魚に無駄弾は使わねぇ主義だ。残りの弾を撃ち切るにゃ、ちょうどいい的が残ってた見てぇだな」
ゴール「うおぉおおおおおおッ!!」
サム「な、何だァ!?」
メリー「突然暴れ始めたわ!」
シャトナー「辺り所構わずかよ。まさか、自棄にでもなったってのか?」
ゴール「うぉおおおお~~~っ!!殺す!!消す!!滅ぼすぅうううう~~~!!忌々しいサル共をぉおおおおおおおおおおおおッ!!」
リンダ「それにしたって様子が可笑しいわ」
シュワルツ「アイツ、敵が見えていない…?」
奈緒「狂ってるって言うのかよ…」
ラセツ「……。…フン、クローニングが不完全だったようだな」
莉嘉「ど、どうするの?下手に手を出したら、逆に痛い目にあっちゃうかも…」
卯月「……」
李衣菜「ん~…。遮二無二動くだけだったら、攻撃のチャンスはあると思うけど…」
加蓮「だったらビィトで突っ込んでみる?」
凛 「奴の攻撃でドカンか、踏み潰されてペシャンコか。どちらにせよ、巻き添えはゴメンだけどね」
李衣菜「二人とも手厳しい…」 トホホ…
ラセツ「このまま奴等が混乱する様を眺めているのも面白いが、かつて帝王と呼ばれた男の醜態は見ていられん、か」
ラセツ「潮時だ。ゴール、撤退せよ」
ゴール「うぉおおおおおおおお──!!人間?霊長?否ぁあああ!!!サル!サル!!サルゥウウウッ!!滅ぶべき種族ッッッ!!!!」
ラセツ「……」 ピッ
ゴール「ウ゛ッ!!?」
美穂「動きが止まった…?」
ラセツ「撤退しろ。貴様はともかく、そのゲッターを失うわけにはいかん」
ゴール「…了解。これより帰投する」
バッ
卯月「…? 撤退していく…」
莉嘉「こっちの数が多いから、敵わないと思って逃げたんじゃない?」
メリー「それにしたってタイミングが不自然すぎるわ」
シャトナー「何つうか、壊れた人形みたいだったな」
ボブ「見ろよ。無敵戦艦ダイも退いていくぜ!」
ラセツ「今回の戦いで貴様らに引導を渡すことが出来ればとも思ったが、気が変わった。やはり余興は楽しまなければな。困難があってこそ、覇道の後に制する世界も御しやすい」
李衣菜「逃げるくせに偉そう!」
シュワルツ「全くだぜ!もうすぐテキサスだって来る。俺達が黙って撤退させると思うのかよ!」
奈緒「待てよ!向こうが退いてくれるって言ってんだ。深追いはヤバイんじゃないか?」
茜 「そうです!卯月さんのゲッターの損傷は激しいですし、何より、美穂さんの傷の手当てをしなくては!」
シュワルツ「…チッ」
メリー「みんな、テキサスが来るわ」
ボブ「戦闘終了、なのか…?」
シャトナ-「いいや、始まんのさ。俺の欧州を、トカゲ共の好きになんざさせねぇ…!一匹残らず葬ってやる!」
凛 「そのためにも、今は体制を整えなきゃ。でも…」 チラッ
卯月「…恐竜帝国…。争いの種を生むなら…!」
莉嘉「……」
──。
~~~ 戦艦テキサス 格納庫 ~~~
パッシィィインッ
卯月「あ…」
加蓮「……」
莉嘉「っ……ぁ…」
ボブ「何だぁ?」
リンダ「ボブ」
ボブ「ティラミス中尉…」
リンダ「アンタの機体の損傷も相当でしょ。整備、手伝うわよ」
ボブ「お、おう…」
李衣菜「か、加蓮…!幾らなんでも、出会い頭にビンタは…」
加蓮「ホントはグーで行きたいところを、パーで許してあげただけでも優しいと思ってほしいよ?」
李衣菜「加蓮…。ねぇ、凛からも何とか言ってよ」
凛 「……」
李衣菜「凛!」
加蓮「どうして打たれたかは、本人が一番分かるよね?」
莉嘉「……」
加蓮「分かんないって言うなら、反対の頬もいくよ」
莉嘉「…ゲッターを勝手に動かして、勝手に出撃してごめんなさい…」
パシィイインッ
莉嘉「ぅぁ…っ!」
李衣菜「加蓮!」
加蓮「ちっとも分かってない!」
莉嘉「……」
加蓮「無断使用、無断出撃。おまけに乗り込んだゲッターは損傷させたなんて、そんな当たり前の話をしてるんじゃない」
加蓮「莉嘉、もうちょっとで死ぬところだったんだよ!?」
莉嘉「う…っ」
加蓮「いつも一人で勝手に無茶をして、勝手に傷付いて、一人で無鉄砲する人間にはもう慣れてるから」
李衣菜「それって、私のこと…?」
凛 「自覚はあったんだね」
加蓮「アタシが許せないのは、生きてることの大切さも分かんないで、命を無駄にする人間!」
莉嘉「……」
加蓮「生きてれば、辛いことは幾らでもある。でも、楽しいこと、嬉しいことだってたくさんある。その尊さを何も分からない内に無駄にして!莉嘉に何かあったら、日本に残ってる美嘉はどんな思いをするの!」
莉嘉「…!お…姉、ちゃん」
奈緒「そこまでだ。ちょっと言い過ぎだぞ、加蓮」
加蓮「……」
李衣菜「奈緒!助かったぁ…!」
奈緒「今回の莉嘉の無茶は、莉嘉一人に原因があった訳じゃない。そうだろ?」
加蓮「けど、アタシは…!」
奈緒「あたしは、加蓮の事は分かってるつもりだよ」
加蓮「……」
奈緒「そんで、莉嘉も加蓮の言いたいことは分かっただろ?」
莉嘉「……うん」
奈緒「なら、この話はこれで終わりだ。加蓮だって、別に莉嘉を責めたい訳じゃないだろ?」
加蓮「それは…」
凛 「流石に、死の恐怖を前に一度は逃げ出した奈緒の、言うことは違うね」
奈緒「な…!それは言うなよ…。確かに、あたしだって思うところがなかった訳じゃないけどさ」
李衣菜「けど、お陰で助かったよ。私じゃ、凄んだ加蓮を止められないから…」
奈緒「確かに、怒った加蓮は怖いからな」
加蓮「ちょっと~!それじゃあまるでアタシが猛獣みたいじゃない」
奈緒「ま、だからこそ、加蓮が真剣だってのが、こっちまで伝わってくるんだ」
加蓮「……」
李衣菜「へへ~」 ニヤニヤ
奈緒「な、何だよ…!」
加蓮「別にー?」
李衣菜「奈緒もたまには、かっこいいこと言うよね」
奈緒「な゛っ…!別にかっこいいいとか、そういうつもりで言ったんじゃ…」
アハハハッ…
凛 「やれやれ…。一先ずは一件落着…。でもないか」
莉嘉「……」
凛 「何時まで落ち込んでるの?莉嘉らしくもない」
莉嘉「……ゃしい…」
凛 「え?」
莉嘉「やっぱり、悔しいよ…」
凛 「莉嘉…」
莉嘉「李衣菜は、ゲッターじゃなくても戦える。卯月はゲッターを上手に使いこなせる」
凛 「……」
莉嘉「アタシは、アタシは…!何にも出来ない!あのシャトナーって人の言う通りだよ!」
凛 「…そうだね」
莉嘉「凛…!」
凛 「…私は、卯月ほど優しくもないし、李衣菜ほど甘くもないよ。今の莉嘉に、下手に同情したりしない」
莉嘉「……」
凛 「莉嘉はどうしたいの?今回の戦いで、莉嘉は何を思った?」
莉嘉「アタシは…」
凛 「……」
莉嘉「強くなりたい…」
凛 「ん?」
莉嘉「強くなりたい!」
凛 「……。分かった」
莉嘉「え?」
凛 「ゲッターD2の修理は、今日中に終わる。あそこまで扱えたんだ、あとは訓練次第で、どうとでもなると思うよ」
莉嘉「いいの?」
凛 「今日みたいに、勝手に乗っていかれるよりはね」
莉嘉「凛…!」
凛 「強くなりなよ。誰かを見返すためじゃなく、自分のためにね」
莉嘉「うんっ!」
凛 「それじゃ──」
スタスタ──
莉嘉「うぅ…っ。よぉ~…しっ!」
ゲッターD2>……。
莉嘉「ごめんね、ゲッターD2!こんなボロボロにしちゃって。アタシ、今度は絶対もっと上手く操縦できるようになるよ!」
芳乃「ほー…」
莉嘉「え?あ、えーっと…」
芳乃「ふむふむー…」 ジ-ッ…
莉嘉「えっと、…何?」
芳乃「ふむー。ふふっ、良き眼差しでしてー」
莉嘉「え…?まなざし…?」
芳乃「希望に満ち溢れー、事実に屈することなくー。力強さとー、可能性に支えられしー、強かな眼差しなのでしてー」
莉嘉「よく分かんないけど、褒めてくれてるってことでいいのかな?」
芳乃「然りー」
莉嘉「へっ、えへへ…」
芳乃「してー、そなたは何故に戦うのでしてー?」
莉嘉「はぇ?」
芳乃「そなたの求める力とはー、そなたが進むべき道と果たしてー、交わるものなのでしてー?」
莉嘉「それは…、えっと…」
芳乃「……」
莉嘉「あぁもう!まどろっこしい!!」
芳乃「ほー?」
莉嘉「戦う理由だとか、正義とか悪とか、そんなに大事なの!?」
芳乃「……」
莉嘉「確かに、弱いものいじめとか良くないよ?暴力で何でも解決するとか、サイテーだと思う」
莉嘉「だけど、弱いものいじめをする悪い奴をぶっ飛ばして何が悪いの?アタシを子供だって笑って、見下してバカにしてくる奴を見返したいって、そのために強くなったらいけないの!?」
芳乃「強かな反骨の心ー。打ち付けるほどに強さを増していくー、赤く燃ゆる刀の如くー」
莉嘉「アタシは強くなる…!凛にもそう言った。アタシが思ってること、世界中に伝えるために、それが必要だって言うんなら!ランドウだって、神様だって倒せるくらい強くなって見せる!!」
芳乃「ふふっ」
莉嘉「な、何…?芳乃が聞いてきたんじゃん!」
芳乃「強き意志ー、強き心ー、強き眼差しー。そなたも正しくー、竜の戦士でしてー」
莉嘉「? 竜の戦士?」
芳乃「今は精進に励むのでしてー。大丈夫ー、ゲッターはそなたを選ぶのでしてー」
莉嘉「えー…っと、よく分かんないけど、やるよ!ね、アタシは強くなるから、力を貸してよね、ゲッターD2!!」
ゲッターD2>……!
莉嘉「…? 今、ゲッターが何か…。ねぇ、芳乃……って」
莉嘉「いない…」
つづく
次回予告
復活した恐竜帝国を打倒するため、欧州へと向かった連合艦隊。
訓練を兼ね出撃した李衣菜達ネオゲッターチームに、ドイツでの異常発生が伝えられる。
祖国での異変に飛び出してしまったシャトナーを追って、ドイツへと向かった李衣菜達だったが、そこで、人智をも越えた超高気圧を放つ強敵と遭遇する──!
次回、ゲッターロボ×CG 第三部
第26話『超気圧の檻!強敵、メガタイフーン!!』に、チェンジゲッター!