~~~ 新早乙女研究所 ~~~
── 上空。
通信士「プロト・ゲットマシン、ゲッターアーク、共に帰還します」
晶葉「ゲッターアークは、合体状態のままか」
通信士「そのようです。城ヶ崎さんがパイロットスーツなしでの戦闘でしたので、分離時のリスクを考えた結果でしょう」
晶葉「流石に、ゲットマシン状態のGに耐える事は出来ないか」
通信士「飛焔チーム、アークチーム、聞こえますか?誘導灯に従って、着陸体勢に移行して下さい」
茜 「了解です!」
莉嘉「……」
通信士「城ヶ崎さん?聞こえていますか?」
莉嘉「…──」
通信士「城ヶ崎さん!」
茜 「!」
力を失って、落下を始めるゲッターアーク。
晶葉「美波、状況はどうなっている?」
美波「り、莉嘉ちゃんには、さっきから呼び掛けてるんですけど、返事がないの!」
晶葉「帰還するまで意識が持たんかったか。ゲッターは?分離出来ないか?」
美波「それが、2号機、3号機からじゃ操作出来ない…!完全にコントロール不能です!」
通信士「プロト・ゲッターも分離状態です。今合体して、救助に間に合うかどうか…」
晶葉「強制分離は?あれなら、ゲッターがどんな状態であっても分離出来る筈だ」
美波「けど…!今分離すれば、コントロールを失った1号機に乗ってる、莉嘉ちゃんが!」
かな子「私が何とかします!」
美波「かな子ちゃん?」
かな子「落ち着いて話してる時間もありません。兎に角、今はゲッターを分離させて下さいっ」
晶葉「強制分離させれば、一瞬だが機体が弾かれて高度も上がる。その間に体勢を整えるんだ」
美波「……。オープンゲット!」
バチンッ、とゲッターアークが弾かれるようにして、ゲットマシンに分かれる。
莉嘉「……」
美波「莉嘉ちゃん!」
分離しても尚、1号機、アーク号の落下は止まらない。
美波(ダメ…。完全に意識を失ってる…)
かな子「美波さん!」
美波「お願い、かな子ちゃん!」
かな子「はいっ」
キリク号を追い抜いてアーク号に接近する。
かな子(…コントロールは失ってるけど、機体は左右に振れてるだけ。これなら…!)
かな子「美波さん、アーク号の前に行って下さい」
美波「え?」
言われるまま、キリク号をアーク号の前に。
かな子「1、2、3……1、2、3……今!速度を落として!」
美波「っ!?う、うん…!」
慌てた動作で減速。
美波「きゃっ!」
やや強引に、アーク号とキリク号がドッキング。
かな子「機首を上げて!」
美波「うっ…うぅ~~~んっ!」
操縦桿を精一杯引いて迫る地面を回避。一瞬、機体底部を擦ったが、高度は持ち直した。
茜 「やりました!救助成功です!」
アーニャ「まだ…!このままだと…」
美穂「! 今度は山に激突しちゃう!」
美波「~~~っ!」
激突を回避する為にも、操縦桿を引き続けるが、
美波(もうダメ…!ぶつかる──!)
覚悟を決めた矢先、目の前に影が重なる。それは、
美波「かな子ちゃん…!」
高速で駆け付けた、カーン号。
かな子「チェンジゲッター!!」
直後、ゲッターは山肌に激突した。
一切の減速を行わなかった勢いそのままに、山肌を沿うように深く抉り、木々を薙ぎ倒す。
美穂「……!」
アーニャ「ゲッター、は…!」
激突の衝撃で上がった土煙が晴れ、そこには、
茜 「犬神家!」
上半身を山肌に深くめり込ませ、両足が不格好に天を仰いだ、ゲッターカーンの姿が。
通信士「げ、ゲッターカーン、合体を確認…。パイロットのバイタルサイン、異常無し…」
晶葉「間一髪、何とかなったか。ヒヤヒヤさせおって…」
通信士「回収班と、医療班を直ちに向かわせます」
かな子「あ痛たたた…」
美波「か、かな子ちゃん、大丈夫!?」
かな子「な、何て事、ないですよ…?この子を使うのは初めてですけど、ゲッター3系統は頑丈ですから」
美波「それで、自分から先頭に立って合体を…」
かな子「それだけじゃありません。莉嘉ちゃんも、美波ちゃんも確かにゲッターの操縦経験は積んでるかもしれないけど、ゲットマシンの合体だけは経験したことはないから」
美波「…!」
かな子「だから、合体経験だけは先輩の私が、何とかしなくちゃ、って思ったの」
美波「かな子ちゃん…」
かな子「えへへ…!」
美波「…鼻血、出てるよ」
かな子「ホントですか!?どこ?どこ?……あぁ!」
美波「あはは…。ありがとう、かな子ちゃん」
かな子「え、えへへ…!それで、莉嘉ちゃんは?」
美波「……。まだ応答無し。生命反応は確認してるから、気を失ってるだけみたい」
かな子「パイロットスーツ無しで、相当無茶してましたからね。ゆっくり休んでくださいね、莉嘉ちゃん」
莉嘉「……──」
─────
───
─
──…目覚めよ。
莉嘉「う、うぅ~…ん…っ。ここは…?」
──目覚めるのだ、莉嘉。
莉嘉「! あ、あんたは……ゲッターロボ!」
──聞くのだ。今、お前達の宇宙に破滅の危機が迫っている。
莉嘉「そんなの知ってるよ。だからアタシ達は、ゲッターを使って…!」
──そうではない。違うのだ。
莉嘉「何が?」
──憎しみに支配された邪悪なる者が、禍いをバラ撒こうとしている。悪しき種子によって正しき血統を濁らせてしまおうとしているのだ。
莉嘉「邪悪なる者……悪しき種子…?全然意味分かんないんだけど」
──鬼共はその前触れに過ぎない。
莉嘉「鬼…!あいつらの正体を知っているの?」
──それは、莉嘉自身が戦いの中で見つけ、知るのだ。
莉嘉「…イジワル」
──このままでは、我々が新たな進化の段階に行く前に、人類と言う種子は淘汰されてしまう。そのようなことが許されてはいけない。
莉嘉「うん。言ってることは良く分かんないけど、誰かに一方的に未来が決められるって言うのは、面白くないもんね!」
──そうだ。強い心持っている、莉嘉ならこの先の戦いも乗り越えられる。
ギュンッ
莉嘉『わっ!…何……?目覚める、夢が終わる…?待って!』
──忘れるな、進化の時は近い。
莉嘉「あああああああ~~~──っ」
─
────
──────
莉嘉「!」 バッ
かな子「きゃっ!ビックリしたぁ…」
莉嘉「かな子…?それじゃあ、ここって…」
かな子「早乙女研究所の医務室です」
莉嘉「そっか。アタシ、戻ってきたんだ…」
かな子「みんなスッゴく心配してたんですよ。もう一週間も目を覚まさないから…」
莉嘉「一週間!?そんなに…」
かな子「美嘉さんもほぼ毎日お見舞いに来てたんですから。そうだ!莉嘉ちゃんが起きたって、教えてあげなきゃ!」
莉嘉「ま、待って!」
かな子「はい?」
莉嘉「お姉ちゃんには、連絡しないで」
かな子「え?でも、スゴい心配してたんですよ?」
莉嘉「それでも!きっと怒られると思うし…。今はまだ心の準備と言うか…」
かな子「……」
莉嘉「とにかく!あ、後でちゃんと、アタシから連絡するから!」
かな子「…分かりました。でもちゃんと、必ず連絡しなきゃダメですよ?安否が不明で、待ってるだけって言うのは、本当に辛いんですから」
莉嘉「うん…。分かってるよ…」
かな子「……」
莉嘉「そ、それよりさ!美波と晶葉は?2人は、研究所にいるんじゃないの?」
かな子「美波さんと晶葉ちゃんも、任務で外出中です」
莉嘉「任務?」
かな子「何でも山奥の町と連絡が付かなくなって、それが鬼の仕業なんじゃないかって」
莉嘉「調査の仕事なんだ。それじゃあ、晶葉は兎も角、何で美波まで?」
かな子「大型の鬼、鬼獣が出現するかもしれませんから。そうなったらゲッターの出番です。そうなった時の為に、現地で状況を把握しておく必要があるって」
莉嘉「ふぅん…」
──。
~~~ 山奥の町 ~~~
晶葉「やれやれ、町人はほぼ全滅、か…」
視線の先にズラリと並べられる、ブルーシートを被った死体の列。
美波「…本当に町の人達だったの?あの姿は…」
晶葉「確かにな。ハ虫人類や、百鬼なんてモノを目の当たりにして来たが、この日本において昆虫人間で繁栄した町、など、聞いた事はないな」
美波「昆虫…」
晶葉「外見的には、そう形容した方が近しいだろう?顎の形状も、眼部に当たる複眼も。少なくとも、これまで見てきた鬼共とは、別種の存在だ」
美波「それじゃあ、新しい敵…!」
晶葉「かもしれんし、人間をこんな昆虫人間に変化させるような特性を持つ鬼かも分からん」
美波「人間を昆虫化させて、操ってるって言うの?だとしてら、ここにある遺体の欠損の仕方は…」
晶葉「共食いだな。恐らく」
美波「共食い…!」
晶葉「遺体として回収されたものは、どうやら元が女性や子供だったモノがほとんどと見える。強い配下を残す為、あえて共食いをさせたんだろう」
美波「そんな事…。うっ……」
隊員「池袋さん、解剖手術の用意が出来ました」
晶葉「分かった、今行く。…と言うわけですまんな、美波。昨日の話の続きも、研究所に帰ってからだ」
美波「……」
晶葉「美波、お前の気持ちは分からないじゃない。だが実際にこうして、化け物の解剖をやらされている、私がいる。今更莉嘉が戦う事に、何故抵抗する?」
美波「前に晶葉ちゃんは自分で言ってたじゃない。私には覚悟があるって」
晶葉「莉嘉に覚悟はない、か?だがあの時戦闘に参加していた莉嘉はどうだった?同じゲッターに乗り、共に戦って、何を感じた?」
美波「それは…!」
晶葉「いいか。戦うべきでないとすれば、地球上に生きる全ての人間が戦うべきではないんだ。同時に、全ての人間は生き残る為に、戦うしかない。誰ならば戦って構わない、子供は戦うべきではないと嘯くのは、一方的な偽善に過ぎない」
美波「晶葉ちゃん…」
晶葉「話は終わりだ。……さぁ、部屋へ案内してくれ」
隊員「は……はっ」
晶葉「頼む」
ツカツカツカ──
美波「……はぁ」
ブロロロロロロ…ガチャッ
オイ、イシャハイルカ?ドウシタ?セイゾンシャダイキノコリガイタナンダッテ!?
美波「? 何…?今、生存者って…」 タッ
隊員「生存者って、子供じゃないか…」
隊員2「まだ小さいのに、これまで良く無事で…」
隊員3「坊主、お嬢ちゃん、もう大丈夫だぞ」
女の子「うぅ……ヒック…!」
男の子「おいっ、何時まで泣いてんだよ!俺達、助かったんだぞ!」
女の子「でも、父ちゃんと、母ちゃんがぁ…!うわぁぁぁんっ!」
男の子「だから泣くなって、お前が泣いたら、俺だって……グスッ」
隊員2「辛かったろうな…」
隊員「兎に角手当てを。誰か、手の空いている者は…」
美波「私がやります」
隊員「君は、早乙女研究所の…」
美波「資格はまだ持ってないですけど、応急処置くらいなら」
隊員「分かりました。部隊の休憩用に建てていた仮設テントが1つ空いてます。そこを使って下さい」
美波「分かりました。……さぁ、一緒に行きましょう?」
男の子「お姉ちゃん…!うぅ……俺、俺…!」
美波「辛かったね。もう大丈夫だから」
男の子「うぅ……ッグ…!」
美波「君のお父さんやお母さんの仇は、必ず私達が果たすから」
男の子「ウグッ……お姉ちゃぁぁぁんっ!!」
美波「うんうん。もう大丈夫だから。泣いても、大丈夫だから──」
── 数分後。
美波「これで良し、と」
男の子「ありがとう、お姉ちゃん…」
女の子「…ありがと」
美波「ふふっ、どういたしまして。もうすぐ、自衛隊の人が君達を安全な所まで連れて行ってくれるからね」
女の子「うん…」
男の子「畜生…!あの蜂女、絶対許さねぇ…!」
美波「蜂女?」
男の子「そうだよ!全部アイツが悪いんだ!」
美波「まさか、その、蜂女って言うのが、君達の村を襲った犯人?」
男の子「うん。アイツ、蜂の尻みてぇなの持っててさ、それを父ちゃんや母ちゃんに突き刺したんだ!そしたら、突然父ちゃん達が化け物みてぇに変わっちまって…!」
美波「そうだったの…」
男の子「怒らせると怖かった隣のおっちゃんも、優しかった駐在さんも、みんなアイツに化け物に変えられちまった!許せねぇって、この手で復讐してやるって、そう思ってんのに、俺、逃げるしか出来なくて…!」
美波「……。悔しかったのね」
男の子「あぁ…!悔しい、悔しいよ!俺…!!」
美波「けど、無茶しちゃダメだよ。君には、大切な妹さんが残ってるじゃない」
男の子「それは…」
女の子「……」
美波「君?大丈…」
女の子「っはぁ…!はぁ……はぁ…」 バタンッ
男の子「カナエ!」
女の子「お゛兄゛ち゛ゃん……苦し…っ!」
男の子「カナエ、どうしたんだよ!しっかりしろよッ!!」
美波「待って。様子が変…」
男の子「どう言うことだよ!?このままじゃ、カナエが…」
美波(さっきこの子、人が変わった、って言ってた。それにこの苦しみ方…。もしかしたら…)
女の子「お兄ちゃん……助けて゛ぇ゛え゛ええええええ──!!」
ぼこぼこと膨らむように、関節が隆起し、柔らかく見えた肌黒く変質し硬質化。かつて女の子だったそれは、おぞましい昆虫を象った化け物へと姿を変えていく。
男の子「か、カナエ…!」
女の子→昆虫人間「キャアァァァアアアアッ!!」
男の子「お前、刺されてたのかよ!!」
美波「下がって!」
男の子を後ろ手に庇うように立ち、銃口を突き付ける。
昆虫人間「シャァァァァァ…」
美波「う、動かないで…!私、本気だから!」
そう言う手は震えている。
美波(う、撃つの…?本当に…?この子は人間で、女の子で……さっきまで、私達と同じ姿をしていた…)
昆虫人間「キャアアアアアアアアアッ!!」
美波「ダメ…っ、撃てない……!」
シュボッ
昆虫人間「!?」
美波「!!」
美波の背後から、一発の銃弾が飛来する。銃弾と形容されるほどに小さいそれは、しかし昆虫人間の胴体に命中すると共に爆ぜた。
美波「きゃっ!」
男の子「うぅ…!」
爆発で飛び散る肉片と衝撃から身を守り、背後を振り向くとそこには、晶葉と自衛隊員の姿があった。隊員の方は、リボルバーのような小銃を手にしている。
晶葉「どうだ?今うちで試作中の超小型グレネードの威力は?」
隊員「……反動で、肩が外れました」
晶葉「ふむ?反動か…。まだ改良の余地はありそうだ」
美波「晶葉ちゃん…!何で!」
男の子「何でカナエを殺したんだ!!」
先に男の子が、銃を構えている隊員に食って掛かる。
男の子「何で!助ける方法はあった筈だろう?それなのに…!!」
晶葉「不可能だ」
男の子「え?」
晶葉「これは、ついさっき行った同じ昆虫人間の解剖結果だ。お前のような小僧に難しい話をしても分からないとは思うが…」
美波「……」
晶葉「奴らは、極微少な昆虫の集合体。それが人間の体内で、その肉をエサとする事で爆発的に増幅する。やがて小さな昆虫の1体1体が細胞となり昆虫人間を形成していく。寄生した人間に成り代わると言っても言い」
男の子「ど、どう言うことなんだよ?」
晶葉「お前の言う、カナエと言う人間は昆虫に食い殺されたんだ。今までそこにいたのは、その人間を象っただけの紛い物だ」
男の子「そんな…!ウソだ…!!」
美波「……」
男の子「ウソだぁああああああッ!!」
── 数分後。
バタンッ ブロロロロロロロォ…
晶葉「取り敢えず彼は、孤児院に引き取られる事が決まったそうだ」
美波「…そう」
晶葉「せめて、いい親族なり、引き取り手がいるといいんだがな」
美波「あの子を孤独にしたのは、私達のせいじゃない!あんな小さな子の前で、あんなっ、残酷な…!」
晶葉「残酷か。下手に希望を持たせる方が、残酷だと私は思うが」
美波「だからって、あんな言い方までして…!」
晶葉「どんな言い方をしても、死んだと言う事実は変わらない。どんな形になっても、失われたものは帰ってこないんだ」
美波「けど…!」
晶葉「あんな思いをする人間をこれ以上増やさない為にも、原因の究明を急がねばならない。一体何故あんな寄生虫もどきが、人間の体内に…」
美波「……」
男の子『──…あの蜂女、絶対許さねぇ…!』
美波「蜂女…」
晶葉「蜂女?なんだそれは?」
美波「さっきの男の子が言ってた。お父さんやお母さんが蜂女に教われたって。蜂女に刺されて化け物になったって!」
晶葉「刺されて…?ふむ。それで体内に卵でも産み付けた、と言うところか。それならば合点が行く。早速、その蜂女とやらを捜すとしよう」
美波「でも、捜すって言っても、手がかりなんて何にも…」
晶葉「幸いに名前から外見的特徴は想像に難くない。女と言うからには女体で、蜂と言うのは……蜂のような尻でも付いていたか…」
美波「まだこの辺りにいるとは限らないよ。もうずっと、遠くの町に言ったかも…」
晶葉「いや、その可能性は低いだろう」
美波「え…?」
晶葉「もし場当たり的に人間を昆虫人間に変えて配下を増やしているのだとしたら、もっと人口の多い、それこそ都市部で行動を起こした方が効率がいいだろう」
晶葉「ならば何故、蜂女はこんな地方の町に現れた?理由は簡単だ。様は地盤が欲しいんだ。我々の世界を侵略する為の、磐石な地盤がな」
美波「それじゃあ、蜂女はこの町に……巣でも作るつもりなの…?」
晶葉「恐らくな。差し詰め、異世界から放たれた女王蟲と言ったところだろう」
美波「女王蟲…。敵の狙いが巣作りだとしたら…」
晶葉「巣が作れるような空間か…。単に地下なども考えられるが、この被害状況から、相手が隠れる気がないとなると、市街地で、広い空間を確保出来るような場所は…」
考えながら、広げた町の地図に目を落とすと、
美波「…! 市民体育館!」
── 市民体育館。
隊員「……」 ザッ
隊員2「……」 ザッ
隊員3「……」 ザザッ
隊員4「……」 ザッ
隊員2「進路、クリア!!」
隊員「突撃ッ!!」
ダダ-ッ
隊員3「な、何だこれは…!」
晶葉「あぁ本当に、何だろうな」
隊員3「い、池袋さん!?」
晶葉「鉱物のように硬質のモノではない…。幼虫が出す粘糸のようなものを、蜜蝋のようなもので固めているのか?だとしても、蜂の一種なら美しいハニカム構造を作り出すようなものだが…。これはまるで、魔物の巣窟だ」
隊員4「危険です、池袋さん!我々より前に出ないで下さい!」
晶葉「そうか。で、何かいるのか?」
隊員4「は…?いえ、生物らしきものは何も」
晶葉「連中の巣まで出向いてやったと言うのに、歓迎もなしか。女王はきっとこの奥だろう。私の事はいいから、先へ進むんだ」
隊員4「で、ですけどねぇ…」
隊員「池袋さんの言う通りにしておけ。先に行くぞ」
隊員4「は、はぁ…。了解」
ザッ ザッ
隊員「……」
隊員2「……」
隊員3「……」
隊員4「……」
隊員「何か、反応はあるか?」
隊員2「はい。ごく僅かですが、奥に熱反応が」
隊員「奥に何かがいるのは、間違いないようだな。皆、気を引き締めろ…!」
隊員3「……っ」
隊員4「…了解」
隊員「……突撃っ!!」
ダッ
隊員「っ…!」
女王蟲「……」
隊員3「こ、こいつが、女王…!」
隊員2「こいつぅ!!」 ジャキッ
隊員「待て、迂闊に撃つな!」
バラララララララララララッ ドゴンッ
隊員「!!」
巨大昆虫「ギヤァアアアアアッ!!」
巨大昆虫2「ギィイイイイイッ!!」
隊員4「何だ、こいつ…!」
隊員2「で、デカい…!」
隊員「差し詰め、女王を守る騎士と言ったところか…。だが!」
女王蟲を守るように出現した巨大昆虫に向かって銃火器を放つ。が、
隊員「ちっ…!このライフルじゃ、効かねぇ!」
巨大昆虫「ギィイイイイイッ!!」
隊員「て、撤退…!」
隊員2「ぎゃぁああああああ!!」
隊員「ど、どうした…!?」
隊員3「あ、あぁ…!」
女王蟲「フフッ…!」
隊員「あ、あいつ…!」
隊員2「あ……あっ……助け…!」
隊員「卵を産み付けているのか…!」
巨大昆虫「ギィイ!」
隊員4「た、隊長…!退路が!」
隊員「……どうやら、我々はまんまと誘い込まれたらしいな」
隊員4「どうしますか?隊長!」
隊員「退路がなければ…!」
後ろの腰から手榴弾を取り出す。
隊員「作るまでだ!」
周囲を覆う粘糸の壁めがけて手榴弾を放つ。
巨大昆虫2「ギャ!?」
手榴弾の爆炎で、粘糸が焼けて道が開ける。
隊員4「み、道が出来た!」
隊員「い、今だ!残った者は直ちに撤退!」
隊員4「了解!」
隊員3「あ……あぁ…!」
隊員4「おい!」
女王蟲「フフッ…」
隊員「くっ…!行くぞ、俺達だけでも逃げるんだ!」
隊員4「りょ、了解っ!」
ダダ-ッ
晶葉「…おぉ、捜していた目標は見つけたか?」
隊員「それどころではありません。部下を2人、やられました。撤退します。池袋さんもお早く」
晶葉「ふむ、2人も生き残ったか。上出来じゃないか」 タッ
急ぎ、市民体育館から外へと脱する。
巨大昆虫「ギャアアアアアッ!!」
巨大昆虫2「ギャァアアアアアッ!!」
隊員4「こ、こいつら、俺達を逃がさないつもりですよ!」
晶葉「成る程な。何故奴らが磐石な地盤を求めながら、敢えて目立つような真似をしたか。不測の事態にも耐えうる屈強な肉体を持つ者を、卵を産み付ける苗床として求めていたとするならば、その判断は妥当か」
晶葉「これは、連中に対する見解を改めなければならん、か」
隊員4「感心してないで!絶体絶命ですよ!」
晶葉「案ずるな。こちらとて無策で敵の本拠地に乗り込んだわけではない」
ズァッ
隊員「!! あれは!」
ゲッターキリク。
巨大昆虫’s「!?」
巨大昆虫の頭上に姿を現したゲッターキリクが、巨大昆虫をそのドリルの元でまとめて葬り去る。
隊員4「げ、ゲッターロボ…!」
晶葉「敵に占拠されているとは言え、公共施設を破壊するのは出来る事ならば避けたかったからな。良くやった、上出来だ。美波」
美波「はぁ……はぁ……はぁ……。今のだって、元は…」
晶葉「人間だった頃の要素など、1つ残らず消え失せている。罪悪感など不要だ」
美波「だとしても、けど…!」
莉嘉「無理ならアタシが代わるよ?」
美波「…うぅん、大丈夫。今回は私が」
晶葉「今はそれよりも、女王蟲を追うんだ!」
美波「女王蟲…!」
女王蟲「……っ!」
莉嘉「今のが目標!?ちっちゃい…」
かな子「逃げちゃいますよ、追いましょう!」
美波「っ!」
ゲッターキリクの速度を上げ、逃げる女王蟲を追う。
女王蟲「!?」
美波「絶対に逃がさない…!これ以上、この町みたいな惨劇は!」
女王蟲「!」
狭い小路や入り組んだ路地へと潜り込み、最高速のゲッターキリクの追撃を躱す。
莉嘉「あいつぅ…!ちょこまかとぉ!」
かな子「でも、この先は…!」
市街地を飛び出し、森林の中へ。
女王蟲「…っ!」
それでも、木々を縫うように飛び抜けて、ゲッターキリクの追跡を撒こうと試みる。
美波「ドリルタイフーンッ!!」
しかし、女王蟲の思惑を吹き飛ばすように放った。ゲッターキリクのドリルの旋風が、か細い木々を薙ぎ払った。
女王蟲「ッ~~~!!」
かな子「逃げも隠れも、許しませんよ!」
女王蟲「……」
女王蟲の足が止まる。
莉嘉「追いかけっこはもう終わり!?」
美波「なら、これでトドメ!」
かな子「…? 待って下さい!」
美波「何!?……空が!」
晴れ渡っていた空が、突如として厚い雲に覆われる。
美波「何…?何なの?」
莉嘉「何でもいいよ。さっさとトドメを!」
美波「え、えぇ!……きゃあっ!」
暗雲から降り注いだ落雷が、ゲッターキリクを打つ。
美波「くっ…!今の、只の雷じゃない!」
莉嘉「アタシ達の邪魔をしようっての!」
女王蟲「フフッ。ア──ッ!!」
かな子「女王蟲が…」
美波「哭いてる…?」
女王蟲「アァ──ッ!!」
莉嘉「…! 雲から何か出てくるよ!」
かな子「何か?…これって、巨大な生命反応…!ってことは…」
美波「鬼獣が出てくる!?あれは、ワームホールなの?」
莉嘉「そんな!前に現れたのは、あんな分かりやすかったのに!」
美波「気付かれないために、カムフラージュを…?」
かな子「鬼獣が来ますっ!」
莉嘉「あれは…」
美波「昆虫型の鬼獣!」
昆虫鬼獣「……」
女王蟲「キャッハハハッ!」
昆虫鬼獣「!」
女王蟲「!」
グシャッ
美波「っ!」
かな子「ひっ…!き、鬼獣が…」
莉嘉「嘘……女王蟲を食べちゃった…!」
昆虫鬼獣「グゥオオオオオッ!!」
昆虫鬼獣の瞳に火が灯り、大きく咆哮を上げる。
かな子「…仲間を食べて、やる気になったみたい…」
美波「仲間を食べることで、同化したって言うの?」
かな子「鬼獣が来ます!美波さん!」
美波「!」
昆虫鬼獣「ゴオオオオオッ!!」
勢いを付けてきた昆虫鬼獣の突撃を、紙一重で躱す。
美波「っ…!ゲッターキック!」
突撃の姿勢で空いた脇腹に蹴りを放ち、反動で跳躍して距離を取る。
美波「ドリルタイフーンッ!!」
旋風を直撃させ、動きを封じる。
美波「シザーアーム…!」
ゲッターキリクの右手を肥大化させ、巨大なハサミを形作る。
美波「えぇいっ!」
足の止まった昆虫鬼獣に一気に迫り、胴体を挟み込む。
美波「シザークラッシュ!」
挟む力を強め、ギリギリと締め付ける。
昆虫鬼獣「ぐ……ぐ、グゥウウウ…!」
美波「このまま一気に!」 ギリギリギリ…ッ
昆虫鬼獣「シャアァアアアッ!!」
美波「きゃあっ!」
昆虫鬼獣が口から、溶解液のような液体を吐きかける。
美波「ぐっ…!」
堪らず拘束を解き、離脱。
美波「ゲッターの損傷は…?」
かな子「装甲がちょっと溶けただけで、軽微です!」
昆虫鬼獣「……!」
昆虫鬼獣が蝉のような羽根を羽ばたかせ、飛翔。
莉嘉「アイツ飛べんの?!」
かな子「あの重量を、あんな羽根でどうやって支えてるんでしょう?」
美波「それを言ったらゲッターも似たようなものだと思うけど…」
昆虫鬼獣「!!」
美波「くっ…!」
重力落下を加え、先程よりも加速力の増した体当たりを何とか回避。
昆虫鬼獣「うご…っ!」
美波「!?」
しかし、寸でのタイミングで伸ばされた昆虫鬼獣の腕に捕縛される。
美波「うぅ…っ!」
莉嘉「美波、分離して…!」
昆虫鬼獣「ガァ!!」
地面に勢い良く叩き付けられるゲッターキリク。その後も地面に擦り付けられ、
昆虫鬼獣「フンッ!」
投げ。幾本の木々を薙ぎ倒し、受け身も取れず、地に倒れ伏す。
美波「う……うぅっ」
ふらつきながらも立ち上がるゲッターキリク。
莉嘉「もうっ!今の攻撃、分離すればヨユーで躱せたのに!」
美波「……ごめんなさい。実戦中の分離と合体は、経験がなかったから」
莉嘉「リスクを怖がってたら、勝てるのも勝てないよ!」
かな子「言い争いはそこまでです。相手は待ってくれませんよ」
昆虫鬼獣「ウオオオオオオッ!!」
美波「くっ…!」
肉薄した昆虫鬼獣の左右の拳の連打。集中して動きを見極め、攻撃を一つ一つ躱していく。
美波「このっ…!」
ぴょん、と上に跳ねて連打を往なし距離を。
美波「ゲッターイリュージョン!!」
ゲッターキリクの挙動を見て、突っ込んできた昆虫鬼獣を前に、ゲッターキリクの姿は姿を消す。
昆虫鬼獣「!?」
美波「こっちよ!」 ブンッ
昆虫鬼獣「?」
かな子「こっちです!」 ブンッ
昆虫鬼獣「!」
莉嘉「こっちこっち~!」 ブンッ
ゲッターキリクの高速機動が、幾つもの分身を作り、昆虫鬼獣を翻弄する。
昆虫鬼獣「コザカシイ…!オォオオオオオッ!!」
昆虫鬼獣が遮二無二近くのゲッターキリクに殴り掛かるも、それは分身。霧の如く霧散し、消え失せる。
昆虫鬼獣「チィ…ッ!!」
美波「これが本命…!」
そう言って、ゲッターキリクが姿を現したのは、頭上。
昆虫鬼獣「!!」
美波「やぁあああああッ!!」
ドリルアームを、昆虫鬼獣の背に突き立てる。
昆虫鬼獣「ガァアアアアア──…ッ!!」
ドリルが高速で旋回。甲殻を穿ち、肉を削り、赤黒い鬼獣の血液を飛沫かせる。
昆虫鬼獣「ガァアア……」
大地に崩れ落ちる昆虫鬼獣。
莉嘉「やった!」
美波「…うぅん。様子が…」
視線の先、昆虫鬼獣の背中がぱっくりと割れる。
昆虫鬼獣「グァアアアッ!!」
かな子「分離した!?」
頭部が分裂し、小さな地を這う虫となって大地を駆け抜けていく。
美波「待ちなさい!」
その後を追う、ゲッターキリク。
美波「くっ……このっ…!」
かな子「相手の進路……また市街地に入るつもり!?」
莉嘉「また路地小路に入られたら、ゲッターじゃ追いきれないよ!」
美波「そうなる前に…!」
ギュンッ
ゲッターキリクの速度が更に増し、前方を逃げる昆虫鬼獣に迫る。
美波「身軽になった、そっちも十分に速いかもしれないけど…」
キリクが、駆ける。
美波「こっちの方が、もっと速い!」
昆虫鬼獣(分離態)「!?」
ゲッターキリクを、昆虫鬼獣の真横に付けた。
美波「終わりよ」
ドリルを鬼獣の眼前に出す。逃げるために加速していた昆虫鬼獣は止まることも出来ず自ら回転するドリルへとその身を投げ出した。
昆虫鬼獣(分離態)「──!??!」
肉と甲殻がない交ぜになって砕け潰れる音が響き、対象は跡形もなく弾け飛んだ。
美波「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……っ」
かな子「な、何とか倒せた、かな…?」
莉嘉「あっははっ☆トーゼンじゃん!ゲッターロボは無敵だって!」
美波「……」
── 一時間後。
隊員「池袋さん。撤収の準備、完了しました」
晶葉「あぁ。自衛隊の連中は、帰っていいぞ」
隊員「は……池袋さんは…?」
晶葉「専用のタクシーがある。研究所まで直行だ」
隊員「……では」
晶葉「今日の任務、ご苦労だった」
ザッザッ
晶葉「…今回の一件、町は無事でも人的被害では壊滅か」
莉嘉「この町はどうなっちゃうの?」
晶葉「さぁな。わざわざ都心にも近くない町に戻ってきて、復興しようとする人間がいるとは思えんが」
かな子「なら、この町もみんなの記憶から、忘れ去られていくんでしょうか…」
晶葉「そうだな。こうやって鬼共は、人間の暮らしの裏から、世界を破壊していく」
莉嘉「ねちっこいやり方して…!絶対に許さないんだから!」
晶葉「そうだ。こんな無慈悲を許すわけにはいかない。どんな人間に代わっても、私達が先ず、抵抗する意思を見せねば」
美波「だけどそれは、地獄のように辛い、茨の道だよ?」
莉嘉「美波…」
美波「これは遊びじゃない。ゲームでもない。辛いことが本当にあって、目を背けたくなるようなことがこれから、幾らだって押し寄せてくる。それでも本当に、戦うって言うの?莉嘉ちゃん」
莉嘉「……うん」
美波「……」
莉嘉「もう決めたよっ。突然知っている人を奪われるなんて、そんなの納得できない。だから、逆に奪ってやるんだ」
かな子「奪う、ですか?」
莉嘉「相手の力を。アタシ達から大事なモノを根こそぎ奪おうとする、全ての力を。そのために、強くならなくっちゃダメなんだ!」
かな子「莉嘉ちゃん…」
晶葉「お前達が、支えになってやるんだ」
美波「…意思は本物みたい」
莉嘉「そのつもりだよ。だから、ヨロシク☆」
美波「分かった。今のところは取り敢えず、ね…」
美波(私も、今日のことは忘れられない…。あの子の無念を、この町の悲劇を繰り返さないためにも、私が戦わなくっちゃ…!そのためなら…!)
晶葉「チームでまとまったと言うなら、今日はもう帰るぞ」
かな子「そうですね。このままここで、感傷に浸っていても仕方ないですし…。研究所に帰って、コーヒーブレイク、しましょうか」
莉嘉「賛成~☆」
晶葉「ふふっ、まぁ、今日ぐらいは仕方ないか」
莉嘉「…?今日、ぐらい?」
晶葉「我々に立ち止まる時間などない。お前達にもチームとして、一日も速く完成してもらわなければな」
晶葉「明日から、チームとしての地獄の特訓だ!」
つづく
次回予告
お菓子作りは笑顔の為に。誰かの笑顔は自分の幸せ。
己の笑顔に強き意思を隠し、多くの他人の為に決して折れる事のない不屈の精神を宿す。
束の間の平和を満喫する人々の前に容赦なく襲い掛かる鬼獣の群れを前に立ち向かうゲッターカーン。
あらゆる理不尽にも屈せず、己の正義と、静かな怒りを以て振りかざす力を御する者。
”揺るぎなき守護神”その名は──。
次回『不動明王』