第1話『来たる、鬼』
── モンゴル、メネン平原。
男 「あ、あぁ…!」
MB・パゾロフ『!!』
子供「め、メタルビーストだ!メタルビーストが出た!」
青年「早くここから離れなきゃ…!早く、父さん!!」
男 「…やめろ…!」
青年「父さん…?」
男 「やめろっ!これ以上、ここを破壊しないでくれッ!!」
パゾロフ『!!!』
子供「わ、わぁっ?!」
青年「もうダメだ…!」
諦め、身構える。しかし、MB・パゾロフから放たれた触手の鞭が打たれることはなかった。
青年「……?」
驚いて見上げた視界の先、地面に突き立つ巨大なトマホークが、こちらへの攻撃を弾いている。
青年「これは…」
子供「知ってる!ゲッターだ!ゲッターが来てくれた!」
男 「おぉ、ゲッター……ロボ…!」
男達の頭上を2つの黒い影が飛翔していく──。
かな子「あれが最後の避難民でしょうか?」
美波「多分。間一髪、間に合って良かった」
かな子「避難してる人への跳弾を考慮して、トマホークで触手を弾き返すなんて、流石です!美波さん」
美波「大した事はしてないよ。それに、本番はこれから!」
かな子「そうですね…!卯月ちゃんも、李衣菜ちゃん達もいない今、私達だけでも頑張らないと!」
美波「えぇ。だけど、無茶は禁物よ。かな子ちゃんのネオゲッターは、まだ修理が終わったばかりなんだから」
かな子「おまけに単独操縦。無茶をしたくても、出来ませんよ。援護に徹します!」
美波「お願いね。それじゃあ…!」
パゾロフ『!!!』
かな子「! ゲッタートルネード!」
MB・パゾロフから放たれたミサイルの軌道を、ゲッタートルネードの突風で逸らす。
かな子「美波さん、今です!」
美波「えぇ!ゲッターウィング!」
ブラックゲッターが漆黒の翼を開き、相手との距離を詰める。
美波「ゲッタースパイク!──やぁ!!」
スパイクの突き出た拳で、MB・パゾロフの装甲を砕く。
パゾロフ2『!!』
かな子「プラズマブレイク!」
パゾロフ2『?!?』
ブラックゲッターに反撃の姿勢を見せたもう1機のパゾロフを落雷状のプラズマブレイクで制止。
美波「ゲッターレザァーーッ!!」
左腕の巨大なレザーブレードが反り立ち、相対したMB・パゾロフの体を両断。
かな子「ゲッターパンチ!!」
美波「ゲッターキック!!」
ネオゲッター3が捉えていたもう1機のMB・パゾロフも、正面からネオゲッター3、背後からブラックゲッターがそれぞれの一撃によって挟み込むことにより粉砕する。
パゾロフ3『……!』
美波「逃がさない!」
かな子「フィンガーネット!」
後ろに控え、逃走を図った最後のMB・パゾロフをフィンガーネットで捕縛。
かな子「捕まえました!」
美波「ゲッタービィームッ!!」
ネオゲッター3が捕らえたMB・パゾロフを、ブラックゲッターのゲッタービームで蒸発させる。
美波「…これで、この一帯に出没したメタルビーストは全部?」
かな子「周囲に熱源なし…。多分大丈夫だと思います」
美波「そう…」
かな子「戦闘時間320秒、最短記録ですよ!」
美波「かな子ちゃんのフォローのお陰ね。被弾も少なくて済んだわ」
かな子「いえ、私の方こそ。私が狙われないように、わざと前に出てくれたんですよね?」
美波「ふふっ、そろそろ一緒にチームを組んだりしてみる?」
かな子「それも、悪くないかもしれませんね」
美波「…けど、ここまで晶葉ちゃんの言う通りになるなんて」
かな子「メタルビーストの暴走、ですね」
美波「例えランドウを倒したとしても、戦いが終わる訳じゃない。むしろ指揮系統を失ったメタルビーストは、目的を失い暴れまわる…」
かな子「結局ランドウとの戦いから、何も変わらないって事ですよね」
美波「でも、新しくメタルビーストが生産される訳じゃない。残っているメタルビーストの掃討が終われば、この戦いも終わるわ」
かな子「インベーダーも、今は卯月ちゃんや李衣菜ちゃん達が引き付けてくれてますから」
美波「メタルビーストを掃討して、インベーダーとの決戦に備えたいわね」
かな子「…そんな簡単に、行ってくれるんでしょうか?」
美波「え?」
かな子「恐竜帝国の時も、百鬼帝国の時もそうでした。戦いが終わったと思ったら、新しい敵が出てきて…」
美波「今回も、また新しい敵が出てくる…?」
かな子「はい…。何となくですけど、そんな気がして…」
美波「……見えない先の事を気にしても、仕方ないんじゃない?」
かな子「それは、そうですけど…」
美波「どんな敵が現れたって、私達には描いた未来がある。だからその為にも、負けるわけにはいかない。そうでしょ?」
かな子「…はい」
美波「なら、何度だって頑張りましょ?きっと戦いを繰り広げた先に、明るい未来が待っているって、信じて」
かな子「はい…っ。すいません、ちょっと弱気になっちゃって」
美波「気にしないで。私はそれよりも、今日のかな子ちゃんのおやつの方が、気になるかな?」
かな子「そうですか?実は、手作りでプリンに挑戦してみたんです!出撃前に冷蔵庫で、そろそろ食べ頃の筈なんですけど…」
美波「ホント?なら、早く研究所に帰らなくちゃ!」
かな子「はいっ!──オープンゲット!!」
美波「あ、かな子ちゃん!」
ゲットマシンに分離し、高速で引き上げていく。
美波「もう、気が早いんだから。……」
美波(新しい敵、新しい戦い、かぁ…。かな子ちゃんの言ってることも、強ち的外れだとは思えない…。新しい敵が現れて次の戦いが始まって。そして何時もその中心にいるのは…)
美波「ゲッターロボ、か…」
~~~ 新早乙女研究所 通路 ~~~
美穂「おかえりなさい、かな子ちゃん、美波さん」
かな子「美穂ちゃん、ただいま戻りました~」
美波「お疲れさま、美穂ちゃん。茜ちゃんにアーニャちゃんも。飛焔チームはこれから…」
美穂「はい、研究所で警戒待機です」
茜 「お昼は美波さん達に頑張ってもらいましたからね!今度は、私達の出番です!」
美波「ふふっ、頼もしい。けど、無茶は禁物だよ?」
アーニャ「Да……そのために、ワタシと、ミホが居ますよ」
美穂「けど、アーニャちゃん、たまに茜ちゃんにノっちゃうよね?」
アーニャ「それは……そう言うのが、一番な時も、あります」
美穂「もぅ~」
美波「まぁまぁ、良いんじゃない?最後にチームを上手くまとめられるのが、美穂ちゃんって事で」
茜 「その通りです!頼りにしてますよ!」
アーニャ「ワタシ達の手綱……美穂になら安心して、託せます」
美穂「託される前提なのね…」 アハハ…
かな子「頑張ってください。後で差し入れのおやつも持っていきますから」
茜 「おやつ!差し入れ!!楽しみにしてますっ!!」
美波「ふふっ、それじゃあそろそろ、私達は戦闘結果の報告に…」
かな子「そうですね。えっと、晶葉ちゃんは不在だから……報告はテスターチームに…」
美穂「あ、テスターチームも今はいないよ?」
美波「え?」
茜 「至急の用事、とか言ってましたね!晶葉ちゃんに呼ばれて……今は確か……えーっと、いな……いなんたら…とか…」
アーニャ「藺灘波島、ですよ」
茜 「それです!」
かな子「藺灘波島?それって…」
美波「伊豆諸島に属する島の1つね。確か、無人島だったと思うけど」
美穂「うん。無人島なのを利用して、ゲッター線を使用する軍用施設を建設する、んだったよね…?それで晶葉ちゃんがゲッター線管理顧問として、そこに…」
かな子「それは分かってるけど、どうしてそこに、テスターチームが?」
アーニャ「ンー…?ゲッター線を使う施設……実際のゲッターで、使い心地を見てみる、とか?」
茜 「そうかもしれませんね!」
美波「理由はともかく……それじゃあ報告はどうしたら…」
美穂「報告書を、まとめておくしかないんじゃないですか?」
美波「それしかないかな…。予定変更しなくちゃ…」
かな子「わ、私も手伝いますから」
茜 「それじゃあ、私達も待機室に急ぎましょう!」
美穂「え?うん…」
アーニャ「出撃もないし、急がなくても大丈夫、ですよ」
茜 「それでもです!」
アーニャ「? アカネ」
茜 「何だか分かりませんが、妙に嫌な予感がします!」
美穂「嫌な、予感…?」
茜 「私にも分かりません!何だかこう、体の奥からむず痒くって…!どうも何か、落ち着かず!あぁもう!私、哨戒に行ってきます!!」 ダッ
美穂「あっ、待って!茜ちゃん!」
アーニャ「アカネ!アー、ミナミ、カナコ、ワタシ達は、ここで…」
かな子「う、うん…。どうしたんだろ?茜ちゃん…。何か、何時もと様子違ったよね?」
美波「えぇ。……」
かな子「美波さん?」
美波「何でもないの。早く報告書、仕上げなくっちゃ!」
かな子「…はいっ」
──。
~~~ 伊豆諸島 藺灘波島 ~~~
みく「──…ん~……!ようやく着いたにゃ~…」
菜々「ゲットマシン状態での長距離飛行は久々ですからねぇ。ナナも、腰の調子が、今一つ…」
瑞樹「そろそろシートに置いてるクッションを変えた方がいいんじゃないかしら?」
菜々「そうかもしれませんね。因みに、何かオススメとか、あります?」
瑞樹「丁度、法子ちゃんが好きそうな、真ん中にポッかり穴が開いてるのなんていいんじゃない?」
菜々「真ん中に穴……確かにそうですね~。戦闘なんかで長時間シートに座ってると、色々と負担が……って、ナナは痔持ちじゃないですよ!」
瑞樹「あら、法子ちゃんも痔持ちじゃないけど、好みで使ってるわよ?」
菜々「それは……そう言われると、そのぅ…」
みく「2人は相変わらずにゃ…」
晶葉「まぁ、そのくらい図太くもなるさ、こんな事柄に関わっていると」
みく「晶葉ちゃん!」
菜々「仕事、忙しくないんですか?」
晶葉「仕事、という程大層なものはないさ。私の勤めは、あくまでゲッター線の管理顧問。ここに敷設中の大規模ゲッター炉心が暴走しないよう、監視しておく程度のものだよ」
菜々「そ、そうなんですか?」
晶葉「大人には大人のプライドというものがあるらしくてな。子供の手など借りなくても、立派な施設は出来る、とのことだ」
みく「それで、暇潰しにわざわざ出迎えって訳にゃ?」
晶葉「概ねはな。私だって、武骨な自衛隊の男連中に囲まれていると、馴染みの顔を見たくもなる」
瑞樹「心中は察するわ」
菜々「それで、今日のご用件は?」
みく「そうにゃ。意気なりみく達を呼びつけて。ただのホームシックなら晶葉ちゃんが研究所に帰ってくればいいのに」
晶葉「それなんだがな…」
菜々「はい」
晶葉「…まぁ、立ち話もなんだろう。一先ずは、建設中の施設を案内しよう」
菜々「え…?」
晶葉「いいから着いてこい。ここのスタッフには、研修という名目でお前達のゲッターの整備もさせる。その邪魔をするわけにはいかんだろう」
菜々「あ、成る程~」
みく「まさか、その為だけにみく達にゲッターを運ばせたわけじゃないにゃ?」
晶葉「さぁな?単に完成が近付くこのゲッター線稼働基地を、自慢したいだけかもしれんぞ?」
菜々「そう言うの、自分で言っちゃうんですか…」
──。
菜々「ほぇ~…。一通り見て回りましたけど、流石は最新鋭の軍事施設、ですよね~。レーダーも外壁に使われる資材も全部見たことも聞いたこともないようなもので、早乙女研究所なんかよりも防衛は堅牢なんじゃないですか?」
晶葉「対インベーダーの最前線となるべく建設された施設だからな。ここが完成すれば、100機近い量産型ゲッターGを運用することになる。安全措置に抜かりは許されないさ」
瑞樹「内的にも、外的にも?」
晶葉「…そう言うことだ」
菜々「どう言うことです?」
みく「それをみくに聞かれても……瑞樹さん?」
瑞樹「ランドウとの戦いで成果を上げられたとしても、やはりゲッター線、と言う所ね」
みく「……?」
晶葉「放射能と言う危険性があるにも関わらず、現状我々が、原子力なんてものに頼っているのと同じ、と言うことだよ。危険性を知りながら、生き残るためと正当性を主張して、反対意見も踏み潰して戦力の拡充を急いでいる」
菜々「けど、それは仕方ないことなんじゃないですか?」
瑞樹「そうね。例え癌細胞を自ら増やすような行為でも、生き残るためには仕方のないことよね」
晶葉「言うな。その為に最低限、反対派を納得させるために、無人島での建設が始まったんだ」
みく「ここならゲッター炉心が暴走しても、被害は少ないってこと?」
晶葉「あぁ」
みく「…はぁ……大人の世知辛い事情は分かりたくないけど、細かい部分は一筋縄じゃいかないんだね~」
晶葉「それでも、私達は人類の未来の為に動いているんだ。誰に何と蔑まれようが、最早立ち止まることなど出来はしないさ」
菜々「それで、工事も急ピッチで進めてるんですね。わざわざ試作型のゲッターまで持ち込んで…」
晶葉「……」
菜々「晶葉ちゃん?」
瑞樹「そうね。確かに、ここの現場で稼働しているマシンは、通常の工業機械よりも試作型ゲッターの方が遥かに多いような気がするわ」
晶葉「ここは、ゲッターの運用を前提にした施設だぞ?そして、ゲッターロボは元々宇宙開発用として開発された作業ロボットだ。不自然ではないだろう」
瑞樹「そうかしら?それじゃあ何故、わざわざ私達をここまで呼んだの?ゲッターロボの整備の研修なら、試作型ゲッターで充分じゃない」
晶葉「……」
瑞樹「晶葉ちゃん、貴女何かを試そうなんて、思ってない?」
菜々「何か…?何かって、何ですか?」
瑞樹「詳しくは分からないわ。だけど、無人島にゲッター線を扱う施設を建造して、ゲッターを集めて…。今回の施設建設は、晶葉ちゃんにとって都合のいい機会だった、違うかしら?」
みく「そんな、何か実験をやるんだとしても、だったらみく達が呼ばれた意味は?」
瑞樹「そうね……実験の先に何かが起こった際の、保険…」
みく「保険!?」
直後、彼方から爆発音が響く。
みく「──!?…何にゃ!」
晶葉「……来たか」
菜々「晶葉ちゃん…?来たかって?」
晶葉「…2週間前だ」
菜々「え?」
晶葉「東北のある町からの通報を受けて現場に赴いた。私達は便利屋ではないと言うのに、迷惑な話だったが」
みく「何…?こんな時に何の話をしてるにゃ?!」
晶葉「一夜にして一つの町が壊滅した。正確には、その町に済んでいた住人の半数以上が、一夜にして虐殺されたんだ」
みく「にゃっ…?!」
菜々「そんな事が…?」
晶葉「そんな話を聞かされれば、誰だってインベーダーや、ハ虫人類の生き残りの仕業だと想像する。だがそこへ行って私が見たものは、それらの何れとも違う存在との遭遇だった」
菜々「それって、つまり…?」
晶葉「そう、新たな敵だ。我々、人類にとってのな」
瑞樹「人類の、敵…!」
みく「で、でもどうして、東北に現れたそいつらが、今度はピンポイントでここに?まさか、連中もゲッターを狙って…!」
晶葉「どうだろうな?私は連中をここへ誘き寄せるために、餌を放っていたからな」
菜々「餌を、放つ…?」
晶葉「話にあった東北の町、そこで捕獲した連中の仲間の1匹だ」
みく「っ…!そんな事を…!?」
晶葉「ここは四方を海に囲まれた無人島。放した1匹も単に逃がしたのではなく手傷を負わせてある。その状態で脱出を試みるなら、助けを呼ぶしかないだろう?連中の通信手段が、如何なるものかは置いてな」
晶葉「だが昨日、この島に原因不明の落雷が落ちた。藺灘波島は晴天だったと言うのにな。そして、その直後くらいから断末魔のような怪物の叫び声を聞いたと言う作業員の報告が複数あった」
瑞樹「それで、敵の襲来があると?」
晶葉「あぁ、先程の爆発音、そしてこの断続的な振動…。瑞樹達ももう慣れただろう?戦闘の衝撃に他ない」
みく「そんな!ここを襲わせるために、わざわざ…!」
爆発が勢いを増す。
菜々「きゃあ!!」
晶葉「真ゲッターはインベーダーとの戦いのために動かせん。美波や、飛焔チームも然りだ」
みく「だから、みく達をここに…?」
晶葉「無論、巻き込みたくなどなかったさ。しかし、他に手はなかった」
瑞樹「言い訳はいいわ。事実を受け止めるだけだもの」
晶葉「…すまない」
瑞樹「段々と早乙女博士に似てきたわ。貴女」
晶葉「……」
瑞樹「行くわよ。みく、菜々さん」
みく「…合点にゃ!」
菜々「折角の施設を、破壊させるわけには行きませんからね!」
タッタッタッ──。
晶葉「……」
晶葉「ゲッターの、ゲッター線が導く運命には抗えん。それなら、私は…──」
──。
みく「さ~て、敵はどこにゃぁ?」
菜々「あ、あそこ!煙が上がってます!」
みく「…?施設から随分遠くじゃない?」
瑞樹「誰か戦闘している…?試作ゲッター!?」
菜々「そんな…!戦闘用でもない試作ゲッターじゃ……性能はナナ達のゲッターよりも劣るんですよ?!」
瑞樹「尻込みしてはいられないわね。突っ込むわよ、みく!」
みく「任せるにゃ!!」
イーグル号を先頭に機首を下ろし、急降下しながら合体のフォーメーションに入る。
みく「チェーンジゲッターーーッ1!!」
合体しながら更に速度を増し、
みく「ゲッターキィィックッ!!」
垂直蹴りで、試作ゲッターと対峙していた”敵”を蹴り飛ばして着地。
パイロットA「ゲッターロボ!?」
瑞樹「試作ゲッターで戦闘なんて自殺行為よ!貴方達は下がりなさい!」
パイロットB「だが、敵を見たこともないタイプだぜ!?」
パイロットA「そのゲッター1機だけで、大丈夫なのか?」
菜々「…信用ありませんね、ナナ達」 アハハ…
瑞樹「まぁ、当てにされるよりはマシじゃない」
みく「それより!あの敵は…!」
体勢を整え、アンノウンと相対する。
アンノウン『グゥゥ……』
菜々「頭に、角…?何処と無く百鬼メカにも似ているうな…」
瑞樹「角が生えてるって見た目だけは、ね」
みく「見た目だけ…?」
アンノウン『ウグ……ッゲ…ッ…タ…ァ……!』
みく「喋った!?」
アンノウン『ゲッタァアア!!』
みく「ッ!?」
突如の咆哮と共に襲い掛かってきたアンノウンの突撃を、ゲッター1の身を翻して躱す。
みく「何にゃ!?こいつ…!」
菜々「ナナ達を見るなり、いきなり襲ってきましたよ」
瑞樹「結局、ゲッターを敵視してるのは、これまでと同じって訳ね」
みく「ま~たみく達には分かんないやっかみって訳にゃ!ホント、どいつもこいつもよく飽きないにゃ」
菜々「それで、さっき百鬼メカと似てるのは見た目だけって言ってましたけど?」
瑞樹「奴の体内をスキャンしてみたのよ。そしたら、体内にコックピットのような部分はおろか、機械的なものも確認されなかったわ」
みく「それってつまり…」
瑞樹「まじりっけ無しの100%有機体の巨大生物。敢えて言うなら怪獣って所ね」
みく「…怪獣相手なら、容赦は要らないにゃ!ゲッタートマホークッ!!」
トマホークを抜き打ち、アンノウンめがけ駆け出す。
みく「うにゃぁあああッ」
両手で携えたトマホークを上段に高々と掲げて勢いよく振り下ろす。
ガギンッ
アンノウン『……!』
みく「ぐっ…!」
両手をクロスさせてトマホークを受け止めるアンノウン。
みく「ぐぐぐ……堅いにゃ~…!」
アンノウン『ゲッタァア!!』
みく「おっと!」
ガードを僅かに開き、覗いた眼光の輝きを直ぐ様察知。後方に身を翻して光線を躱す。
みく「あっぶにゃ~…!」
菜々「流っ石の反射神経ですね!」
瑞樹「喜んでる場合じゃないわ!次が来るっ!」
アンノウン『シネェエ!!』
みく「んにゃぁ!!」
続け様に放たれる光線を飛翔して回避。
みく「零距離から射撃なんて、戦いの分かってない素人丸出しにゃん!」 ジャキッ
ゲッターマシンガンを構える。
みく「射撃はこうするにゃあ!!」
瑞樹「何時もの乱れ撃ちじゃない」
アンノウン『グ……ガッ!?』
菜々「でも、動きは止まりましたよ!チャンスです、みくちゃん!」
みく「にゃあ!喰~ら~え~──!」
コォ…ッ
みく「──ゲッタービィィームッ!!」
アンノウン『!!?』
マシンガンの弾丸で動きを封じたアンノウンに上空から放たれたゲッタービームは真っ直ぐに延びる。が、
アンノウン『!!!』
みく「にゃあ!?」
瑞樹「ゲッタービームが…」
菜々「吸収、されちゃいましたぁ!?」
アンノウン『キカヌゥ!!』
みく「うにゃぁ?!」
アンノウン反撃の光線を、ゲッター1を急降下させて躱す。
みく「うぅっ…!ゲッタービーム!!」
アンノウン『ムダ!ムダァア!!』 シュゥ…
みく「くぅ~!やっぱりダメにゃぁ!?」
瑞樹「ビームによる攻撃は無意味よ。接近戦に切り替えて!」
菜々「けど、近接武器だけじゃ決定力がありませんよ?」
瑞樹「けれどこのまま逃げてるだけでも…。距離を取っても、被害地域が増えるだけよ」
菜々「これまでのパターンだと、吸収できるエネルギーに限度があるかもしれません。ビーム攻撃が、完全に無意味と決まった訳じゃありませんよ!」
瑞樹「そうかもしれないけど、それよりも奴の体に傷を付ける、その隙を突いて攻撃した方が、結果的な被害は少なくて済むわ」
菜々「そもそも傷付けられるんですか…?ナナ達の、ゲッターの武器で…」
みく「もうっ!2人共、言い争いするんなら静かにして!」
アンノウン『ッタァァア!!』
みく「にゃっ!?」
一瞬の隙に、放たれた光線がゲッター1を直撃。
みく「うにゃぁあああああっ?!!」
アンノウン『ゲッタァア!!』
空中から墜落するゲッター1に、アンノウンが追撃の突進。
みく「がぅ…ッ」
体勢を立て直すこともままならないゲッター1は、直撃で攻撃を受け、吹き飛ぶ。
みく「ガッ…!」
隆起した地形の、崖面にぶつかって制止。
みく「うぅ…」
菜々「ぐっ……みくちゃん、ごめんなさい…」
瑞樹「…たった2発で、これだけ追い詰められるなんて…」
みく「桁外れのパワー…!能力の差は、歴然って事……にゃ」
菜々「ナナ達だけで勝てっこないですよ…!こんなの!」
みく「諦めちゃダメにゃ!挫けたらおしまいにゃ…!こんな所で膝着いてたら、リーナちゃんに笑われちゃうよ!」
アンノウン『オワリ……ダァアアア!!』
みく「っ…!」
立ち上がるのがやっとの状態のゲッター1に、アンノウンが迫る。
パイロットA「うおおおおおッ!!」
みく「!?」
アンノウン『!?』
パイロットB「おりゃぁあああ!!」
瑞樹「試作ゲッター!?」
突撃を仕掛けたアンノウンに、左右から挟み込むように飛び込んだ2機の試作ゲッターが羽交い締めにする。
パイロットB「へへっ……どんなもんよ?」
瑞樹「その機体では危険よ!早く離れなさい!」
パイロットA「試作機とは言えゲッターなんだ!俺達だって……おわっ!?」
言い終わらぬ内、左右の腕を振り上げ、あっさりと試作ゲッターの拘束を振りほどくアンノウン。
菜々「あぁ!」
パイロットA「くそっ…!こんのぉ!!」
ゲッター2によく似た姿形の試作ゲッター。そのドリルを振りかざし、アンノウンを攻撃する。
ガギギギッ
みく「みく達の事はいいから!早く離脱を!」
パイロットA「はっ!アンタらの為?違うね!それだけじゃねぇ!」
みく「!?」
パイロットA「さっきの一瞬に、俺の仲間は散々やられちまった!その弔いも出来ねぇで、男が引き下がれるかァ!!」
アンノウン『!!』
ドリルを弾き、巨腕を振るって試作ゲッターを殴り飛ばす。
パイロットA「畜生…ッ!」
倒れ伏しても尚、ドリルミサイルを放ったが、それはアンノウンを貫く事はなく弾け飛び、地面に突き立った。
パイロットA「っ…この野郎……!」
アンノウン『ジャマダ!!』
みく「っ…!」
アンノウンの攻撃によって呆気なく破壊される試作ゲッター。
パイロットB「なっ…!っ…この、よくもぉ!!」
続き、ゲッター1によく似た試作ゲッターも特攻を仕掛ける。
瑞樹「無茶よ!!」
アンノウン『!!』
パイロットB「ぅ……ガ…ぁあ…ッ!!」
アンノウンの攻撃を受け、あちこちの間接からオイルを吹き出し、表装が剥がれても、その試作ゲッターはアンノウンを目指す。
菜々「あぁ…!どうして…!」
みく「もういいよ…!もうやめてぇ!!」
パイロットB「そいつは出来ない、相談だッ!!」
ゲッターとしての姿を失うほどに傷付きながら、アンノウンの懐に潜り込む。
パイロットB「これが俺の人生最大の、大博打だぁあッ!!」
アンノウンの懐で腰に手を回してホールドし、力を込め、
瑞樹「何をする気!?」
パイロットB「こンのぉおおお~ッ!!」
アンノウン『オ…?オォオオ!?』
アンノウンを持ち上げる。
パイロットB「さぁ、今だ!俺の炉心を撃て!」
みく「えっ!?」
菜々「そんな!嘘ですよね?」
パイロットB「試作機だろうがこいつはゲッターだ…!こいつの炉心に、ゲッタービームを撃てば、炉心内部のエネルギーと同調して威力は爆発的に増大する!」
瑞樹「そうかもしれないけど、貴方は!」
パイロットB「へへっ、さっきの嬢ちゃん達の会話に乗らせてもらうぜ!」
菜々「っ……もしかして、ナナ達の…!」
パイロットB「炉心のエネルギーで増えたエネルギーなら、この敵だって腹一杯になるだろうさ!……ぐっ!」
持ち上げられたアンノウンが抵抗し、試作ゲッターの腕が軋み、悲鳴を上げる。
アンノウン『ハナセ…!ハナセェ!!』
パイロットB「悠長に構えてる時間はねぇ!ここで倒さなきゃ、もっと被害が増えるだけだ!だからやれ!撃つんだ、ゲッターロボォ!!」
みく「……」
菜々「みくちゃん…」
瑞樹「みく、辛いなら私がやるわ。コントロールを譲って」
みく「…っ」
みく「──ゲッタァアービィィイーームッ!!」
カッ
試作ゲッターの炉心めがけて、ビームは放たれた。
パイロットB「──これが、ゲッター線…!何て温かいんだ…。そうだ、だから俺は…」
──。
茜 「くっ…!ゲットマシンを飛ばしているのに、いなんとか島とか言うのは、まだ着かないんですか!」
アーニャ「藺灘波島、です」
美穂「晶葉ちゃんからの緊急スクランブルだって、焦る気持ちは分かるけど、落ち着こう?」
アーニャ「そうです。ここで、ワタシ達が慌てても、仕方ありません、ね」
茜 「ですが!何だかこうモヤモヤして…!もういっそ、合体して飛んだ方が速くないですか?」
美穂「それは……飛焔にはエネルギーに限りがあるんだから…って、えっ……きゃあっ!?」
突如、ゲットマシンの進行方向から強烈な突風が吹き、マシンが煽られる。
アーニャ「っ…!姿勢のコントロールを…!ミホ、アカネ、無事……ですか?」
美穂「う、うん…。こっちは何とか…」
茜 「ですが、何だったんですか?今のは!?」
美穂「只の風じゃないよね…。丁度藺灘波島の方…」
アーニャ「!」
美穂「何、あれ…!?」
見上げた視界の先、藺灘波島と思われる方角に黒く、巨大なきのこ雲が立ち上っている。
美穂「い、一体何が…?」
アーニャ「…っ!これは…!」
美穂「アーニャちゃん…?」
アーニャ「ワタシ達の進行方向、藺灘波島から、膨大なゲッター線を観測してます!」
美穂「膨大な…?それじゃあ、さっきの突風は…」
アーニャ「ゲッターエネルギーの、爆発…!」
茜 「!」
ギュンッ
美穂「茜ちゃん!」
茜 「最早ゆっくりしてられません!とにもかくにも、いなんとか島へ急ぎましょう!」
アーニャ「待ってください!」
茜 「アーニャちゃん!」
アーニャ「ゲッター2に合体しましょう。その方がもっと速い、です」
美穂「合体する為にも、先ずは足並みを揃えなきゃ、ね?」
茜 「お2人共…!分かりました!」
美穂(ゲッター線の爆発…。まさか2回も見ることになるなんて…)
アーニャ「ミホ、用意、いいですか?」
美穂「あっ、うん…。何時でも大丈夫だよ」
アーニャ「では、チェンジ!ゲッター2ッ!!」
美穂(茜ちゃんみたいな勘がある訳じゃないけど、嫌な予感がする…)
──。
~~~ 施設建設跡地 ~~~
晶葉「──…っくは…!これは、爆発の衝撃で飛んできたゲッターの装甲の破片、か…。私を守ってくれたのか…」
装甲の破片と地面との間に出来た僅かな隙間から這いずり出し、焦土となった大地を一望する。
晶葉「みく達、テスターチームは……生きてはいるだろうな。私が生きているくらいだ。しかし、この状態では、施設建設はまた、白紙からやり直しだな」
晶葉(それにしても、あの敵…。明らかにゲッターと対峙する時だけ目の色を変えていた。やはり、ゲッター線に導かれて現れる、という訳か)
晶葉「新たな試練、か…。ここまで予測して、貴方はアレを私達に残してくれたんですか」
晶葉(だとしたら、いよいよ私も、貴方を恨みますよ。早乙女博士──)
晶葉「完成は急がなくてはならない、か。早乙女博士、最後の遺産の…」
つづく
次回予告
戦いの中で心に傷を負う者、戦いの中で己に出来る事を模索する者、誰が為に戦う者──。
異なる方を向く三つの意思、彼女達が聴くのは一つの鼓動。
次回『アーク、胎動』
その鼓動、三つの心を束ねるか。