ゲッターロボサーガ デレマス版   作:E.T.c

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第9話『響く歌声』

~~~ 深海 ~~~

 

 

美波「ドリル……アターック!!」

コモド「ぐっ…!」

 

ゲッターキリクのドリルアームが、深海用に改造されたメカザウルス・ゼンⅡを弾いて吹き飛ばす。

 

ハ虫兵「コモド様!」

コモド「チィ…!よもや、穏健派が人間共と手を結ぶとは…!」

ハ虫兵「い、如何なさいますか?」

コモド「……。この事は、グール様に報告せねばならん。一時退くぞ!」

ハ虫兵「はっ!!」

莉嘉「あぁ待って、逃げるなぁ!」

 

ゼンⅡを中心とするメカザウルスの部隊が、引き上げていく。

 

ドロス「追う必要はないぞ、莉嘉ちゃん」

莉嘉「でも…」

ドロス「”穏健派”として、我々の戦いは専守防衛。打って出るのは、出陣式を終えてからだ」

莉嘉「う~~……!」

かな子「追い返しただけでも立派だよ。…それより」

鉄甲鬼「…あぁ」

 

ゲッターキリクにダイノゲッター1、そしてメカザウルス・ゲド。その場にいた全ての者達の視線が、深海を漂う一隻の小型潜水艇に集まる。

 

潜水艇パイロット『──…我々に交戦の意思はありません!ここが、カムイ殿下が率いる穏健派のマシーンランドだと聞いて、決死の思いで急進派のマシーンランドを同志達と抜け出してきたのです!どうか我々にも、殿下のお慈悲を!』

 

ニオン「…亡命者か」

鉄甲鬼「妙だとは思わないか?…タイミングが不自然すぎる」

ドロス「我らがマシーンランド内の情報が、急進派にも漏れていると思うか?」

鉄甲鬼「マシーンランド1つとは言え、小さな規模の話ではない。どこかに急進派と通ずるパイプがあっても可笑しくはない」

莉嘉「けど、急進派って体制も悪いんでしょ?逃げてきたって言うのは、ホントだと思うけどなぁ…」

ニオン「あの潜水艇の乗員全てが、本当に急進派の体制に嫌気が差して出て来たのならば、な」

かな子「スパイが紛れ込んでるって言うんですか?」

鉄甲鬼「若しくは、殿下の命を狙っている手合いが、だな。出陣式も近い。もし急進派が殿下の暗殺を狙っているとすれば、これほどの好機は他に無い」

美波「だから、この亡命が妙なタイミング?」

ニオン「あぁ、出陣式でカムイ王が出てくるタイミングを、狙っているとしか思えん」

ドロス「…とは言えな、平和を求めて、命からがら逃げ出し手来た者達を、穏健派として見捨てるわけにはいかん。兎にも角にも、マシーンランドまで誘導してやらねば」

莉嘉「それなら、アタシ達が先導するよ!人間の存在を見たら、何か反応があるかもだし」

ドロス「潜入者として選ばれたのならば、分かりやすい反応を示したりはせんと思うがの~」

莉嘉「まぁまぁ。美波、キリクを潜水艇に近付けて☆」

美波「えぇ、分かった」

 

ギュンッ、と海中でも特に抵抗の無い動きで、ゲッターキリクが潜水艇に近付いていく。

 

かな子「ハン博士が施してくれた深海用の調整、調子はいいみたいですね」

美波「うん。これなら、かな子ちゃんだけに負担を掛けずに戦えるよ」

莉嘉「潜水艇のパイロットさん、聞こえる?マシーンランドまでアタシ達が誘導するから、付いて来て!」

潜水艇パイロット『おぉ…!我々を受け入れて下さるのですか!有り難う御座います!』

美波「出陣式も近いので、直ぐに自由、と言うわけには行きませんけど…。監視も付きます。そう言うのは、分かりますよね?」

潜水艇パイロット『えぇ、勿論。穏やかな暮らしを得る為に、身の潔白を証明しようと言うのなら、我々としても望むところです!』

美波「……。では、付いて来て下さい」

潜水艇パイロット『了解です。よろしくお願いします』

莉嘉「…何か、普通に逃げてきただけの人っぽいよね」

かな子「う~ん……どうなんでしょう?私達だけじゃ、やっぱり判断出来ないですよ」

潜水艇パイロット『あの……助けていただいて、このようなことを尋ねるのも不躾かとも思うのですが…』

莉嘉「何~?」

潜水艇パイロット『貴女方、もしや恐竜帝国に協力していると言う人間…?そしてそのマシンが風に聞く、ゲッターロボでは…』

美波「…私達の事は、穏健派の人達だって全員が知りませんよ?どうしてそう思うんですか?」

潜水艇パイロット『それは……恐竜帝国において、女性の戦闘兵など、聞いたことがないからです。3人乗りのマシンと言うのも…』

かな子「…恐竜帝国は旧体制って、ドロスさん達も言ってましたよね。やっぱり戦闘も、男の人がするもの、ってイメージなのかな」

美波「急進派の中では、人間側の協力者の話は有名なんですか?」

潜水艇パイロット『え?えぇ……あくまで、噂レベルでしたが…』

美波「…そうですか」

 

「………」

 

──。

 

~~~ マシーンランド内 会議室 ~~~

 

莉嘉「で、亡命してきた人達は、他の兵士達に丸投げしちゃったけど、ホントに良かったの?」

ドロス「あぁ。急進派からの亡命と言うのも、一度や二度の話ではない。ちゃんとそう言った者達を受け入れる為の、然るべき機関が存在している」

かな子「そうなんですか?…それだけ、急進派の体制が良くないってこと、何ですかね…?」

ドロス「政治の主体が軍であることは間違いない。しかしそれよりも、戦うことが嫌になった、と言う側面の方が強い気はする。これまで亡命してきた者達の話を、聞く限りな」

莉嘉「ふぅん…。戦いたくなくて穏健派まで逃げ延びてきたのに、その穏健派が急進派に対して攻勢に出るなんて聞いたら、さっきの人達もショックを受けるのかな?」

かな子「でも、仕方ないとも思ってるかもしれませんよ。急進派の人達が、穏健派の人達を目の上のたんこぶにしてるのは、周知でしょうし」

ゾル「亡命者が気になるのは分かるが、こっちの事も気にかけてもらって言いかな」

美波「今は出陣式の打ち合わせの時間だよ。こっちにも集中しなきゃ」

莉嘉「あっ、うん」

かな子「ご、ごめんなさい…!」

ゾル「それじゃあ先ず、今回出陣式を行う会場の見取り図を見てもらおうか」

かな子「…結構広いんですね。武道館くらいありそう」

ゾル「ぶどうかん?そっちの尺度は分からんが、マシーンランド内で祭事が行われる際に使用される式場だ。10000人程度は収容できる」

美波「……? マシーンランド内の全員が見る、って前に言ってましたよね?ここに全員、入るんですか?」

ゾル「まさか。入場を許されているのは、一部の有力者や、所謂上流階級と呼ばれる民達だけさ」

ドロス「テレビ中継はされるから、入場出来ない者はそっちで観覧することになる」

かな子「成る程……でもそれで、殿下の言葉が全員に届くんですか?」

ニオン「殿下が民に向けて言葉を発する、これは重要行事だ。王の言葉に限っては、スピーカーなどを通してマシーンランド全体に流される。聞き逃したとあっては、場合によっては重罪も免れない。聞き逃すものなど、居はしない」

かな子「…何と言うか、厳しいんですね」

ドロス「人間との和平も考え、このマシーンランド内でも、随分体制の改革は行われてはおるが、まだまだ古い慣習は抜けん。王政がそうであるように、お主達から見れば、少々異様な光景に見えるかもしれんが」

ゾル「話を戻すぞ。殿下からのお言葉は全部で2度。1度目は観衆や民達に向けた挨拶だ。ここで、このマシーンランドが戦争状態に突入する事、その意味と意義について、王から民へお話になられる」

美波「民の不満感情を高めないために、これからの戦いが正当なものであると、お話になられるんですね?」

ゾル「そうだ。そして2度目は、君達兵士に向けて、士気を高める檄をお掛けになる。が、2度目の王の言葉の前に、君達にはそうだな、所信表明のようなモノをしてもらう」

かな子「所信表明、ですか?」

ドロス「要するに、簡単な自己紹介だ。ここにいる者は、地上の人間をまともに見たことなど無いのだからな」

ゾル「自分達が穏健派の協力者なのだと、簡単にアピールしてくれればいい。そう気負う必要はないさ」

かな子「そ、そう言われても、多人数の前で挨拶するんですよね?私、そう言うのには慣れてないって言うか…」

美波「大丈夫だよ。ライヴする感じでやれば、何とかなるって」

かな子「そ、そうかなぁ…」

ゾル「お前達にも挨拶はしてもらうぞ。さっきから他人事みたいな顔をしているが…」

バイス「……」

ガンリュ-「……」

ゴズロ「……」

ゾル「何せ、我らが穏健派の、最新鋭機のパイロットだからな。しっかりやれよ?」

バイス「…心得てますよ」

莉嘉「……」

ドロス「どうかしたかい、莉嘉ちゃん?さっきから難しい顔してるが…」

莉嘉「何かさ~、詰まんなくない?」

ドロス「はぁ…?」

ゾル「詰まん、ない…?」

莉嘉「だってさ~?聞いてれば、王様の言葉とか士気を高める、理解してもらうーとか、そんなんばっかりでさ。折角の式典なんだし、もっとパァーっと、パレードみたいに派手な感じでやってもいいと思うんだけどなぁ~」

ゾル「派手な感じ…」

ニオン「フッ、貴様らしいことを言う」

美波「ダメよ、莉嘉ちゃん。マシーンランドが戦闘状態に入るのは、真剣なことなんだから。それを茶化すような真似をしちゃ…」

莉嘉「え~!でも…」

ゾル「そうだな。それに、申し訳ないが、我々には君の言う感覚はよく分からない」

莉嘉「へ?」

ドロス「うむ。結局のところ、我らはハ虫人類。戦うことに特化してきた一族だ。それは、かつて恐竜帝国と刃を交わしたことのある、君達にも分かるだろう?」

美波「……」

ドロス「メカザウルス、そして要塞マシーンランド…。戦うための技術に特化してきた分、それ以外のモノについては疎いのだ。だから、莉嘉ちゃんの言う派手、と言う概念についてもミサイルや弾丸を盛大に撃ち合うことしか想像が着かん」

ニオン「……」

ゾル「地上にいた君達には、我々の式典は地味に見えるかもしれない。けど、我々にすれば、これでも十分に華やかなんだ。意図を汲みきれず、すまないと思うが…」

莉嘉「……」

 

── 打ち合わせ終了後、アークチームの部屋。

 

莉嘉「むぅ~~~っ…!」

かな子「莉嘉ちゃん、機嫌直して」

莉嘉「だって…!」

美波「郷に入っては郷に従え、だよ。ここの人達も、ご馳走で歓迎してくれたじゃない」

莉嘉「ご馳走って……あの深海魚料理?」

美波「住む空間も手に入れられるものも限られてる、ここの人にとっては、充分ご馳走だよ」

莉嘉「…美波、一番がっついて食べてたもんね」

美波「が、がっついてなんて……ただ、深海魚は貴重で、市場でも出回ることがほとんどないから、ちょっと興奮しちゃっただけで…!」

莉嘉「でもさ、アタシ達、このままでいいのかな?」

美波「え?」

莉嘉「マシーンランドで、穏健派の人達のお世話になって、戦うだけで、ホントにそれでいいのかな?」

かな子「それは…」

莉嘉「恐竜帝国の人達は戦うことしか知らないって言ってたけど、アタシ達はもっとたくさんの事を、教えて上げられるかもしれないでしょ?」

莉嘉「ここに来て戦うだけじゃ、結局穏健派の人達にも、人間は自分達と同じように、戦うことしか知らない種族だって、思われちゃうかもしれないよ」

莉嘉「ちゃんと、戦う以外に、楽しいことは一杯ありますって、本当に人間と和平が結べたら、こんなことが出来るようになりますって、教えてもいいんじゃないかな?異種族交流ってそう言うことじゃない!?」

美波「…莉嘉ちゃん。もしかして、ライヴ、するつもり?」

莉嘉「ライヴ…!いいじゃんそれ!ライヴしようよ!新曲とかは無理でも、持ち歌なら2人も出来るでしょ?」

かな子「けど、やるっていっても音源は?音響設備もそうだし、今から振り付けの確認なんかして、間に合うかどうか…」

莉嘉「う~~~ん…」

美波「そうね。分からないことは、分かる人に聞けばいいんじゃない?」

かな子「美波さん!?」

美波「私も、莉嘉ちゃんの意見に賛成かな。私達は、お互いの事を理解してない。だったら、私達の事をちょっとでも分かってもらえるように、出来る努力はすべきだって思うの」

かな子「美波さんの言うとおりかもしれませんけど…」

莉嘉「それで美波、分かる人ってPくんのことだよね?けど、マシーンランドじゃ、スマホも電波届かないよ?」

美波「ふふっ、ここで一番、そう言うのが詳しい人に、助けてもらいましょ?」

莉嘉・かな子「「詳しい人?」」

 

~~~ ハン博士の部屋 ~~~

 

ハン「何?外と連絡が取りたいじゃと?」

莉嘉「そう!ハン博士の部屋って、私室なのに研究所みたい色々設備があるでしょ?それで何とか出来ない?」

ハン「ふ~む…。出来んこともないがの、個人の設備なぞたかが知れとる。誰とでも簡単に連絡が取れると言うわけではないぞ」

莉嘉「そっか。それじゃあ、Pくんに連絡するのは…」

ハン「ぴーくんと言うのが誰かは分からんが、人間の個人連絡用の端末、それにアクセスするためのネットワークに接続するのは、容易ではないわい」

莉嘉「むぅ~…」

美波「それじゃあ、一旦早乙女研究所を経由して、晶葉ちゃんに仲介を頼んでもらったら?」

かな子「あ、確かに。メカザウルス・ゲドやゲッターザウルスは早乙女研究所の技術協力を得て作った、って言ってましたね」

ハン「うむ。早乙女研究所となら、何時でも連絡可能じゃ」

莉嘉「よし、じゃあそれで決まり!早く研究所に連絡とって!ほ~ら、大使様の命令だぞ、は~や~く~!」

ハン「お、おうおう、分かった分かった!分かったからそうせっつくでない…。今接続しとるところじゃ──」

 

数分後──。

 

晶葉『──成る程な。仔細は理解した。が、思いの外面白いことを考えるな、お前達も』

莉嘉「面白いとか、そんな風に考えてた訳じゃないよ。本当のアタシ達を、ここの人にも見てもらいたいって!」

晶葉『本当の莉嘉達、か』

かな子「これからの戦いに向けての決意とか、所信表明とかそう言うのって、慣れてなくて気の利いたことは言えないと思うんです。だけど、ライヴって言う形だったら、自分を表現出来るかなって」

美波「何て言うか、場違いになるかもしれないけど、私達の文化の少しだけでも、ここの人達に知ってもらうのは、悪いことじゃない筈だよ」

晶葉『確かにな。助手には私から連絡しておく。この映像通信で、私のスマホ越しに会話するより、直接顔を会わせて話し合った方がよりスムーズだろう』

美波「お願いできる?」

晶葉『あぁ。助手には研究所に来てもらえるよう説得するさ。人類とハ虫人類の友好が掛かっているかもしれないんだ。しっかり、成し遂げてなくてはな』

莉嘉「うんっ!」

晶葉『私のところでも、分かる機材などはリストアップしておく。莉嘉達は衣装の調達なども考えてみてくれ』

莉嘉「衣装?」

かな子「あ……パイロットスーツでライヴをするのは、華に欠けますね」

莉嘉「じゃあ、マシーンランドで仕立て屋を探さなくっちゃ!時間もないけど、協力してくれるかなぁ」

晶葉『夜にまた連絡しよう。莉嘉達はマシーンランドで出来ることを頼む』

莉嘉「了解~☆それじゃ、また数時間後」

晶葉『あぁ、では──』 プツンッ

 

莉嘉「よしっ、やるぞぉ~☆」

かな子「けど、衣装を手に入れたとして、着替えはどうします?式典に参加してる間は、そんな時間ありませんよ?」

莉嘉「それなら、アタシに良い考えがあるよ!」

かな子「良い考え、ですか?」

ハン「ちょ、ちょっと待ってくれい!」

莉嘉「うん?どうかしたの、ハン博士」

美波「あ、通信機を貸して下さって、有り難う御座います!」

莉嘉「またしばらく借りることになると思うから、よろしくね☆」

ハン「むぅ?お、おぅ……ではなく!」

莉嘉「?」

ハン「今の話し、出陣式でらいぶとやらをすると言うことじゃが、それは式の予定に入っておるのか?」

莉嘉「うんっ!これがアタシ達の所信表明だって!」

ハン「所信表明、じゃと…?」

莉嘉「ハン博士にも色々手伝ってもらうから、よろしくね」

ハン「何ぃ?!」

美波「ライヴで使う音響設備とか必要な機器は、ここじゃ多分、手に入らないと思うんです。舞台装置なんかも。ですから、機材の製作の方をハン博士に手伝って頂ければ…」

ハン「わ、ワシにはゲッターザウルスの調整と言う仕事があるのじゃぞ?」

莉嘉「あっ、そうだ!殿下の演説で使うって言ってたスピーカーライヴに応用できないかな?」

かな子「それが出来れば、このマシーンランド全体にいる人達に、私達の歌を聴かせることが出来ますね!」

ハン「待て待て待て待てっ!!殿下が使用なさるものは、出陣式のために、特別に用意されたものじゃぞ!?それを勝手に使うとなれば、最悪、罪に問われる可能性も…!」

莉嘉「下手をすればってことは、やってみなくちゃ分からないってことだよね?」

ハン「屁理屈を言うでない!」

かな子「…お願い、出来ませんか?」

ハン「そ、それもワシがやるのか…?」

莉嘉「ハン博士なら、ゲッターザウルス開発の功績で、罪問われてもチャラでしょ?」

ハン「むぅ!?」

美波「私達も、決して遊び半分で言ってるんじゃないんです。今日の式典の打ち合わせで、恐竜帝国の人達が、戦い以外の嗜好をあまり知らないって聞いて、私達の知っていること、少しでも知ってもらえたらなって」

ハン「ぬぅ…!」

かな子「ハン博士には、危ない橋を渡らせちゃうかもしれません。けど、人間とハ虫人の未来のために、協力してくれませんか?」

ハン「せ、せめて王や、式の運営に携わる者達に、許可を取ってからでは如何のか?」

莉嘉「もうのんびりやってる時間はないんだよ!アタシの思い付きで、ギリギリになっちゃったのは、ごめんなさい…。だけど、ハン博士達が式を無事に成功させたいって思ってるように、アタシも最高の式を作りたいの!」

ハン「最高の、式…?」

莉嘉「マシーンランドに住む人達に、ちゃんと分かってもらいたいんだ!城ヶ崎莉嘉って人間の事を。誤解のない、ちゃんとした形で。次いでに、アタシ達の歌も気に入ってもらえてくれたら、もっといい☆」

ハン「…気に入るかどうかは、ここの反応しだいじゃろ?」

莉嘉「だからいいんじゃん!分からないから逃げる、くらいなら、上手く行くって信じて試してみてもいいでしょ?」

ハン「むぅ…っ。はぁ…」

 

ハン「今回ばかり、じゃぞ」

 

莉嘉「…っ!ホント…!」

ハン「あぁ、ワシの負けじゃよ」

莉嘉「っ~~~ぃやったぁああ!!」

美波「よろしくお願いします!」

かな子「よろしくお願いします!!」

ハン「出来る限りは、手を貸してやるわい。それと、さっき言っておった仕立て屋、そっちの方も、こちらで手配しておこう」

莉嘉「ホントに!?」

ハン「あぁ。お主らがマシーンランドを駆け回って探すよりも手っ取り早かろう。ここの事には、ワシもそれなりに詳しいからのぅ」

莉嘉「へっへ~!スンゴイ、頼りになるじゃん、ありがと☆」

ハン「ふふふっ、莉嘉ちゃんに感心されるのは初めてじゃのぅ。よもや、この程度の事とは、思わなんだが」

莉嘉「だったら、アタシ達は、持ち歌の振り付けの確認と練習!」

美波「残された期間で、バッチリ仕上げなくちゃね」

かな子「だったら、私達の練習風景を撮影して、プロデューサーさん経由で、トレーナーさんに確認してもらうって言うのは、どうでしょう?」

莉嘉「いいじゃん!それなら、私達の目線だけじゃなくて、しっかり指導もしてもらえそうだし!う~っ、何だか俄然、やる気が出てきた!」

ハン「何かは分からぬが……そのらいぶとやら、お主達がそれほど、情熱を注げるものらしいの」

莉嘉「トーゼン!そうと決まれば、ライヴに向けて気合い、入れるよ!オー☆」

美波・かな子「「オーッ!!」」

 

こうして、マシーンランドを奔走する日々が始まった──。

 

朝早く起きて、プロデューサーとライヴの方法を確認。必要な機材をメモ、内部構造など設計図として晶葉から送ってもらい、それをハン博士に手渡した。

 

午前から午後に掛けてはパイロットとして訓練。ザウルスチームの訓練に参加し、廉どの向上に努める。急進派からの襲撃がある時は、その迎撃に当たる日も少なくはない。

 

夕食を摂った後の夜以降はライヴに向けたレッスン。振り付けの確認から、一連の流れを通して行う。そしてレッスン後はライヴ用のセットリストの作成。自身のソロ曲だけでなく、一部ユニット曲なども、今回独自の編成で行うことも決定した。

 

朝の内に早乙女研究所に訪れてくれたプロデューサーとのやり取りは、日を追う毎に減っていったが、次は式典会場の改修作業へと変わり、タイトなスケジュールが変わることはなかった。

 

そして、3人のダンスレッスンは、毎夜、夜通し続いていた──。

 

♪~~~♪~~~♪~~~

 

莉嘉「はっ、はっ、はっ──!」

美波「莉嘉ちゃん、ちょっとテンポが速くなってる!もっと曲に合わせて、歌を体で表現するように、ってトレーナーさんに言われた通り!」

莉嘉「──うんっ!」 タッ タッ

かな子「良くなってますよ!頑張って下さい、莉嘉ちゃん!」

 

♪~~~♪~~~♪~~~

 

バイス「……」

 

ゴズロ「何を見ている。バイス」

バイス「…ゴズロか。ガンリューも」

ガンリュ-「とっくに就寝時間は過ぎてるぞ。…まさかお前に、花を愛でる趣味があったとはな」

バイス「そうじゃない」

ゴズロ「だったら、何だ?」

バイス「……」

ガンリュ-「しかし、連中は何をしてるんだ?聞きなれない音楽に、手足をヒラヒラ動かして…。全く訳が分からん」

ゴズロ「だが、彼女達の目、あれは戦士の目だ」

ガンリュ-「…確かに、真剣そのものと言うのは、気配で伝わってくる」

 

莉嘉「──!」 タッ タッ タッ

 

ガンリュ-「…しかし、アークチームは今日も…」

ゴズロ「あぁ。急進派の襲撃に、迎撃に出ていた筈だ」

ガンリュ-「……。恐竜帝国同士の戦いだからと手を抜いているのか、我々の想像以上に体力が無尽蔵なのか。どちらにせよ、大したバイタリティだ」

バイス「……あの小娘は」

ガンリュ-「バイス?」

バイス「危険だ──」

 

莉嘉「はっ、はっ、はっ、はっ──!」

 

そして、出陣式当日を迎える──。

 

~~~ 入場口前 通路 ~~~

 

かな子「はぁ…!何だか緊張してきちゃった…!」

美波「大丈夫よ、落ち着いて」

かな子「ほ、ホントに上手く行くんでしょうか?その前に、私達の歌、ハ虫人の人達に気に入ってもらえなかったら…!」

莉嘉「そんなの今気にしたって仕方ないよ。やれるだけのことはやったんだ、後はそれをぶつけるだけ!」

かな子「このいしょu…じゃなくて、スーツの仕掛けも、上手く作動するかどうか…」

美波「テストは上手く行ったんだし、きっと大丈夫だよ」

莉嘉「かな子が前の日にスイーツ爆食いして、お腹が出っ張ってなきゃね~」

かな子「莉嘉ちゃ~ん!」

莉嘉「あっはは☆」

ニオン「随分と、余裕だな」

かな子「だから、私は余裕ないんですってば!」

鉄甲鬼「それほど普段通りに出来るのだ。気後れすることもあるまい」

かな子「うぅ~…」

芳乃「万事ー、塞翁が馬、と申しましてー。皆様の思い切りを存分に出せばー、事態は良き方向へとー、自然に流れて行くでしょー」

 

『それでは、入場して頂きましょう!我々が誇る、勇ましき戦士達に!!』

 

莉嘉「来た…っ!」

 

ギィ、と軋む音を立てて、目の前の重厚な扉が開く。

 

バイス「……」

ガンリュ-「……」

ゴズロ「……」

 

オォォォ……ッ

 

莉嘉「ん……?」

 

ハ虫人「……」

ハ虫人「……」

ハ虫人「……」

 

かな子「な、何だか……空気が重い、ですね」

美波「…ここは、穏健派のマシーンランドだもの。戦うための戦士、歓迎されるわけは…」

ニオン「…ふんっ」

 

司会『…各々、壮々たる面持ちで戦いに臨みます。皆様、拍手を』

 

パチパチパチパチ……

 

莉嘉「はは…っ、歓迎されてないなぁ」

 

………。

 

莉嘉「……」

美波「……」

かな子「……」

バイス「……」

ガンリュ-「……」

ゴズロ「……」

ニオン「……」

鉄甲鬼「……」

芳乃「……」

 

司会『それでは、マシーンランドの皆様に、カムイ殿下からお言葉があります!』

 

ザワ…ッ ザワ…ッ

 

莉嘉「……!」

美波(殿下の姿が…)

 

カムイ「……」

 

……………。

 

カムイ「皆の者、此度はよく集まってくれた。私のこの声を、会場の外で聞く者達にもだ」

カムイ「本当に、よく私の元に集まってくれた。戦いを忌み、嫌う……”穏健派”として。しかし今日、今宵、私は王として、ここに集ってくれた同志達に、残酷な話を告げなければならない」

カムイ「それは、我々穏健派の者達が、急進派の勢力に対して、攻勢を仕掛ける、と言うものである!」

 

ザワザワザワ…ッ

 

カムイ「このマシーンランドに住まう者達が、地上に暮らす人間達に対し、争いに頼らず平和的な手段での和解と、共生を望んでいることは重々に承知している」

カムイ「だが、我々ハ虫人と、種族の異なる人間達との和平……それを実現するには、幾多の困難をも、乗り越えなくてはならない。その事を先ずは理解していただきたい」

カムイ「急進派との戦いは、正しくその一つなのである」

カムイ「人間への劣等感と対抗意識を捨て、人間達と手を結ぼうと言う我ら穏健派に対し、急進派と呼ばれる者達は、遺恨を遺恨のままに出来ぬと、旧き怨讐に縛られたまま、地上から全ての人間を滅び去るまで戦い続けるつもりだ」

カムイ「しかし、それでは何も、解決しない。怨讐による戦いは、新たな怨讐を生む。今多くのハ虫人が人間達に向けているような怨念を、今度は我々が向けられる……そんな未来しかあり得ない」

カムイ「血で血を洗う争いは、新たな争いを生み続けるだけ…。それでは何も生まれない。我々は、本当の意味で変わらなければならない!」

カムイ「かつての恐竜帝国が撒いた種を、我々自らの手によって摘み取るのだ!そうでなくては、ハ虫人に安息の時など、永劫に訪れはしないっ!」

カムイ「…無論、苦しい道となるだろう。同じハ虫人達と戦う事になる。皆の者には新たな哀しみや苦悩を強いる事になるだろう」

カムイ「だが、分かってほしい!急進派との戦いは、互いに憎み合い、滅ぼし合う戦いでないと。争うことで全てを勝ち取ろうとする急進派に、異なる手段であっても、平和を手にする方法はあると、それを伝える為の戦いであると!」

カムイ「戦いの無為無意義を、急進派に伝えるのだ。破壊によって生まれるモノは無いと、例え祖先の異なる種族だろうと、手と手を取り合い共存する事は出来るのだと!」

カムイ「一度過去を清算し、ハ虫人同士がいがみ合うこと無く、手を取り合う為に。今一度、私に付いて来てはくれないだろうか?」

カムイ「我々ハ虫人類が、新たな未来を歩む為に。その歴史の礎となる為に──!!」

 

……………

……

…ワ

 

ワァアアアアア──ッ

 

「信じてるぜ、殿下ッ!!」

「そうだ、俺達で終わらせてやるんだ!」

「お前達も頼むぜ!必ず、”生きて”帰ってきてくれよォ!!」

 

オォォォ──ッ

 

莉嘉「スゴ…ッ!ハ虫人の人達が…!」

かな子「あんなに重々しい雰囲気だったのに…。言葉で、納得させた…?」

美波「これが王の、言葉の力…」

莉嘉「でもそんなの、私達だって負けてないよ!」

 

司会『此度の戦乱に向かう戦士達からも、お言葉を頂戴したく思います』

 

莉嘉「! 来た来た…!」

かな子「ホントに大丈夫かな…」

美波「ここまで来たら、覚悟を決めましょう」

 

司会『それでは、急進派との戦いの為、我々穏健派の元に駆け付けてくれた、戦士達の紹介です!!』

 

莉嘉(よし…!合図は、ここだ!)

 

バチッ バチッ バチッ

 

式場の明かりが、一斉に落とされる。

 

カムイ「……?」

 

司会『これは、停電ですか?』

 

ザワザワザワ…ッ

 

莉嘉「へへっ、いい感じいい感じ☆盛り上げる前に、注目してもらわないとね!」

バイス「貴様…!この停電騒ぎは貴様の差し金か!?」

莉嘉「差し金なんて言い方やめてよ!ライヴの上でスポットが当たっていいのは、アイドルだけ、何だから☆」

バイス「アイドル、だと…?!」

鉄甲鬼「…フッ」

 

~~~♪ ~~~♪ ~~~♪

 

流れ出すメロディー。

 

莉嘉「来た…!美波、かな子っ!」

美波「うんっ!」

かな子「はいっ!」

 

合図に従い、2人が左右、両側から莉嘉が着込んだパイロットスーツに”見立てた”衣装が、軽い力で引き裂け、中からステージ衣装[キラデコ☆パレード]に身を包んだ莉嘉が姿を見せる。

 

莉嘉「ライヴステージでもたまにやる、早着替えの応用…!」

バイス「貴様、その格好…」

莉嘉「これがアタシの戦闘服……うぅん。アタシが決めて、Pくんが選んでくれた!全身でアタシを表現する、アタシだけの衣装だ!!」 バッ

 

そのまま、スポットライトに照らし出された、ステージの上へと駆け出す。そして、

 

シュパッ パラララララ…

 

と、火花を散らして上がるのは、ステージから噴き上がる、花火のシャワーだ。

 

莉嘉「マシーンランドのみんな~!ハ虫人類のみんな~!!はじめまして☆アタシが莉嘉だよ~!」

莉嘉「みんな、今日はアタシ達の出陣式に来てくれて有り難う!そしてカムイ殿下も、アタシ達に声を掛けて下さって、有り難う御座います!!」

莉嘉「これは、アタシ達なりの、ほんのちょっとの挨拶の気持ちです!みんな楽しんでくれて、それで、アタシのファンになってくれたら、嬉しいな☆だから──!」

 

後ろで鳴り響いていた音楽が、より一層大きさを増す。

 

莉嘉「みんなのハートを動かして見せるから!!王よ、ハ虫人よ!アタシの歌を聴けぇ~☆」

 

莉嘉『──ずっとずっと言えないことが~♪でもでもでもでも言えな~い☆(ドンマイッ!)』

莉嘉『ねぇ、お願いっ!とどけ、この胸のリズム♪(ハイッ! ハイッ!!)』

莉嘉『DOKI☆DOKI☆のちに、ワケわかんない!この気持ち~♪』

 

~~~♪ ~~~♪ ~~~♪

 

バイス「何だ、この音楽は…」

ガンリュ-「まるで聴いたことがない…」

ゴズロ「だが、不思議だ。リズムが耳に届く度に、心が躍るようだ」

ドロス「この高鳴り……戦に勝った、勝鬨の時に似ている…」

 

美波「どうにか、最初は上手く行ったわね…」

かな子「はい。音響をお願いした兵士さん、リハーサル通りにやってくれると、いんですけど」

美波「そこはなるように祈るしかないよ。さ、私達も急がなきゃ、莉嘉ちゃんの曲も、そう時間がある訳じゃないよ」

かな子「はいっ!」

バイス「……!お前らまで…!」

[ノーブルヴィーナス]美波「…えぇ。莉嘉ちゃんだけに歌わせるなんて、勿体無いもの」

[ドルチェ・クラシカ]かな子「私や美波さんだって、歌って踊る、アイドルなんです」

バイス「アイドル、これが…」

美波「ステージの上で、曲と歌に自分を乗せて、自身を表現する者。形作られた世界で、多くの人々を魅了する者」

かな子「喜び、楽しい、幸福、みんなの嬉しいって言う気持ちを、もっと多くの人達に響き渡らせる、それが、アイドルです」 タッ

 

スポットライトの灯りに導かれるように、ステージへと駆け上がっていく2人。

 

バイス「アイ、ドル…」

ドロス「あれが、彼女達の本来の姿、と言う訳か」

 

莉嘉『───♪』

 

ドロス「ははっ…!険しい顔付きをしているより、らしいではないか!がっはっはっはっ!!」

ゴズロ「この娘達が、本当に危険な存在だと思うか?バイス」

バイス「……」

ガンリュ-「ふふっ、流石のバイスも、文句が出てこないみたいだな、っと……ん?」

 

ガンリュー「鉄甲鬼やニオンさんは…?」

 

美波『Do you now venus? Be your venus ガラスの檻から♪傷つき、抜け出す程の、恋を、させて──♪』

 

~~~♪

 

かな子『夢のティアラ♪見つけるから♪涙も跳ね返すような♪虹のショコラ♪集めながら♪これからも、歩いてく~♪』

 

~~~♪

 

観衆「おぉ…」

観衆A「おおぉ…!」

観衆B「おおぉっ!!」

 

オォォォオオォッ

 

観衆「スゴい…!何かは分からんが、だが不思議と、胸が熱くなるっ」

観衆A「これが人間の、歌…!」

観衆B「もっと、聴きたいっ!」

観衆C「もっと歌ってくれ!もっと、私達の知らない音楽を、もっと!!」

観衆D「こっちを向いてくれ~!!お~いっ!!」

観衆E「あ、ズルいぞ!俺もだ、俺も!!」

 

ワァアアアアアッッ

 

莉嘉『ははっ、会場もいい感じに盛り上がってきたみたい!』

美波『それじゃあ莉嘉ちゃん、かな子ちゃんっ。今度は3人一緒に!』

かな子『はいっ!』

 

3人『『『お願いシンデレラ!!』』』

 

キャァアアアアアッッ

 

カムイ「…ふっ、俺の次の言葉は、必要なさそうだな──」

 

出陣式会場で始まった、アイドル僅か3人によるライヴ。それは、王の言葉を流すために備えられたスピーカーを通して、マシーンランド全体を包み、そこに住む全てのハ虫人類の耳に、マシーンランドを震わせ、響き渡った。

多くのハ虫人が、聞き慣れぬメロディーに戸惑い、声に驚き、歌に酔いしれていった──。

 

──。

 

ハ虫人「いい歌だったぞ~!!次は何を聴かせてくれるんだ~!?」

???「……ちっ。簡単にほだされやがって。軟弱者共が!…だが」

憲兵「……」 ボ-ッ

???「任務を遂行するのは、今だな」

 

スタスタスタッ チャキッ

 

カムイ「……」

 

???「穏健派の王……いや、カムイ…!テメェの命は、この手で!」

 

カムイ「……っ!?」

 

「──そこまでだ」

 

ガシッ

 

???「な゛っ…!?」

 

短剣を逆手に持ち、王に振り下ろされんとした腕を、鉄甲鬼が掴み上げる。

 

ニオン「生憎と、あいつらの歌は聞き慣れているんでな。今更聞き惚れる程ではない」

鉄甲鬼「皆の注目がライヴに向けられている隙を突いたつもりかもしれんが、功を焦ったな」

ニオン「さぁ、その面を見せろぉ!!」

 

腕を振り上げ、暗殺者が目深に被ったフードを払う。

 

ニオン「何…っ!?貴様…!」

???「……」

鉄甲鬼「人間…?いや、だが…」

カムイ「お前だったのか、ウロン」

ニオン「ウロン…?」

鉄甲鬼「お知り合い、なのですか…?殿下」

ウロン「知り合い?はっ、そうだな。もっと言やぁ、幼馴染みみてぇなモンだ。同じ施設で生まれた、な」

鉄甲鬼「同じ施設……ということは、まさか!?」

ニオン「人間と恐竜帝国の、混血児…」

ウロン「そう、元は同じ計画の元に生み出された者同士。だが片方は今や数万のハ虫人をまとめる王さまで、片方はちゃちな暗殺者。どうしてこれ程の差が突くのか、お前らには分かるか?」

ニオン「それは…!」

ウロン「分かるよなぁ!?今玉座に座るカムイ様は、恐竜帝国に万が一があった場合の為に、ゴール帝王の遺伝子によって作られた混血児!」

カムイ「……」

ウロン「そして俺は、人間と地竜一族の遺伝子を掛け合わせて作られた、忌むべき雑種だからだ!」

ニオン「何だと…!?貴様が、地竜一族の…!」

ウロン「はぁッ!!」

鉄甲鬼「やらせるか!!」

 

強行に出たウロンの前に立ちはだかり、王までの進路を塞ぐ。

 

ウロン「くっ…!」 ダッ

ニオン「逃がすか!」

鉄甲鬼「殿下、お怪我は?」

カムイ「大丈夫だ。それより…」

鉄甲鬼「はっ」

カムイ「ウロンを、頼む」

鉄甲鬼「…お任せを」

ニオン「急ぐぞ、鉄甲鬼!」

鉄甲鬼「応!!」

 

タッタッタッ──。

 

ニオン「奴め…!格納庫へ向かっているのか!」

鉄甲鬼「格納庫の機体を奪って逃げるつもりか。させんッ!」

 

~~~ 格納庫 ~~~

 

ニオン「侵入者は!?」

ハ虫兵「に、ニオン様…!」

ニオン「…酷い有り様だな」

ハ虫兵「申し訳ありません。兵を3人、やられてました」

ハ虫兵2「ぐっ…!」

鉄甲鬼「…傷は浅いな。恐らく、持っていた剣に、毒が塗られていたのだろう。早く負傷者を医務室へ」

ハ虫兵「はっ!」

ニオン「侵入者が向かった方向は、分かるか?」

ハ虫兵「はっ、第3格納庫の方へ」

鉄甲鬼「第3格納庫だと?あそこには、確か…」

ハ虫兵「はっ、ゲッターザウルス計画で開発された、プロトゲッターザウルスが保管されている筈です」

鉄甲鬼「…任務が失敗した時の逃走手段も、念頭に入れていた、と言うところか」

ニオン「ダイノゲッターの所に急ぐぞ」

鉄甲鬼「最早、盗まれるのは避けられん、か」

ニオン「ならば、マシーンランドの外で迎え撃つ!」

 

2人はダイノゲッターロボのハンガーへ。すると、

 

鉄甲鬼「!?」

芳乃「…待ちくたびれたのでしてー。深海エビ煎餅がー、無くなってしまいー」

鉄甲鬼「芳乃、何故…?」

芳乃「悪しき兆しの流れを辿ればこそー」

鉄甲鬼「……お前は、ライヴに参加しなくてもいいのか?」

芳乃「らいぶは莉嘉さん達が盛り上げてくれるでしょー。らいぶの熱を無駄に覚ませてしまわぬ事もー、芳乃の務めでしてー」

鉄甲鬼「…分かった」

ニオン「準備は出来たか?時間が惜しい、出撃するぞ」

鉄甲鬼「こっちは大丈夫だ」

芳乃「何時でもー」

 

ニオン「ダイノゲッターロボ、出撃する!!」

 

ハンガーへの注水を待たず、ダイノゲッター1自ら海面に飛び込み、そのままマシーンランド外の深海へ。

 

ニオン「奴は何処だ!?」

鉄甲鬼「真下だ。今、浮上してくる」

ニオン「来たか!」

 

深海の暗黒から姿を見せるのは、ゲッターザウルスに酷似した1体のマシン。

 

ウロン「…このマシンも、俺も同じだな。生まれた時からメカザウルスではなく、ゲッターにも非ず!」

ニオン「ふん…。さながら悲劇のヒーローと言ったところか」

ウロン「キャプテン・ニオン…!地竜一族の貴様には、何故俺のような存在が生まれたか分かるか」

ニオン「興味もない」

ウロン「へっ、そうかよ!」 グワッ

ニオン「っ!」

 

プロトゲッターザウルスの拳を、軽く躱す。

 

ウロン「高く止まったつもりか!癪に障る…!」

 

続け様に放たれる蹴りも、往なしていく。

 

ウロン「俺は、恐竜帝国の実験で生み出された…!ハ虫人類が、どの程度ゲッター線に対する抗体を持つことが出来るのか、ただその為に!」

ニオン「興味はないと、言ったぁ!!」

ウロン「くっ…!」

 

執拗に纏わり付くプロトゲッターザウルスを、払い除ける。

 

ウロン「ぐぅ…!俺と、俺と戦え!キャプテン・ニオン!!」

ニオン「……」

ウロン「俺の命は、生まれた瞬間に役目を終えた。俺が、生き続ける為には、俺の能力を恐竜帝国に捧げるしかない!」

鉄甲鬼「その為に、急進派に力を貸すと言うのか!?」

ウロン「貴様には分かるまい!蔑まれる存在でしかない俺には、戦士として戦うことでしか、存在価値は生まれないっ!」

鉄甲鬼「我々と共に来ることも出来ただろう。何故そこまで、急進派に肩入れする!?」

ウロン「舐めるな!」

ニオン「ぐっ…!」

 

不意を突いた体当たりで、ダイノゲッター1が怯む。

 

ウロン「俺は、誇り高き恐竜帝国の戦士だ!分かるか!?この牙も爪もなく、鱗すら持たない、このサル共と変わりない醜い姿!」

ウロン「俺は、俺自身の血筋が憎い…!俺の体に流れるサルの血を、全身を掻き毟ってでも掻き出したくなる、俺の惨めさが!!」

ニオン「……誇りは、お前の心を埋めたりはしないぞ」

鉄甲鬼「もう少し莉嘉達の歌に耳を傾けてみろ!人間の持つ文化の尊さが分かる筈だ!」

ウロン「姦しいだけの歌など聴いていられるか!俺は戦士として、恐竜帝国の礎となるのだ!!だからこそ…!」

 

ガンッ ガンッ ガンッ

 

プロトゲッターザウルスの攻勢に、ダイノゲッター1が追い詰められる。

 

ニオン「っ…!」

ウロン「俺と戦えッ!キャプテン・ニオン!!」

ニオン「~~~ッ!!」

 

上へと上昇して、追撃を逃れる。

 

ウロン「カムイの暗殺には失敗した…!今更こんな試作機を持ち帰ったところで、その穴埋めにもなりはしない!」

鉄甲鬼「だから、俺達の首級を手土産として持ち帰ると?」

ウロン「穏健派のゲッターを倒したとなれば、俺の戦績にも箔が付く!」

 

上へと退避したダイノゲッター1を追う。

 

ウロン「ザウルストマホークッ!!」

 

両手に片刃のトマホークを担い、頭上高く掲げる。

 

ニオン「ふん…」

 

大上段から振り下ろされたトマホークを、躱す。

 

ニオン「…憐れだな、貴様は」

ウロン「何!?」

ニオン「己を嫌い、全てを憎み……あらゆる可能性に触れることを拒んで、只妄信的に恐竜帝国の誇りに縋るか」

ウロン「何が悪い!?誇りと、勝利の栄光だけが、俺を満足させてくれるんだ~っ!」

ニオン「っ!!」

ウロン「な、にぃ…?!」

 

プロトゲッターザウルスのトマホークを、白刃取りで受け止める。

 

ウロン「くっ…!このっ、は、離せぇ~!」

鉄甲鬼「恐竜帝国が、貴様に何をした?」

ウロン「…!?」

鉄甲鬼「お前を生んだのも、お前を惨めにしたのも、お前自身じゃない。お前を蔑んだのは、お前が仕える純血のハ虫人達じゃないのか?」

ウロン「だ、黙れ…!」

鉄甲鬼「ハ虫人の中で育った…。可能性は狭められただろう。だが、人間の血を分けて生まれたお前には、人間に寄り添って生きる道もあったのではないのか?」

ウロン「黙れぇッ!!」

 

受け止められたトマホークに力を込め、強引に押し切る。

 

ウロン「俺は戦士だ!俺は戦士として、恐竜帝国を作るんだぁ~!!」

ニオン「…つくづく、憐れだな」

芳乃「馬の耳に念仏、かような言葉も御座いましてー」

鉄甲鬼「幾ら訴えても無駄、と言うことか。全ては遅すぎたのだな」

ウロン「死ねぇえええ~ッ!!」

ニオン「っ!ゲッタートマホークッ!!」 ジャキッ

ウロン「……あ?」

 

素早く抜き放ったトマホークが、プロトゲッターザウルスのトマホークを払い、弾き飛ばす。

 

ニオン「ふんっ!」

 

がら空きになったプロトゲッターザウルスの鳩尾に突き。

 

ニオン「はぁッ!!」

 

上体を折り曲げ、怯んだプロトゲッターザウルスの頭部を切断。

 

ニオン「はっ!」

 

背中のウィング、左肩、両足を斬り断ち、

 

ニオン「でぇぃやぁッ!!」

 

腰部めがけ上段からトマホークを打ち、プロトゲッターザウルスをかち割った。

 

ウロン「…あ……ぇ、あぁ…──?」

 

バラバラに裂かれたプロトゲッターザウルスは、深海の高水圧に抗う術を無くし、ひしゃげ、潰れていく。

 

「───」

 

爆発することもなく、プロトゲッターザウルスだったモノは只の金属片として、海の藻屑となり散っていった。

 

ニオン「……──」

 

──。

 

カムイ「──…そうか。ウロンを助けることは、出来なかったか」

鉄甲鬼「既に、骨の髄まで恐竜帝国の思想に染まっていました。己の命を賭して、己の使命に殉じようとする程に」

カムイ「…そうか。出陣式の中での出撃、大義であった。今は身を休めてくれ」

鉄甲鬼「…はっ」

 

莉嘉「あ、ニオン、鉄甲鬼!こんなところにいたぁ!!」

 

ニオン「…莉嘉、美波達も一緒か」

莉嘉「今まで何処に言ってたの?出陣式終わっちゃったよ?」

鉄甲鬼「それは…」

カムイ「式の最中に急進派の不穏な動きを察知してな。申し訳ないが、彼らを出撃させて対応にあたった」

鉄甲鬼「……」

かな子「そうなんですか?」

美波「それで、急進派の動きは…」

芳乃「只の偵察だったようでしてー。わたくし達が向かった時には、既に退いた後でしてー」

かな子「けど、不安ですね。このまま大攻勢があったり…」

カムイ「心配はいらない。それよりも、今日の式典の事だが…」

かな子「うっ…」

美波「……」

莉嘉「え~っと…」

カムイ「素晴らしい贈り物だった。感謝する」

莉嘉「え?」

カムイ「民達が沸き立ち、あのように色めき立つ姿など、はじめて見た。私も王としてはまだまだ未熟だと、痛感させられた」

美波「そんな…!私達は…」

カムイ「此度の式で、マシーンランド内の者達の気持ちは1つとなったろう。明日からは攻勢に臨む。君達も体を休めてくれ」

莉嘉「…っ!うんっ、ありがと、カムイ殿下☆」

美波「有り難う御座います」

かな子「ありがとうございますっ!」

莉嘉「それじゃあニオン、鉄甲鬼、芳乃!また明日ね」

ニオン「…あぁ」

鉄甲鬼「夜更かしなどするなよ」

芳乃「ではではー」

 

スタスタスタ──

 

鉄甲鬼「…良かったのですか?殿下」

カムイ「当然だ。彼女達もまた、我らの事を考えればこその行動。裏で起きていたゴタゴタなど、知らなくても良い」

鉄甲鬼「お心遣い、痛み入ります」

ニオン「……」

鉄甲鬼「ニオン?」

ニオン「先に休ませてもらう。後は任せたぞ」

鉄甲鬼「何?おい、勝手に…!」

芳乃「別に良いかとー。ニオンさんもー、今日は色々と、ありましたからー」

鉄甲鬼「…そうだな」

 

── ダイノチーム、私室

 

ニオン「……」

ニオン「…ふぅ」

ニオン(ウロンと言ったか…。混血とは言え、俺は……)

ニオン「凛──」

 

『──強く、そう強く。あの場所へ、走りだそう──♪』

 

つづく

 




予告

攻勢に転じ、急進派の前線を一気に後退させていく莉嘉達穏健派同盟軍。
勢いに乗る莉嘉達の、次なる目標は、急進派の前線基地にして、補給線である交易マシーンランド。
新たなマシーンランドを舞台に、莉嘉達に、急進派の若き戦士、ドラゴが立ちはだかる──。

次回、『蠢く蜥蜴』
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