夜。
月明かりが夜の闇を仄かに照らし、その月下には厚い雲海が広がっている。
悠然と、風の赴くままに漂っていた雲海が大きく膨らんで弾け、内から月下に姿を現すモノがある。
莉嘉「くっ…!」
ゲッターアークだ。
莉嘉「…ンの…!一体何処に!」
美波「落ち着いて莉嘉ちゃん!レーダーで熱源を追って……きゃあっ!」
月下に上がったゲッターアークを追って、雲海から姿を現した人魚鬼獣の尾びれによる鞭打がゲッターアークを襲う。
莉嘉「ガッ…!こんのォ…!」
即座に体勢を立て直して反転し、人魚鬼獣と相対する。
莉嘉「ゲッタートマホークッ!!」
トマホークを抜き打ち、肉薄。
莉嘉「えいっ!」
人魚鬼獣「フンッ…!」
やや大振りに放たれたトマホークを、人魚鬼獣は軽く往なす。
人魚鬼獣「ヤァアアアッ!!」
莉嘉「ぅあ゛ぁぁっ…!」
反撃の槍撃が、ゲッターアークを襲う。
莉嘉「こ、このくらいでぇ…!」
体勢を崩しながらも、トマホークを投じ、人魚鬼獣に当てて怯ませる。
莉嘉「バトルショットカッタァアー!!」
両側腕部に据え付けられたバトルショットカッターを構える。
莉嘉「このっ、このっ、このっ、このぉ!!」
左右の腕を交互に放ち、回避する人魚鬼獣を追い詰める。
かな子「い、幾らなんでも、強いn……きゃっ!」
莉嘉「届けぇええええッ!!!」
無茶苦茶な連打で放たれたバトルショットカッターの刃が、人魚鬼獣の偶然に肩口を撫でる。
人魚鬼獣「ギャァアアアアッ!!」
吹き出す血飛沫に狼狽える人魚鬼獣。
莉嘉「これで!」
一瞬の隙は、見逃さない。
莉嘉「えぇいっ!」
踵落としで、人魚鬼獣を更に怯ませ、
莉嘉「ゲッタービームッ!!」
ゲッタービームで射抜く。
人魚鬼獣「ガ……ガァ…!ダガ、ワガシメイハ──!」
爆散。
静寂の夜闇に爆炎の華を咲かせ、人魚鬼獣は散っていった。
── 研究所、管制室。
通信士「ゲッターアーク、鬼獣撃墜」
晶葉「ゲッターアークのデータを見せてくれ」
通信士「は?」
晶葉「……ゲッタービーム出力は43%か…。この程度の威力で、よく撃退出来たものだな」
通信士「は…」
晶葉「速やかにゲッターを帰還させろ。パイロットはその後、8時間の休息だ。訓練開始は何時も通り、遅刻はするなよと伝えておけ」
通信士「了解!アークチーム、聞こえますか──」
~~~ 新早乙女研究所 格納庫 ~~~
整備員「2号機、格納完了しました!」
古田「すぐメンテに入るっスよー!…ったく、今日も派手にやっちゃって~」
美波「ごめんなさい、古田さん」
古田「あっ、あ~いや、美波さんが悪い訳じゃないっスよ!」
美波「でも、もう遅い時間なのに…」
古田「好きでやってることっスから。それに、夜勤の連中はしっかり休憩もとった後!何にも心配はいらないっスよ!」
美波「…ゲッターをよろしくお願いします」
古田「言われなくても。…にしても、研究所の近くに出現って聞いた時は、ちょっとヒヤッとしたっスよ」
美波「……そうですね」
古田「美波ちゃん達のお陰で助かったっス。それだけでも、感謝感激っスよ!」
美波「私は、何もしてませんから。それじゃあ…」
古田「はいっス。ゆっくり休んで下さい」
──。
美波「……」
莉嘉「何!?アタシが悪いって言うの!!」
美波「この声…」
かな子「え、えーっと、だから、そう言うんじゃなくて、ですね?今回みたいに、強引なやり方じゃなくても、やりようはあると思うんです」
莉嘉「やりようって何?」
かな子「それは……えーっと…」
莉嘉「……ふぅん。結局あれ?かな子は、アタシが弱くて、頼りないって言いたいんだ」
かな子「そんなことは…!」
莉嘉「そうだよね!アタシは、卯月みたいに操縦上手くないし、リーナみたいに機転も利かないし、ここの中で一番子供で、一番頼りないよ!」
かな子「莉嘉ちゃん…!」
美波「そこまでにしよ、莉嘉ちゃん?」
かな子「美波さん…」
美波「戦闘が終わった直後だもん。ナーバスになっても、仲間に当たるのは違うと思うよ?」
莉嘉「……」
美波「今は頼りなくったって、莉嘉ちゃんは莉嘉ちゃんの意思で戦ってる。私はそれを理解してるつもりだから、一緒に戦ってる。思うように結果が出なくて、焦る気持ちは分かるけど、一旦落ち着かなくちゃ」
莉嘉「けど…」
美波「今日はもう遅いから、早く部屋に戻って休もう?ね?」
莉嘉「うん…」
スタスタスタ…
かな子「ありがとうございます。美波さん…」
美波「気にしないで。かな子ちゃんが言うことは、間違ってないから」
かな子「それじゃあ、美波さんも…」
美波「今の莉嘉ちゃんは、1人でひた走ってるようなものだもの」
かな子「何か、いいきっかけがあるといいんですけど」
美波「私達でフォロー出来るところは、フォローしてあげればいいと思うわ。…それよりも気になることがあるの」
かな子「…はい?」
美波「今日現れた敵のこと」
かな子「今日の…?あぁ、研究所の近くに現れて、少しビックリしちゃいました」
美波「それもあるけど、私達の拠点を攻撃してくるにしては、戦力が少ないと思わない?」
かな子「それは……鬼獣が一体だけでしたけど…。偵察が目的だったとか、研究所に転移する予定じゃなかったとか、色々理由があるんじゃないですか?」
美波「それはそうかもしれないけど、簡単に決着がついたのも気になるの」
かな子「…鬼獣に、何か考えがあって行動してるってことですか?」
美波「うん…。今までの鬼獣出現の例から見ても、今回の相手は手応えが無さすぎる。明日、訓練が終わった後、研究所の周りを調べたいから、手伝ってもらってもいい?」
かな子「分かりました。茜ちゃん達はアイドルの方の仕事や学校で不在ですから、私達でやれることはやった方がいいですね」
美波「お願い。よろしくお願いね」
かな子「任せて下さい。…この話、莉嘉ちゃんにはしなくていいんですか?」
美波「…莉嘉ちゃんは、今は落ち着かせた方がいいかも」
かな子「…そうですね。明日夜が明けてから、ゆっくり話せばいいですよね」
美波「私達も休みましょ。もう遅い時間」
かな子「はい、2度目の襲撃がないといいですけど」
スタスタスタ…
晶葉「……」
── 翌日。
ゴォオオオ──ッ
莉嘉「いっけぇええ~~~っ!!」
美波「っ…!」
かな子「り、莉嘉ちゃ…ん…っ!」
晶葉「一体何をしてるんだ?莉嘉は」
通信士「ゲッターアーク、高度上昇中。現在高度、30000を突破。尚も上昇中」
晶葉「遊んでいるのか?パイロットのバイタルは?」
通信士「1、2、3号機パイロット、何れも血圧・心拍数が上がっています。2、3号機のパイロットは、もうすぐ危険域に達します」
晶葉「ゲッターアークの最高速で急上昇すれば無理もない。まったく…」
莉嘉「いけいけいけいけっ!いけ~~~ぇ!!」
晶葉「莉嘉、今は訓練中の筈だぞ。早くゲッターを訓練区域に戻せ」
莉嘉「このゲッターの限界性能を計ってるんだよ!機体の性能を最大限に発揮するためには必要なことでしょ?」
晶葉「その為に仲間の命を危険に晒すな。お前自身も限界だろう?」
莉嘉「このくらいで、弱音なんて吐いてたら、何時までも強くなれないよ!」
晶葉「強くなる前に死ぬぞ。いいから戻ってこい!」
莉嘉「もうちょっと…!もう少しだけ…!」
かな子「り、莉嘉ちゃん……ウップ──」
莉嘉「……訓練前にお菓子食べ過ぎなんだよ」
ヒュッ…
速度を落とし、高度下げていくゲッターアーク。
──。
かな子「莉嘉ちゃん!」
莉嘉「……何さ」
かな子「さっきの訓練、どう言うつもりなんですか!?」
莉嘉「何って、晶葉にも言った通りだよ。ゲッターアークが何処まで出来るのか、知っておくのは悪いことじゃないでしょ?」
かな子「やり方の話をしてるんです!あんなゲッターの使い方、命を粗末にしてるようなものですよ?!」
莉嘉「だから何なの?ゲッターに振り回されるよりはマシじゃないの?」
美波「莉嘉ちゃんのやり方には付き合いきれないって言ってるんだよ」
莉嘉「…美波?」
美波「莉嘉ちゃん、私達はチームだよ?誰か1人がチームの輪を乱して、足並み揃わなくちゃ意味ないの」
かな子「3つの心を、1つに合わせて戦うのがゲッターロボです」
美波「それが出来ないなら、これ以上チームを組むことは出来ないかな」
莉嘉「何さ…!2人してアタシが悪者みたいに…!」
美波「……」
かな子「……」
莉嘉「う……うぅ~…!アタシだって、アタシだって!足を引っ張る仲間なんて要らないよ!」
晶葉「なら、決まりだな」
莉嘉「晶葉…!それに…」
美嘉「…莉嘉」
莉嘉「お姉ちゃん!?どうして…」
晶葉「昨日の夜に連絡しさせてもらった。お前、東京での戦い以来、連絡してなかったらしいな」
莉嘉「それは…!」
かな子「必ず連絡するって、約束したじゃないですか!」
美嘉「全く人に心配ばっか掛けさせて…!」 グイッ
莉嘉「あっ…」
美嘉「ほら、帰るよ!パパやママだって心配してるんだからね!」
莉嘉「ちょ、ちょっと待ってよ!」 バチンッ
美嘉「莉~嘉~っ!」
莉嘉「アタシ帰らないよ!アタシだって、ゲッターで戦えるんだ!」
美嘉「たった今チームから抜けたんでしょ!」
莉嘉「それでも、ブラックゲッターだって、ゲッターD2だって1人で乗れるゲッターはあるもん!」
美嘉「ゲッターはアンタの玩具じゃないの!」
莉嘉「玩具なんて!」
晶葉「子供に任せるゲッターはないな」
莉嘉「晶葉…!」
晶葉「莉嘉。私は君の意思を汲んできたつもりだ。これまでゲッターに乗って戦う者を、その姿を間近で追って、何の為に彼女達が戦ってきたのかを追っていたつもりだ」
晶葉「莉嘉、君は何の為に強くなる?」
莉嘉「何の為…?」
晶葉「自分の為か、誰かの為か?強くなってその力を何に使う?破壊の為か、守る為か?」
莉嘉「そ、そんなの決まってる…!アタシは…」
晶葉「……」
莉嘉「アタシは……」
美波「……」
晶葉「答えられないのなら、お前をゲッターに乗せるわけにはいかないな。それは、主任の遺志にも反することだ」
莉嘉「っ…!」
美嘉「もう分かったでしょ。ここにアンタの居場所はないんだよ。ほら、帰るよ」
莉嘉「…kらない…!」
美嘉「莉嘉?」
莉嘉「アタシ、絶対帰らないッ!」 ダッ
美嘉「あ、こらっ!待ちなさい、莉嘉!!」
晶葉「…行ったか。またパイロットを選び直さなきゃならんか」
美波「何て言って、ホントはそんなこと露程も考えてないんじゃない?」
晶葉「さぁな。少なくとも、今の莉嘉をゲッターに乗せるつもりがないのは本心だよ」
美波「今の莉嘉ちゃん、ね…」
かな子「……」
美波「かな子ちゃん、どうかした?」
かな子「私、ちょっと言い過ぎちゃいましたよね?落ち着いたら、ちゃんと謝らなきゃ…」
美波「…ホント、優しいよね。かな子ちゃんは。……ん?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ
美波「何…?地震…?」
晶葉「いや、地震にしては……様子が可笑しい──!」
直後、それは来た。
研究所の床面を、内壁を裂き、砕き、姿を覗かせたのは巨大な樹木の”根”だった。太く所々にオレンジ色の球体が点々と着いたその根は瞬く間に研究所に入り込み、通路を横切り、格納庫を埋め尽くし、瞬く間に研究所を覆い尽くした。
晶葉「うっ……ぐっ…!」
美波「晶葉ちゃん!大丈夫?」
晶葉「あぁ、飛び出してきた根が掠っただけだ。大した怪我じゃない」
かな子「それにしても、いきなり何なんですか?この根っこは…」
晶葉「ただの樹木の根な訳があるか。普通の植物の固さで、研究所の内壁を貫けるわけがない」
美波「と、言うことは…」
張り巡らされた根の隙間を掻い潜って駆け出し、管制室と通信出来る端末の元へ。
晶葉「こちら格納庫。管制室、聞こえるか?」
通信士『──こ、こちら管制室…っ!』
晶葉「現状の報告を。研究所、いや、外の状態はどうなっている?」
通信士「け、研究所の近くに、鬼獣らしき反応を確認しています」
かな子「……!」
美波「やっぱり…!」
晶葉「鬼獣の現在の動きは?」
通信士『動きらしい動きは、確認されていません』
晶葉「動きがないだと…?」
美波「ともかく、この根はその鬼獣に繋がっているのね?」
通信士『はい…。敵は、植物型とも言える鬼獣です。研究所全体を覆っている根のようなものと、出現している鬼獣は繋がっています!』
晶葉「こちらを捕らえて、様子を伺っているとでも言うのか?」
美波「植物型の鬼獣、と言うことは、もしかして、昨日の鬼獣が…!?」
晶葉「わざわざ種蒔きに来たと言うことか。随分回りくどい事をするじゃないか…──っ!?」
直後、研究所内に響き渡る爆音。
かな子「くっ…!何…?」
整備員「根が……!根が爆発したぞ!!」
晶葉「何だと…?皆、不用意に根に触れるな!」
美波「もしかして、根に付いてるこの球体が…!」
晶葉「現状では判断出来ん。ともかく、下手に動くな。それこそ、敵の思う壺だぞ!」
かな子「ゲッターは…?出撃出来るんですか?」
晶葉「飛焔は根が絡みすぎて無理だな。アークなら、辛うじて出撃出来るか…?」
かな子「アーク…。莉嘉ちゃんは…」
美波「莉嘉ちゃん…!?」
──。
莉嘉「う……うぅ…!…何なの?もう…!」
美嘉「莉、嘉…!」
莉嘉「っ…!お姉ちゃん…!」
美嘉が、内壁と根の間に挟まれている。
莉嘉「お姉ちゃん!」
美嘉「莉嘉は、無事?」
莉嘉「お姉ちゃん、アタシを庇って…?!」
美嘉「怪我はしてないみたいだね…。突然だったけど、無事で良かった…」
莉嘉「アタシのことなんてどうでもいいよ!直ぐ助けるから!」
言って、近くの内壁に備え付けられた非常用の手斧を手に取る。しかし、
莉嘉「きゃあっ!」
響く爆音。
所員「な、何だぁ!?」
所員2「球体が爆発したぞぉ!球体に触るなって、池袋さんが!」
莉嘉「…!球体…!?」
挟まれて身動きの取れない、美嘉の目の前に球体がある。
莉嘉「そ、そんな……どうしたら…」
美嘉「……アタシの事はいいから、莉嘉は逃げな」
莉嘉「で、でもぉ…!」
美嘉「ここにいたって、アンタは何も出来ないでしょ?」
莉嘉「アタシ……アタシは…!」
美嘉「アンタは、1人だと無茶ばっかりするんだから。ここはお姉ちゃんの言うことを聞きな」
莉嘉「放って、おけないよ…!」
通信士『鬼獣、行動開始。研究所に向かってきます!』
莉嘉「鬼獣…!この根っこも、鬼獣のせい…!」
美嘉「莉嘉ッ!!」
莉嘉「!?」
美嘉「…アンタは、逃げな」
莉嘉「お姉ちゃん…」
美嘉「アンタにまで何かあったら、パパとママはどうなるの?どっちかだけでも無事に帰って、安心させなくちゃ」
莉嘉「そんな、どっちかがいなくなるみたいな言い方、しないでよ…!」
美嘉「ははっ…!大丈夫。莉嘉はアタシが、守るから…★」
莉嘉「…守る……?お姉ちゃんが、アタシを?」
莉嘉「アタシは──!」
ダッ
美嘉「莉嘉ァ!!」
ダダ──ッ
莉嘉(お姉ちゃん…!)
莉嘉(お姉ちゃん──!)
莉嘉「お姉ちゃんッ!!」
──。
整備員「1、2、3、4…!」
古田「よぉ~し、みんな慎重に…!よし、切断完了っス!」
かな子「これで、アークのゲットマシンは何とか動かせますね!」
晶葉「あぁ。球体に触れなければ、爆発はしないみたいだな」
美波「けど、問題はどうやって出撃するか…」
古田「カタパルト、出撃口は根が複雑に絡んでて、排除するのは不可能っスよ!」
美波「何処かに、根の隙間がある筈よ」
古田「そんなことを言ったって…!」
かな子「もっと広く、根を追って下さい!何処かに、ゲットマシンでも入いる隙間がある筈です!」
古田「隙間……隙間、隙間…。…と、ありました!」
晶葉「何!?」
古田「ですが、その場所は!」
晶葉「その場所は!?」
古田「研究所の地下です!」
かな子「研究所の、地下…!?」
美波「それなら、ゲッターキリクなら!」
かな子「けど、パイロットが足りませんよ!」
晶葉「…仕方ない。私が行こう」
かな子「晶葉ちゃんが…!?」
晶葉「この状況では致し方ないだろう。大丈夫、ある程度ならば耐えられるさ」
かな子「そんなこと、言っても…!」
晶葉「時間はない。準備を急ぐぞ」
莉嘉「──待って!」
美波「…莉嘉ちゃん」
莉嘉「アタシを、ゲッターに乗せて」
晶葉「…出来んな」
莉嘉「分かってる…!分かってるよ…。アタシが子供で、未熟で、いい加減だって!」
莉嘉「……アタシ、やっぱり子供だよ。みんなが心配する気持ちも、どうして不安に思うのかも、アタシには分かんない」
美波「莉嘉ちゃん、それは…!」
莉嘉「ただアタシは、出来ないことを出来ないって諦めたくないんだ!」
美波「……!」
かな子「出来ないことを、諦めない…」
莉嘉「出来ないまま終わりなんて、そんなのイヤだよ!アタシは、出来るまでやりたい。途中で、諦めたくなんてないっ!」
晶葉「それでやることが、ゲッターで戦うことか?とんだ自殺志願者だな」
莉嘉「立派なこと何て言えないよ。立派な理由がなくちゃ戦っちゃいけない?そんなの誰が決めたの?」
美波「それは…」
莉嘉「アタシは、戦うことは出来る。なら、それ以上だって出来るかも!」
晶葉「その為に、死ぬぞ?」
莉嘉「死なないよ…!アタシが、ゲッターで出来ること、それを見つけるまでは、絶対死なないっ!」
晶葉「子供の無謀か…。その根拠は何処にある?」
莉嘉「分かんない。何にも分かんないけど、分かんないままで終わりにしたくないから…!」
晶葉「……話にならんな。お前達はどう思う?」
美波「……」
かな子「…どう、って、言われても…?」
莉嘉「美波、かな子…」
美波「莉嘉ちゃん。私達は、貴女に付き合って死ぬつもりはないよ?」
莉嘉「それは、分かってるよ。だから、えーっと……その…」
かな子「莉嘉ちゃん…?」
莉嘉「ごめんなさいっ!」
かな子「えっ?」
莉嘉「アタシ、どうしてゲッターに乗るのか、どうして戦いたいのか、そう言うのは分かんないけど、分かってることはあるよ?美波とかな子は、ずっとアタシのことを見てくれたってこと。お姉ちゃんが教えてくれた」
美波「美嘉ちゃんが…」
莉嘉「きっとアタシは、まだ守られる立場なんだよ。だけど、アタシは守られるだけで終わりたくない。自分に出来ることを、自分の目で自分の力で確かめたいんだ!」
美波「…だから?」
莉嘉「だ、だから…!えーっと、その。これからもずっと迷惑掛けちゃうかもしれないし、傷付けたり、苦しい思いをさせちゃうかもしれない。だから、ごめんなさいっ!」
美波「だからごめんなさい、って…」
かな子「私は良いと思いますよ?」
美波「かな子ちゃん!」
かな子「全然、迷惑なんかじゃないですよ。こうして分かって、頼ってくれるんですから、迷惑なんかじゃないです」
晶葉「それでいいのか?」
かな子「良いんですよ。こう言うので、それに莉嘉ちゃんを1人でゲッターに乗せるより、お目付け役がいた方が良くないですか?」
莉嘉「そゆことそゆこと」 ニシシッ☆
美波「莉嘉ちゃんが得意気になることじゃありません!」
コツッ
莉嘉「あ痛~っ!」
晶葉「…話はまとまったのか?」
かな子「私の方は…。美波さん…?」
美波「……はぁ。かな子ちゃんの言うことも、一理ありそうかも」
莉嘉「それじゃあ…!」 パァッ
美波「これ以上話してる時間も惜しいし。とにかく、今は莉嘉ちゃんを信じるわ!」
莉嘉「やりぃ~☆」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ
莉嘉「とぉ…ととっ!」
かな子「莉嘉ちゃん、危ない!」
晶葉「早くしろ!外の鬼獣が動き出したらしい」
美波「鬼獣が…!?」
莉嘉「って言うか、出撃するにしてもどうやって?カタパルト根っこまみれで、発進なんて出来ないよ!」
晶葉「それなら心配するな。…秘策がある」
莉嘉「秘策?」
──そして、
莉嘉「──…で、出撃の準備を整えてマシンに乗ったのはいいけど…」
莉嘉「どういう状況なのこれぇー!?」
プラーン
機首を床面に向けて、縦に連なって宙吊りにされているゲットマシン。
かな子「現状、研究所の出撃口には鬼獣の根が張り巡らされていて、通常の手段では出撃出来ませんから」
莉嘉「その事情はさっき聞いたけど、だからって何で宙吊りにされなきゃいけないの?」
晶葉『これが最も適切な方法だからだ』
莉嘉「晶葉!」
晶葉『研究所全体を覆っている根だが、その分地下には隙がある。ゲッター1機が、ようやく通れるような隙間だがな』
美波「ゲッターキリクのドリルを使って、その空間を通り抜けるってことだよ、莉嘉ちゃん」
莉嘉「だからって、こんな滅茶苦茶な…!」
晶葉『ごちゃごちゃ言ってないで覚悟を決めろ。出来ること、全部出来るようになるんだろ?』
莉嘉「…っ!よぉ~し、来るなら来い!」
晶葉『そう、その覚悟だ。今、物資搬入用のエレベーターを下に下げる。それで幾分でも距離が稼げる筈だ』
美波「……」
かな子「……」
莉嘉「……」
晶葉『失敗すれば揃って地獄行きだ。とちるなよ?』
莉嘉「今集中してるんだから、余計なこと言わないで…」
かな子「大丈夫ですよ」
莉嘉「えっ?」
かな子「莉嘉ちゃんの命を、私に預けて下さい。そうすれば、きっと上手くいきますから!」
莉嘉「命を、預ける…。仲間を、信じて…」
かな子「はいっ。そうやって預け合って、信じ合って来たんです!卯月ちゃんも、李衣菜ちゃんも!」
莉嘉「かな子……うんっ、分かった!アタシの命、かな子に預ける☆」
古田「アンカーを放すっスよ!」
美波「……!」
古田「………えいっ!」
ゲットマシンを固定していたアンカーが切り離される。
莉嘉「やぁあああっ!!」
僅かしか余裕の無い間隔。瞬く間にアーク号とカーン号はドッキング。
かな子「行けぇぇぇっ!!」
躊躇うこと無くカーン号を加速させ、キリク号の後部に向かう。
美波「チェンジゲッターキリクッ!!」
本当にドッキングが完了したのか、していないのか、刹那のタイミングでの叫び。
重質量物が地面に激突する音が響くのは、ほぼ同時だった。
土が煙幕となって巻き上がり、格納庫全体を黄土色で覆う。
古田「ケホッ…ケホッ…!う、上手く行ったっスかぁ?」
晶葉「あぁ、見ろ」
古田「…っ!この大穴は──!」
──。
植物鬼獣「……」
濃灰色で、歪で巨大な樹木。
そんな異様な姿をした植物鬼獣は、爆弾の付いた自身の根で覆い尽くした新早乙女研究所に極低速だが近付きつつあった。
植物鬼獣「……」
彼の使命は至ってシンプル。全てのゲッターの拠点である早乙女研究所を破壊すること。その方法もシンプルそのものであった。
些細な衝撃で爆発する自身の根。
その根で研究所を覆い、後は自分自身が飛び込むだけ。
巨大な質量を持つ自分が倒れれば、その衝撃で根は連鎖的に爆発し、早乙女研究所は跡形も残さず消え去るだろう。
例え自分の命と引き換えになっても。
この宇宙から、ゲッターの起源を絶つことが出来る。
その為に彼は生み出されたのだ。だから彼の行動に迷いはない。
植物鬼獣「……?」
植物鬼獣の脚。大地に深く張り巡らされた移動用の根が、ささやかな振動を捉える。
──…ィィインッ
同時に響く金属音。これは──、
ズ ワ ォ
ゲッターキリクだ。
植物鬼獣「!!」
直ぐ様応戦。地中から根の先端を突き出し、巨大な針の様に尖らせてゲッターキリクを狙う。
美波「オープンゲット!!」
分離。ゲットマシンは3方向に分かれて根の攻撃を躱す。そして、
莉嘉「チェーンジゲッター!アークッ!!」
赤いゲッターロボ、ゲッターアークが姿を現す。
莉嘉「よくもアタシ達を苦しめてくれたよね!そのお礼、倍にして返してあげるから!」
美波「ちょっと待って!」
莉嘉「…っとと!」
前に向けて、勢いを付けようとしていたゲッターアークが、つんのめるようにして動きを止める。
莉嘉「もう~、何さ?」
美波「先ずは研究所を覆っている根を、奴から切り離さなくちゃ!」
莉嘉「根を?」
かな子「そうですね。あの鬼獣を倒した瞬間に、衝撃で爆発するかもしれませんし、鬼獣が盾として使ってくるかも知れません」
莉嘉「…先ずは人質救助からってこと…」
植物鬼獣「オォォォッ!!」
莉嘉「うわぁあっ!?」
再び放たれた根による攻撃を掻い潜り、何とか攻撃を躱す。
莉嘉「こんなんじゃ何処の根を切り離せばいいか分かんないよぉ!」
美波「今から私が分析するから。何とか時間を稼いで!」
莉嘉「時間を稼ぐって…。それに、ちょっとの衝撃で爆発しちゃうんじゃ、攻撃した衝撃でも爆発しちゃうんじゃない?」
かな子「爆弾を傷付けず衝撃を与えず、本体から切り離せる場所が何処かにある筈です」
莉嘉「そんなの本当にあるの……わわっ!」
鞭や槍の様に繰り出される無数の根を往なしていく。
莉嘉「くっ…!」
かな子「莉嘉ちゃん、前!」
莉嘉「えっ…」
後ろから追ってくる根ばかりに気を取られていた、ゲッターアークの眼前に巨大な樹木の柱が立ち、勢いのまま激突。
美波「ぅあ…!?」
莉嘉「きゃあっ!」
かな子「だ、大丈夫ですか…?」
莉嘉「クッソ~…!鼻がペッタンコになったらどうするの!……っ!?」
怯んだゲッターアークの右脚を、這いよった根の1つが絡め取る。
莉嘉「まっず…!?」
一度上に持ち上げられ、勢いよく地面に叩き付けられる。
莉嘉「ぐ……うぅ…!」
植物鬼獣「死ネェェェ!!」
莉嘉「い゛っ…!?ゲッタービーム!!」
倒れ伏したゲッターアークに殺到する無数の根を、頭部からの細いゲッタービームで薙ぎ払う。
美波「……! そっか…」
かな子「っ! ダメですよ、莉嘉ちゃん!迂闊に攻撃しちゃ…!」
莉嘉「そんなこと言われたって、こっちが倒れたら元も子もないでしょ!」
かな子「それはそうですけど…!」
莉嘉「…えいっ!」
未だに脚を拘束していた根も、ゲッターアークの爪先で切り払い、再度上昇する。
美波「2人共、研究所に繋がる根の位置が分かったわ」
かな子「ホントですか!?」
莉嘉「以外と早かったじゃん!」
美波「それに関しては、莉嘉ちゃんのお陰かも」
莉嘉「ホント!?……っと!」
尚も植物鬼獣の攻撃は続く。
莉嘉「な、何でもいいや!それで、その根の位置は…!」
美波「あの鬼獣の後ろだよ」
莉嘉「鬼獣の、後ろぉ!?」
かな子「そう言えば、鬼獣はさっきから、こっちに背中を見せようとしませんね…」
美波「相手にとっても、爆破を完璧に成功させたいんじゃないかな」
かな子「だから離れた安全なところからじゃなく、自分の手で起爆を…?」
美波「多分だけど…。でも、追い詰められればどう言う行動に出るか分からないから、先に切断しておくに越したことはないと思う」
莉嘉「それで、ゲッターで切れそうな所は…?」
美波「相手の真後ろ、根本の部分の数メートルは、爆弾らしい球体は見当たらない」
莉嘉「相手の真後ろ…。その距離まで近付いて、切り離さなきゃならないってこと?」
美波「うん。それは、私のゲッターキリクでも、ゲッターカーンで力任せに引き千切ることも出来ない。トマホークみたいに勢いよく叩き切るんじゃなく、一瞬で断ち切らないと…!」
かな子「そんなこと出来る、アークの武装は…」
莉嘉「…バトルショットカッターだけ?……あうっ!」
追ってきた根の鞭が、ゲッターアークの肩を掠る。
莉嘉「そもそも、こんな攻撃の中を掻い潜るなんて無理じゃない?!」
かな子「方法ならありますよ!」
莉嘉「方法…?」
かな子「オープンゲットです。ゲットマシンの大きさと速度なら、この攻撃を躱して相手の背後を取ることも出来る筈です」
莉嘉「分離してから、鬼獣の真後ろでの高速合体するの?」
美波「けど、戦闘中の分離と合体は、まだ経験が…。ぶっつけ本番でやるなんて!」
かな子「出来ますよ!私達は、チームですから!」
美波「……」
莉嘉「…アタシ達が今ここで考えたって、他に方法は思い浮かばないんだ。なら、やろうよ!!」
美波「…分かった!」
植物鬼獣「アァァァッ!!」
莉嘉「…っ!」
根の鞭打を躱して一度高度を取り、体勢を整える。
植物鬼獣「チョコマカトォォォッ!!」
莉嘉「オープーンゲット!」
迫る根の突きに合わせ、ゲッターを分離させた。
植物鬼獣「!?」
真っ直ぐ延びた根に沿う様に飛び、アーク号は上段、植物鬼獣の頭上を飛び越す位置を飛行。キリク号は中段を、植物鬼獣の中腹から背後へ回り込む位置を取り、カーン号は地面すれすれを飛び、機首を上げることで背後に回すと同時にキリク号の後部を捉える。
莉嘉「チェンジゲッター!アァァァック!!」
合体シーケンス。その間に植物鬼獣が振り向こうとする。
莉嘉「バトルショットカッター!」
ジャキンッ ズ ワ ァ ッ
莉嘉「──!!」
植物鬼獣「……!?」
植物鬼獣が振り返りきる寸前で、ゲッターアークの腕のカッターが背後の太い根を切り断った。
莉嘉「……」
美波「…どう、なったの…!?」
かな子「……見て下さい!研究所を覆った根が!」
莉嘉「枯れていく…」
美波「成功…?やった…」
植物鬼獣「オォォノォォレェェッ!!」
植物鬼獣の、怒りの咆哮が木霊する。
──。
美嘉「うぅ……ん…。あっ…!」
美嘉を挟み込んでいた鬼獣の根が、痩せ細って枯れていく。
美嘉「これって……まさか!」 ダッ
走り、外を一望できる展望台を目指す。
美嘉「はっ──!」
たどり着いたその先、視線を上げた向こうでは、
植物鬼獣「ゴォオオオッ!!」
莉嘉「くっ…!」
ゲッターアークが戦っていた。
美嘉「莉嘉ぁ!!」
莉嘉「……!?お姉ちゃん…っ!」
かな子「えっ?」
莉嘉「お姉ちゃんの声が聞こえた…」
かな子「美嘉さんの声…?そんなの…」
美波「通信も入ってないし、気のせいじゃない?」
莉嘉「うぅん。絶対聞こえた」
かな子「そんなこと言っても…」
莉嘉「お姉ちゃんが見てるんだ。尚更負けられないっ!」 グンッ
ゲッターアークが勢いを付けて、植物鬼獣に肉薄。
莉嘉「とりゃー!」
左手の爪を立たせ、植物鬼獣の中腹を切り断つ。が、
植物鬼獣「無駄ァアア…!無駄ァ!!」
瞬時に傷付いた箇所を修復する植物鬼獣。
莉嘉「なにそれズルい!」
かな子「もしかしたら、鬼獣が張り巡らせている根、そこから大地のエネルギーを吸って再生力に変えてるのかも」
美波「それはあり得るかも。だとしたら…」
莉嘉「鬼獣にこの辺りを不毛の大地にされるわけにはいかないよ!かな子!」
かな子「はいっ!」
莉嘉「力仕事、任せちゃっていい?」
かな子「勿論ですよ♪」
莉嘉「それじゃあ…!」
植物鬼獣「クタバレゲッタァアアアッ!!」
莉嘉「オープーン、ゲット!!」
かな子「チェーンジゲッターカーン!!」
植物鬼獣の攻撃に合わせゲッターを分離。
美嘉「!」
瞬時にゲッターカーンに合体し、植物鬼獣にのし掛かり、怯ませる。
かな子「さぁ、周りの植物に迷惑な雑草さんは、間引きですよ!」
ゲッターカーンの両腕で、植物鬼獣の両脇から力強くホールドし、
かな子「ふん……ぬぅ~~~っ!」
力任せに、引っこ抜く。
植物鬼獣「ヤメロ……ヤメロォオオオッ!!」
植物鬼獣の抵抗。無数の根の鞭でゲッターカーンを殴打する。が、
かな子「ん~~~~~っ!!」
ゲッターカーンは怯まない。
かな子「これでどうです!?」
更に両肩のホイールを回転させ、襲い来る鞭を迎撃。植物鬼獣の反撃を許さない。
かな子「ンのぉ~~~ッ!!」
そして、
かな子「えぇ~~~いっ!」
メリメリ、ブチブチと植物鬼獣の根を大地から引き剥がして、そのままの勢いで放り投げる。
かな子「やりましたぁ!!」
莉嘉「ナイスかな子!後はアタシが…!」
かな子「お願いします!」
莉嘉「地面に落下する前に決めてやるッ!!」
かな子「オープンゲット!!」
ゲッターカーンの分離。そしてゲットマシンは天高く舞い上がり、
莉嘉「チェェェーンジ!ゲッタァアアーーッ!!アァァーーーック!!!」
天空の支配者が降臨する。
美嘉「あれが、莉嘉…!」
片側三枚、計6枚の剣のような翼を広げ、植物鬼獣に迫る。
植物鬼獣「オォォォォオッ!!」
莉嘉「ゲッタァァアーッ!トマホゥーック!!」
触手のように根を伸ばして放たれる植物鬼獣の迎撃を、抜き放ったトマホークで叩き切り、
莉嘉「りゃあッ!!」
植物鬼獣に直蹴りを浴びせ、相手を更に空高く跳ね上げる。
莉嘉「うぅ~っりゃ!」
トマホークブーメラン。トマホークを投じ、植物鬼獣を軽く弾き飛ばす。
莉嘉「ゲッタートマホーク!!」
もう1本のトマホークを抜き、再度植物鬼獣へ向かう。
莉嘉「やぁ~っ!」
植物鬼獣「ソウ簡単ニハ…!」
莉嘉「っ…!」
襲い来る根や枝先の攻撃を軽く往なし、切り払いながら肉薄。
莉嘉「とりゃーっ!」
上部の太い枝を一刀のもと切断。同時に、戻ってきたもう1本のトマホークを掴み取る。
莉嘉「これ、スンゴいんだよ☆」
言いながら、両手に掴んだトマホークの柄同士を繋ぎ合わせる。
莉嘉「ツイントマホーク、ランサァァーーッ!!」
柄の両端に刃がある、ツインランサー状に形成したツイントマホークランサーをブンブンと振り回す。
莉嘉「行くよ──ッ!!」
ゲッターアークを突撃。振り掛かる根の攻撃に対して、回転させたツイントマホークランサーを盾代わりとして突き出すことで、今度は避けもせず掠らせもせず、一直線に植物鬼獣を目指す。
莉嘉「たぁーーーっ!!…えいっ!」
すれ違いざま、一瞬の轟撃。その内に両サイドのトマホークの刃を交互に振り下ろし、その途中でトマホークを分離させたダブルトマホークで、瞬く間に植物鬼獣を切り刻んだ。
莉嘉「必殺、二天一流……なんちゃって☆」
莉嘉「どう?今のカッコ良かった?」
美波「…余裕たっぷりね…」 ハハ…
かな子「あはは…」
莉嘉「…と、危ない!」
ギュンッ
力を失って落下する植物鬼獣の先回りをして、ゲッターアークが迎え撃つ様に地上へ降りる。
莉嘉「お姉ちゃんも研究所の人達も危ない目に遭わせたんだもん。塵1つ残させてなんてあげないんだからぁ!」 グッ
莉嘉「美波、かな子も一緒に!」
美波「…えぇ!」
かな子「はいっ!」
莉嘉「やるよ、ゲッタァーーーッ──!!」
美波「っ!」 グッ
かな子「!!」 ガシュッ
3人「「「ビィィーーームッ!!」」」
ド ワ ッ
植物鬼獣「──っ……!!?」
放たれた三位一体のゲッタービーム。植物鬼獣の全体をも容易く呑み込むそれは、天を貫いて真っ直ぐに伸び、先ほどの言葉通り、鬼獣をその形跡も残さずこの世界から消し去ったのだった。
──。
通信士「目標の消滅を確認」
晶葉「他に鬼獣の気配は?」
通信士「今のところ特には。もし残っているとすれば、今こそが絶好の機会だと思いますが?」
晶葉「それもそうだな。アークの最後のゲッタービーム、出力値は計測出来ているか?」
通信士「はい。エネルギー出力123%。彼女達の中では最高記録ですよ」
晶葉「何とか、チームとして形になったと言う所か…」
通信士「晶葉さん?」
晶葉「直ぐに呼び戻して、所員総出で鬼獣の残骸掃除だ。人でも必要になる、飛焔チームにも召集を掛けておいてくれ」
通信士「了解です」
晶葉「……ふぅ」
所員「池袋さん!」
晶葉「むっ、どうした?」
所員「はい、研究所代表代行の、池袋さん宛に連絡が…」
晶葉「私に?政府の連中からじゃないだろうな?」
所員「そ、それなんですが、連絡してきた相手は…」
……。
晶葉「何?それは本当か?」
所員「はい、先方は出来るだけ早い返答をと、言ってきています」
晶葉「やれやれ。一体何をさせられるんだか…」
晶葉「本当に大変なのは、これからかもしれんな…」
つづく
次回
新早乙女研究所に舞い込む彼方からの便り。
それを受けた晶葉は、莉嘉達アークチームを単身、海へと向かわせた。
突然の出撃に、三者三様の思いを覗かせる三人。
彼女達が向かうのは、太陽の光をも届かぬ深海層。果たして、そこで待ち受けるものとは何か?深海での出逢い、そしてこの出撃が莉嘉達にとって長い戦いの──、
次回、『旅の始まり』