ゲッターロボサーガ デレマス版   作:E.T.c

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この作品内に於けるゲッターアーク関連のゲッターの一部武装は作者のオリジナル、妄想で賄わせて頂いております。



第5話『不動明王』

 夜、遅く──。

 

~~~ 新早乙女研究所 シミュレーター・ルーム ~~~

 

莉嘉「──…ふぅ。ふわぁああ~~…」

美波「ごめんなさい、莉嘉ちゃん。こんな時間まで付き合わせちゃって」

莉嘉「ううんっ!アタシだって、まだまだパイロットとしては半人前だって、分かってるつもりだから。だからトレーニングって言うなら、大歓迎だよ☆」

美波「ありがとう…」

莉嘉「にしても、にしし☆美波って、ホント負けず嫌いだよね?」

美波「え?」

莉嘉「チームの足を引っ張りたくなくて、訓練時間を過ぎても秘密の特訓なんて。ホント、負けず嫌いって言うか、意地っ張りって言うか…」

美波「そ、それは…!…莉嘉ちゃんの言うことだけじゃないよ」

莉嘉「ん?」

美波「私は、もっと上手にゲッターを使えなくちゃいけない。戦えるなら、戦えるからこそ、その力を、誰よりも上手に扱えなきゃ…」

莉嘉「もしかして、前の戦闘の事、引き摺ってる?」

美波「引き摺ってる訳じゃ……ないけど…。だけど、あんな思い、二度としたくない…っ」

莉嘉「分かるよ。美波の気持ち」

莉嘉「辛いとか悲しいとか、そう言う気持ちを味わうのは、戦ってる人だけで良い。だけど、あんな思いは二度としたくない」

莉嘉「私達は、強くならなきゃダメなんだ…!」

美波「莉嘉ちゃん…」

 

かな子「莉嘉ちゃ~ん、美波さ~ん」

 

莉嘉「あ、かな子」

かな子「そろそろ一息、入れましょう?ホットチョコを作ってきたんです」

美波「ホットチョコを?ん~っ、甘くていい匂い。そっちのバスケットは?」

かな子「こっちはフルーツサンドです。甘すぎないので、ホットチョコに合うかなって」

美波「成る程~。こっちは桃で、こっちはオレンジ?」

かな子「はい。桃はエネルギーの吸収効率が良くて、オレンジのクエン酸は疲労回復にいいんですよ」

美波「へぇ~。一つ、頂いちゃうね」

かな子「どうぞどうぞ。莉嘉ちゃんも」

莉嘉「…うん」

かな子「訓練は大事かもですけど、根の詰めすぎは厳禁ですよ。訓練で体力を使いすぎて、実戦でへとへとになっちゃったら元も子もないです」

美波「…そうね。強くなることは重要だけれど、それを実戦で生かせなきゃ、ダメだよね」

かな子「そうですっ。体調を万全にしておくことも、私達の仕事の一つですよ!」

莉嘉「……」

かな子「どうですか?莉嘉ちゃん。フルーツサンドは…」

莉嘉「…むー」

かな子「え?」

莉嘉「む~~~っ!」

かな子「えぇ!美味しくなかったですか?何か失敗を…!あぁ、クリームにお砂糖入れすぎたかな…」

莉嘉「そんなことないよ!美味しい!かな子の作ってくれるものは何でも美味しい!」

かな子「そうですか?…良かったぁ」

莉嘉「ただ、何かかな子、余裕じゃない?」

かな子「余裕、ですか?」

美波「この中で言えば、かな子ちゃんはゲットマシンの操縦にも、合体のフォーメーションにも慣れているから。私達よりは余裕があるように見えるんじゃない?」

かな子「そ、そんなことは…」

莉嘉「…もういいっ」

かな子「莉嘉ちゃん?」

莉嘉「今日はもう遅いし、明日は緑化ボランティアだし。アタシもう寝るね。おやすみ!」タタッ

かな子「あぁ、莉嘉ちゃん…!食べて直ぐ寝たら、消化吸収が遅れて脂肪に…」

美波「莉嘉ちゃんなら大丈夫よ」

かな子「そうでしょうか」

美波「そうよ。だから、ね?かな子ちゃん」 ガシッ

かな子「はい?み、美波さん…?」

美波「今度はかな子ちゃんが私の特訓、付き合ってくれるんだよね?」 ニコッ

かな子「え、えーっと……あの、私も莉嘉ちゃんと同じボランティア活動で…」

美波「あら?だけどかな子ちゃん、フルーツサンド作る時随分味見しちゃったんじゃない?」

かな子「……っ」 ギクッ

美波「摂ったエネルギーを脂肪にしない為にも、ちゃんと消費しないと、ね?」 ニッコニコッ

かな子「うっ……は、はいぃ…」

 

──。

 

~~~ 郊外、荒廃地 ~~~

 

かな子「ふわぁ~~…」

藍子「ふふっ、スゴい欠伸ですね?」

かな子「あ……藍子ちゃん。ごめんなさい…」

藍子「いいんですよ。かな子ちゃん達は、毎日大変ですもんね」

かな子「昨日は別の理由で…」

藍子「別の理由?」

かな子「あぁいえ、何でもないです…」

藍子「……?」

 

「かな子さ~~~ん、藍子しゃ……あぁた゛っ…!」 ステンッ

 

かな子「歌鈴ちゃん!大丈夫ですか?」

歌鈴「ふぇ~……何でこんなところにまで、バナナの皮が足元にぃ~!」

藍子「風でどこからか飛んできたんでしょうか?ともかく怪我はなさそうで良かったです」

歌鈴「はいぃ~…。お陰様で、体は頑丈ですから……って、そんなことより!こっちの植樹に使う苗、なくなっちゃったので、新しい苗を貰いに来ましたっ!」

藍子「あら、そうだったんですね。ちょっと待っててくださいね?…はい、どうぞ」

歌鈴「ありがとうございます!」

かな子「ふふっ。緑化ボランティア、スゴく張り切ってるんですね」

歌鈴「はい!メカジャウルスとか百鬼メキャとky…っ、色々にゃもののせいで荒れ地になっちゃってまひゅかうゃれ……あぅ…」

藍子「ここも、元は人が暮らしてた町かも知れませんけど、こうやって木を植えて、緑が溢れる自然に還ってくれれば…。また人間の暮らしが戻ってくるかもしれないですから」

歌鈴「そうです!そう言うことです!!」

かな子「それでそんな泥まみれになるまで、頑張ってるんですか?」

歌鈴「これは……屈もうとしてつんのめって頭から突っ込んだり、立ち上がろうとして尻餅を着いたり…」

かな子「…気合いが空回りしてるんですね」

藍子「それだけ張り切って、頑張ってるんですよね!」

かな子「そうですよ。それでもこの辺りを緑で一杯にしたいって、歌鈴ちゃんの一生懸命な気持ち、伝わって来ますよ?」

歌鈴「藍子ちゃん……かな子しゃん…。うぅ~…っ」

かな子「ど、どうして泣くんですか!」

歌鈴「お2人の優しさが我が身に染み渡ります~…!お2人こそ万物の慈母!大日如来にも並ぶ仏の化身…!」

藍子「そ、そんなぁ~…。仏の化身なんて、大袈裟だよ」

かな子「私達は、転んでも倒れてもめげない歌鈴ちゃんがスゴいねって……ん…?大日如来?」

歌鈴「はい?大日如来が、どうかしましたか?」

かな子「何か、最近何処かで聞いたような…」

藍子「最近、ですか?」

かな子「何処で聞いたんだっけ…?」 ウ-ン…

歌鈴「はぁ…?まぁ大日如来は仏教の中でも立派な神様ですから、知名度が高いのはそうですけど」

 

莉嘉「ちょっと!何してんの!!」

 

藍子「!? 何ですか?」

かな子「今の声、莉嘉ちゃん…?」

歌鈴「向こうの方ですね…。兎に角行ってみまs……あぁうぁ!」

 

ズッテンッ

 

歌鈴「うわぁ~ん、また転んじゃいましたぁ~!!」

 

タッタッ──

 

莉嘉「こ~らぁ!!いい加減にしないと、ホントに怒るよ!」

男の子「……」

 

かな子「莉嘉ちゃん!」

男の子「…ちっ」

莉嘉「かな子!藍子も…」

藍子「大きな声なんて出して、何が……これ…」

 

植樹、種を植えた地が、踏み荒らされている。

 

歌鈴「酷い…!」

莉嘉「この子が、折角植えた場所を…!」

男の子「……」

藍子「…どうして、こんなことを?」

男の子「何だよ、みんなして善人ぶって樹なんて植えちゃってさ!ここは元々人が住んでた街だろう!?」

歌鈴「それは…」

莉嘉「それの何が悪いのさ?緑が増えて、花が咲けば、こんな荒んだ景色よりはよっぽど良くなるよ!」

男の子「花なんて、すぐ枯れちゃうだろ!樹だって植物だって……またここが戦場になれば、吹き飛んでなくなっちゃうじゃないか!」

藍子「それでも、こうして生きている私達がいる限り、何度だって花を植えることは出来ます。諦めず、続けていけば…」

男の子「…花や樹はそうやって出来て、街の再生は出来ないのかよ?」

藍子「え…?」

男の子「建築家だったんだ、僕の父さんは。この街のビルや家をたくさん作ってたんだ!」

藍子「……そう、だったんだ」

男の子「樹が立派に育つまでどれくらいの年月が掛かるかって分からない訳じゃないんだ。けど、一つのビルを建てるのだって、たくさんの人がいて、大変で…」

かな子「……」

男の子「本当に何もなかった一つの土地に、たくさんの人が安心して暮らせる街を作るのだって、何十年も掛かるんだ。…なのに!」

かな子「政府は首都とか、主要都市の復興を優先して、ここみたいな地方都市は都市規模の縮小、復興作業も後回しになってますからね…。怒って当然です」

男の子「姉ちゃん…?」

かな子「ごめんなさい…」

男の子「え?」

藍子「かな子ちゃんは、ゲッターのパイロットなんです」

男の子「嘘だろ…!?姉ちゃんが…?」

かな子「街を守れなかったのは、私達の責任、ですよね?」

男の子「…別に、姉ちゃん達が悪いって言ってるんじゃないよ。…ゲッターがいなかったら今頃、日本だけじゃなく世界中どうなってたか分からなかったし」

かな子「ありがとう。でも、貴方の街を守れなかったのは事実です」

男の子「……うん」

かな子「市街地での戦闘だと、相手を倒すので精一杯だったり、敵の攻撃を防ぐ盾代わりにしたりで、建物のことなんて考えたこともありませんでした」

莉嘉「けどそれは、こっちだって生きる為だし、仕方ないんじゃないの?」

かな子「それでも、こうやって悲しい思いをする子を作っちゃったのは事実です」

莉嘉「……」

かな子「だから、私一人が頭を下げて済まされる訳じゃないけど、……ごめんなさい」

男の子「…いいよ。頭を上げてよ」

かな子「でも…」

男の子「言ったじゃん。姉ちゃん達が悪い訳じゃないって」

かな子「ありがとう、ございます…」

男の子「やめてよ…」

 

── その夜。

 

莉嘉「……」

美波「ふぅ~…。あら、莉嘉ちゃん?」

莉嘉「あ…。美波」

美波「莉嘉ちゃんはシャワーまだなの?昼間仕事したんだし、浴びるだけでも気持ちいいよ?」

莉嘉「うん…。もう少ししたらね」

美波「……。昼間、何かあった?何だか、浮かない顔してる」

莉嘉「…別に、大袈裟なことじゃないけどさ」

美波「けど?」

莉嘉「…あのね?」

 

──。

 

美波「……そう、そんなことが」

莉嘉「ホッントにもう信じらんない!向こうの言い分も分からない訳じゃないけどさ!折角皆で植えた苗を踏み荒らして自己主張してさ、こっちに文句言わなくたっていいじゃん!」

美波「まぁ、向こうも莉嘉ちゃん達がゲッターのパイロットだとは思ってなかったんだし、仕方ないんじゃない?」

莉嘉「それはそうだけどさぁ!まったく、戦闘で辛い思いをしてるのはそっちだけじゃないっての…!」 プンプンッ

美波「あははは…」

美波(この様子だと、随分溜まってたみたい…。それでも実際に言わなかったのは、成長したってことなのかな…?)

莉嘉「にしても、かな子もかな子だよ!あぁ言う相手にはガツーンって言ってやればいいのにさ!素直に頭下げちゃうんだもん。こっちも何も言えなくなっちゃうよ」

美波「あぁ…(かな子ちゃんのお陰でもあるのね…)」

美波「…?そう言えば、かな子ちゃんは?」

莉嘉「ん?さぁ。帰ってくる時までは一緒だったけど、その後は知らないよ?」

美波「え…?それじゃあ、何処に…」

 

かな子「あっ!美波さん、莉嘉ちゃん。自室にいないから、探しちゃいましたよ」

 

美波「あ、かな子ちゃ……ん゛っ!?」

かな子「パウンドケーキを作ってたんです。ちょっと作りすぎたから、皆でどうかなって」

美波「パウンドケーキって…、1パウンドどころか10パウンドくらいありそうだけど…」

かな子「はい…。作り始めたら何だか夢中になっちゃって…」

美波「夢中にって、それでもこれだけの量を作るのは…」

かな子「これなら夢の30000キロ超ファットケーキもその内実現出来そうですね!」

美波「夢の超ファットケーキ…?」

かな子「まぁ、将来の展望の話はこのくらいにしておいて、紅茶を淹れてきますね?あ、莉嘉ちゃんは炭酸とか、ジュースの方がいいですか?」

莉嘉「……」

かな子「莉嘉ちゃん?」

莉嘉「いらないっ!」 バシッ

かな子「きゃ…っ!」

莉嘉「昼間あんなことがあって、よく呑気にケーキなんて作ってられるよね?!」

かな子「昼間のこと、ですか…」

美波「莉嘉ちゃん、それは…っ」

莉嘉「前々から思ってたけど、かな子ってプライドとかってない訳?」

かな子「…プライド、ですか」

かな子「……無いですね」

莉嘉「っ…!だから、子供相手にも平気で頭を下げられるんだ!」

かな子「あの時は、あぁするのが一番だと思ったから、そうしただけですよ」

莉嘉「頭を下げるのが一番って何?一方的に好き勝手言われて、こっちのこと何にも分かってないのに!」

かな子「それでも、あの子は別にいいって、許してくれました。それで解決で、いいじゃないですか」

莉嘉「それで解決になるの?あんなことする奴、戦ってる人の気持ちなんて、全く分かってないんだよ?ただ自分が辛い思いをしてるからって、一人だけ悲劇のヒーロー気取りで!アタシだって、かな子だって、みんな…!」

かな子「あんまり知らない人のことを悪く言ったらダメですよ。莉嘉ちゃん」

莉嘉「~~~っ!もう知らない!」

 

ダッ

 

美波「莉嘉ちゃん…!」

 

美波「……」

かな子「追い掛けてあげて下さい」

美波「…かな子ちゃんは、一人で平気?」

かな子「平気ですよ?一人で、耐えるのには慣れてます。莉嘉ちゃんは、そうじゃないから」

美波「…そう」

 

言いつつ、広げられたパウンドケーキを一つ取る。

 

かな子「美波さん?」

美波「経験が大事って言うなら、莉嘉ちゃん自身で答えを見つけさせるのも、経験じゃない?」

かな子「ですけど…」

美波「少なくとも、今の私には、気丈に振る舞ってるチームメイトの方が気になるよ」

かな子「美波さん…」

美波「夢中になって、全部忘れて、ケーキ作りに没頭してたんだもんね。そうやって1人で発散するのは大切だけど、たまには仲間も頼ってほしいから」

かな子「…ありがとう、ございます」

美波「さ、一緒に紅茶を淹れましょう?砂糖とミルクを一杯入れて、飛びきり甘いのを」

かな子「で、でも良いんですか?これからの時間に、そんなに糖分を摂るなんて」

美波「カロリーが気になるなら、また私の訓練に付き合って?お互い、持ちつ持たれつ、ね?」

かな子「…はいっ!」

 

── 翌朝。

 

ウゥゥゥゥゥン……ウゥゥゥゥゥン…ッ

 

通信士『大阪市内に敵襲!敵は大阪湾より上陸したメタルビーストタイプ。ゲッター飛焔チーム、直ちに出撃。スタンバイお願いします』

 

茜 「敵はランドウの残党ですか…!相手には慣れているとは言え、気を引き締めなければ行きましょう!」

美穂「そうだね…!う……ふわぁ~……」

アーニャ「アー、ミホ?ちょっと眠い、ですか?」

美穂「……うん。ライヴに向けたレッスンで、昨日遅くて…」

アーニャ「そう言えば、ワタシが寝た時には、まだ帰ってきてなかったですね」

美穂「うぅん……ダメダメっ!気合い入れ直さなきゃ!」

茜 「さぁ!叫び惑う人々の為にも、遅れるわけには行きませんよぉ!!アーニャちゃん、美穂ちゃん!準備OKですか?!」

アーニャ「2号機、スタンバイOKです」

美穂「こっちも大丈夫だよ!急ごう、迫り来る敵へ!」

 

古田『茜ちゃーん!カタパルトもOK何時でも出れるっスよ!』

 

茜 「了解!──ゲッター飛焔、発進!!」

 

プロト・ゲッターのゲットマシンが、研究所を飛び立っていく。

 

── 研究所内、待機室

 

莉嘉「どうしてアタシ達は待機なの!?納得いかない!」

晶葉「納得をするもしないも、今回出現の報告を受けた敵の規模から鑑みて、茜達だけでも対応可能と判断したまでだ」

莉嘉「それでも、敵だって増援を送ってくるかもしれないし、バックアップはあった方がいいじゃん」

晶葉「今回敵が出現した方とは、別の方にも敵が現れないとも限らない。それこそランドウの残党でも攻撃の可能性は捨てきれないからな。もしもの為の備えも必要だ」

莉嘉「で~も~~!」

かな子「まぁまぁ、晶葉ちゃんの言う通りですよ。慎重になりすぎて困ることはありませんから」

莉嘉「…かな子は戦わなくっていいから、ラッキーだって思ってるんでしょ?」

美波「莉嘉ちゃん!そんな言い方…!」

かな子「美波さん、…良いんです」

美波「けど…」

莉嘉「…ふんっ」

晶葉「……ふむ」

 

所員「晶葉さん?…良かった、ここにいたんですね」

 

晶葉「ん?どうかしたか?」

所員「はい。新たにゲッター出撃の要請です」

晶葉「何?新たな敵襲か?」

所員「はい。鬼獣出現の報告です」

晶葉「そうか。で、場所は?」

所員「えーっと、位置は関東圏です。栃木県の…」

かな子「それって…!」

晶葉「どうした?」

かな子「っ…!」 ダッ

美波「かな子ちゃん!?」

莉嘉「…!そっか、昨日行ったトコ…!」

美波「昨日…?」

莉嘉「昨日ボランティアで行った場所だよ!アタシ達は一日だけだったけど、今日もまだやってる筈!」

美波「ってことは…!」

晶葉「アークチーム、出撃スタンバイだ!」

莉嘉・美波「「了解!(☆)」」

 

──。

 

男の子「──…ぁ痛っ!!」

藍子「!? 大丈夫?」

男の子「お、俺は大丈夫…!姉ちゃんは、先に逃げなよ」

藍子「足怪我してるじゃないですか!とても大丈夫には見えませんよ」

男の子「このくらいホントに大丈夫だから!」

藍子「…!怪物が近付いてきてる…。早く、掴まって!」

男の子「や、やめろよ…!姉ちゃんも逃げ遅れちまうぞ!」

藍子「怪我してる人を見捨てていくよりはマシです!手が届く所で助けられる命は、絶対に助けるって決めたんです!」

男の子「姉ちゃん…」

 

歌鈴「あ、藍子ちゃん!こんなところに……その子は…!」

 

藍子「歌鈴ちゃん…!丁度良いところに!お願いします、手伝ってください!」

歌鈴「わ、分っかりまs……しあぁああうびゃぁっ!!」

 

ズテンズテンッ

 

躓き転げ、転がり落ちながら2人の元に辿り着き、男の子を担ぎ上げるのを手伝う。

 

男の子「俺より重傷じゃない…?」

歌鈴「えへへ…!こう見えても鍛えられてましゅから!」

男の子「へ、へぇ…」

歌鈴「それよりも急ぎましょう!牛鬼よりも恐ろしいのが来てますっ!」

 

剛鬼獣「ゴォオオオッ──!!」

 

男の子「くそぅ…!何だってんだよ、この街に何の恨みがあるって言うんだよ!」

歌鈴「そうですね…。しかし、街への恨みって言うより…」

藍子「人類そのものへの、強い、怒り……みたいな…」

男の子「その為に街を壊すって言うのかよぉ!!」

歌鈴「…!!見てください、あれは…!」

男の子「…ゲッターロボ!」

 

かな子「鬼獣…っ!」

 

彼方から飛来したゲットマシン、カーン号が地上を行く鬼獣めがけミサイルを放ち足を止める。

 

剛鬼獣「!?」

かな子「……よし」

美波「待って!かな子ちゃんっ!!」

かな子「…美波さん、莉嘉ちゃん」

莉嘉「一人で突っ走って、どうやって戦う気!?」

かな子「ごめんなさい…」

莉嘉「そんなに慌てなくても、襲ってきた相手は逃げないでしょ」

かな子「……ダメなんです」

莉嘉「え?」

かな子「これ以上、あの街を破壊させちゃダメなんです!」

莉嘉「あの街を…?もしかして…」

美波「そこまで。鬼獣が動き出した…!」

 

剛鬼獣「グゥゥゥ…!」

 

莉嘉「ひゃっ…!」

 

巨大なアーマーのようになった両肩にそそり立つ無数のトゲをミサイルのように放出。襲い掛かる攻撃を、各ゲットマシンがそれぞれの方向に散開してやり過ごす。

 

莉嘉「見た目鈍重そうなのに、卑怯だって!」

美波「鈍重だからこそ、動きをカバーするための武器なんでしょ?」

かな子「…! ボランティア参加者の避難、まだ終わってない…!?」

美波「ホント…!歌鈴ちゃん、藍子ちゃん…!」

かな子「…さっきの攻撃を、街に向かって撃たれるわけには行きませんね…!」

美波「それじゃあ、今回の戦闘は…!」

かな子「私が行きますっ!」

 

カーン号を先頭に速度を上げる。

 

かな子「チェーンジ、ゲッターカーンッ!!」

 

空中で合体し、街を背に鬼獣に相対するように降り立つ。

 

かな子「ゲッターカーン、参上です!」

剛鬼獣「グゥ…ッ!ゲッタァア…!!」

莉嘉「喋った!?」

美波「ゲッターを呼んでる…?」

かな子「ここから先へは行かせません!」

剛鬼獣「死ネ、ゲッタァア!!」

 

剛鬼獣は再び、トゲを放出。

 

美波「やっぱり撃ってきた!」

かな子「エネルギー集束…!テストもまだだけど…」

 

かな子「ゲッターバリア!!」

 

ゲッターカーン正面にうっすらとした薄緑色のエネルギー障壁が展開される。

 

かな子「く、くぅぅぅ~…!」

 

トゲがバリアに触れ、爆発。生じた衝撃を間近に受け、ゲッターカーンのコックピットにもその衝撃が伝わる。

 

男の子「ゲッター…!俺達を守ってくれるの…?」

藍子「…きっと、私達だけじゃありませんよ」

男の子「え…?」

藍子「真っ先に駆けつけてくれた。きっとあれに乗ってるのは…」

 

かな子「~~~っ!」

莉嘉「な、何とか持ち堪えてるの?!」

美波「ゲッターカーンに搭載されたバリア、上手く機能してくれたみたいね」

かな子「けど、実戦で使うには…。晶葉ちゃんに色々報告しなきゃ」

剛鬼獣「ゴァアアアアアッ!!」

莉嘉「い゛っ…!突っ込んでくる…!」

美波「遠くからの攻撃じゃ、埒が明かないと思ったみたいね」

莉嘉「でも、突っ込んでくるだけなら余裕で避けられ…」

かな子「迎え撃つのなら、望むところです!」

莉嘉「え──!……っ」

 

同時、強い衝撃が襲う。

 

かな子「っ…!」

 

 

突撃してきた鬼獣を受け止め、街に入る寸前で踏み留まる。

 

莉嘉「うぁ~~~……。クラクラする…」

かな子「力自慢みたいですけど、それならこっちも──!」

 

力と力が拮抗する組合の最中、ゲッターカーンが拳を振りかぶる。

 

かな子「やぁあああああッ!!」

 

渾身の拳が、剛鬼獣を殴り飛ばす。

 

剛鬼獣「グ、グァア……!」

 

倒れ伏した剛鬼獣に、ゲッターカーンが静かに歩み寄る。

 

剛鬼獣「!!?」

 

ゆっくりと起き上がろうとする剛鬼獣の頭を掴み、持ち上げる。

 

かな子「体勢なんて、立て直させませんよ!」

 

剛鬼獣を掴んだ腕を大きく振り仰ぎ、

 

かな子「ふんッ!!」

 

地面に勢いよく叩き付けた。

 

剛鬼獣「グァッ!!」

かな子「うっ…!」

 

追撃を仕掛ける為に近付くゲッターカーンに向かい、上体を起こしてトゲを撃ち怯ませ、その内に立ち上がる。

 

かな子「まだ抵抗するつもりですか?!」

剛鬼獣「シャァァァッ!!」

 

両腕を広げ、指先の爪を立てて再度強襲の為、肉薄。

 

かな子「そんな攻撃で…!」

 

爪の攻撃を躱し、その手首を抑え、

 

かな子「ゲッターカーンは──!」

 

力任せに剛鬼獣の動きを制し、スイング。

 

かな子「倒せません!」

 

回転の勢いに乗せ、再び剛鬼獣を地面に叩き付けた。

轟音と地響きが灰塵を生み、周囲を包む。

 

藍子「きゃあっ!?」

男の子「スゴい…」

歌鈴「不動明王…」

藍子「え…?」

歌鈴「あぁ、いえ…。あのゲッターの姿を見ていたら、何となくお不動さんのイメージがつい口をついて出てしまって、ですね…」

藍子「ん~…?確かに荒々しいと言うか、そう言う雰囲気はお寺に置いてある不動明王像に近いかもだけど、そんな怖い感じじゃないですよ?」

歌鈴「いえいえ。恐ろしい姿で造形されているあの不動明王は、仏法を離れ外道に堕ちようとする人間を止めるためとも言われているんですよ!」

藍子「そうなんですか?」

歌鈴「はいっ。それに、不動明王は別名『揺るぎなき守護者』とも呼ばれてるんです!私達を守ってくれる、立派な守護神なんですよ!」

 

かな子「羂索(けんさく)っ!!」

 

ゲッターカーンが掌を打ち合わせ、その内側から取り出したのは、片方の先端に独鈷杵の付いた鎖。逆の端は環になっていて、腕に通すことで鎖が手からすり抜けるのを防ぐ。

 

かな子「はっ!」

 

先端の独鈷杵を重りにして鎖を回し、遠心力で剛鬼獣めがけて投じる。

 

剛鬼獣「…!」

かな子「!!」

剛鬼獣「っ!?」

 

投じられる独鈷杵を警戒し、横に跳躍する回避運動を行った剛鬼獣に対し、ゲッターカーンは鎖を投じた右腕、力点である腕を捻る事で投じた鎖の方向を変化。真横にスイングさせて、回避に動いた剛鬼獣を追う形で、真横から剛鬼獣を打ち据えた。

 

剛鬼獣「ガ…ッ!!」

 

体勢を崩し、落下する剛鬼獣。ゲッターカーンは一度羂索を手元に戻し、再び勢いを付けてから、立ち上がりつつある剛鬼獣に投じる。

 

剛鬼獣「ウゥ…!?」

 

じゃらり、と鎖がしなり、剛鬼獣の体に巻き付いて捕える。

 

かな子「…っ! やぁあああああッ!!」

 

そのまま、ゲッターカーンを180°回頭。羂索の鎖を肩に背負い、肩を支点として捕えた剛鬼獣を天高く投げ上げる。

 

剛鬼獣「……!!?」

かな子「──えいっ!」

 

僅かな空中遊泳の後、待っているのは落下。鎖を引き、剛鬼獣を大地へと叩き付ける。

 

かな子「まだ終わりませんよ…! はぁあああああッ!!」

 

鎖で投げ、叩き付ける。その一連の動作は1回では済まず。2回3回と連続して剛鬼獣を投げ上げては叩き下ろしていく。

 

その回数、実に12回。

 

かな子「これで、最後です!」

 

ジャラッ

 

鎖を引き寄せ、剛鬼獣をゲッターカーンの懐へ。

 

剛鬼獣「グゥ…!ヤラレヌゥ…!!」

 

ゲッターカーンに抱き止められる様に抑えられた剛鬼獣。最後の足掻きと言うようにゲッターカーンの首元に噛み付く。

 

かな子「……!」

 

その足掻きすら何事とも思わぬかのように、頭を引っ掴んで引き剥がし、もう片方の拳で鳩尾を打ち、最後の抵抗力すら奪う。

 

剛鬼獣「……」

 

ガクリ、と力を失いゲッターカーンに体重を預けて項垂れる剛鬼獣。

 

莉嘉「……」

かな子「莉嘉ちゃん」

莉嘉「は、はい…っ!」

かな子「莉嘉ちゃんの言う通りですよ?私は、戦いたくなんてありません。けど、それは私だけじゃないと思います。戦いたくないのは誰だって一緒なんです」

 

だけど、

 

かな子「みんな誰かを守りたくて、嫌だから、やらないんじゃ、きっと納得できないから、今ここにこうしているんです」 グッ

 

剛鬼獣を抱え直す。

 

かな子「さぁ、終わらせますよ!舌を噛まないように、しっかり掴まってて下さいっ!」

 

グン、と操縦桿に力を込め、ゲッターカーンを回転させる。

 

莉嘉「ウゴ…ッ!?」

美波「こ、これが、噂の…!?」

 

かな子「──大ぃっ!」

 

回転はトップスピードを越え、やがて竜巻を生みほどの勢いに。

 

かな子「雪ぅ~!」

 

周囲の木々をも薙ぎ倒し、引き込み巻き上げても、尚も止まらず、

 

かな子「山ッ!!」

 

やがてその回転は臨界に達し、

 

かな子「おぉろしぃいいい~~~ッ!!」

 

烈迫の気合いを込めた叫びと共に、剛鬼獣を天高く放り投げた。

 

かな子「最後は、未央ちゃん秘伝のトドメです!」

 

大雪山の回転を維持し、その中でグッ、と右手に力を込めて拳を固め、落下してくる剛鬼獣を待ち構える。

 

かな子「──大雪山、おろしパンチッ!!」

 

大雪山おろしの回転加速を加えた拳が、落下してきた剛鬼獣に深く突き込まれ、その体を血飛沫と肉片に変えながら、木っ端微塵に砕け散った。

 

男の子「揺るぎない守護者……不動明王…」

 

日も傾き始めた黄昏時。山の向こうに沈んでいく落陽の日射しを後光のように背負い、ゲッターカーンはそこに立っていた──。

 

──。

 

藍子「かな子ちゃ~ん!」

歌鈴「かな子しゃn…アベシ!」

 

かな子「藍子ちゃん、歌鈴ちゃん!良かったぁ、無事で」

 

歌鈴「はいっ!お陰しゃまでこの通り、みんな元気ですよ!」

かな子「歌鈴ちゃんは、何かスゴく泥塗れだけど…」

藍子「でも、来てくれて本当に助かりました。ありがとうございます」

かな子「そんな…。お礼を言われるようなことは何も……あっ」

 

男の子「……」

 

かな子「……」

男の子「…お姉ちゃん」

かな子「ごめんなさい」

男の子「えっ?」

かな子「また、街を壊しちゃいました」

男の子「それは、もう良いって。…俺が悪かったよ」

かな子「え…?」

男の子「だから!姉ちゃんが一生懸命戦ってるのは、目の前で見て分かったよ。だから、昨日は俺が勝手なこと言ったりして悪かったよ。……ごめん」

かな子「ありがとうございます」

男の子「……」

かな子「……」

藍子「……」

歌鈴「あっ……えーっと…」

かな子「あ、あのっ…!」

男の子「な、何…?」

かな子「……その、街を壊したばかりの私が、こう言うことを言うのは、ちょっと可笑しい気もするんですけど…」

かな子「君の未来に、期待しても良いですか?」

男の子「俺の、未来…?」

かな子「はい。自分の生まれた街が大好きで、お父さんの仕事を誇りに思っていた君が、この壊れた街に、新しい街を築いていく、そんな未来を」

男の子「……」

かな子「勝手なのは分かってます。率先して街を壊す癖に勝手なこと言うなって言うのも、分かります。だけど、私に守れるのは、みんなの未来だけだと思うから」

男の子「みんなの、未来…」

かな子「戦いが始まれば、街は壊れるけど、花は吹き飛ぶけど、それでもって花を植え続けてくれる人がいる限り、そこに花は咲いてくれるんです。みんなの住む家を、暮らす街を作ってくれる人がいる限り、また街に人は帰ってくるんです」

かな子「だから、何時か未来の君が、またここを豊かな街にしてくれるって、信じても良いですか?」

男の子「……」

かな子「ダメ、ですか…?」

男の子「そんなの、今一生懸命戦ってる人にそう言われたら、ダメって言えないじゃん」

かな子「それじゃあ…!」

男の子「俺、頑張るよ。何時か父ちゃんを越えるような、立派なビルを作ってみせる!」

かな子「はいっ、ありがとうございます!」

男の子「姉ちゃんの大雪山おろしでも、吹き飛ばないような頑丈なビルをな!」

かな子「そ、それは……あの、あうぅ…」

藍子「ふふふっ」

歌鈴「一件らきゅちゃきゅでひゅで……あぅ…」

 

アハハハハハハハッ

 

美波「スゴいね、かな子ちゃん」

莉嘉「…うん」

美波「周りのことまで考えて、未来のことまで……莉嘉ちゃん?」

莉嘉「先に研究所戻ってるね」

美波「えっ?」

 

スタスタッ

莉嘉(かな子……戦いたくないって言ってるのに、あんなに強かった)

莉嘉「私も、強くならなきゃ…!」

莉嘉(もっと強く──!)

 

つづく

 

 




次回予告

大切な者を守りたい。
同じ思いを抱きながら、その思いの矛先の違いからすれ違ってしまった莉嘉と美嘉。
二人のわがかままりも解けぬまま、研究所を襲撃する鬼獣。
自らの姉に迫る命の危機を前に、莉嘉は──。

次回『姉と妹』
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