ゲッターロボサーガ デレマス版   作:E.T.c

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第29話『死力の追撃戦!!』

~~~ 戦艦テキサス 格納庫 ~~~

 

チーフ「──オラァ!!キリキリ動けェ!!時間はねぇぞ!!」

 

整備員’s「「「り、了解!!」」」

 

加蓮「スゴい活気…。熱に当てられちゃいそう」

凛 「冗談言ってる場合?ブリーフィング・ルームに急ぐよ。今後の方針について、艦長から話がある筈だ」

加蓮「話って、ラセツを追うんでしょ?それ以外の選択肢ある?」

凛 「だとしても、目的地が問題だよ。このままラセツを追撃すれば、ランドウの拠点に攻め込む事になる」

李衣菜「やってくれたなぁ、ラセツの奴!」

凛 「ランドウとの決着を考えれば何れは攻め込む事になってただろうけど、時期が早すぎる。まだ世界情勢は落ち着いていないし、ドラゴンタートルを落としたとしてもランドウの戦力は底が知れない」

加蓮「だからって、ラセツの動きを放っておくことは出来ないでしょ。ラセツとランドウの内、どっちかが倒れても厄介な敵である事に変わりないんだから」

李衣菜「凛、加蓮っ。ここで2人で言い争っててもどうしようもないって!」

凛 「……それもそうだ」

加蓮「足並みを揃えるための、ブリーフィングでもあるわけね」

 

ガラガラガラガラガラッ

 

李衣菜「ん?何だ何だ?」

医務官「退いて退いて!担架が通るよ!」

李衣菜「負傷兵の移送か……って、乗せられてるの、美穂!?」

凛 「何か、ベルトみたいなの巻かれて、担架に拘束されてるけど」

美穂「あ、李衣菜ちゃん、凛ちゃん。へへ…、掴まっちゃった…」

李衣菜「つ、掴まっちゃったって…」

医務官「まったく。絶対安静だって言っていたのに、まさか医務室を抜け出すなんて!」

加蓮「リーナじゃあるまいし、立ち直り早いなって思ってたけど」

凛 「まさか脱走してたとはね」 ヤルジャン

美穂「ホント、大した事ないんだよ?先生が大袈裟に言ってるだけで…!」

医務官「何が大袈裟なものですか!全身打撲だけで、少なくとも全治一ヶ月以上の重症ですよ!」

李衣菜「全身打撲”だけ”?」

医務官「胸骨など5ヶ所以上の骨折に、胸部裂傷、大量出血!それで平然と出歩いて…!解剖されて人体標本にでもされたいんですか?」

凛 「確かに、貴重な検体にはなるかもしれないね」

李衣菜「冗談になってないって、それ…。ってか、そんな酷い状態でゲットマシンを動かしてたわけ?!」

加蓮「それ、アンタが言う?」

アーニャ「あー、ミホ…?」

茜 「美穂ちゃん!」

李衣菜「あ、アーニャに茜も」

凛 「こんな状態じゃ、流石にビックリするでしょ」

医務官「アナスタシアさん、美穂さんの脱走に協力した件、しっかり艦長に報告させて貰いますからね!」

加蓮「共犯だったんだ…」

アーニャ「ミホ……извиняюсь…ごめんなさい、無理をさせてしまいました、ね」

美穂「アーニャちゃん…。そんな顔しないで?私が頼んだことなんだから。アーニャちゃんは何も悪くないよ」

アーニャ「でも…」

美穂「大丈夫。また直ぐに戻ってくるから!」

医務官「全治一ヶ月以上!その間は何があっても絶・対・安・静!です!!隔離用の寝室に拘束して、アナスタシアさん達との面会も一切謝絶ですからね!」

李衣菜「そこまでする?」

凛 「ま、仕方ないんじゃない?」

医務官「さ、行きますよ!」

 

ガラガラガラガラッ

 

美穂「私、必ず帰ってくるから~~~っ!!」

 

その言葉が、担架が遠ざかる音と共に木霊した。

 

凛 「……」

李衣菜「……美穂って、意外と丈夫だったんだ」

加蓮「いや、そこに感心するのも可笑しいから」

凛 「それで?飛焔チームはこれからどうするの?」

茜 「どうするもこうするも、美穂ちゃんがいない以上、私とアーニャちゃんの2人で、ゲッターを動かすしかありません!」

アーニャ「けど、それじゃあ、ゲッターの能力は大幅ダウン、です」

茜 「美穂ちゃんの体には替えられませんよ!パイロットが一人足りない分は、気合いで補いましょう!」

アーニャ「…そうですね。気持ちだけでも、ミホと一緒に戦いましょう!」

加蓮「どうしてそこまでポジティブなれるの?このチーム」

凛 「さぁ?何事も小難しく考える必要もないって、そう言う事じゃない?」

 

──。

 

~~~ 数分後、ブリーフィング・ルーム ~~~

 

艦長「うむ。パイロット各員、負傷による欠員者などを除いて、全員揃ったようだな」

シュワルツ「前置きはいいぜ、艦長。逃げ出したラセツは何処に行きやがった?何を考えてやがる!」

奈緒「おい、艦長に対してそんな質問の仕方する奴があるか!」

艦長「構わん。ラセツの狙いや行き先よりも、先ずはこれを見てくれ」

 

正面のモニターに、1つの映像を映し出す。

 

艦長「マシーンランド制圧後、ラセツが離脱したと思われる方角に飛ばした無人偵察機により撮影された映像だ」

李衣菜「これって、ウザーラ!」

メリー「ウザーラ?」

加蓮「古代アトランティスの守護神だってさ。凛は前に二度、戦ったことがあるんだよね?」

凛 「嫌な事思い出させるね。確か、シャインスパークで木っ端微塵に破壊した筈だけど」

副長「ランドウか、ラセツか。どちらにせよ破片を回収され、修復された、と言う所だろう」

ボブ「へぇ?でも、一度はぶっ倒した相手なんだろ。だったら楽勝じゃねぇか」

凛 「確かに、あれが前に倒したウザーラと同じもので、ゲッタードラゴンがあったらね」

ボブ「おン?」

凛 「少なからず、私達の戦ったウザーラは頭を3つ付けてたりしなかったよ」

艦長「何らかの改造が加えられていると言う事か…」

凛 「恐らくは…。それに、さっきも言ったけど、ウザーラを倒したのはゲッタードラゴンのシャインスパーク。今それに匹敵する威力を持つ武装を持つのは……」

サム「ゲッターD2は、ゲッタードラゴンの発展型じゃないのかい?」

凛 「ゲッターD2にシャインスパークは搭載されてないよ。単独操縦が前提のあの機体で、それは色々な意味でリスクが高すぎるからね」

サム「成る程」

ボブ「肝心な時に頼りになンねぇな」

凛 「それでも…」

メリー「何?」

凛 「いや、何でもない」

凛 (こんな局面だからって、真ゲッターをアテには出来ない…)

ジャック「No,No!心配はNothing! 様は旧式機で倒せた相手って事ダロ?ミー達がPowerを合わせれば、全く敵じゃないゼ!」

リンダ「それで艦長、ラセツの行き先は?」

艦長「うむ。偵察機が捉えた位置と向かっている包囲から、目標はやはり北極、蛇牙城である事に間違いはない」

リンダ「やはり…」

ボブ「いよいよ決戦って訳か…!腕が鳴るぜ!」

シュワルツ「……」

奈緒「何だよ、シュワルツも武者震いか?」

シュワルツ「そんなんじゃねぇよ。ただな…」

奈緒「ただ?」

シュワルツ「可笑しいじゃねぇか。ランドウだって、ラセツが接近してるのは気付いている筈だ。なのに、どうして今まで、迎撃する部隊を送ってきやがらねぇ?」

奈緒「それは……確かに」

加蓮「アタシ達が欧州に入り始めた辺りからだけど、ランドウの動きが静かすぎるのは、確かに気になるかも」

シュワルツ「そうだ。いくらラセツが謀反を起こしたにしても、恐竜帝国の戦力と挟撃して、俺達を仕留めるチャンスは幾らでもあった」

サム「それをしてこなかった。しなかったのか、何か考えての事なのか…」

シュワルツ「キナ臭ぇ…!何だか嫌な予感がしやがるぜ」

艦長「少佐の懸念は尤もだ。しかし、だからと言ってこのままラセツの動きを看過することは出来ん!」

李衣菜「ランドウの動きを気にして、ラセツの思い通りにさせてたら、結局世界がどうにかなっちゃうよ!違う?」

ジャック「That's right! リーナの言う通りダゼ!来るなら何処からでも来やがれ!ミー達がまとめて相手になってやるゼ!」

リンダ「まったく…。結局、お気楽なんだから」

ボブ「だがよ、分かりやすい方がいいじゃねぇか」

サム「そうそう。何より怖いのは、後先を考えて行動出来なくなること、だよ」

艦長「諸君、これより先の戦いを、ランドウおよびラセツ率いる新恐竜帝国との決戦とする!我々の戦力が整わない中であるが、死力を尽くしてくれ!」

 

一同「「「了解ッ!!」」」

 

──。

 

副長「──…テキサス、間もなく海峡へ出ます」

艦長「うむ。全速前進。ラセツが蛇牙城に到達する前に、何としても動きを抑える」

副長「しかし、相手が所持しているのは嘗てあのゲッターGすらも退けたと言う兵器。グスタフを失い、整備やパイロットの状態も不十分な今の我々で、何処までやれるか…」

艦長「辛い戦いである事は、これまでもこれからも変わらん。だが、我々が動かなくては、戦う力を持たぬ者達の平穏な暮らしが脅かされる事になってしまう」

艦長「我々には、大統領から託された未来を守る使命があるのだ。例え矢尽き剣折れる事になろうとも、守るべき者の為に暴力に抗い続けると言う姿勢を崩すことは出来ん」

副長「抗い続ける姿勢、ですか」

艦長「無論、気合いだけで戦争に勝つ事など出来ん。だが、想いなくしては大局を決める戦いに勝利する事など出来んのだよ」

副長「……」

艦長「心を強く持て。我々は今、歴史の流れの中にいる」

副長「…はっ!」

艦長「ラセツとてこちらの動きは悟っているだろう。周辺の警戒を厳とせよ!」

オペレ-タ-「か、艦長っ!」

艦長「どうした?」

オペレ-タ-「海底から、テキサスの周囲に浮上する反応あり!…こ、これは…!え、AV-58です!!」

副長「何だと!?」

艦長「機関停止急げぇ!!」

 

洋上の真ん中で、テキサスが動きを止める。その前方と後方、四方を囲うように、計4基のAV-58が姿を現す。

 

艦長「………ふぅ」

副長「…間一髪、と言うところでしたね」

艦長「ラセツめ……まさかこんな伏兵を用意してくるとは」

オペレ-タ-「AV-58から、粘糸状の物体が本艦目掛け放たれます」

 

4基のAV-58から伸びた粘糸で拘束される。

 

艦長「これで、本格的にこちらの動きを抑えられたわけか」

副長「テキサスが大型艦で助かりましたね。小型艇ならば、小さな波の揺らぎで、AV-58を誘爆させていた」

艦長「天候も幸いしたか」

橘 『大丈夫ですか、テキサス艦長』

艦長「こちらは何とかな」

橘 『厄介な事になりましたな。まさか連中が、海上であの兵器を投入してくるとは』

艦長「うむ」

橘 『直ぐにこちらから、AV-58無力化用の作業班を海上に派遣します。そちらからでは厳しいでしょう』

艦長「いや、そこまでゆっくりする事は出来んだろう」

橘 『は?と、言いますと』

艦長「連中は、AV-58を使い、海上の我々の動きを制した。とすれば、次は上空のクジラを狙うだろう」

オペレ-タ-「艦長!レーダーに感あり!航空型のメタルビーストとメカザウルスです!」

艦長「やはり来るか…!」

 

── 格納庫。

 

橘 『くっ…!各ゲッターチームに緊急スクランブル!直ちに出撃してくれ!』

 

瑞樹「まったく、ゆっくり休ませてはくれないのね」

菜々「こ、今回なんかペース早くないですか?ナナ達、さっき帰還したばっかりですよ?」

みく「それだけ本当の決戦が迫ってるって事にゃ!弱音なんて吐いていられないよ、ナナチャン!」

瑞樹「ゲッターの整備は?」

主任「全体で8割って所だ。エネルギー回りは心配ねぇが、被弾箇所にだけは気を付けてくれ!」

みく「8割も整備が済んでれば、後は腕でカバーしてやるだけにゃあ!出撃するよ!」

美波「みくちゃん達の後ろに続くわ。美波、行きますっ!」

 

クジラの口を模したカタパルトから、ゲットマシンが発進し、その後ろにブラックゲッターが追随する。

 

主任「かな子ちゃん、本当にそれで出撃するの気か?」

かな子「はいっ。真ゲッターの方はともかく、ゲットマシン単体なら使えるんですよね?」

班長「そりゃぁ、そうだが…」

かな子「テキサスが敵に拘束されてる以上、少しでも戦力が必要な筈です。例えゲットマシンでも、メカザウルスの相手くらいなら…!」

ニオン「後ろがつかえてるぞ。さっさとしろ」

主任「……仕方ねぇ!無理は済んじゃねぇぞ」

かな子「はいっ!…何て言ってもちょっとは無茶して、頑張らないと。力を貸してね、真ベアー号!」

ニオン「ダイノゲッターロボ、出るぞ!」

 

莉嘉「はっ…はっ…はっ…!」 タッタッ

卯月「待ってください、莉嘉ちゃん!」

莉嘉「卯月?」

卯月「今回は、私にD2を操縦させてくれませんか?」

莉嘉「え、でも…」

卯月「何だかじっとしていられないんです。真ゲッターも、1号機と2号機はまだオーバーホールが終わってませんから」

莉嘉「……」

卯月「莉嘉ちゃん?」

莉嘉「何でもないよっ☆こういう状況だもん、ゲッターを使いこなせる、卯月に任せちゃった方がいいよね?」

卯月「そんな事…」

莉嘉「任せたよ、卯月☆メカザウルスをやっつけてね!」

卯月「…はい。莉嘉ちゃんの分も、精一杯頑張りますね!」 タッ

 

卯月「島村卯月、ゲッターD2、出撃します!!」

 

バシュゥッ

 

── 空中。

 

メカザウルス・バド『シャアアァァアッ!!』

みく「ゲッタートマホォォークッ!!」

 

トマホークを横一閃。メカザウルスを真っ二つに両断する。

 

みく「足を止めてる間にうじゃうじゃと!鬱陶しい連中だにゃ!」

美波「前回あれだけ部隊を展開していたのに、どれだけ戦力を持っているの…?」

鉄甲鬼「マシーンランド以外でも戦力を残していたと考えるのが妥当だが」

ニオン「まんざらバカでもない。ランドウ相手に喧嘩を売ろうとするだけはあるか」

みく「敵を褒めてどうするのー!こんなところで、足踏みしてる時間なんてないのに!」

芳乃「落ち着きましょー?焦りも苛立ちもー、視界を曇らせてしまいましてー」

菜々「それは分かってますけど、でも、この圧倒的不利な状況の中で、北極に急がなきゃならない中で、慌てるなって言う方が無理ですよ!」

瑞樹「それでも、浮き足立つのは敵の思う壺よ」

みく「──っ!?」

 

四方から放たれるメカザウルス・バドの音波攻撃を各機それぞれに散り散りになって躱す。

 

みく「ちぃ…!おちおち相談してる時間もないにゃ」

美波「陣形を組んでいても意味はないみたい。散開して各個撃破でいきましょう!」

芳乃「美波さんに同意致しましてー」

ニオン「ふん。好きにやらせてもらう!」

 

ダイノゲッター1とブラックゲッターが前に飛び出し、殺到する敵群の迎撃に向かう。

 

瑞樹「みく、私達は後方で、敵の動きに注意して」

菜々「海面のAV-58に爆弾一発でも落とされたら、大変な事になりますよ!」

みく「1個だけでも街1つを消し飛ばす威力の兵器が4つ…」

瑞樹「いくらテキサスが核の衝撃に耐えられても、これだけの爆発を受けたら流石に只では済まないわ」

みく「下を守りながら上……難易度激ムズだにゃ!」

 

叫び、視界に入ったバドにトマホークを投げ放つ。

 

バド『……!!』

みく「躱された!?」

バド『キシャァァアアアッ!!』

みく「うにゃ…っ!?」

かな子「みくちゃん!!」

 

ゲッター1に対して、反撃の体勢を取ったバドを、脇から飛来した真ベアー号のミサイルが撃ち落とす。

 

みく「……にゃぁ~…。間一髪~…」

かな子「大丈夫ですか?」

瑞樹「お陰様で、助かったわ」

菜々「ゲットマシン1機って言っても、今は貴重な戦力ですね~」

かな子「ゲットマシン1機だけじゃありませんよ」

卯月「私もいます!」

みく「ゲッターD2には卯月チャンが?これで百人力にゃ!」

卯月「どこまでやれるか分かりませんけど、とにかく頑張りますっ!」

みく「にゃ?」

菜々「百鬼メカが来ますよ!速いの…確か、メカ半月鬼とか言う奴です!」

かな子「集団に構わないで飛び込んでくるんですか?!」

卯月「──ッ!」

 

ゲッターD2のトマホークを抜き放ち、突撃を仕掛けるメカ半月鬼を迎え撃つ。

 

メカ半月鬼「──ギ…!ギギッ!!」

卯月「ぐぅ…っ!」

みく「卯月チャン!?」

菜々「ゲッターD2が押されてます!」

瑞樹「他人の心配をしている暇は、なさそうよ」

 

メタルビ-スト・ビ-ン『!!』

メカザウルス・バド『!!』

メカ大輪鬼『!!』

 

みく「……メタルビースト、メカザウルス、百鬼メカ!ここは戦争博物館にゃあ?」

瑞樹「だからこそ覚悟がいるわよ。一度倒した相手に、負けるわけにはいかないわ!」

みく「合点にゃあッ!」

かな子「私も…!出来る限りをやらなきゃ!頼むね、真ベアー号!」

 

メカ半月鬼「!!!」

卯月「うぅっ…!」

 

勢いを増すメカ半月鬼の突撃に対し、

 

卯月「こうすれば…!」

 

トマホークの刃を滑らせ、突撃の動きを受け流す。

 

卯月「どうです!?」

 

体勢を崩したメカ半月鬼に、蹴りを放って距離を取り、

 

卯月「ゲッターライフル!」

 

その背中をライフルで撃ち抜き、撃墜。

 

卯月「はぁ……はぁ…、やっぱり…」

卯月(何だかよく分かんないけど、ゲッターの動きが重い気がする…。エネルギーもリミットギリギリ…。無茶は出来ませんね…)

卯月「それでも、晶葉ちゃんや莉嘉ちゃん、みんなのいるクジラに、手出しさせる訳にはいきません!」

メタルビ-スト・ビ-ン『──!!』

卯月「行きます!ゲッタートマホーク!!」

 

── 格納庫。

 

主任「おわっ!モタモタすんな!ガスやらオイルやら、引火する可能性のあるものは全部仕舞うんだよ!でなきゃ、俺らも安心して避難出来ねぇだろうが!!」

古田「は、はいっス~!!」

主任「……ん?」

 

莉嘉「………」

 

主任「莉嘉ちゃん、まだこんなとこにいたのか…」

莉嘉「…大将」

主任「こんなとこにいちゃぁ危ねぇよ。ま、この艦にいたんじゃどこも危ねぇどな、今は」

莉嘉「………」

主任「さ、脱出ポッドのトコへ急ぐぞ。あそこなら何があっても、莉嘉ちゃんの命は守ってやれる」

莉嘉「脱出…」

主任「周囲は敵に囲まれてんだ。海上にもAV-58が出て、テキサスの戦力だってアテにならねぇ。正直なトコ、莉嘉ちゃんをどこまで守ってやれるかも分からねぇんだ」

莉嘉「……」

主任「脱出ポッドなら、クジラが墜とされてもいいように、頑丈に出来てる。万が一って時にゃ、莉嘉ちゃんの命くらいは守ってやれる筈だ」

 

グラッ

 

莉嘉「…っ!?きゃあっ!」

主任「大丈夫かい、莉嘉ちゃん!揺れが大きくなってきやがった。これはいよいよ急がねぇと…」

莉嘉「……アタシって、やっぱり足手まといなんだ」

主任「……? 莉嘉ちゃん?」

莉嘉「卯月や、リーナ達は何時も戦って、傷付いて。痛くて、怖くて、辛いはずなのに、それでも必死に前を向いて戦ってる」

 

クジラの船体が揺れる。

 

莉嘉「きゃっ…!……だから、アタシだって力になれるんだって、ちっぽけかもしれないけど、アタシにだって出来ることがあるんだって、ずっとそう思って来たけど……」

莉嘉「けど、ゲッターを動かすのは卯月の方がずっと上手だし、リーナはどれだけボロボロになっても、最後まで諦めないでどんな強い奴にも立ち向かっていける」

莉嘉「アタシはこうして大将に迷惑掛けて、みんなの足を引っ張ることしか出来ないんだ!」

主任「そいつぁ違う!」

莉嘉「!?」

主任「あ……すまねぇ。莉嘉ちゃんがあんまり柄にもねぇ事言うもんだから声を上げちまったぜ」

莉嘉「柄にもないって…!アタシだって、必死で考えて、それで…!」

主任「分かった分かった。そんなのは今に始まった話じゃねぇじゃねぇか。難しく考えるのは、らしくねぇぞ」

莉嘉「むぅ…!大将は何時もそうやってアタシを子供扱いして!」

主任「ははっ、悪いな。丁度莉嘉ちゃん位の娘がいるからよ」

莉嘉「…それ、前にも話してた」

主任「あぁ、そうだったな。ほら、さっさと行くぞ」

 

主任が先導して、通路を歩き出す。

 

主任「今頃、何してるか。日本は平和な筈だから、無事でいてくれてるとは思うんだが」

莉嘉「……早く会いたい?」

主任「そらぁ当然さ。…だが、もう少しの辛抱だ。こっちにも、手の掛かるガキ共がいるからな」

莉嘉「それって、アタシの事?」

主任「莉嘉ちゃんだけじゃねぇよ。李衣菜に卯月ちゃんに、何よりゲッターロボは、俺にとっちゃ我が子みてぇなもんだ」

莉嘉「ゲッターが?」

主任「まだ早乙女博士が生きてた頃、最初のゲッターの頃から開発に関わってきたからな。我が子が前線で戦うのに、黙って見ちゃいられねぇさ。莉嘉ちゃんと同じよ」

主任「アタシと?」

 

艦内が一層激しく揺れる。

 

莉嘉「きゃあっ!!」

主任「ンだぁ…?この揺れ…。それに、さっきの音……まさか直撃か!?──っ!?」

莉嘉「た、大将…!」

主任「大丈夫だ、莉嘉ちゃん。しっかり掴まって──…うぉっ!」

莉嘉「え……きゃあッ!!?」

 

すぐ側の隔壁を突き破り、爆炎が2人を包んだ。

 

莉嘉「ケホッ…ケホッ……!最悪~…!」

主任「ははっ、莉嘉ちゃん…。怪我はないかい?」

莉嘉「アタシは大丈夫……って、大将!ち、血が…!」

主任「へへっ…!図体がでけぇのが、役に立ったみてぇだな…!」

莉嘉「そんな事言ってる場合じゃないよ!すぐに手当てをしないと…!」

主任「心配すんなって。この図体の通り、頑丈に出来てる」

莉嘉「でもぉ…!」

主任「それよりよ、周りを見ろよ。さっきの爆発で火が出ちまってる」

莉嘉「あぁ…!そうだけど!」

主任「そこの角を曲がった所に、非常用の消火器がある。そいつを持ってきてもらえねぇか?」

莉嘉「いや……!大将の手当ては…?」

主任「ンな事より、この火が燃え広がっちまったら、クジラは中から爆発しちまう!自動消火装置も機能しねぇって事は、艦内のシステムもおかしくなっちまったのかも知れねぇ」

主任「今一番近くにいる俺達が、この火を鎮めねぇと、みんな死んじまうかも知れねぇんだぜ?」

莉嘉「みんな……死…」

主任「な?みんなの役に立ちてぇんだろ?なら、今がその時だぜ」

莉嘉「……分かった」

 

納得しないまでも頷き、言われた通路の角を曲がる。

 

莉嘉「っ…?……大将!消火器なんて何処にも…」

 

言い、主任の所に振り返ろうとした時、

 

主任「…へへっ」 ガシュッ

 

莉嘉の目の前に、隔壁が降りた。

 

莉嘉「えっ!?」

主任『悪いな、莉嘉ちゃん』

 

隔壁越しに、主任の声がくぐもって聞こえる。

 

莉嘉「そんな、大将!どうして…!」

主任『ったく、運が悪かったぜ。隔壁を手動で下ろすコックが”こっち側”にしかねぇんだから。莉嘉ちゃんまで閉じ込めるわけには、いかねぇよな』

莉嘉「だからって…!待ってて!こっからならブリッジに行ける。すぐに助けを連れてくるから!」

 

ダッ

 

主任「……おう、待ってるぜ…。早く、してくれ……よ…──」

 

──。

 

莉嘉「はぁ…!はぁ…!──晶葉ッ!」

晶葉「莉嘉!まだ避難していなかったのか?」

莉嘉「そうだけど……それどころじゃないの!大将が、隔壁で閉じ込められて…!」

晶葉「何?それはどのブロックの辺りだ?」

莉嘉「えーっと、確か脱出ポッドの方に向かってたから……Mブロック!」

橘 「何?」

晶葉「Mブロック…」

橘 「では、やはり先程のは…」

晶葉「そういう事、だったようですね…」

莉嘉「? 早く大将を助けてよ!」

晶葉「莉嘉……」

莉嘉「な、何…?どうしたの?早く行かないと!艦内火災も起きてて、その中に主任はいて!だから……!」

晶葉「すまない。主任を助けることは、もう出来ない」

莉嘉「どうして…!晶葉なら、隔壁を解除できるでしょ?確かに、大将怪我してるけど、急いで手当てすれば…!」

晶葉「違うんだ。そう言う事じゃ、ないんだよ…」

莉嘉「晶葉…」

橘 「莉嘉くん。先程クジラは敵メタルビーストによる爆撃を受けた。その中で、もっとも損害の大きかった被弾箇所が、Mブロックだった」

莉嘉「そ、そうなの…」

橘 「それでな、艦内への延焼やシステムエラー……この艦を失わないためにも、Mブロックは放棄、艦から切り離された」

莉嘉「え……?」

晶葉「自動制御装置も作動せず、誰かが手動で隔壁のコックを降ろさなければ、と話をしていたところで、突然Mブロックの隔壁が降りたのは、こちらで確認出来た」

橘 「それがまさか、整備主任の手によるものだったとは…」

莉嘉「それで、これ幸いって、切り離したの!?」

晶葉「……この艦を守るためだ」

莉嘉「晶葉ァッ!!」 グッ

橘 「やめないか、莉嘉くん。晶葉くんを責めるのは、筋違いだ」

莉嘉「……ッ!」

橘 「状況から見て、必ず誰かが行かねばならなかった。何より、Mブロックの切り離しを指示したのは、この私だ」

莉嘉「っ……!どうして…!」

橘 「莉嘉くん……すまない」

莉嘉「アタシと同じくらいの子供がいたんだよ…?あとちょっとの辛抱で、ランドウを倒して、家族の所に帰るって!そう言ってたのに!!」 ダンッ

 

膝から崩れ落ちて、床面に拳を叩き付ける。

 

晶葉「………」

橘 「………」

 

通信士「…博士、戦艦テキサスから通信です」

橘 「……繋いでくれ」

 

艦長『──…橘博士』

橘 「申し訳ありません、テキサス艦長。そちらに援軍を送るどころか、敵襲の迎撃をするだけで精一杯です」

艦長『あぁ、状況は理解しておるよ。その上で、貴艦に頼みがある』

橘 「頼み?」

艦長『この包囲網を抜け、ラセツを追うのだ』

橘 「ラセツを?」

艦長『そうだ。ここで共倒れになるよりは、その方がまだ傷跡も遺せよう』

橘 「しかし、それではテキサスが…!」

艦長『既に、覚悟は出来ている。私も、乗員も!ランドウやラセツの手より世界を救うのは、我々でなければならない通りはない!』

橘 「………」

莉嘉「まさか、テキサスを見捨てたりしないよね?テキサスには戦力とかそんなんじゃない、リーナや茜達だって!」

橘 「……艦長、貴方の願いは受諾した」

莉嘉「え……?」

橘 「これより本艦は、敵包囲網を突破し、ラセツ及びランドウとの最終決戦に向かう!」

莉嘉「博士!」

晶葉「口を出すな、莉嘉」

莉嘉「だって!」

晶葉「博士だって、断腸の思いなんだ。鈍らせるな!」

莉嘉「そんな…!リーナ……加蓮、奈緒、茜、美穂、アーニャ、凛…!」

橘 「オーバーブースト、用意ッ!!ゲッター各機を帰艦させろ!」

 

クジラから、帰艦を告げる閃光弾が放たれる。

 

ニオン「何ぃッ!?」

美波「この状況で、帰艦…!?」

みく「橘博士、何を考えてるの!」

卯月「私達で、ラセツを追うんです」

菜々「えぇ!?テキサスを、見捨てるんですか!」

瑞樹「でも、ここで共倒れになれってしまえば、元も子もないとすれば……仕方ないのかもしれないわね」

鉄甲鬼「…背に腹は代えられんか」

芳乃「………」

かな子「李衣菜ちゃん、みんな……ごめんなさいっ」

 

展開したゲッターロボが、帰艦する。

 

橘 「よぉし、衝撃に備えろ。オーバーブースト!!」

莉嘉「………っ!!」

 

クジラが加速。質量で正面に展開する敵勢を強引に押し退け、北極までの道を切り開いた。

 

──。

 

古田「着艦したゲッターから、整備取り掛かるッスよ!決戦までに、少しでも状態を良くするッス!」

 

美波「古田さん!?整備班の……主任はどうしたんです?」

古田「主任は……分かんないッス!」

美波「分からないって…」

卯月「………」

みく「みく達だけで先行したとしても、敵は、ランドウにラセツの軍勢…!」

菜々「敵味方入り乱れるのは必至です。ナナ達に勝算は…?」

瑞樹「後ろ向きに考えすぎてもダメよ。やれる事を、やるしかないわ」

かな子「テキサス、無事でいてくれればいいけど…」

芳乃「他を心配している暇はー、ないのでしてー」

 

卯月「主任さん……必ず、ランドウは倒してみせます。だから──!」

 

つづく




次回予告

テキサスより先行し、ラセツ打倒に向かったゲッター軍団。
整備も不完全のまま、決戦の地へと向かう卯月達の前に、蛇牙城を占拠したラセツが率いるウザーラ、ブラックダイノゲッターロボ。
それに、ランドウの最終兵器・デビラ・ムウが襲い掛かる。

次回、ゲッターロボ×CG 第3部
第30話『北極原の決戦!』に、チェンジゲッター!

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