~~~ 都内某所 撮影スタジオ ~~~
カメラマン「──はい、OK!!」
莉嘉「ありがとうございま~すっ!」
カメラマン「今日の撮影はここまで。お疲れさま」
莉嘉「お疲れさまでした~!」
タッタッ──
スタッフ「さ、撤収するぞ~。みんな、作業急げ~」
カメラマン「……」
スタッフ「? どうかしたんスか?」
カメラマン「今日撮影したあの娘、確かアイドルの……城ヶ崎莉嘉ちゃん、だったっけ?」
スタッフ「え?えぇ、そうっスけど、それが何か?」
カメラマン「前に噂で聞いた話だと、天真爛漫で無邪気な子って聞いてたけど…」
スタッフ「えぇ!噂通りの、明るい子だったでしょ」
カメラマン「…なぁんか違うんだよな~」
スタッフ「違う、っスか?」
カメラマン「今日来た彼女、天真爛漫で無邪気って言うよりは、何となく子供であろうとしてる、みたいな…」
スタッフ「子供であろうと、ねぇ。あ、そう言えば」
カメラマン「何だ?」
スタッフ「あの子確か、例のゲッターロボで有名な早乙女研究所と提携してる、アイドル事務所の子っスよね?」
カメラマン「そうなのか?」
スタッフ「えぇ、確か。それで、前のほら、ランドウとか言う組織を相手に、海外で戦ってた~、何て噂もあるんですよ!」
カメラマン「戦う?彼女が?流石に眉唾だろう?」
スタッフ「そうは思いますけどね~。けど、噂の彼女と違和感があるって言うんなら、そのくらいの何かきっかけがあったんじゃないかと、思うんスよね~」
カメラマン「そう言うものなのか…。まぁ何にせよ、どうせ写すなら、裸の彼女を写したいものだな」
スタッフ「犯罪予告?」
カメラマン「違う。何て言うか今日の彼女は、仕事をこなす為に取り繕っている感じがした。もっと素直な、ありのままの彼女を、ファインダーに写したいものだよ」
──撮影スタジオ、エントランス。
莉嘉「……」 トボトボ
「やっほー、莉嘉」
莉嘉「…お姉ちゃん」
美嘉「お疲れ。撮影、大変だった?」
莉嘉「……そんなこと、ある訳ないじゃん。今日も余裕だって」
美嘉「そう?の割りには、何か疲れてるみたいだったけど?」
莉嘉「気のせいじゃない?疲れてるなんて、それこそあり得る訳ないじゃん」
美嘉「…なら、良かった」
莉嘉「え?」
美嘉「ちょっと~、忘れてない?今日が何の日か」
莉嘉「今日?えっと、期末テスト結果が出るのは、来週だよね…」
美嘉「はぁ…。アタシとアンタ、ファミリアツインのライヴに向けた、合同レッスンの日でしょうが」
莉嘉「合同レッスン…?あ、あぁ!」
美嘉「今思い出したの?」
莉嘉「ごめんって!アタシの仕事も終わったんだから、早く行こ!ね?」
美嘉「莉嘉と2人だけでもね…。ライヴにゲストで参加予定の美波さんやかな子とも連絡取れないし…」
莉嘉「美波と、かな子…?」
美嘉「そ。出撃とかでもあったのかな…?そうだ莉嘉、研究所に行って、美波達を迎えに行って……莉嘉?」
莉嘉「ぇ……うぇ…っ!」
美嘉「ちょっと、莉嘉…!」
莉嘉「うぇええぇぇぇえええええッ!!」
美嘉「ちょっと、マジ?こんなトコで…。あ、何でもないです~。その、何て言うか…発作みたいな……」
莉嘉「あ゛ぁぁぁああああああああああ!!!」
美嘉「あぁんもうっ!収まってよ、莉嘉!!」
~~~ 新早乙女研究所 格納庫 ~~~
晶葉「搬入作業は慎重に頼むぞ。機体は大破している。迂闊に動かして損傷箇所を増やすな」
整備班一同「「「了解ッ!!!」」」
晶葉「…よし。私は何時もの場所に向かう。整備班の指揮は任せたぞ、古田新主任」
古田「は、はいッス~!」
晶葉「何かあれば秘匿回線で、な」
古田「了解ッス!!」
タッタッタッ──
美波「──晶葉ちゃん!?」
晶葉「ん?おぉ、美波、それにかな子も。どうした?血相変えて」
美波「どうしたって、藺灘波島で戦闘があって、負傷したって聞いてたけど…」
かな子「そうですよ!実際に頭に包帯巻いて、腕にギプスまで…!」
晶葉「これか?何、医療班が大袈裟なだけだよ」
美波「そうなの?」
晶葉「あぁ、現場にはいたが、戦闘に参加した訳じゃない。爆発の衝撃で吹き飛ばされたくらいだ」
かな子「それじゃあ、ホントに大した事ないんですか?」
晶葉「何度も言わせるな。軽い全身打撲と前腕部骨折。精々全治2ヶ月という所だろう」
かな子「普通それを大した事ないとは言わないんじゃ…」
晶葉「大した事はないさ。…アイツらに比べたらな」
かな子「アイツら…?」
美波「みくちゃん達、テスターチームのみんなの事?」
晶葉「あぁ。ゲッター炉心爆発の爆心地の間近にいたからな。例えゲッターに乗っていようと、無傷では済まされん」
かな子「みくちゃん達は、今…」
晶葉「都心の総合病院に移送した。ここの設備では、手の施しようがなかったからな」
美波「そんなに…」
晶葉「しばらく旧ゲッターは使えん。お前達にも、これまで以上に働いてもらう事になるぞ」
かな子「それだけ…?それだけなんですか?」
晶葉「ふむ…?それだけ、とは」
かな子「みくちゃん達は死ぬかもしれない怪我まで負ったんですよ?!それなのに…!」
美波「かな子ちゃん、気持ちは分かるけど」
かな子「美波さん…!」
美波「ここで晶葉ちゃんを責めても、仕方ないよ。悪いのは、みくちゃん達をやったその相手じゃない」
かな子「それは…!そうですけど…」
晶葉「知りたいか?」
かな子「え?」
晶葉「みく達をやった相手を知りたいか、と聞いている」
美波「相手の事、って…」
晶葉「…付いてこい」
かな子「…?」
美波「?……」
──。
かな子「ここって…」
美波「研究所の地下に向かっているみたいだけど、この先に何があるの?」
晶葉「みく達を襲った敵…。その仲間の標本さ」
かな子「標本…!?そんなものがどうしてこの研究所に?」
晶葉「私が欲した訳じゃないさ。しかし、日本各地に出現した奴等を駆除し、残った遺体は研究所で回収しろと政府に言われてしまえば、断ることも出来んな」
かな子「どうして、そんな…?」
晶葉「解剖して少しでも敵の正体を知りたいんだろうさ。前に、インベーダーの解剖を行ったのが裏目に出た結果だな。……さて、着いたぞ」
美波「ここ、研究所の冷凍庫…」
晶葉「生物だったモノの死骸を腐らせず保管する場所と言ったら、ここくらいしかないからな」
言いながら、白衣の懐からカードキーを取り出し、扉のロックを解除。開いた扉の隙間から白い冷気が漏れ出す。
かな子「うっ…寒ぅ……」
美波「これが…」
晶葉「そう、これが我々の、新たな敵だ」
冷凍倉庫内に所狭しと並べられた細長い円柱状のカプセル。その中に納められたモノは、
かな子「鬼…?って事は、百鬼帝国の…」
晶葉「違う」
かな子「え?」
美波「どうして言い切れるの?」
晶葉「違うんだよ。塩基配列から血液中に含まれるその構成要素に含まれるものまで全て、な」
かな子「それじゃあ、これは…」
晶葉「百鬼帝国とは違う存在。正真正銘の鬼、そう呼ぶしかない存在だ」
美波「正真正銘の、鬼…」
晶葉「今全国で、コイツらの出没が相次いでいる。当初はこのような人間大の鬼が、各地に住まう人間を襲い、その肉を喰らっていた」
かな子「人間を、喰らう…」 ウッ
晶葉「しかし今回、はじめてゲッターと同格の大きさを持った鬼が姿を現した」
美波「それじゃあ、みくちゃん達を追い込んだのって!」
晶葉「コイツらの仲間、そう見て間違いはないだろう。多少形状や、特徴は異なるが、頭部と見られる箇所に角のような部位が生えているなど、共通している部分も多い」
美波「…けど待って。外見の特徴って、その時現れた巨大な鬼って」
晶葉「そうだ。これまでの機械仕掛けの敵とは違う。ゲッターと同等の大きさで、ゲッターを上回る力を持った生き物だ」
かな子「い、生き物…!?」
美波「そんな生物が存在が、あり得るなんて」
晶葉「少なからず、この世界の生物ではない。そして進化したのだ、ゲッターを倒すために。面白いだろう?」
かな子「え…?」
晶葉「塩基配列は百鬼兵と異なると言ったが、それでもこの地球上に存在する生物とそう異なるわけではない」
鬼の標本が入ったカプセルに手を着き、ふっと笑みを作る。
晶葉「では、何故奴等は自らを巨大化させる事が出来る?その因子は、仕組みは何だ?自然界において巨大化などと、非合理的な進化を遂げたその理由は?」
かな子「晶葉ちゃん…?」
晶葉「巨大化した個体は、ゲッターの存在を確めるようにその姿を現した。まるでゲッターと競うようじゃないか?巨大な姿のゲッターロボ、その存在に抗うかのようには見えないか?」
かな子「それは……えぇっと…」
晶葉「憎悪か、敵愾心か。それほどゲッターが憎いのか?自然の摂理をねじ曲げた進化を遂げてまで、滅ぼされなければならないものなのか。我々は、ゲッターは!」
美波「待って!…話がずれてきてない?相手の素性には興味はあるかもしれないけど。今は、晶葉ちゃんが望むような応えは返せないと思う」
晶葉「……すまん。少し暑くなりすぎだな。一度、ここを出よう。長居するような場所でもないしな」
──。
ツカツカツカ──
晶葉「……」
かな子「え、え~っと、晶葉ちゃん?」
晶葉「少なくとも、奴等の狙いはゲッターだ。これまでの小規模の襲来は、連中で言うところの斥候のようなものだろう。だから試作機とは言え、ゲッターを集めた藺灘波島に奴は現れた」
美波「…1つ聞きたいんだけど」
晶葉「何だ?」
美波「敵の狙いが分かっているんだったら、ゲッター線を放棄する事は、出来ないの?」
晶葉「無理だな」
美波「…少し位、考えてみてくれてもいいんじゃない?」
晶葉「敵は今回の鬼ばかりではない。私達にはインベーダーとの決戦だって残っているんだぞ?ゲッター無くして、それをどう乗り越える?」
美波「ステルバーのように、世界各国のスーパーロボット軍団がいるじゃない。みんなで力を合わせれば!」
晶葉「無理ではない、か?だがそうなれば、もっと多くの犠牲が出るぞ。美波の家族や、仲間も犠牲になる」
美波「っ…!」
晶葉「インベーダーを倒すにはゲッターの力が必要不可欠なのだ。ゲッターを捨てれば、必要のない犠牲を生む事になる。ならば、敵が襲ってくる事も覚悟の上で、ゲッターで戦い続けるしかない」
美波「……」
晶葉「自分達の愛する者を守る為だけにでも、な」
美波「……? 晶葉ちゃん…?」
かな子「あの、美波さん」
美波「かな子ちゃん、何?」
かな子「私も、ゲッターで戦う道を選びます」
美波「えっ」
かな子「だって、ずっと戦ってきましたから。今更、ゲッターが敵を誘き寄せるから、とかゲッター線が危険だからとかでゲッターを捨てるのは、何て言うか……都合が良い気がしちゃいますから」
美波「……」
かな子「私、悔しいんです。みくちゃん達が体を張ってまで戦っていたのに、何も出来なかった自分が。力があれば、ゲッターがあれば、私だって戦えたのにって」
美波「だから、だから私達はゲッターから離れられないの?ゲッターと一緒に、死ぬ瞬間まで戦い続けなくちゃいけないの?」
かな子「私はそうだって、思います。きっともう、私達とゲッターは運命共同体なんですよ」
美波「運命、共同体…」
晶葉「そうだ。ゲッターと共に生きるんだ。その為に、頼むぞ」
かな子「でも、相手はゲッターの炉心を爆発させて、ようやく倒せるような相手、何ですよね?今の私達の戦力じゃ……ゲッター飛焔に頼るしか」
晶葉「問題はない。もう間もなく、新たなゲッターロボが完成する」
かな子「新たな、ゲッターロボ…!?」
晶葉「尤も、雛形を遺したのは早乙女博士だがな」
かな子「博士が…?それじゃあ…」
晶葉「早乙女博士が遺した、最後の遺産さ。パイロットも選抜は済んでいる。3人の内の2人、かな子と美波、お前達だ」
かな子「わ、私と美波さんで…?」
美波「…最後の1人は、晶葉ちゃん?」
晶葉「私は違う」
かな子「え…?じゃあ、最後の一人は……一体、誰なんですか?」
晶葉「直に分かる」
美波「直に…?」
かな子「え~…?どういう事ですか、それ…」
「おっ、いたいた」
晶葉「むっ、美嘉じゃないか」
美嘉「やっほー★今日も出撃で、お疲れな感じ?」
かな子「え?えぇ、まぁそうですけど…」
美波「どうしたの?わざわざ美嘉ちゃんが研究所に来るなんて」
美嘉「どうしてって、ははっ。まさか本当に忘れてるとはね…」
美波・かな子「「えっ?」」
美嘉「もうすぐアタシと莉嘉の、ファミリアツインのライヴだって。2人もゲストで出演するんでしょ~?」
美波「えっ?あ~、そう言えば…!」
かな子「今日って、合同レッスンの日…!すっかり忘れちゃってましたぁ!」
美嘉「全く…。莉嘉が連絡してもでないし、それなら直接って、出向いてきて正解だったわ…」
美波「ごめんなさい…!直ぐに支度してきますから!かな子ちゃんっ!」
かな子「は、はいっ!また後で!その、玄関のトコで待っててください!!」
タッタッタッ──
美嘉「ったく、世界平和は大事な使命だとは思うけどさ?ちょっとはこっちの都合とかも考えてほしいよね~」 チラッ
晶葉「すまんな。卯月達ゲッターチームは勿論、李衣菜達真ゲッターチームも欠いていてな」
美嘉「ま、別にいいけど」
晶葉「それにしても」
美嘉「ん、何?」
晶葉「まさか美嘉の方が来るとはな。研究所への用事なら、莉嘉を寄越せば良かっただろう。莉嘉の方が、こっちの中に詳しいんだからな」
美嘉「あぁ、それは確かにそうだけどさ」
晶葉「?」
美嘉「莉嘉、ここに来ると色々思い出しちゃうみたいでさ」
晶葉「そうか…」
美嘉「今も大変だよ。莉嘉、主任が死んだ時の事思い出して、夜中もたまに目が覚めて泣いちゃうから、一人で寝かせられもしない」
晶葉「精神が未熟であるが故に、か。莉嘉には辛い経験をさせてしまった」
美嘉「…アンタはいくつなんだか」
晶葉「私は良い。とっくに覚悟は出来ているし、それに今回がはじめてと言う訳でもないしな」
美嘉「そっか、晶葉も晶葉で早乙女博士を…」
晶葉「同じ時間を共有し、共に笑い合っていた相手がある日突然いなくなる。何の予告もない以上、覚悟など出来るものではない。まして、莉嘉は面白半分だ」
美嘉「本来なら体験することも出来ない非日常。その雰囲気に逆上せているような気は、確かにしてたよ」
晶葉「みずからに与えられたものは、当たり前に存在し続ける。本意でないにせよ、無意識にそう思っていただけに、反動は大きい」
美嘉「貴重な経験になったって、アタシは思ってるよ」
晶葉「貴重な経験、か」
美嘉「これでもう、無茶を言い出すことは少なくなると思うからさ。…ゲッターのパイロットになる、とか」
晶葉「…主任の死が、それを思い止まらせた、か」
美嘉「主任の家族には悪いけどね。莉嘉が積極的に研究所に行かなくなって、正直ホッとしてる」
晶葉「美嘉は、莉嘉がパイロットをするのには反対か。やはり」
美嘉「当然でしょ。莉嘉はまだ中学生。これから勉強する事だって一杯あるんだから」
晶葉「自ら危険な事に足を突っ込むのは快くは思わない。家族ならば尚更、か」
美嘉「大事な妹だからね。莉嘉の未来を誰かに奪われてたまるもんですかって」
晶葉「しかしそれは、美嘉のような、戦う事が出来ない人達を守るための行いでもあるんだぞ」
美嘉「だから何?悪いけど、アタシにとっては何億何千の赤の他人よりも、この世にたった一人の妹の命の方が、よっぽど大事だよ」
晶葉「……」
美嘉「確かに今のこのご時世、戦わなきゃ生き残れない時代なのかもしれない。だけど、みんながみんな戦わなきゃいけない訳じゃない。さっきの晶葉の言葉じゃないけど、戦う事が出来ない人達のために、晶葉や卯月達がいるんでしょ?」
晶葉「……。そうだな、確かに美嘉の言う通りだ」
美嘉「でしょ?なら、莉嘉を無理矢理戦わせる、みたいなことはやめてね?そうなったら、アタシも黙ってはいられないから」
晶葉「肝に命じておく。が、私も、戦えない者に無理強いをするほど野暮じゃないつもりだ」
美嘉「そ。じゃあ一安心しとく。さっきの晶葉の態度、莉嘉を無理矢理にでも、ゲッターに乗せようとしてるみたいだったからさ」
晶葉「流石にそんな事はしないさ。さ、美波達の準備も終わる頃だろう。そろそろエントランスに向かったらどうだ?」
美嘉「そうする。晶葉達も頑張ってね、それじゃ」
タッタッ──
晶葉「あぁ、それではな」
晶葉「…無理強いでは意味がないのだ、意志がなければ。艱難辛苦をも喰らい尽くす、強い意志がな」
── そして、数日後。
~~~ 都内某所 LIVE会場・控え室 ~~~
かな子「皆さ~ん、ライヴ、お疲れさまでした~」
美嘉「お疲れ~★」
かな子「打ち上げ、って言うにはささやかですけど、おやつを用意してますよ。一息吐きましょう」
美嘉「ささ、やか…?これが?軽くスイーツビュッフェくらいあるけど…」
美波「ちょっと作りすぎじゃない?かな子ちゃん…」
かな子「え、そうですか?」
莉嘉「いいじゃん、いいじゃん。かな子おやつだもん。いくらだって食べられちゃうよ!」
美嘉「あ、こらっ。両手に持って食べない。行儀の悪い…」
莉嘉「えへへ~」
美波「ふふっ、莉嘉ちゃんってば」
かな子「けど、今日はホント、良いライヴになりましたね」
美波「えぇ、こんな本格的なライヴ、1年ぶり……ひょっとしたらもっとかしら…」
かな子「これまでも復興応援、って形で小規模のライヴはしてきましたけど。そう言う体面も関係なく、ライヴが出来たのは、本当に久し振りですね」
美波「ちょっとずつ、本当にちょっとずつだけど、元の日常が戻ってきてるって、事なのかな?」
かな子「そうだと、嬉しいですけど」
美嘉「ちょっとちょっと~。ライヴが終わったばっかりで、何浮かない顔してるの?早くしないと、ここにあるお菓子、全部莉嘉が食べちゃうよ?」
かな子「あぁ!待ってくださいよ、少しは残してください~っ!」
美波「あはは…。まさか、ほとんどを自分で食べるために用意したんじゃ…」
コンコンッ
美波「あ……はい?」
ガチャッ
晶葉「失礼するぞ」
美波「あ、晶葉ちゃん」
かな子「晶葉ちゃn……ングッ!?ゴホッゴホッ」
美嘉「あぁほら、大丈夫?お茶、お茶」
かな子「ゴホッ……ありがとうございます…。ゴホッゴホッ」
美波「所で、どうかしたんですか?わざわざこんなところまで…」
晶葉「こんな所とは。私だってアイドルだ。仲間のライヴくらい観に来るさ」
美嘉「それじゃあ、ライヴの感想を良いに、わざわざ?」
晶葉「あぁ。良いライヴだった」
莉嘉「ありがとっ、晶葉!」
晶葉「莉嘉も、様になったじゃないか」
莉嘉「へへへっ…!」
晶葉「あぁ、それじゃあ」
莉嘉「え、もう行っちゃうの?」
晶葉「ふふっ、いい気分転換になったさ」 ガチャッ
美波「あっ、待って!」 タッ
かな子「美波さん?」
美波「待って、晶葉ちゃん!」
晶葉「…どうした?血相を変えて」
美波「本当に、ライヴを観に来ただけなの?」
晶葉「可笑しな事を聞く。言ったじゃないか、気分転換にはなったと」
美波「気分転換?」
晶葉「丁度仕事は一段落着いた所だ。暫く研究所に籠りきりでもあったし、ライヴステージなど久しく感じるものもある」
美波「仕事…?」
晶葉「折角だ。見てみるか?」
美波「え?」
晶葉「最後のゲッターロボ」
美波「…!」
晶葉「早乙女博士が遺し、私が仕上げた」
美波「最後のゲッターロボ…」
歩みを止めない晶葉に続く。
晶葉「ふっ…。打ち上げは良いのか?」
美波「私を乗せるつもりなんでしょ?なら、確かめてみてもいいんじゃないって、そう思っただけ」
晶葉「そうか」
かな子「あ、あの…っ!」
美波「かな子ちゃん?」
かな子「私も行きます!」
晶葉「ほぅ…」
かな子「いいですよね?私も、チームの1人ですから」
晶葉「ふふっ、大層なお披露目会になりそうだ」
ツカツカツカ──
莉嘉「──美波、かな子!……行っちゃった」
美嘉「莉嘉」
莉嘉「お姉ちゃん…?」
美嘉「ダメだから」
莉嘉「え?」
美嘉「行ったら、ダメだから」
莉嘉「……。行かないよ……何処にも。もう、あんな思いは…」
ビ-----ッ ビ-----ッ ビ-----ッ
莉嘉「ふぇ!な、何…!?」
美嘉「これ…!敵襲警報!」
莉嘉「敵…?」
美嘉「とにかく避難するよ!急いで!!…えっと、この近くの避難シェルターは…」
莉嘉「敵……敵が来るの…?みんなを傷付ける敵が…。大切なものを奪う敵が…」
莉嘉「アタシは…!──」
──。
ウゥゥゥゥゥ……ン… ウゥゥゥゥゥ……ン…
── 移動中、車内。
美波「これは、警報が…!?」
かな子「敵襲ですか!?一体何処から…!」
晶葉「異空からさ。見ろ」
美波「えっ、上空?」
かな子「あれって…」
美波「前に早乙女研究所にも現れた、空間の歪み」
晶葉「ワームホールだ。SF的に名付けるのならばな」
美波「それじゃあ、本当に異次元からの敵襲だって言うの?」
晶葉「恐ろしい執念だろう?ただゲッターを葬る為に、私達には想像も出来ない手段を使って次元の壁を超越し、襲ってくるのだ」
美波「執念…。敵はそこまでして、ゲッターを…!」
かな子「と、とにかくっ!敵が来る位置が分かっているのなら、早く迎撃しなきゃ…!このままじゃ市街地が戦場になって、折角復興した街が!」
晶葉「気持ちは分かるが、直にゲッター飛焔も来る。現れる敵は茜達に任せよう」
かな子「でも…」
美波「私達は、私達で新しいゲッターの所に行くんだよ、かな子ちゃん」
かな子「え?あ…」
美波「この先何があったとしても、ゲッターのところに行けば出撃できる。今は茜ちゃん達を信じようよ」
かな子「…はいっ」
晶葉「では、改めて私達は行くとしよう。新たな地獄への水先案内人、ゲッターアークの元にな」
─────
───
─
ゴゴゴゴゴゴゴ……
ア-ク>……
芳乃「……ほー」
ア-ク>……
芳乃「……」
ア-ク>……
芳乃「ほ~…」
ア-ク>……
芳乃「目覚めは近くー。しかしー、焦ってはいけませぬよー。加蓮さん曰くー、年頃の乙女と言うものはー、準備に時間が掛かるものでしてー」
ア-ク>……
芳乃「故にー、わたくしが迎えに行って参りましょー。そなたも準備しておくのですよー?」
ア-ク>……! カッ
芳乃「ふふっ。逸る気持ちは、抑えられぬものですねー。ではー」
芳乃「参りましょうか、頼みますねー。ゲッターD2ー──」
つづく
次回予告
人々を守る為、出撃したゲッター飛焔とD2の前に現れる未知の敵を前に、東京の街は地獄の炎に包まれる。
真ゲッターすら欠いた状況で窮地に立たされる茜達の為に、ゲッターアークの出撃を命じる晶葉。
最後の1人を欠いたゲッターアークが戦地へ向かう中、決意を胸に莉嘉は、走る──。
次回、『仔竜、吠える』