ゲッターロボサーガ デレマス版   作:E.T.c

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第24話『女神の黄昏』

 

~~~ ??? ~~~

 

タッタッタッ──

 

美波「はっ…はっ…はっ…!」

 

美波(ここは…──)

 

美波「はっ…はっ…はっ…!」

 

美波(走っても走っても、廃墟が続く…。ここは…!)

 

美波「はっ…はっ…はっ…!」

 

美波(廃墟になった、東京の街…!?)

 

暗く、重く漂う雲の下、人影もなく、廃墟となった東京の街をひたすら走り続ける。

 

美波(誰か……誰か…!生き残ってる人は…!)

 

美波「!?」

 

走って、走って、走り続けて。やがてその目に映ったものは、

 

美波「アーニャ……ちゃん…?」

 

アーニャ?「──」

 

大切な仲間の、無惨な姿。

 

美波「……ぃ──」

 

美波「いやぁああああああッ!!」

 

~~~ 寝室 ~~~

 

美波「──…はっ!」

 

美波「はぁ…はぁ…はぁ……」

 

美波「今のは……夢…?」

莉嘉「……スピ-」 Zzz…

かな子「すぅ…すぅ……」 Zzz…

美波「……。莉嘉ちゃん、かな子ちゃん…。私は…」

 

── 翌日。

 

カチャ カチャ カチャ

 

美世「ん~~~……っと!これでよしっ!どれどれ…」

 

カチッ ドルンッ

 

美世「あはっ♪掛かった掛かった!何とか動きはすると思うけど…」

美波「ありがとうございます。美世さん」

美世「いやいやこのくらい~。ホントはこんな間に合わせじゃなくて、ちゃんとしたのに乗ってほしいけどねぇ」

美波「…贅沢は、言ってられませんから」

美世「けど、ホントにこれで行くつもり?廃車から使えるもんを継ぎ接ぎしただけだから、動作の保証は出来ないよ?道中の修理も難しいだろうし…」

美波「そんな、遠くに行こうって言うのじゃないですから。…多分」

美世「ふぅん?」

 

莉嘉「美波~!!」

 

美波「莉嘉ちゃん、かな子ちゃんも…」

莉嘉「美波……ゼェゼェ……何か、ゼェ……渓達から聞いたんだけど…!」

かな子「莉嘉ちゃん、少し落ち着いて…」

莉嘉「美波が研究所から出ていくって!」

かな子「大袈裟、ですよね?まさかここでお別れになるわけなんて…」

美波「……」

莉嘉「美波…?」

美波「かな子ちゃんの言う通りだよ。アトランティス流国との戦いも一段落したし、ウザーラもマクドナルも倒した今、私達の世界も救われた筈。ただ、元の世界に帰る方法もハッキリとしないから、少し気分転換でもしよっかなって」

莉嘉「本当に…?」

かな子「アトランティス流国との戦いが落ち着くまでは、戦闘戦闘で詰めっぱなしでしたから。気持ちは分かりますよ」

莉嘉「だからって、食堂をお菓子で一杯にするなって、リンが怒ってたよ?」

かな子「そ、それは久しぶりだったから、少し張り切りすぎちゃっただけで…」

美世「お陰で3日間、私達まで3食ご飯の筈が、スイーツパーティーだったけどね?」

かな子「あうぅ…」

美波「そろそろ行きます。美世さん、ホントにありがとうございました」

美世「私はいいって。それよりも気を付けなよ。アトランティスが倒れても、人を襲う小鬼がいなくなった訳じゃないし、巨大昆虫だって」

美波「分かってます。莉嘉ちゃんとかな子ちゃんも、それじゃあ──」

 

ブロロロロロロロ──。

 

莉嘉「美波、行っちゃった…」

かな子「心配しすぎだって。直ぐに帰ってきますよ」

莉嘉「…そうだといいけど」

 

リン「……」

アキハ「行ってしまったか。引き留めなくて良かったのか?」

リン「言って聞くようならね」

アキハ「黒平安京での戦い、何があったのかは興味もないが、アークチーム的には、なかなか堪えるモノがあったらしいな」

リン「考えてみれば、ゲッターに乗ってさえいなければ、アイドルをやってるだけのただの女子大生だ。あの美波は」

アキハ「あの美波、か。若く、多少頭が回るからこそ、ゲッターと言うものに思うところがあると言うのも、1つや2つではないか」

リン「そんなところでしょ。下手に見知った人がいるところにいるより、誰も知る人のいないところで、1人でそっとさせておくのも大人の対応の1つだ」

アキハ「だが、戻ってこないかもしれんぞ?」

リン「その時はその時でしょ。そもそも文字通り、住む世界が違う。莉嘉もかな子も、帰る手段を探し始めてる。何時までも彼女達に甘えてるわけにはいかないよ」

アキハ「その為にも、この真ゲッターロボの調査作業は急務、か」

リン「この間の戦い、孔明が全く姿を現さなかったのも、気になる」

アキハ「後世に名を残す天才軍師、か。確かに、あれがかの有名な伏竜であれば、彼1人の采配で、我々は敗北していたかもしれんしな」

リン「孔明と晴明……2人の連係が上手く行ってなさそうなのは、攻めてくるタイミングとかから分かってたよ。けど、今回晴明は、この地球と遥か彼方の宇宙の次元を1つに繋いで、アトランティス流国の大軍をここに呼び寄せようとしていた」

アキハ「連中にとっても大事な作戦を控えた決戦だった、と」

リン「孔明は戦闘を晴明に一任していた。そして負けるだろうことも、恐らくは予測出来ていた筈」

アキハ「では何故、晴明に助けを出さなかったのか。若しくは、晴明を倒させることが、孔明の目的だったか──」

リン「幾度か相対して思ったのは、晴明は味方にいても、厄介なタイプだってことだ。薄ら笑いを浮かべて、何を考えているのか、まるで分からない」

アキハ「それで被害が大きくならない内に処分を?しかし、切り捨てるにしても早すぎるだろう。連中にとっては、私達の存在こそが、目下倒すべき目標であった筈だ」

リン「その目標を逸らしても、晴明を討たせる必要があった…?」

アキハ「その意味とは?」

リン「……。分からない。分からないけど、このまま大人しく黙っている必要性も絶対にないよ。必ず、近い内に何か手を打ってくる筈だ」

アキハ「その時に、こいつを使う、と?」

リン「戦力は多いに越したことはないでしょ。ウヅキはこれに、乗り続けるつもりらしいし。けど、乗ってる最中に1人言を呟いてもいたし、呪いや曰くがないかも、念入りに」

アキハ「オカルト方面は専門外なんだがな」

リン「冗談だよ。私としては、問題なく動くんならそれでいい。ただ、真ゲッターが何故黒くなったのか、そもそもこれは本当に私達の知っている真ゲッターなのか。その辺りがハッキリしないと、私的にも気持ち悪い」

アキハ「その程度ならお安いご用だ。ま、前回の作戦の後処理でもしながら、気ままに待っててくれ」

リン「頼んだよ」 スタスタ──

 

──。

 

~~~ 廃墟 ~~~

 

ブロロロロロロロロォ…

 

美波(……)

 

整備もされず、ひび割れた箇所から雑草が除くアスファルトの道の上を、美世にレストアしてもらった軍用車を走らせる。

 

美波(何処まで進んでも見えてくるのは廃墟、廃墟…。地上で暮らしてる人は、本当に何処にもいないのかな?)

 

車を走らせながら、横目で廃墟を見流していく。

 

美波(10年前のゲッター災害…。それさえなければ、この世界も…)

 

目の前に広がる惨状をゲッターが作った。そんな思いが内から沸き起こる。

 

美波(恐竜帝国、百鬼帝国……ランドウは兎も角、皆ゲッターを警戒していた。ゲッターを恐れていた…?そしてマクドナルも言ってた、ゲッターは宇宙を破壊するって…)

 

この廃墟を生んだ実情を考えると、現実味も増してくる。

 

美波(もし彼らの言う通り、ゲッターが宇宙を滅ぼすんだとしたら……その為に、私達を利用しているだけだとしたら…。このままゲッターで戦い続けることが、本当に正しいことなの…?)

 

「きゃーーーーッ!!誰かーーーーーッ!!」

 

美波「!?」

美波(女の子の、悲鳴…!?研究所や地下居住施設以外に、人が…?!)

 

慌てて車を止め、耳を澄ます。

 

「いやーーーーーッ!!」

 

美波「やっぱり空耳じゃない…。こっち!?」

 

車から飛び降り、声の響く方をも止めて、廃墟の路地へと足を踏み入れていった。

 

美波「はっ…はっ…はっ…!」

 

女の子「い、いや…!」

鬼 「……」

女の子「来ないで…!」

鬼 「ぐわぁあああああッ!!」

 

美波「こっちよ!!」

 

鬼「!?」

 

耳から外した護身用イヤリング型爆弾を、女の子を爆風に巻き込まないよう鬼の背後やや後方を目掛けて投擲し、爆破させる。

 

鬼 「ぐぎゃ…っ!?」

女の子「きゃっ…!」

美波「伏せて!」

女の子「え…?」

美波「頭を押さえて、しゃがむの!早く、急いで!!」

女の子「……っ!」

美波「よし…!」

 

美波に言われるがまま、女の子が頭を抱えてしゃがみ込んだのを確認して、美波が腰から抜き放ったのは少し昔のSF映画に出てきそうな、少々安臭いデザインの光線銃。

 

美波「!!」

 

ミョワンミョワンミョワンッ

 

鬼 「ぐ…わ、あぁ……」

 

ドロォ…

 

女の子「ひっ…!」

 

光線銃の先端から放たれた青白いリング状の光線。それに包み込まれるように受けた鬼はドロドロに液状化し、原型を失って一面に散らばった。

 

美波「…アキハちゃ……アキハさんから借りた有機細胞分解銃……思った以上に危ないかも」

女の子「……」

美波「君、大丈夫?」

女の子「ひっ…!」

美波「あ、安心して?私は貴女と同じ人間だよ。ほら、角もないし……さっきはちょっと怖がらせちゃったかもしれないけど…」

女の子「……」

美波「えっと…」

美波(気まずい…。そもそもどうしてこんなところに、こんな、小さな子が…)

 

「あ、いたー!」

 

美波「え?」

 

男の子「先生、いたぜー!こっちだよ!!」

「はいはい。大声を出さなくても、聞こえていますよ。何にせよ、無事で何よりでした」

 

美波(この子と同じくらいの男の子…。それに、先生……良かった、やっぱり保護者が…)

 

尼僧「あら?貴女は…」

 

── 廃寺。

 

尼僧「この度は、私共子を助けていただき、有り難う御座いました。旅の御方?」

美波「いえ、私はただ、偶然居合わせただけですから…」

尼僧「それも仏のお導きです。あの子を守って下さるよう。お陰で、命が失われることはなかったのですから」

美波「はぁ…」

 

少年「先生ー!ただいまー!!」

 

尼僧「はい。おかえりなさい。道中、危ないことはありませんでしたね?」

少年「当たり前だっての!それよりも見てくれよ、これ!」

尼僧「まぁ、立派な鮭、ですね?貴方が?」

少年「いいや、俺も手伝ったけどよ、ユカリが釣ったんだぜ!」

尼僧「そうなのですか?」

少女「わ、私はただ、竿を持ってただけで…」

尼僧「謙遜することはありませんよ。ユカリが皆の為に食材集めに走っていたことは、仏様も見ています。その為、微力を貸してくれたのでしょう」

少女「は、はい…!」

尼僧「しっかりと、感謝して食すのですよ」

少女「うん…!」

少年「それじゃあ行こうぜ!先生後でな!」

尼僧「はい。また」

 

タッタッタッ──

 

尼僧「皆、元気な子達です。健やかに育ってくれて…」

美波「他にも、たくさん子供達がいますよね。ここは一体…」

尼僧「……」

美波「あの…」

尼僧「あの子達は、望まれない子、でした」

美波「望まれない、子?」

尼僧「……」 コクリ

尼僧「貴女も知っていますね?10年前の災害は」

美波「…は、はい」

尼僧「災害の後、人々の暮らしは荒れ、人心も荒みました」

美波「……」

尼僧「未来に展望が持てず、現実から目を背け、一時の快楽に身を任せた者達が何人も、何人もいたのです…」

美波「それって…」

尼僧「誰も悪くなどありません。いたとしても、誰も責めることなど出来ません。ですが実際に、生まれ落ちてしまった命はあるのです」

美波「それが、あの子達…」

尼僧「親となる者達からは愛されず、愛を知らず…。忌み子の様に嫌われ、疎まれる日々を送り、生まれ落ちたことに意味がある筈なのに、救われないなどと言うことがあって、良いのでしょうか?」

美波(研究所にいた孤児達も、きっと…)

美波「それで、そう言った子供達を保護してるんですね?…まだ、お若く見えるのに…」

尼僧「…はい。私自身、まだまだ修行中の身であることは自覚していますが」

美波「そんな事…!ここにいる子供達は、みんな幸せそう暮らしてるじゃないですか!貴女がここにいる子供達から先生と慕われているのは、そう言う意味だと思います!」

尼僧「ふふふっ、有り難う御座います。私も、そうであると、信じています」

美波「先生…」

尼僧「目の前にある、手を差し伸べられる命を、無下にはしない」

美波「え?」

尼僧「昔、ある人にそう教えてもらいましたから。未熟だからと、見て見ぬ振りをするのは違う。そう思ったのです」

美波「手を、差し伸べられる、命…」

尼僧「はい」

美波「あの、私にも手伝えること…!何か、何かありませんか?」

尼僧「え?ですが、貴女は…」

美波「急いでる旅じゃありません!それに、ここでこうして出会えたのも、何か意味があると思うんです!」

尼僧「意味、ですか……分かりました。食堂へ案内します。そろそろ夕げの時間ですからね。子供達に、何か振る舞って上げて下さい」

美波「は、はいっ…!」

 

──。

 

男の子「うめぇ~~~!!」

美波「本当?ありがとう」

男の子「ホントホント!な、ミユキ?」

女の子「う、うん…」

男の子「先生が作ってくれるのより上手いよ!」

美波「えぇ!?」

女の子「そっか。じゃあ後で先生に言っとくね」

男の子「え?!そ、それはやめてくれよ!そう言う意味じゃなくてさ…!」

美波「じゃあどういう意味?」

男の子「それは、そのぅ…」

美波「ん?」

男の子「……//」 カァッ

少年「赤くなってら」

美波「あははっ♪」

男の子「もう、からかわないでくれよぉ!!」

美波「ふふっ。何だか、本当の家族みたいね?」

少女「先生のお陰です」

美波「先生の…」

女の子「先生に助けてもらわなかったら、今頃…」

少女「今はまだ、あちこちに鬼もいて、大変な世の中だけど、私みんなとなら絶対にずっと一緒にいられるって、そう思ってるんです。それで、いつか本当の家族に…」

美波「……」

少女「あっ、今のは…」

美波「いい夢だよ。こんな世界なんだもん。絶対幸せにならなきゃ、ね?」

少女「…はいっ!」

少年「よ~し、そろそろ火ぃ消して寝るぞ~。あんまり火を点けて夜更かししてると、鬼が寄ってくるって先生に怒られちまう」

美波「そう言えば、その先生は…」

少年「あ~、多分墓参り」

美波「墓参り?それって先生が大切って言ってる人の…」

少年「うん。でもその人の分だけじゃなくて、一杯なんだって」

美波「一杯?」

少女「先生、私達と暮らす前は、僧侶として、10年前に亡くなった日本中の人達の供養をしてたそうなの」

美波「日本中の…!?」

少年「何か申し訳ねぇよな~。俺達がいなきゃ、先生もやりたいことやれるのかも、とかさ」

美波「そんなこと……先生、みんなと一緒の今の暮らしが幸せで楽しいって言ってたから、貴方達が気にすることじゃないよ!」

少女「でも…」

美波「ほら、暗い顔してたら、先生も心配しちゃうから!貴方達と一緒にいることが、今の先生の一番やりたいことなんだよ。だから、ね?」

女の子「うん…!」

美波「それにしても、日本を供養して歩くなんて、並大抵の覚悟で出来ることじゃない。先生、昔は何をしてたんだろう…」

男の子「あ、俺聞いたことあるー!」

美波「え?」

男の子「何か、あいどる、って仕事?してたらしいぜ」

美波「アイドル…」

女の子「うん…。お歌もスゴく上手なんだよ。夜は怖いから、何時も子守唄を歌ってもらうんだけど…」

美波「そんな人が、どうして尼になって供養なんて…」

少女「罪滅ぼしって、言ってた…」

美波「罪滅ぼし…」

美波(先生、顔付きとか身のこなしから見ても、年齢はリン司令と同じくらい…。それに、あの目、何処かで…)

 

美波「まさか、ね──」

 

── 廃寺、裏庭、石碑前。

 

尼僧「今日は、不思議な出逢いがありました。貴方を失って、10年になったこの年に、こんな…。これも仏のお導き?それとも……ミナミ──」

 

──。

 

~~~ 早朝 早乙女研究所 格納庫 ~~~

 

ザワザワザワザワ……

 

アキハ「ん…?」

リン「……」

アキハ「これはこれは司令官殿。こんな時間に格納庫とは、何か入り用かな?」

リン「真ゲッターの調査報告書の提出は、今日の日暮れまでに、って話だった筈だけど?」

アキハ「そうだったか?…だとしても、簡単には行かないが」

リン「簡単には、行かない?」

アキハ「装甲を1枚裏返せば裏返すほど、コードの1つ、配線を巡る度に、新たな興味が湧いてくる!これほどのモノ、一両日中に報告書をまとめろなど、それこそ不可能の所業だ!!」

リン「つまり?これは私達の知る真ゲッターじゃないと?」

アキハ「違うな。これは、真ゲッターロボが建造された当時、残された真ゲッターの開発資料だ。ここに残されている開発資材の型番と、真ゲッターに使われている部品の一部が一致した。これは紛れもなく、ここで建造された真ゲッターだ」

リン「なら、興味が尽きないって言うのは?」

アキハ「変質しているのだよ。全ての物質が、著しく!進化と言ってもいい!これは、ここで開発された真ゲッターでありながら、その枠を越えたゲッターと言っても過言ではない!!」

リン「進化…」

アキハ「そうだ、進化だ。ゲッター自身が、己自身をも取り込み、完成された個として存在している」

リン「つまり?」

アキハ「ゲットマシンへの分離は、最早不可能だろうな。互いに同化し合い、分離しようにも出来ない状態にある。その分、耐久性など、一部の性能は向上している」

リン「ゲッター1以外の形態へは?」

アキハ「分からん。が、今のところ変形は出来ないと見ていいだろう。第一、1号機以外はコックピットも潰れてしまっているんだ。変形出来たとして、どうコントロールする?」

リン「実質は、単独操縦のゲッターと一緒か…」

アキハ「だが、能力はそれを補ってあまりあるものだぞ!まるで、予めそうある為に存在していたかのように!」

リン「そうある為に…?けど、ゲッターロボは…」

アキハ「3人のパイロットが乗り込んではじめて真価を発揮する。しかし、それ自体がまどろっこしいと思わないか?」

リン「……」

アキハ「3人のパイロット、そう言えば簡単に聞こえるが実際にはそうじゃない。乗り込んだ3人のシンクロニシティ……精神レベルまでの完全な同調こそが力となる。その前提そのものが、兵器として不合理すぎたのだ」

リン「このゲッターは、そうじゃない?」

アキハ「そう、だからこそ興味深い!これまでのゲッターとは?このゲッターが生まれた意味とは?私達が持つゲッターロボの概念がまた、覆ろうとしている!!」

リン「……何でもいいよ。この黒い真ゲッターは…」

アキハ「!! それについてもだ」

リン「え?」

アキハ「黒い真ゲッターと言うのも芸がないと思わないか?コイツは最早、真ゲッターとは別種のゲッターロボ。我々には新ゲッターもあることだし、何か新しい名前を付けてやりたいところだ」

リン「はぁ……名前?」

アキハ「おいおい。呼称とは大事なものだぞ。これからもずっと黒い真ゲッターと呼んでいくつもりか?かと言って、ブラック真ゲッターでは安直に過ぎる…。真ゲッターブラック……或いは、ゲッターノワールと言うのも……ん?」

 

格納庫の隅、ハンガーで整備を受けるゲッターアークが目に映る。

 

アキハ「ゲッターロボ、アークか…」

リン「どうしたの、急に」

アキハ「……確か、アークと言うのは仏教における梵字……大日如来から来ているんだったな」

リン「あぁ、前に莉嘉達が、そんな事を言っていた気がするね」

アキハ「大日如来……アーク。…タラーク……真ゲッター・タラクと言うのはどうだろうか?」

リン「たらく?その感じだと、何か仏教の神様に関係ありそうだけど…」

アキハ「ゲッターには似合いの、名前だと思うがな……む?」

 

ザワザワザワ…

 

リン「あれは、號?」

 

號 「……」

渓 「やめなって、號…!」

剴 「おい、聞いているのか?號!!」

 

アキハ「どうやらそのようだ、な!」

 

黒い真ゲッターのコックピットから飛び降り、號の目の前に立つ。

 

アキハ「どうした、號。バズーカに手榴弾、C4まで……巨大昆虫出現の報は出ていない筈だがな」

號 「はっ!害虫駆除には違いねぇけどよ。俺ァ…」

 

チャキッ

 

號 「コイツをぶっ壊す!!」

渓 「號!」

リン「真ゲッターを?正気?」

號 「ったりめーだろ!寧ろ、姐さんの方がどうかしちまったんじゃぁねぇのかい?ここにいる奴等も、全員だ!テメェら、真ゲッターが10年前に何をしたか、忘れた訳じゃねぇだろう!?」

 

整備士’s「「「……」」」

 

號 「なのに揃いも揃って、ご丁寧に整備なんかしやがって…!こんなものッ!!」 バシュッ

 

肩に担いだバズーカ砲が火を噴き、放たれた砲弾が黒い真ゲッターの表装で弾け、爆ぜる。

 

ウワァァァッ!?

 

剴 「……っ!やめろ、號!!」

號 「止めるな、剴!お前だって知っている筈だ!コイツは残しておいちゃならねぇ!コイツは全てを狂わせる悪魔のマシンなんだ!!」

剴 「お前の気持ちは分かる!だがな、ここには整備士がいるし、ガスや液体燃料、可燃性の物質だってあるんだぞ!?そんな火薬を持ち出して、他に誘爆したらどうする!?」

號 「……チッ!」

 

「それに、分かっているでしょう?」

 

號 「!?」

ウヅキ「そんなもので、真ゲッターは破壊出来ない」

渓 「ウヅキ、さん…!」

號 「…さぁ、どうだかな?例えゲッターにとっては鉛弾でも、炉心に直撃させりゃぁ…」

アキハ「そうなれば、私達もまとめてみんなお陀仏だ。お前はそれでも良いのか?」

號 「俺ァかまやしねぇよ。人類を滅ぼし欠けた悪魔を退治したんだ。喜んでお袋達に会いに行ける」

剴 「お前なぁ…!」

ウヅキ「……」

 

バッ

 

號 「うん?」

ウヅキ「真ゲッターは、破壊させません…!」

號 「へぇ、そいつはどういう了見だい?はじめは、アンタが言い出したことじゃなかったか?」

ウヅキ「分かってます。だけど今は、真ゲッターを破壊させるわけにはいかない…!」

號 「…そうかい。だったらよ」 チャキ…

 

今度は懐から出したハンドガンの銃口を、ウヅキに突き付ける。

 

渓 「號!?」

號 「真ゲッターの後は、アンタをやるつもりだったんだ。どっちから先にやっても、結果は変わらねぇ」

渓 「な、何言ってるのよ!?バカな真似はやめなよ、號!」

號 「バカでも何でも結構!端からそう言う話だったろうがよ」

渓 「けど……ウヅキさんは黒平安京でも一緒に戦った、仲間じゃない!助けてくれたことだって…!」

號 「仲間だァ?はっ、俺は端から、コイツに気を許したつもり何ざねぇよ」

渓 「え…」

號 「晴明を打倒する為に、見逃してやっていただけだ!もうそれも終わった。なら、預けてた命を渡してもらうぜ…」

ウヅキ「……」

渓 「本気なの……號!」

號 「だがまぁ、渓の言う通りだ。アンタに全くの義理がないわけでもねぇ。大人しくそこを退いてくれたら、後の始末をどうするか考えてやる」

ウヅキ「……」

號 「さっさと退けって言ってんだ!聞こえねぇのか!?」

ウヅキ「真ゲッターは壊させない…!」

號 「何故だ!?アンタだってコイツに恨みがある筈だ!コイツは存在するだけで人類を、地球を滅亡に導く!機械で象った化け物なんだぞ!?」

ウヅキ「それでも、悪魔や化け物の力だったとしても、この先の人類には必要な力なんです!!」

號 「ハッキリと言うじゃねぇか。晴明以上の敵が、まだ現れるって言うのかよ?」

ウヅキ「黒平安京の戦いははじまりに過ぎません。もっと恐ろしい敵が、ここにやってきます」

號 「何故そう言い切れる!?」

ウヅキ「ゲッターが、真ゲッターがそう言っているんです」

號 「ゲッターが…?はっ、やっぱイカれてやがるぜ、アンタ。マシンが人とお喋りするのかよ?」

ウヅキ「口を利けなくても、”理解る”んです」

號 「真ゲッターに乗れば、悟りを開いて万物を理解するとでも言うつもりか?」

ウヅキ「貴方も乗ってみますか?真ゲッターに」

號 「真ゲッターに…」

 

言われ、思わず真ゲッターを見上げるが、咄嗟に考えを振り払うように頭を強く振る。

 

號 「そうやって丸め込まれるかよ!そもそも、この先どんな敵が現れようが、俺には俺達のゲッターがある!真ゲッターの出る幕はないぜ」

ウヅキ「…貴方達のゲッターでは、人類を守りきることは不可能です」

號 「やってやるさ!真ゲッターの力がなくったって、俺達の力だけでやってやる!!」

ウヅキ「……やっぱり、言葉では分かってくれませんね」

號 「…これで最後だ。そこを退け」

ウヅキ「退きません。真ゲッターロボは、守らなくちゃなりませんから」

號 「……そうかよ」

渓 「號……やめてぇ!!」

號 「っ!!」

 

パァンッ

 

アキハ「!!」

リン「!!」

剴 「!!」

渓 「!!」

 

ウヅキに向けられ、真っ直ぐに放たれた弾丸。

 

ウヅキ「ッ──!!」

 

腰を落として、頭部に向かって放たれた弾丸を往なす。舞った長髪の隙間を弾丸が一直線に駆け抜け、何本かが宙に躍った。

 

ウヅキ「っ…!」

 

姿勢を低くしたまま、足元を強く踏み込み疾駆。10メートルもない號との距離を一瞬で詰めた。

 

號 「何…?!」

ウヅキ「はぁッ!!」

 

膝を深く落とし、一瞬で力を込め、真っ直ぐに伸ばす跳躍。その動きに腰と背骨、そして肩肘手首と一直線に連なる部位に渾身の力を込めた掌底を、號の顎に喰らわせた。

 

號 「うぐ…っ」

 

脳が揺れ、ふらつきながらも倒れず、何とか持ち堪える。

 

號 「ぐっ……この(アマ)ァ…!」

リン「號」

號 「!? 姐さん…!」

 

ストン、と背後から號の首筋に手刀を落とす。

 

號 「カッ──!」

 

一瞬の強烈な一撃により、意識を失いかける號。その隙を逃さずに両手を締め上げて拘束し、地面に組み伏せる。

 

號 「ぐっ…!」

リン「次はもっと、理性的に立ち回るんだね」

號 「くっ、姐さん!何故だ!?」

リン「號のとってはただ憎いだけの相手かもしれないけど、私にとっては大切なチームメンバーの1人だ」

號 「結局それかよ…!見損なったぜ!…くそっ、放せ!放しやがれぇ!!」

剴 「代わります」

リン「剴。頼んだ」

剴 「了解」

號 「剴…!テメェもかよ…!」

剴 「冷静になれ、號。ここで真ゲッターを破壊してどうなる?ウヅキさんを殺して、どうなる?お前の手が血で汚れるだけだ」

號 「だからって、コイツらのしてきたことを許せって言うのかよ?」

渓 「簡単じゃないのは、分かるよ。だけど、これから世界を復興させるには、色んな人と手を取り合っていかなきゃならない。個人の主張とか、執念に拘ってる場合じゃ、ないんだよ」

號 「…クソッ」

リン「営倉に連れていけ。少し頭を冷やさせろ」

號 「くっ…。俺は、納得した訳じゃねぇからな…!」

剴 「號が迷惑を掛けました。自分達もこれで失礼します」

渓 「……」 ペコリ

 

剴によって、連行されていく號。

 

ウヅキ「……」

アキハ「間一髪のところで弾は避けたようだが、怪我はないか?」

ウヅキ「特には、少し手首が痛む程度です」

アキハ「そうか。…今更だが、勘違いしないでやってくれな。アイツは何処までも真っ直ぐで、そして恐らく、この研究所で誰よりまともだ。人間臭いと言い換えても良い」

ウヅキ「はい。彼の言うことは、間違ってはいませんよ。それに、私ももうすぐ…」

アキハ「もうすぐ?」

リン「ところでウヅキ、さっきの話だけど…」

 

所員「司令!大変です!!」

 

リン「!? 何かあった?」

所員「基地のレーダーが、鬼獣らしき反応を捉えたのですが…」

リン「鬼獣?」

アキハ「鬼獣は晴明が召喚する存在だった筈。それがいきなり……妙だな」

リン「さっきウヅキが言っていた恐ろしい敵に関係がある?」

ウヅキ「…いいえ。多分これは…」

 

莉嘉「リンー!さっき管制室の人が慌てて出てったけど、何かあったのー?」

かな子「まさか、新しい敵が!?」

友紀「こっちは何時でも、スタンバイ出来てるよ!バッチコーイ!!」

リン「……。兎に角、私は管制室で情報を整理してくる。ウヅキは…」

ウヅキ「真ゲッターで待機します」

リン「分かった。それじゃ!」

 

タッタッタッ──。

 

── 真ゲッター、コックピット。

 

正面のメインモニターから、メインの下と操縦桿の各サイドにあるサブモニターが点灯し、コックピット内が明るくなる。

 

アキハ『真ゲッター、タラクの状態はどうかな?ウヅキ』

ウヅキ「…たらく?」

アキハ『そのゲッターの新たな名さ』

ウヅキ「そう言えば、新ゲッターなんて皮肉なゲッターもありましたね」

アキハ『整備は一通り済ませてある。黒平安京でいきなり起動した時よりは使いやすくなっている筈だ』

ウヅキ「ありがとうございます」

アキハ『気にするな。ただ仕事をしただけだからな』

ウヅキ「アキハちゃんは」

アキハ『ん?』

ウヅキ「どうして真ゲッターを直してくれたんですか?」

アキハ『何だ、そんなことか。私にとってはどうでも良いんだ。10年前だ、真ゲッターだと言うのは』

ウヅキ「どうでも良い?」

アキハ『誰を恨もうと何を憎もうと、10年前に私達の大切なモノが奪われたのが事実で、その事実は変えられないんだ』

ウヅキ「…冷たいんですね」

アキハ『人間、そうやって心に整理を付けて生きていくものだ。尤も、今の私も遺された者の使命を果たす為に、生きているようなものだがな』

ウヅキ「遺された者の、使命…」

アキハ『お互いに、辛いよな』

ウヅキ「アキハちゃん?」

アキハ『気にするな。ゲットマシンに変形出来ないタラクは、カタパルトから射出出来ん。真上の搬入口を開けるから、そこから出撃してくれ』

ウヅキ「…了解!」

 

空いた搬入口から、陽光が差し込み、ゲッターを照らし出す。

 

ウヅキ「真ゲッタータラク、出撃します!!」

 

シュバッ、と目にも止まらぬ速さで、真ゲッタータラクは飛び立った。

 

かな子「鬼獣の出現方向、昨日美波さんが向かっていった辺りらしいですけど…」

莉嘉「大丈夫!美波だってゲッターのパイロットだよ?そう簡単にやられたりしないって☆」

かな子「だと良いですけど……イヤな予感がします」

リン『アークチームも出れる?パイロットが1人足りないけど』

かな子「このチームでは初めてですけど、何とかやってみます!」

莉嘉「ウヅキ1人に無理させるわけにもいかないしね!何時でも出して!」

リン『分かった。無人のキリク号の制御はどっちが?』

かな子「私が担当します!」

リン『分かった。それじゃあ、健闘を祈るよ』

莉嘉「こっちのリンにしてはシュショーだね?ゲッターアーク、発進!!」

 

カタパルトから飛び立っていくアークゲットマシン。

 

友紀「ねぇー!何で私は基地待機なのさ!?」

アキハ「司令命令だ。抑えろ」

友紀「けど…」

アキハ「そもそも、今回は司令自らが管制室の方に行ったんだ。ウヅキはタラク、お前1人じゃ新ゲッターは動かせんだろう」

友紀「なら、渓とか剴を乗せれば…」

アキハ「簡単に言うな。ゲッターは3人一組のマシン。チームを組んだこともない即席チームで、そうそう合体を成功させられると思うな」

友紀「むぅ…!」

アキハ「何、出撃したのは真ゲッターに、それに匹敵する性能を持つゲッターアークだ。それこそ、本物の神か悪魔にでも遭遇せん限り、簡単に負けたりはせんよ」

友紀「……」

 

美世「……」

茄子「……」

 

── 廃寺。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

少女「ひっ……何、あれ…!」

女の子「先生……怖いよ…」

尼僧「……」

美波「そんな…!まさか、あれは…!?」

 

美波が見上げる彼方に舞い降りる、小山ほどの巨体を持つ、異形の影。その中心部には、

 

美波「安倍晴明っ!?」

 

晴明『クックックックックッ──!』

 

つづく




予告

美波の前に立ちはだかる、復習鬼と化した安倍晴明。
ゲッターへの恨みを、憎しみを暴力として周囲に撒き散らす晴明が生み出す地獄絵図に、美波は堪らず、ゲッターへと走り出す。
本当の地獄は何か?自身の目の前に広がる未来は何処か。
人智を越えた悪鬼羅刹を前に、美波が選ぶ道筋は──。

次回、『散る命、胸に』
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