ゲッターロボサーガ デレマス版   作:E.T.c

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アイドルが殺すなんて言っちゃいけません。


第27話『戦いは誰が為に』

莉嘉「──…う、う~…ん…。待っ…て、お姉…ちゃん…。それ、カブトムシのゼリー──!」

 

莉嘉「はっ!…あ、あれ…?」

加蓮「お、起きた?」

莉嘉「加蓮…。あのね、今部屋でお姉ちゃんが、ペットのカブトムシ用のゼリーを…」

加蓮「どんな夢見てたの?一体…」

莉嘉「え…。夢?」

加蓮「まだ夢見てる~?美嘉は莉嘉が日本に置いてきたんでしょ」

莉嘉「……そっか、夢。夢か…」

加蓮「ようやく目が覚めた?」

莉嘉「あ、うん…。そうだ、アタシ、ゲッターで真っ逆さまに落ちて…。そう、ここは!?」

加蓮「ようやく頭が回ってきた感じだね。って言っても、アタシもここがどこかよく分かってないんだけど」

莉嘉「よく分かんないの?…ここ、洞窟?」

加蓮「って言うよりは地下の空洞って言った方が近いみたいだけどね」

莉嘉「地下の、空洞?」

加蓮「うん。凛が壁面を凝視しながらぶつぶつ言ってた」

莉嘉「凛が?そう言えば、リーナもみんないない…」

加蓮「リーナは落下したゲッターの調子を見てるよ。特に、ネオゲッターの方はちょっとトラブってるみたいだしね」

莉嘉「そっか…。凛は?」

加蓮「この空洞の奥を調べに行ったよ。シャトナーと一緒に」

莉嘉「シャトナーも?」

加蓮「うん。アタシ達が落ちた後を追ってきたみたい。何か、ここは恐竜帝国にとっても、見られたらヤバいトコみたいでさ」

莉嘉「ヤバい?ここが、恐竜帝国の拠点か何かってこと?」

加蓮「お、リーナよりは鋭い」

莉嘉「そう?へっへ~ん、やった☆」

加蓮「喜んでられる状況でもないけどね。アタシ達はつまり、敵陣のど真ん中に落ちたってことなんだから」

莉嘉「あ…」

加蓮「どの辺に落ちたかは、偵察に出た凛達の結果待ちってことで、アタシ達は少しのんびりしてようか」

莉嘉「い、いいのかな?」

加蓮「ん?」

莉嘉「だって、敵の基地に入っちゃったってことなんでしょ?そんな悠長にしてて、いいのかなって」

加蓮「何~?もしかして、怖い?」

莉嘉「そ、そんな事…ないよ」

加蓮「まぁ実際のところ、アタシ達には何にも出来ないしねぇ」

莉嘉「……」

加蓮「アタシ達に出来ることは、精々ゲッターに乗って戦うことだけ。まぁそれでも十分スゴい筈だけど。だったら、英気を養っておくのも、大事なことじゃない?」

莉嘉「えーきを…?」

 

李衣菜「ふぃ~。何とか一段落…」

 

加蓮「あ、帰ってきた。おつかれ~」

李衣菜「加蓮。まぁね…」

加蓮「それで、ネオゲッターの調子は?」

李衣菜「…本調子ではないよ。まったく、帰ったらチーフに文句言わなきゃ…」

加蓮「生きて帰れたら、でしょ」

李衣菜「そういう不穏なことは言わないでよ…」

加蓮「絶対生きて帰ろう!…って、士気を高めてあげてるの」

李衣菜「文句言うために絶対生きて帰るって、何か可笑しくない?」

 

シャトナー「はっ、敵地にいるとは思えねぇな。相変わらず姦しい連中だ」

李衣菜「シャトナー!それと凛も、偵察おつかれ~」

凛 「李衣菜の方もね。全員揃ってるなら都合がいい。一旦状況を整理しよう」

 

──。

 

凛 「──…先ずはこれを見て。シャトナーが持ってたカメラで抑えたモノだけど」

加蓮「へぇ、都合よくカメラなんて持ってたんだ?」

シャトナー「ドイツにいた頃から強行偵察なんてもんをやらされてたんだ。俺のグスタフにゃぁ、その為の道具が一式、備えてあんのさ」

凛 「話を戻すよ。私達が知ってるのと、形は違うけど、作業用の機械にコンテナ…。連中は明らかに、この地下に拠点を築くつもりだね」

李衣菜「まさか、人の居なくなった街を自分達の居住地にして、地上侵略の足掛かりにするつもり?」

シャトナー「間違いなくな。…漁夫の利たぁこの事だぜ」

加蓮「ホント、ランドウとの戦いに乗じてくるなんて、最低」

凛 「人間の倫理観をハ虫類にぶつけても仕方ないよ。問題は、これからどうするかだ」

莉嘉「そんなの、何時もみたいにここをぶっ壊しちゃえばいいんじゃない?」

凛 「それが出来る状況なら、ね」

莉嘉「…?」

李衣菜「グスタフやゲッターD2はともかく、ネオゲッターは不調を解消出来てないから…」

凛 「そのネオゲッターは?」

李衣菜「一応、応急処置はしてあるよ」

凛 「不調の原因は?」

李衣菜「あぁ。左半身の伝達系統の電送ケーブルが一つが、交換してない劣化品でね。それで、戦闘の急制動に耐えきれなくてオーバーヒートしちゃったんだ」

凛 「そう。私のせいだね、ごめん」

李衣菜「そ、そんな…!凛のせいではないよ。最終チェック怠ったチーフのせいだし、普段真ゲッターに乗ってる凛じゃ、ネオゲッターは何て言うか…使いづらいだろうし」

凛 「それは奈緒の代わりに2号機を担当することになった時に、把握してたよ。機体の限界性能を把握できない、私が未熟だっただけだ」

加蓮「はいはい。反省するのはいいことだけど、それでどうするの?ここを脱出するって言っても、一筋縄じゃいかないよね」

李衣菜「結局、私達が落ちたのってどの辺りなの?先ずはそこからじゃない?」

凛 「…ここは、多分拠点建設の資材置き場だよ」

加蓮「そういや、物資っぽいものが置いてあるよね。雑に」

凛 「連中が作業してるど真ん中に落ちなかっただけでも、運がいいよ」

シャトナー「まぁ、連中にも侵入者の報は知らされてるだろ。連中、目の色変えて探し回ってやがる。ここが見つかるのも、時間の問題だ」

凛 「どこに行くの?」

シャトナー「決まってるだろ。トカゲ共にお灸を据えてやるのさ」

加蓮「話聞いてた?今のアタシ達の状態じゃ、お灸を据えるどころじゃないでしょ」

シャトナー「手前ぇらの状況なんざ知ったことかよ。ここの街はドイツの街で、俺が守らなきゃならねぇ街だ」

李衣菜「まさか、たった一人で何とかする気?」

シャトナー「まぁ、何とかしてみるさ。そのために、これまで拾ってきた命だ」

莉嘉「気楽すぎじゃない!?今は、生き残ることを考えようよ!」

シャトナー「おう、手前ぇらはそうするといいさ」

莉嘉「…え?」

加蓮「囮をやるって言うつもり?」

シャトナー「はっ、そんなつもりはさらさらねぇな。俺は、俺の気に入らねぇトカゲ野郎をぶっとばずだけさ」

李衣菜「でも!それって…」

シャトナー「他人の事を考えられるほどお人好しじゃないんでね。手前ぇらも、手前ぇらの事を考えな」

李衣菜「あ、シャトナー!」

 

駆け足でグスタフに乗り込み、起動させる。

 

グスタフ「さぁトカゲ共、これまでの屈辱、晴らさせてもらおうか!」

李衣菜「シャトナー!」

 

空洞を抜け、奥へと進んでいく。

 

加蓮「…行っちゃったね」

凛 「ネオゲッター2なら、ドリルで地上に上がれる。ゲッターに急ぐよ」

李衣菜「っ…!ホントに、本当にそれでいいの?」

加蓮「本当にって、じゃあどうする?」

李衣菜「どうするって、そりゃあ!」

加蓮「整備不良のネオゲッターで、どこまで戦える?悔しいけど、シャトナーの作戦に乗るしかない」

李衣菜「でも、シャトナーは死ぬつもりだ!」

加蓮「それは…」

李衣菜「加蓮はそれでいいの?今を生きてる命を、それを投げ捨てようとする人を放っておいて。生きてる内にやれる事を全力でやる。そうじゃないの!?」

加蓮「……それを言うのは、卑怯だよ」

凛 「じゃあ、李衣菜はどうする?今のネオゲッターじゃ、今まで通りの戦い方は出来ないよ?」

李衣菜「だったら、方法は一つだ」

莉嘉「その方法って…?」

凛 「……」

李衣菜「ゲッターは一つじゃない…!私は、ゲッターのパイロットなんだから!」

 

──。

 

Dゲッタ-1「!!」

シャトナー「んにゃろぉ!!」

 

飛び掛かってきた量産型ダイノゲッター1を、肩に背負ったロケット砲で制する。

 

Dゲッタ-’s「「「!!」」」 ゾロゾロ

シャトナー「はっ、地上よりも豪勢な顔ぶれじゃねぇか。大した歓迎だぜ、ったくよ!」

Dゲッタ-1「!!」 ズワッ

シャトナー「チッ!」

 

複数の量産型ゲッター1によって、正面から一斉に放たれたゲッタービームの光線の群れを、入り組んだ空洞の地形を利用しながら躱す。

 

シャトナー「チッ…!手前ぇらの前線基地もお構いなしかよ」

Dゲッタ-’s「「「──!」」」

 

ゲッタービームを絶えず放つ1号機を先頭に、その絶対距離を近付けていく。

 

シャトナー「へっ、問答無用ってか。それなら、こっちにも考えが……ん?」

李衣菜「──ゲッターライフル!」

Dゲッタ-1「!!?」

 

ゲッタービームの隙間を縫うように放たれたゲッターライフルの光弾が、先頭に立つ量産型ダイノゲッター1の頭部を射抜く。

 

シャトナー「手前ぇ、何しに来やがった!?」

李衣菜「決まってる!恐竜帝国の野望を砕きに来た!」

 

ゲッターD2のコックピットで、決めて見せる。

 

シャトナー「気取ってる場合かよ。何故逃げなかった?」

李衣菜「この基地を壊しちゃえば、みんな帰れる!テキサスの障害も排除できる。一石二鳥じゃん!」

シャトナー「簡単な話じゃねぇ。あの敵を見ろ、たった1機や2機の戦力でどうこうできる代物じゃねぇ。小娘はとっとと逃げ帰りな!」

李衣菜「ならシャトナーはどうするの?」

シャトナー「手前ぇの知ったことかよ。俺の命の捨て場所は、自分で決めるだけだ!」

李衣菜「それが気に入らないって言うから、私はここにいる!」 グッ

 

ゲッターD2が飛び出す。

 

シャトナー「手前ぇ!」

李衣菜「そこで見てろ!ハ虫人の動かすゲッターなんかに…!」

Dゲッタ-1「!!」 キュオ…

李衣菜「負けてたまるかァ!!」

 

量産型ダイノゲッター1が放つゲッタービームを、トマホークで真っ向から迎え撃ち、叩き割る。

 

シャトナー「何っ!?」

李衣菜「そんなヒョロいビームで…!これが本当の──!」

 

ビームを払い消し、トマホークを振り被る。

 

李衣菜「ゲッターの力だぁあッ!」

 

一閃。その一撃で叩き伏せた。

 

Dゲッタ-’s「…!」

李衣菜「トマホーク、ブゥーーメランッ!!」

Dゲッタ-2・3「「!?!!」」

 

量産型ダイノゲッター1を破壊した爆炎から姿を現したゲッターD2が投射したトマホークが、量産型ダイノゲッターの首を刈り取る。

 

メカザウルス『キシャァアアアアッ!!』

李衣菜「はっ!トマホークを手放しちゃえば丸腰って?」

 

得物を手放したゲッターD2に殺到するメカザウルスに対し、拳を握り、

 

李衣菜「甘いっ!」

 

こちらに牙を剥くメカザウルス胴体を、ゲッターD2の拳が突き抜ける。

 

李衣菜「トマホークなんかより、こっちの方が慣れてる!」

李衣菜「──ゲッターキック!!」

 

群がるメカザウルスに蹴りを浴びせ蹴散らしていく。

 

李衣菜「ほらほらほらぁ!!どうしたの!?この程度じゃ私は、ゲッターは止められないよ!」

シャトナー「チィっ!!」

 

腕部速射砲が火を放つ。

 

シャトナー「ンだァ…?あンガキ、妙に勢い付きやがって…」

加蓮「あちゃ~…。もうやっちゃってたか…」

シャトナー「なっ…!?ネオゲッターロボ…?!」

加蓮「やっほー。アタシらに勝手言ったわりには、やられっぱなしだったみたいじゃん」

シャトナー「ガキ共が、揃いも揃って…!」

加蓮「そ。子供だから、気に食わない奴の言うことに黙って従うってのが出来なくて」

シャトナー「…チッ」

莉嘉「凛、ゲッターの調子はどう?」

凛 「ここまで動かしてみた感じ、やっぱり左半身の挙動に少し違和感があるかも。…最初から思いっきり動かせば気にならないけど」

莉嘉「それじゃ、最初から全力だ!」

加蓮「莉嘉、李衣菜がD2に乗ったから仕方なく乗せたけど、フォローとかは考えなくていいからね。とにかく異常がないか計器を見て、操縦桿だけ握ってて」

莉嘉「うん…!戦闘は凛と加蓮に任せるよ☆」

凛 「私達自身の心配するより、寧ろ…」

 

敵陣の中央で大立ち回りを演じるゲッターD2に目を向ける。

 

莉嘉「リーナが、どうかした?」

加蓮「うん。いつもより、前に出過ぎてるな、って」

凛 「ずっとチームを組んで戦ってた加蓮が言うって事は、やっぱり私の勘違いじゃなかったんだ」

莉嘉「えぇ?いつもとおんなじに見えるけど…」

加蓮「リーナが何時も前に立って戦うのは、相手の狙いを少しでも仲間から逸らすため。自分の中の、恐怖を押し殺すためだから」

莉嘉「え?」

加蓮「付き合わされる方は堪ったもんじゃなけどね」

凛 「それが、今は違う」

加蓮「うん。リーナの戦い方に恐怖を振り払う勢いとか、必死さが感じられない。何て言うか、水を得た魚みたいに生き生きしてる感じ…」

凛 「……」

 

李衣菜「ゲッタァーーライフルッ!!」

Dゲッタ-2「!!」

李衣菜「そこぉッ!!」

 

素早く機体を旋回させ、背後に回っていた敵機をライフルで狙い撃つ。

 

李衣菜「一つ!」

Dゲッタ-3「!」

李衣菜「二つ!」

Dゲッタ-'s「「「!?!!!」」」

李衣菜「三つ、四つ、五つ!!」

李衣菜(へへっ…!何だか変なの!戦ってるのに、心が軽いみたい。何にも怖くなくて、敵がぬいぐるみに見えちゃう!)

Dゲッタ-1「!!」

李衣菜「へぇ、やるじゃん!」

 

相手のゲッタービームをひらりと躱して、口元に笑みすら浮かべてみせる。

 

李衣菜「分かってないんだよねぇ!ゲッターの使い方って言うのがまるでさァ!ゲッターって言うのは…」 ググッ

 

片手にライフルを、片手にトマホークを担う。

 

李衣菜「こう使うんだッ!!」

 

擦れ違う相手をトマホークで切り刻み、距離のある相手にはライフルを乱れ撃ち、葬り去る。

 

李衣菜「これでまとめて12!…って、12って何て言うんだっけ?十二、つ…?まぁいいや。どんどん掛かってこいッ!」

李衣菜(やれる…!今ならどんな相手でも、私は負けないッ!)

 

凛 「…前に、ネオゲッターに乗ってた頃、卯月が言ってた。ネオゲッターは他のゲッターとは勝手が違う。ネオゲッターだと、それまで何とも思ってなかった相手が大きく、怖く感じたって」

莉嘉「それって、どゆ事?」

加蓮「ネオゲッターとゲッターの違い、ね…」

凛 「李衣菜にゲッターD2を任せたのは、失敗だったかもしれない…」

 

李衣菜「ゲッタートマホーゥク!!」

 

ジャキッ

 

李衣菜「オラァ!オラオラオラオラオラオラオラオラァアッ!!」

メカザウルス『ギャアアァァァアアアッ!!?』

李衣菜「アッハハハハハッ!!ハハハハハハハハッ!!!」

Dゲッター1『!!!??!』

 

ライフルを手放し、両手にトマホークを携え、群がる敵を紙切れのように切り刻んで切り伏せていった。

 

李衣菜「何~?もうお終いなの?手応えがないなぁ」

シャトナー「おい!調子に乗んのもそれぐらいにしとけ」

李衣菜「いいでしょ!勢いに乗った方が!見て、でっかい動力炉。間違いなく、メガタイフーンのだよ」

加蓮「凛はどう思う?」

凛 「……動力炉からのエネルギーパイプ、一番太いのが上に伸びてる。多分、この基地のメイン動力も兼ねてるんだと思う」

莉嘉「じゃあ、アレを破壊すれば!」

李衣菜「メガタイフーンはもちろん、この基地も無力化できて、一石二鳥!ウッヒョ~!最高にロックな展開じゃん!」

シャトナー「調子づいて浮かれやがって、小娘共がよ…」

 

「ふぅむ…。たかだか3匹とは言え、窮鼠も追い込まれれば噛み付くという事か」

 

李衣菜「バット将軍!?どこにいるの?隠れてないで出てこいッ!!」

バット「我が新たな牙城でこれほどの狼藉…。最早、生きて帰れるとは思わぬことだ」

 

ズズズズ…

 

シャトナー「ンだぁ?この揺れは…」

加蓮「地中深くから熱源。地面から何かがこっちに迫ってる。…来るよ!」

李衣菜「──…っ!?おっと!」

 

地面を裂いてけたたましい音を響かせるドリルを寸でで回避。そして、ドリルの破砕に続くように、それは姿を現す。

 

加蓮「あれって、前にデータで見たことがある。確か、メカザウルス・ギガって名前じゃなかった?」

凛 「いや、よく似てるけど、細かいところのデザインが違う」

シャトナー「どっちにせよ、真打ち登場って訳かよ。…クソが」

バット「蛮勇に猛る愚かなサル共よ、これより先に進みたければ来るがよい。このメカザウルス・テラを、見事討ち滅ぼすことが出来るのならばなァ!!」

李衣菜「へっ、ギガの次だからテラだって?ただの改良型に、負けてたまるかァッ!!」

バット「ほぅ、勇ましいな。小娘よ」

李衣菜「ゲッタァァア!ビィィーームッ!!」

 

ズアッ

 

莉嘉「きゃっ!」

加蓮「っ…リーナ!ちょっとは加減を…」

凛 「…無駄だ」

加蓮「凛?」

 

ゲッターD2の額から放たれた極大のゲッタービームが生んだ空洞全体を包む黒煙が晴れた先には、

 

バット「──…どうした?貴様の力はその程度か?ゲッターロボ」

李衣菜「な…何っ!?」

莉嘉「あれって、対ゲッター線装甲って奴?」

凛 「いや、ゲッタービームがメカザウルスに命中する寸前でビームが歪められた」

加蓮「って事は、装甲じゃなくて、エネルギーバリアみたいな?」

李衣菜「なら、直接ぶった斬ってやるまでだ!ゲッタートマホォォークッ!!」

バット「面白いッ!やってみるか!!」

 

2本のトマホークを握り締め、肉薄するゲッターD2に、対するテラもトマホークを構え、迎え撃つ。

 

李衣菜「うぉおおおおお──ッ!!」

バット「おぉお…!!」

 

2対のトマホークによる鍔迫り合い。当初は加速の勢いを付けたゲッターD2が優勢だったが、

 

バット「ふっふっふっ…。フフフフフッ!」

李衣菜「ぐぅ…!うぅ…ッ!」

バット「所詮は勢いだけか?こんなもの、暖簾を押すようだぞ!」

李衣菜「ぐあぁッ!?」

 

テラの圧倒的な力に押し切られ、弾き飛ばされるゲッターD2。

 

バット「テラ・ミサイル!」

 

追い撃ちと口部から射出されたミサイルに、躱せずゲッターD2は爆炎に包まれた。

 

李衣菜「うぁ…あ…ぁぁ…ッ!」

 

莉嘉「ヤバッ!リーナを助けなきゃ!」

凛 「今のネオゲッターで、アイツと戦うのは、ちょっと無茶だけど…」

加蓮「仕方ない?」

凛 「ネオゲッタービジョン!」

 

ゲッターD2と対峙するテラの背後に素早く回り込み、ドリルを突き上げる。

 

凛 「ドリルアーm…」

バット「…ふん」

凛 「うぁっ!」

 

尻尾を打ち付けられ、アッサリと撃沈する。

 

バット「どぉうしたァ?動きに精細を欠いておるぞ。よもや、一度退けた相手と侮っているのではあるまいな?」

凛 「くっ…!」

莉嘉「こっちはゲッターが本調子じゃないのに…!」

加蓮「何て言っても、言い訳にはならないでしょ」

李衣菜「この…っ、莉嘉…加蓮!」

バット「所詮は勢いだけの烏合の衆。真に力を振るいし我がメガザウルス・テラの、その足元にすら及ばぬと言うことだ」

 

テラが大斧を振り被る。

 

凛 「っ…!」

バット「命を以て知れぃ!!」

李衣菜「こンの…!ッダァアアアアアッ!!」

 

強引に持ち直したゲッターD2が、テラを横からタックルするように飛び付き、体勢を崩す。

 

バット「むぉおお…!?」

李衣菜「莉嘉も、加蓮も凛もみんな、やらせるかぁアアアッ!!」

 

そのまま押し倒し、マウンテンポジションでテラを殴打。

 

バット「おのれぇ…!まだ足掻く力があるか!」

李衣菜「このっ、このっ、このッ!!」

バット「ふははは…!しかし、まるで子供の悪足掻きだな」

李衣菜「今の私は、誰にも負けないんだ…!キャプテンだって、幹部だって恐竜帝国だって、私は──!」 キュォオ…

 

ゲッターD2の額に、ゲッター線が集束していく。

 

バット「ほぅ…。この距離でゲッタービームを撃つか。貴様も只では済まんぞ?」

李衣菜「けど、そっちだってバリアは張れない。一蓮托生よッ!」

バット「ほほぅ…。小娘にしては殊勝な覚悟だ」

李衣菜「くらえ!ゲッタービーm…」

バット「だが、なぁ!!」 ビカッ

李衣菜「ぐぁ…あぁ…!」 ビリビリ…ッ

 

テラの角から放たれた閃光が稲妻のように弾け、ゲッターD2を打ち付ける。

 

ヒュウゥゥ…ゥン……

 

李衣菜「え…何…?」

 

ゲッターD2、機能停止。

 

莉嘉「リーナ!」

加蓮「前みたいな感じ?D2の機能がシャットダウンした?」

凛 「違う。あのビームだ。メカザウルスの発したビームが、ゲッターを強制的にシステムダウンさせたんだ」

李衣菜「くそっ…!どうして…。動けぇ!!」

バット「惜しかったなぁ、小娘。どうだ?このメカザウルス・テラのパラライズ・ビームの威力は」

莉嘉「パラライズ、ビーム?」

バット「高圧電流で、あらゆるマシンの機能を停止させるのだ。ゲッター線を扱うとはいえ、ゲッターも所詮は機械人形。パラライズ・ビームの餌食よ」

加蓮「それじゃあ、D2は無理矢理無力化されたってこと?」

李衣菜「このっ、このっ…!」

凛 「李衣菜、先ずは落ち着いて。ゲッターを再起動して」

莉嘉「でも、こっちから呼び掛けても…」

加蓮「機能停止してるんだから、こっちの通信は聞こえないんじゃない?」

バット「そらッ!」

李衣菜「ぐっ──!?」

 

テラにマウントを取るゲッターD2を蹴り飛ばして押し退ける。

 

莉嘉「リーナ!は、早く助けに行かなきゃ!」

凛 「分かってる。けど…」

 

メカザウルス’s『……!!』

 

加蓮「黙っては通してくれないみたい」

莉嘉「そんな…!リーナ!」

李衣菜「ぐっ…うぅ……!」

バット「フ…ハーッハッハッハッハッ!遂に、遂にこの時が!忌々しきゲッターロボ!彼奴への雪辱を晴らし、新たな恐竜帝国の礎とする!その瞬間を、このバットが!!」

 

「やれやれ…。どいつもこいつも、勝つ前に調子づきやがってよ」

 

バット「むっ?!」

 

シュルン、と、テラの首に細いワイヤーが絡み付く。

 

バット「これは…?」

シャトナー「敵より先に勝ち誇った奴ァよ、その時点で負けてるって、し分かんねぇかい?」

バット「貴様は…!」

シャトナー「ほらよッ!」

 

グスタフの放ったヒートワイヤーから流れた電流が、テラの全身を迸る。

 

バット「ぬぉおおおおおッ!!?」

シャトナー「おら!今のうちにそこの奴を拾って離脱しろ!」

凛 「っ!…よし」

 

瞬発力で反応し、倒れたゲッターD2を抱え上げ、テラから距離を取る。

 

加蓮「アイツ、今までどこに…」

凛 「加蓮、操縦、任せるよ」

加蓮「李衣菜のとこ行くの?」

凛 「頭に血が上った李衣菜一人じゃ、本当に足手まといになりかねないから」

加蓮「確かに。こっちは任せて」

凛 「お願い」

加蓮「さーて、と。後は奈緒でも居てくれたら、このスペースでもネオゲッター3になれるんだけど」

莉嘉「…ごめん」

加蓮「いいって。にしても、3号機のコックピットから慣れないゲッター2で、おまけに整備不良!さて、どこまで出来るか…!」 ギリィ…

 

バット「貴様ぁ…!そのような貧弱なマシンで、このテラに勝てると思っているのか?」

シャトナー「さぁてな。ま、奴等にゃ借りが出来ちまったし、それを返しに来ただけよ」

バット「何、借りだと?」

 

直後、テラの後方で小さな爆発。

 

バット「──っ!?何だ!?」

シャトナー「はっ!線香花火は趣味じゃねぇか?」

バット「貴様、何をした!」

シャトナー「大した事ぁしてねぇよ。ちょっとここの電送システムを破壊させて貰っただけだ。この、小型の時限式爆弾でな」

バット「電送システムを…?……貴様ァ!」

シャトナー「基地の機能を落とすのに、わざわざ動力部を破壊する必要なンざねぇってな。これで手前ぇの虎の子、メガタイフーンもお釈迦様って訳さ」 ヒヒヒッ

バット「…あの爆発の時か!?」

シャトナー「煙に紛れるのは得意分野でね。ガキ共もいい時間稼ぎをしてくれたぜ」

バット「おのれぇ…!許さんッ!!」

 

首に巻き付いたワイヤーを逆手に利用し、グスタフを宙に持ち上げ、地面に叩き付ける。

 

シャトナー「うぐっ…!」

バット「貴様だけは生かしては帰さぬぞ!己が愚行を地獄の底で後悔するが良いわ」

シャトナー「はっ…!ゲッター相手に熱くなった手前ぇの落ち度だろうが。大局的に、手前ぇはもう負けてんのさ!」

 

速射砲を構え、グスタフがテラと対峙する。

 

ガコンッ

 

凛 「──…李衣菜!!」

李衣菜「このっ、このっ!何で動かないの!何で!」

凛 「李衣菜!しっかりして!李衣菜ッ!!」

李衣菜「私は、負けないんだ!私が戦う…。みんなを奪う奴等を…、強い奴、弱い奴…人間を惨めにする奴等と!!」

凛 「このっ…!いい加減にして!!」

 

パチンッ

 

李衣菜「……ぁ…」

凛 「…目、覚めた?」

李衣菜「凛…?私、ここ…どうして……」

凛 「今までの事、何も覚えてないの?」

李衣菜「……ううん。何か夢を見てたみたいだけど、でも、ちゃんと覚えてる」

凛 「そ」

李衣菜「状況は?」

凛 「シャトナーが時間を稼いでくれてる。ついでに、基地の方も無力化してくれたみたい」

李衣菜「ホントに?」

凛 「多分ね。そっちの方は、私達を囮にしたみたいだけど」

李衣菜「スゴいなぁ、この状況で。私は…」

凛 「…ゲッターを再起動するよ」

李衣菜「あ、うん…」

 

コンソールのパネルを操作するが、反応はない。

 

凛 「…ダメ、か。完全にイカれてるみたい」

李衣菜「それなら、私がD2の中を見てきて……あれ?」

凛 「どうしたの?」

李衣菜「う、うん…。安全装置が外れなくて…。シートから降りられない…」

凛 「……。分かった、私が行ってくる」

李衣菜「え、でも…」

凛 「スーツのレシーバーはまだ生きてるよね?」

李衣菜「あ、うん」

凛 「それで私に指示をくれればいいから。動けないんだったら、無理しないで」

李衣菜「う、うん…。ごめん、迷惑掛けるよね。私のせいだ」

凛 「別に。そんな小さいこと気にしないで。それじゃ」

李衣菜「……」

 

──!

 

シャトナー『ぐっ…このぉ!』

 

李衣菜「!? シャトナーの声だ…。でもどうして?ゲッターの機能は完全に停止してるのに…?」

 

シャトナー『うぉおおおおッ!!!?』

 

李衣菜「シャトナー!」

 

加蓮「── ドリルアームガン!」

バット「むぅっ!?」

シャトナー「バカ野郎!余計な真似すんな。手前ぇは後ろで大人しくしてろ!」

加蓮「助けられてその言い種はないでしょ!ったく」

シャトナー「頼んだ覚えはねぇ!おら、攻撃が行くぞ!」

加蓮「!?」

 

テラのミサイル攻撃を辛うじて躱す。

 

莉嘉「ちょっと!い、今のはギリギリだったよ!?」

加蓮「ひょいっと簡単に避けられるもんでもないか。やっぱ凛とか奈緒みたいにはいかないわ」

シャトナー「生兵法なら下がりやがれ!かえって迷惑だ!」

加蓮「かもしれないけど、正真正銘動かないD2だっているんだよ?素直に引き下がれますかって」

 

ドリルアームを突き出す。

 

加蓮「プラズマドリルストーム!」

バット「ふん。無駄な事」

 

渾身のプラズマドリルストームは、テラのエネルギーバリアによって弾かれる。

 

莉嘉「あぁ…!やっぱダメなのぉ!?」

加蓮「クッソ堅いったらありゃしない!イカサマなんじゃない?」

バット「貴様のゲッターとは地力が違うのだ!最早、敗北を受け入れて覚悟するのだッ!」

加蓮「誰が!そっちこそ、今の内に調子に乗って、後で足元掬われないように気を付けなよ!」

バット「ハハハッ、精々足掻いて見せろォッ!!」

加蓮「きゃあッ!」

 

ネオゲッター2の周囲に乱れ放ったミサイルが放たれ、爆炎が襲う。

 

加蓮「もぅ、すっかり調子に乗っちゃって~!」

シャトナー「確かに、気に食わねぇな」

加蓮「珍しく、意見が合うじゃん」

シャトナー「合ったところで嬉しくもねぇがな」

加蓮「何よ、ちょっとは素直になってくれてもいいんじゃない?」

シャトナー「はっ。ならそっちも、素直に退くんだな」

加蓮「グスタフ!どうするつもり!?」

 

グスタフが前進し、突出する。

 

シャトナー「うぉおおおおおッ!!」

加蓮「ちょっと!」

莉嘉「特攻するつもり!?」

バット「覚悟を決めたか。良かろう、貴様から地獄に葬ってくれるわァア!!」

 

テラの腹部の装甲が開き、姿を覗かせた砲門から放たれたエネルギービームが、グスタフに直撃し、爆ぜた。

 

莉嘉「シャトナー!」

バット「くっくっくっ…。木っ端微塵に爆ぜ……むっ?」

 

煌々と燃え立つ爆破の炎。その中から姿を見せたのは、

 

加蓮「あれは…、グスタフじゃない…?戦車と、戦闘ヘリ!」

シャトナー「どうだぃ?ちったぁビビったか、トカゲ野郎!」

バット「むぅ…っ!?」

シャトナー「グスタフはなァ、ヘリと戦車に分離出来ンだよッ!!」

 

戦闘ヘリが内蔵したミサイルと、戦車からのキャノン砲による波状攻撃。

 

バット「くっ…!猪口才なぁ~!」

シャトナー「流石の大将でも黙ってられねぇだろ!いいぜぇ、その面が拝みたかったんだ!」

バット「カトンボめ!叩き潰してくれるわ!」

シャトナー「おっと!」

 

テラのミサイル攻撃を華麗に躱し、地上の戦車砲で反撃。

 

バット「このぉ、ネズミが…!」

シャトナー「そらそら、もっと遊んでくれよ」

 

戦車に狙いを変えたところを、戦闘ヘリが爆撃。

 

バット「チィイッ…!!」

シャトナー「ははっ、どうだ?上を意識すれば戦車が狙い撃ち、下を警戒すりゃあヘリの爆撃が手前ぇを襲う!いいぜ。いい感じだぜ、大将」

バット「調子に乗ってくれる!そのような小細工…!」

シャトナー「お…!」

 

テラが動く。

 

バット「付き合っていられるか!」

シャトナー「おぉ…ッ!?」

 

鈍重そうな見た目からは想像もつかない俊敏な動きで、飛行する戦闘ヘリを捕縛する。

 

シャトナー「ぐぅ…!」

バット「単調なパターンの動き、戦車は自動操縦と見た!ならば、それに指示を出す司令塔を落とせば、一石で二鳥よ!」

シャトナー「はっ!察しはいいな…。伊達に大将じゃねぇってわけか」

加蓮「シャトナー!」

シャトナー「来るなッ!」

加蓮「ッ! 格好つけてる場合!?」

シャトナー「いいから来るんじゃねぇ!第一、今の手前ぇらに何が出来る!?」

加蓮「っ…!それは…!」

シャトナー「本当に気に入らねぇぜ。手前ぇらは戦うってことのホントの意味をこれっぽっちも分かっちゃいねぇんだ!」

バット「フンッ!」

 

テラがヘリを捕縛したアームを強く握り、ヘリの風防に亀裂が走る。

 

シャトナー「うぐっ!?」

バット「この状況で仲間割れとはな。つくづく度し難い生き物だ。貴様らサル共は」

シャトナー「全くだ。俺も、柄にもねぇことをしてると思うぜ」

バット「…?」

シャトナー「…ったくよぉ…。ホント、らしくねぇぜ。俺は、俺自身の思うままに生きていけりゃぁ、それで良かったのによ」

シャトナー「アイツらが、アイツらがいけねぇんだ。俺よりも、色んなモノに恵まれてやがる。その癖、それを分からねぇで命を捨てようとするアイツらが!」

バット「何の事を言っているのか分からんが、今際の際の言葉はそれで良いか?」

シャトナー「はっ、冷てぇな、大将。もう少し付き合えよ」

バット「ふっ、貴様らの茶番に付き合ってやる道理などない」

シャトナー「…そうかい。なら、冥土の土産に一つ、聞いてもいいか?」

バット「ほう…。殊勝だな、よかろう」

シャトナー「どうしてこっちが本体だと気付けた?メインの司令塔は戦車の方かも知れねぇのによ」

バット「ははは…。何かと思えば。そんなもの、貴様が私の攻撃を回避した時点で分かりきっている」

シャトナー「へぇ…?そりゃまたどうして?」

バット「機械が攻撃を捕捉して躱す挙動と、生物が反射で躱す挙動はどうしても違ってくるものだ。そんなもの、貴様らサル共より優れたハ虫人類であるこの私には、簡単に見切ることが出来るわ」

シャトナー「フフフッ、そうかい。流石だな、大将」

バット「サルの称賛など何の価値にも値せんわ。さぁ、これで良かろう。潔く地獄へ逝けぃ!」

シャトナー「まぁ待てよ。利口な大将だ、このヘリがグスタフの補助動力で稼働してるってのも、とっくにお見通しなんだろうな」

バット「……補助動力、だと?」

シャトナー「おや、気付かなかったかい?1機のマシンが、ヘリとタンク、2機に分かれるんだぜ?一つの動力で動くわけがねぇだろ」

バット「分離時のヘリの動力は、補助動力からと言うわけか!では…!」

シャトナー「主動力は、何処にあるんだろうな?」 ニヤリ…

バット「まさか…!」

 

咄嗟に視線を下に向けた直後、テラの足元から爆発が起こり、火柱が上がった。

 

バット「うぐおぉおおおおおッ!!?」

シャトナー「よし、今だ!」

 

戦車の特攻でテラが怯んだ隙に、離脱する。

 

バット「お…お、お、おのれぇえええええッ!!謀りおったな、貴様ァアッ!!」

シャトナー「はっ、何言ってんだ。手前ぇが勝手に、こっちの口車に乗ったんだろうがよ」

バット「おのれぇ…!許さん!許さん許さんッ!!貴様だけはこの手で抹殺してくれるぅううう~ッ!!」

シャトナー「うおぉおお…!?!へへっ、いいぜぇ…!元よりトカゲ風情に許してもらう筋合いなんざねぇからなぁ!」

 

回避していた機動から一転し、テラへ向かっていく。

 

李衣菜「──シャトナー!死ぬつもり!?ダメ…!やめて!」

李衣菜「何で!私達の事が気に入らないなら、私達を見捨てたっていい!それなのに、どうして!」

シャトナー『俺は何時だって、自分の為に戦ってきた!ただ自分が生き残るために!』

李衣菜「シャ…トナー…?」

シャトナー『手前ぇはどうだ?何の為に戦う。世界の為か、自分の為か?」

李衣菜「そんなの、決まってる!そんなの──」

シャトナー「生き死にかけた戦争なんかな、ガキがするもんじゃねぇ!そんなもん、その為に生きてきた連中に任せてりゃいいのさ』

李衣菜「それが出来ないから、私はここにいる!辛いことを苦しいことを、誰かに任せっきりにするなんてロックじゃない!私が守りたいモノは、私が守る!」

シャトナー『その為に死んでもいいってか?その為に、命を懸けるってか?』

李衣菜「死ぬつもりで、戦ってなんかない!けど、生易しい感情だけで、戦ってるつもりでもない!」

シャトナー『はっ!だからそれが、甘ぇって言うんだ』

李衣菜「何で…!」

シャトナー『いいか、手前ぇの言葉は薄っぺらいんだよ。そこで、しっかり見とけ。本当の、命を懸けるって意味を…!』

李衣菜「命を懸ける…意味……?」

シャトナー『うぉおおおおッ!!』

李衣菜「シャトナァアアアアアッ!!」

 

バット「死ねぃッ!小賢しいサルが!」

シャトナー「うっ…!ぐぅ…!!」

 

側部の翼が折れ、プロペラが破損しても、推進装置に点火し、その勢いは緩めることなく、

 

シャトナー「この…!うおおぉ!オオオオオッ!!!!」

加蓮「シャトナー…?まさか!」

莉嘉「加蓮!止めなきゃ、早く…!」

加蓮「…もう、手遅れだよ」

莉嘉「そ、そんな…!」

シャトナー「おおおおおおおおおおお~~~ッ!!」

 

シャトナー『へっ、皮肉なもんだぜ。自分の為だけに生きてきた俺がよ、命を懸けr…──』

 

シャトナーを乗せた戦闘ヘリは、コックピットからテラの表装に直撃し、爆発した。

 

バット「うぉおおおおおッ!?」

李衣菜「──ッ!?し、シャ…トナァ…?」

 

凛 「──…何処もかしこも、ケーブルが焼き付いて何が何やら…。ちょっと李衣菜、聞こえてる?李衣菜!」

『……降りろ』

凛 「!?」

『早くゲッターを降りろ。ここにいるのは、危険だ』

凛 「誰…?」

『誰でもいい。今お前がここにいるのは危険だ。最悪、ゲッターに呑み込まれる』

凛 「ゲッター?何を言っt……これは…!」

 

周囲に薄い緑色の粒子が漂いはじめる。

 

凛 「これって、早乙女研究所の地下で見たのと同じ…ゲッター線の光…」

凛 「李衣菜!」

 

李衣菜「どうして……?シャトナー…」

 

ドクン…

 

李衣菜「何で…?どうして…?ずっと、生きるために戦ってきたのに、死んだ…?私達のために?シャトナー…」

 

ドクンッ

 

李衣菜「……戦わなきゃ…。このままじゃみんな同じだ。みんな、死ぬ──」

 

ドクンッッ

 

李衣菜「──!!!!!」

 

ゴォオオオオオオッッ

 

バット「ぬぅ…!?何事だ!」

加蓮「ゲッターエネルギーが増えていく…?ゲッターD2…リーナ!」

 

膨大なゲッター線の光に包まれ、ゲッターD2が立ち上がる。

 

李衣菜「うぁああああああああああああああッッ!!!」

バット「エネルギーレベル、180だと…!?通常の兵器が、耐えられる筈はない!

李衣菜「……フ-----ッ!!」

 

膨大なゲッターエネルギによって、地面を融解させながら、ゲッターD2が一歩を踏み締める。

 

バット「化け物か!?」

加蓮「何がどうなってるの?李衣菜!凛!…ったくもうっ!誰か応えてくれない訳?!」

莉嘉「何か、怖いよ…。リーナも、ゲッターも…。早く止めなきゃ!」

加蓮「そうしたいのは山々だよ。けどこのままじゃ、ここにいるアタシ達だってヤバイよ」

莉嘉「そんな!ネオゲッターでD2を止められないの?」

加蓮「多分、無茶だよ…。ネオゲッターで、どうこうなる相手じゃない。それに……」

莉嘉「それに?」

加蓮「……」

加蓮(情けないけど、どうしようもない…。あのゲッター、怖い…) ガクガクッ

 

凛 「ぐぅ…っ!?り、李衣菜…!」

李衣菜「ウゥアァアアアアアアアアアッ!!」

凛 「正気を失ってる…?止めなきゃ……きゃあっ!」

 

ゲッター線に気圧され、コックピットの外に弾かれるが、寸でのところでキャノピーの縁を掴み、耐える。

 

凛 「くっ、ゲッター…!部外者の私を弾き出すつもり?!」

『違う。早くそこから離れろ。お前にも分かってるんだろう?』

凛 「お前は、神、隼人…?」

『そう、お前は俺と同じだ。お前はゲッターに惹かれはじめている。お前をここで消すわけにはいかない』

凛 「違う!私は、渋谷凛だ!」

『なら、そこで見届けるか』

凛 「…!?」

 

さっきとは反対に力が働き、体をコックピットの側面に押さえ付けられる。

 

凛 「ぐっ…う…うぅ……っ」

凛(スゴい力で、全身を押さえ付けられてるみたい…。体が全く動かない。声も…、李衣菜!)

李衣菜「倒す──!殺すッ!命を奪う輩はァ……全員ブッ殺すッ!!」

凛 「うぁ…あ…!」

『意識をしっかり保て、自分を見失うな。でないと、後戻りは出来なくなる』

 

李衣菜「ウアアアアアアアアッ!!」 ダッ

バット「ば、化け物め!貴様の思い通りになどさせるものか!!」

 

エネルギービームは命中。だが、

 

李衣菜「そんなもの、効くかッ!!」

 

一切意に介さず、ゲッターD2は歩みを止めず、

 

李衣菜「死の痛み、思い知れぇえ!!」

 

フルスイングの右ストレートがテラにクリーンヒットした。

 

バット「うぐぅ…!?」

李衣菜「ア゛ァアッ!!!」

バット「ゴハッ!」

李衣菜「ラァアッシャァアアッ!!」

 

上体を二つに折ったテラの背中を肘打ち。その後、倒れたテラに蹴りを浴びせ吹き飛ばした。

 

バット「ぐぅわぁあ…!す…全ての数値が、計測できないだとぉ…?こんなこと、あり得る筈がないッ!!」

李衣菜「!!!!」

バット「だが、しかし!」

 

向かってくるゲッターD2めがけパラライズ・ビームを放つ。が、

 

バット「止まら…ないっ!?まさか、高圧電流を直接受けて、機械の回路が焼き切れぬ筈がない!!」

李衣菜「はぁ…はぁ…ッ!」

バット「…機械を超越した存在だと言うのか?!そんなことが!」

李衣菜「フ----ッ!フッ----ッ!!」

バット「く、来るなァ!!」

 

ミサイル、レーザー、バルカン。テラに積載された、ありとあらゆる火器をゲッターD2に放つが、

 

バット「こ、こちらの攻撃を、無力化するのではなく、吸収している…!?それではァ!!」

 

体勢を立て直し、両腕をドリルアームに変形させて肉薄。

 

バット「でぇぇぇいッ!!」

 

テラのドリルアームは、ゲッターD2の胴体を貫く。

 

バット「ふふふ…!どうだ?間接攻撃ではなく、直接攻撃ならば……っ!?」

 

ズォォオオオオオオッ

 

高熱で溶けるように、ドリルアームはゲッターD2の体に吸い込まれていく。

 

バット「こ、このテラすらも吸収しようと言うのか…?!うぉおおおッ!!?」

李衣菜「吸収?お前を喰らう?まさか!」

バット「何っ!?」

李衣菜「お前に味味あわせるは、死の苦しみと虚無だよ!!」 キュオッ…

 

ゲッターD2の額に、ゲッター線が集まる。

 

バット「なっ…!お、おのれ!放せ、放せぇえ!!」

 

李衣菜「はっはっはっ…!アハハハハハッ!!」

凛 (これが、ゲッターの力…)

李衣菜「ゲッタービィーームッ!!」 ズワッ

莉嘉「きゃあッ!!」

加蓮「何て威力…?これが、ゲッタービーム…?……うぅっ」

莉嘉(太陽、みたい…。けど……)

バット「うぉわぁあああああああ──!!」

(愚かな者、愚かな命よ…)

バット「うぉおおお…!誰?何…?我はぁああああああ!!」

(塵芥も残さず、この光の中、虚無の果てに消えるがよい…)

バット「わ、我はぁ…ラセツ様…?ゴール様…!え、いこ…う…栄光のためにィイイイイイッ!!──」

 

テラはゲッタービームの膨大なエネルギーの中に掻き消えた。

 

──。

 

李衣菜「はぁ…はぁ…はぁ……」

凛 「──…あ」

凛 (ゲッター線の光が、消えていく。李衣菜の怒りが、静まっていく…)

 

『──…せよ…。……rか、応t…せよ……。聞こえるk…?gッ…チ-……せ…よ──』

 

凛 「この通信…」

加蓮「信号は確認した。テキサスだよ。通信妨害されてても、ギリギリまで来てたみたい」

凛 「加蓮。そっちは無事?」

加蓮「何とかね。それにしても…」

凛 「うん」

 

李衣菜「バカ野郎ッ!!」

莉嘉「リーナ…」

李衣菜「バカ!バカばか馬鹿!バカ野郎っ!!シャトナーの大バカ野郎…!」

 

李衣菜「私達の事なんて、どうでも良かったくせに!自分一人さえ生きていれば、それで良かったくせに!!それなのに!」

加蓮「……」

凛 「それでも、シャトナーは託したんだ」

李衣菜「凛…?」

凛 「託すしかなかった。あの中じゃ、結局、誰かが犠牲にならなきゃ。そうするしかなかった。だからシャトナーは私達に未来を託して、勝利を導くしかなかったんだ」

李衣菜「うっ…!」

凛 「だから、私達は受け止めなきゃいけない。自分達の弱さと未熟を」

李衣菜「うぅ…!うぁ…──!」

凛 「今は泣いててもいいよ。後悔することでしか、私達は前に進めないから」

 

李衣菜「うわぁあああああああ~~~っ──!」

 

つづく




次回予告

フランス、凱旋門。今そこは、欧州に支配権を拡げる恐竜帝国がマシーンランドを構える牙城。
そのマシーンランドに対し、一斉攻勢を掛ける戦艦テキサスとスーパーロボット軍団。
マシーンランド防衛に立ちはだかる百鬼メカ・魔王鬼を前に、茜が、美穂がアーニャが、ゲッターロボ飛焔が、約束を果たすため、命を懸けた決死行に挑む──!

次回、ゲッターロボ×CG 第三部
第28話『想いに懸けた決死行!』に、チェンジゲッター!

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