── 上空。
莉嘉「は~…っぐ! モグモグ……ん~っ!!かな子の特製マカロン、どれを食べてもお~いしー☆」
かな子「ホントですかぁ!ありがとうございます!」
ウヅキ「…相変わらず、能天気と言うか、マイペースと言うか…」
美波「けど、それもスゴいことなんだと思いますよ?」
ウヅキ「スゴい?」
美波「研究所との通信は相変わらず不通。私自身、悪い予感はしています。本当なら、もっと不安や緊迫感でピリピリしてても可笑しくないかもしれません。けど、そんな状況の中で何時も通りに振る舞える、平常心を保てているのは…」
莉嘉「ンンッ…!?お茶こぼしたぁ…」
ウヅキ「ただ神経が図太いだけじゃ…?」
美波「そうかもしれません…」 アハハ…
ウヅキ「貴女も、何だか雰囲気が変わった気がします」
美波「え?」
ウヅキ「何日か前の貴女は焦り……迷い、そうですね、戦うことに迷いを抱えているようにも見えました。今はそれが…」
美波「感じられない、ですか?」
ウヅキ「…えぇ」
美波「…開き直ったって言うんですかね?私なりに考えて、考えて…。それで結論なんてでなくて、考えることも馬鹿馬鹿しくなったって言うか…」
ウヅキ「成る程」
美波「けど、自棄になった訳じゃないですよ?何を考えても、どう行動しようとも、今を生きてるって真実は、ちゃんと見えてますから」
ウヅキ「今を、生きる…」
美波「はい。私は今も、現在を生き続けているんです。過去でも未来でもない、目の前にある今を。それを、これ以上誰かに荒らされるわけにはいかない」
ウヅキ「だから、戦う?」
美波「誰かに人生を左右されるなら、自分で決めた方が良いと思いませんか?」
ウヅキ「ふふっ…。貴女の言う通りかもしれませんね」
莉嘉「…っと!自動操縦解除してっと、休憩終わりー☆そろそろ研究所が見えてくる筈だけど…」
かな子「何だろう…。空が、不思議な感じ…」
美波「本当…。分厚い雲の合間から光が……何て言うか、神話の一幕みたい」
ウヅキ「!? ……空に見惚れてばかりもいられませんよ」
美波「え?」
莉嘉「地上!研究所が…!」
かな子「ウソ…」
ゲッターアークと真ゲッタータラクの眼下に広がったのは、要塞と化し、鉄壁の守りを誇っていた筈の新早乙女研究所が廃墟と化した光景であった。
かな子「酷い…」
莉嘉「アタシ達が出撃してる間に、一体何が…」
美波「こちらアークチーム、早乙女研究所応答して下さい!誰か!!」
「ザ ザ-ッ……ザ ザザッ…ザザ-……」
美波「通じた!?誰か!聞こえますか!?」
「ザザッ…聞こ…て…ザッ…る…。……よ」
ウヅキ「この声は、リン?」
かな子「シブヤ司令ですか!?無事なんですか!?」
リン『うん…。私や晶葉は、地下格納庫にいたから、何とかね。それに、何人かのスタッフや弁慶さんも無事だよ』
莉嘉「……」
かな子「良かったぁ…」 ホッ
ウヅキ「何があったんです?ただ敵に襲われたって訳でも……その敵も見当たらないし」
リン「…正直、私達にも何が何だか…。突然光が降ってきたと思ったら…」
莉嘉「光…?」
その言葉を聞いて、莉嘉達の視線は背後、異様な雰囲気を漂わせる、空を覆う暗雲を切り裂く後光に向けられる。
「──彼らは裁きを受けたのだ」
かな子「ひゃっ!?何……いきなり声が…」
ウヅキ「…通信信号応答なし。何処かからの通信や、機械から流れてる音声じゃない…!」
美波「何と言うか、空間全体から響いてるような…」
莉嘉「みんな見て!空!雲が…!」
かな子「裂けて……あれは…?!」
ウヅキ「……」
新早乙女研究所の上空を覆い尽くしていた暗雲が左右に分かれるように裂け、ゲッターに降り注いだ神聖さを帯びる光。それを背に受け、舞い降りてくるは、4つの影。
美波「あれは…何なの…?鬼獣とも、人間とも、マシンとも違う…!」
ウヅキ「全く異質の、敵…ッ!」
かな子「敵…?敵なんですか?敵と言うより…」
莉嘉「……っ」
「次は貴様らの番だ。ゲッター!」
莉嘉「やっぱり!アンタ達が研究所をこんな風に!」
「然り。そこが災厄の由縁たる場所。早乙女研究所なれば」
莉嘉「まーたそれ?結局アンタもゲッターが宇宙の悪だって?悪いけどそーゆー台詞は聞き飽きてるんだよね!」
「……」
莉嘉「何ー?だんまり決めてこっち見下して、そんな睨まれても怖くなんてないから!」
「…稚拙なり」
莉嘉「はぁ?」
「世間に対して無知。言動をして無恥。我らの前に立つにはあまりにも稚拙。最早知性など欠片もない、獣にも劣るその姿。正に蛮族そのもの…」
「ふぇっふぇっふぇっふぇ…っ!」
莉嘉「ハァ~!?うるさいうるさいっ!!そもそもいきなり出てきて、こっちの事は何でも知ってる事情通なフリして、名前も名乗らない奴に訳分かんない説教される覚えなんてないんだけど!?」
「ふんっ…。蛮族だが礼節は弁えるか。よかろう。我が名は、多聞天」
「増長天」
「持国天」
「広目天」
多聞天「汝ら人間共が敬い、畏れる者…。貴様らの言葉を借りれば、神と呼ばれる者なり」
莉嘉「はぁ?神ぃ?」
美波「随分大きく出てきたけど、妙に納得できる…。かな子ちゃんが感じてたものは…」
ウヅキ「神を前にした時の、畏怖…!」
多聞天「然り。汝ら、下等な生命には備わっておるのだ。神に抗うなどと言う蛮行を犯さぬよう、それを抑止する因子が、その本能として」
莉嘉「はっ!何が神さ!かな子も、美波も騙されないで!大体自分の口から神って言う奴に、マトモな奴はいない…!」
多聞天「しかし…。信仰心の薄れと何より、ゲッター線に触れた影響か……畏れと言う感覚すら麻痺した者も存在するようだ」
ウヅキ「…貴殿方か本当に神だとして、そんな存在がどうして突然?」
多聞天「突然ではない。この裁きは必然なのだ」
かな子「裁きが、必然?」
広目天「己が無知と、是が非にも生き残りたいと言う傲慢さが招いた、正しく自業自得」
美波「どう言うことなの…!?」
持国天「諸葛孔明と言う名に聞き覚えはあるか?」
ウヅキ「諸葛孔明……アトランティス帝国の…」
多聞天「彼の者の嘆きと、命を賭した叫びにより、馳せ参じた。この宇宙をゲッターの脅威から守る為に」
莉嘉「結局、アンタらもアイツらのご同輩って訳!どんな理屈を並べても結局やる気だって言うんなら…!」 ジャキンッ
バトルショットカッターを展開。
莉嘉「こっちだって、とことんやってやるだけだぁああ~~~ッ!!」
予備動作もなく、一気に加速して多聞天の首を狙う。
増長天「むぅんっ!」
莉嘉「ぐっ…!」
間に増長天が立ちはだかり、携える錫杖が、バトルショットカッターの刃を受け止める。
増長天「この……不心得者めが!!」
莉嘉「ぅあ…っ!?」
錫杖を振り払い、ゲッターアークを吹き飛ばす。
多聞天「増長天」
増長天「何、不心得者を懲らしめるだけだ。見事改心させ、黄泉路へと導いてやろう」
ヒュン、と消えるような動きで体勢を整え、こちらも体勢を建て直したばかりのゲッターアークへと向かう。
増長天「応龍!」
莉嘉「っ!」
体に巻きついた龍を召喚し、ゲッターアークに火炎を吹かせる。
莉嘉「危な…っ!」
増長天「ここよ!」
振り上げた増長天の錫杖が、戟へと姿を変える。
莉嘉「くっ…!」
増長天「やぁあッ!!」
莉嘉「きゃあああああっ!?」
戟による一撃を受け、再び吹き飛ばされるゲッターアーク。その一撃は直撃にも見えたが、
増長天「咄嗟に直撃を避けるとは…。まともに受けておれば、一思いに逝けたものを…」
莉嘉「何が一思いーだ!やっぱ改心させる気とかないんじゃん!!」
ガサリ、と倒れ付した木々から状態を起こすゲッターアーク。
かな子「ちょ、ちょっと莉嘉ちゃん、落ち着いて…」
美波「かな子ちゃんの言う通りだよ。落ち着きがないのは何時もの事かもしれないけど、相手が相手だから、一旦冷静にならないと…」
莉嘉「冷静?どうして冷静でなんていられるの?!」
かな子「え?」
莉嘉「アイツらは、研究所を破壊したんだ!」
美波「それは…けど、みんな無事だったじゃない?」
莉嘉「地下格納庫にいた、リン達はね」
かな子「地下格納庫に、いた…?」
美波「……! 地上には、孤児の保護施設が…!」
かな子「あ……っ!」
視線を向ける先、廃墟と化した地上施設はどんな災害を受けた後よりも悲惨の光景で、どこが何だったのかすら分からない。
多聞天「ゲッターに侵される前に、原罪から解き放ってやったのだ。無垢なる魂は無垢なまま、極楽浄土へと召されるであろう」
莉嘉「勝手なことばっか言わないで!結局アンタ達はゲッター憎いゲッター許さんで、関係ない子供まで巻き込んだ…!」 ジャキッ
ゲッタートマホークを強く握り締めた、ゲッターアークの姿が消える。
増長天「なっ…!?ど、何処へ…?」
莉嘉「──!!」
たじろいで視線を左右に振った増長天の背後に、ゲッターアークはその姿を現す。
増長天「後ろか──!」
莉嘉「絶対に…!許さないッ!!」
勢いよくトマホークを叩き付け、増長天の脳天から胴体に一閃。パックリ割れた切り口から血飛沫が立ち上る。
増長天「ぎゃああああああッ!!?」
莉嘉「ッ!!」
増長天「この…っ!」
震える腕を微かに振り、その指示を受けた応龍が、追撃を仕掛けたゲッターアークを横から突き飛ばす。
莉嘉「くっ…!」
応龍「シャァアッ!!」
莉嘉「邪魔するって言うなら、容赦しないよ!」
ガンッ ガキンッ
多聞天「……」
持国天「…いかんな」
広目天「ゲッターめ…。こちらの想定以上に力を付けておる…」
多聞天「想像以上に進化しているようだ。これも、ゲッターの為せる技か」
持国天「我が支援に行こう。……む?」
ゲッターアークと増長天の戦いに高みの見物を決め込んでいた3体の神の元に降り注いだゲッタービームを、それぞれが散開して躱す。
ウヅキ「ゲッターはまだもう1機…。まさか忘れていた訳じゃないですよね?」
広目天「愚かな…。やはりその身を以てしなくては分からぬか」
持国天「……」
広目天「持国天?」
多聞天「広目天、持国天に任せよ。それより、増長天と協力し、向こうのゲッターを止めるのだ」
広目天「……はっ」
フッ、と広目天の姿が消える。
ウヅキ「…ゲッタートマホーク!」
持国天「……」
肩からトマホークを取り出した真ゲッタータラクに対し、持国天は口元に手を翳し、するりと長大な剣を引き抜いて見せる。
ウヅキ「まるで大道芸ですね」
持国天「往くぞ、ゲッターロボ!!」
ウヅキ「はぁッ!!」
真ゲッタータラクと持国天が空中で激突。己の得物をぶつけ合い、鍔迫り合う。
── 研究所地下。
リン「くっ…!」
所員「シブヤ司令、大丈夫ですか?」
リン「私は大丈夫。それより生き残った所員を集めて、直ぐに脱出用意!」
所員「は…?脱出、ですか?」
リン「そうだよ。上でゲッターがドンパチやってるんだ。ここだって何時までも安全じゃない。奴らがゲッターに気を取られている内に、研究所を放棄して脱出する。だから急いで!!」
所員「は……はっ!」
リン「……くっ。地上再興まで、もう少しだったのに…!」
アキハ「ふっ。奴等の目的が、ゲッターの庇護を受ける人類の抹殺だとしたら、何処へ逃げても一緒だがな」
リン「アキハ…?何処へ行くつもり…?」
アキハ「野暮用だ。遂にこの時が来たのだな…」
リン「アキハ…?」
アキハ「心配するな。全ては同じなのだ。生も死も、宇宙も地球の生命も全て同じところから発生している。同じところから出で同じところに還る。生とはそう言うことなのだな。ようやく分かりましたよ、早乙女博士」
リン「……」
フラフラとした、夢心地と言うような足取りでどこかへと向かって消えていくアキハ。
リン「そう言えば、友紀、號達は──」
──。
莉嘉「──…サンダァー…!ボンバァアアアーーーッ!!」
ゲッターアーク後部のウィングから広範囲に雷を落とす。その中を縫うように増長天が迫る。
増長天「はっ!」
莉嘉「ぐっ…!?」ガキンッ
かな子「莉嘉ちゃん、ここは私が!」
莉嘉「かな子?」
かな子「今は気持ちは1つです!」
莉嘉「…分かった!オープンゲット!」
増長天「くそっ…!」
増長天の攻撃が空を切る。
かな子「チェーンジゲッターカーン!!──羂索!」
合体後、直ぐに羂索を握り、投射して増長天を応龍もろとも捕縛。
増長天「うぉ…!?」
かな子「そぉ……れぇっ!!」
増長天を中から引き摺り下ろし、地面に叩き付けた。
増長天「──」
広目天「ふっふっふっ…!」
倒れ伏した増長天の姿が、広目天に変わる。
かな子「えっ!?」
広目天「神に羂索とは…。正しく不心得者の極み!」
言いながら体の正面で両手を握り、印を結ぶ。
広目天「獄炎!!」
かな子「……っ!」
そして放たれた黒々とした地獄の業火を、握り締めた羂索を高速に回転させることで弾いていく。
かな子「くっ…!ニードルミサイル!!」
即座に両肩の棘をミサイルとして飛ばし応戦。これに対して広目天は、
広目天「ふっ…」
白い巻物を翳した。
広目天「喰らえぇいっ!!」
広目天の握った巻物が包帯のように細く周囲に飛び散り、広目天に向かって真っ直ぐに飛来していたニードルミサイルを包み込んでそのまま呑み込んでいく。
かな子「う、嘘…!?」
広目天「お返しだ!」
次に筆を手に取り、巻物に何かを素早く書き込み、ゲッターカーンに向けて飛ばした。
かな子「これは…!」
飛ばされた巻物の紙はゲッターカーンに巻き付き、
広目天「衝!」
広目天の言葉と同時、巻き付いた紙に紋様が浮かび上がり、ゲッターカーンに電流のような衝撃を与える。
三人「「「きゃぁああああああッ!!」」」
広目天「くっくっくっ…!そのまま滅せよ…!」
莉嘉「か、かな子…!分離して…!」
かな子「うぅ…っ、オープン、ゲット!!」
広目天「ぬぅ…!」
分離して高速から逃れ、
美波「今度は私が…!チェンジゲッターキリクッ!!」
上空から急降下しながら、ゲッターキリクがそのドリルを突き立て肉薄。
広目天「むぅ…!」
広目天は、次は手にした巻物を掛け軸のように展開。己の盾としてゲッターキリクの攻撃を受け止める。が、
美波「ドリル…!ストリームッ!!」
広目天「ご……ぉ…!」
ゲッターエネルギーを纏ったドリルの余波により、数十メートル程後ろに後退。
広目天「くっ…!やってくれる──」
その広目天の姿も変わり、
多聞天「……」
多聞天がゲッターキリクと対峙する。
美波「っ…!」
莉嘉「今さら怖じ気付いたなんて言わないでよね、美波!」
かな子「あの人、あの4人のリーダー格みたいですから、倒すことが出来たら状況を有利に出来るかもしれません」
美波「分かってる…!行くわよっ!!」
ゲッターキリクの高速機動一瞬残像を残してその場から消え失せ、同時多聞天の周囲を回り無数の分身で取り囲む。
多聞天「……」
莉嘉「何?ずっと黙って突っ立っちゃってさ!もしかして、こっちの動きが速すぎて追い付けない?」
多聞天「……」
莉嘉「無視すんなー!」
かな子(莉嘉ちゃんの言う通り、こっちを捉えきれてない……とは思えないけど…。なら、見切られてる…?まさか…)
美波「……はっ!」
不動を貫く多聞天の異様さに意を決するように、ゲッターキリクが分身の中から飛び出す。
美波「ドリル……アターック!!」
多聞天の死角を付き、背後から肉薄したドリルは正確にその背を捉える。
美波「っ…!?」
莉嘉「キリクのドリルで、貫けないの!?」
多聞天「所詮は…」
美波「っ…!」
多聞天「その程度ッ!」
防御も行わず、背中でドリルを受け止めた多聞天の放つ裏拳が、ゲッターキリクを彼方へ吹き飛ばす。
かな子「う……ぐっ…!大丈夫ですか?美波さん!」
美波「こっちは大丈夫…!っ…ヘルメットが…!」
バイザーの割れたヘルメットを脱ぎ捨てる。
美波「あの敵、これまでの相手と違う…!」
莉嘉「伊達に神様名乗ってる訳じゃないってこと…?」
多聞天「そうだ」
かな子「……!」
倒れ伏し、立ち上がることもままならないゲッターキリクの前に、瞬間移動のように多聞天がその姿を見せた。
多聞天「所詮は人間。この神の手の平からは抜け出せぬ」
莉嘉「誰が孫悟空だっての!美波!」
美波「っ……う、うん…!オープンゲット!!」
莉嘉「チェーンジゲッターアーック!!」
多聞天「ゲッターロボ、アークか…!」
莉嘉「……何よ?」
多聞天「その赤き姿…。人の心を誘惑し、やがては宇宙を滅ぼす。悪魔に相応しき、悪しき姿よ!」
莉嘉「ホンット何?恨み言とかなら、もっと分かりやすく言ってほしーんだけど?!」
トマホークを構え、多聞天に肉薄。
莉嘉「ダブル!ラビリントスッ!!」
トマホークによる目にも止まらぬ怒涛の連擊を打つ。
莉嘉「っ…!」
かな子「アークのトマホークでも、傷一つ付かないなんて…!」
莉嘉「流石にインチキなんじゃない!?こンの…!!」
多聞天「貴様の存在を、許すわけにはいかんッ!」
美波「!! 莉嘉ちゃん、下がって!」
莉嘉「へっ?」
多聞天の腹部から放たれた、神々しい光を宿す光線が、ゲッターアークを突き飛ばす。
莉嘉「っ…!ふぅ…」
咄嗟に光線をトマホークで受け止め、直撃は避けた。
莉嘉「!? トマホークが…!」
光線を諸に受けて黒く焦げ付いたトマホークは、そのままボロボロとゲッターアークの手から溢れ落ちた。
莉嘉「くっ…!……ん?」
偶然か、持国天と戦っていた真ゲッタータラクと背中を合わせて突き合う。
ウヅキ「…そっちも苦戦しているようですね」
莉嘉「そっちこそ!楽には勝たせてくれないみたいだね…!」
多聞天「勝つだと?我々にか?」
莉嘉「トーゼン☆アンタ達を倒さなきゃ、リカ達は明日に行けないんでしょ?」
持国天「くっくっくっ…!」
増長天「ふぇっふぇっふぇっ…!」
広目天「ふふふふふっ…!」
莉嘉「何?何が可笑しいのさ!?」
広目天「まったく…!恐れを知らぬとは悲しきことよ」
多聞天「これだけの力の差、格の違いの差を見せつけられて、まだ抗う術があると思ってるのか」
莉嘉「力の差?格の違いの差?うんっ、全っ然分かんない!言っとくけど、アタシはまだ全然、本気とか出してないから!」
かな子「またそんな、分かりやすい強がりを…」
莉嘉「強がりでも何でも、諦めたらそこで終わりなんだ!アタシはここで、まだ倒れるわけにはいかない…!」
持国天「強がりこそが己を奮い立たせる最後の意地と言うわけか」
増長天「ならばその最後の意地、容易く手折ってやろう!!」
美波「っ……来る…!」
その手に携えた戟を持ち直し、ゲッターアークめがけ加速する。
増長天「──…ぎゃっ!?」
莉嘉「……?」
ゲッターアークに迫っていた増長天が、背後からの攻撃を受け吹き飛ぶ。
かな子「今の攻撃は…」
莉嘉「間違いないよ、マグフォース・サンダー…!」
三人「「「號(さん)ッ!!」」」
號 「へっ!タイミングはバッチリだぜ!子犬ちゃんよ!!」
莉嘉「無事だったんだ!」
號 「懲罰房に送られたお陰でな」
莉嘉「懲罰房に?」
渓 「號みたいな身体能力お化けに、簡単に脱獄されないよう、房自体が頑丈に出来てるからね」
號 「オメェらも俺を連行して近くにいたから、助かったんだぜ?じゃなきゃ今頃、瓦礫の下敷きでペシャンコだぜ」
凱 「胸を張って言うことか…」 ヤレヤレ
広目天「ほぅ…。神の威光を恐れぬ者がまだおるのか」
號 「神だかヤニだか知らねぇが、恐れるモンなんざ姐さんと車さんの逆鱗だけだぜ」
莉嘉「意外とあるんだ?」
號 「ウッセ」
渓 「けど、ホントにやる気?何て言うか戦う気力が根こそぎ奪われていくような……只の相手じゃないって感じ」
號 「ビビってんじゃねぇ!こういう勝負は、先に音を上げた方の負けよ!ここが正念場だ、おりゃあ!!」
ソードトマホークを携えて、スーパーゲッター號が、増長天に躍り掛かる。
ガギンッ
増長天「っ…!」
號 「おらよ!こいつでかっ捌いてやるぜぇ!!」
増長天「此奴…!?ゲッターの力も持たず…!その程度の力で!」
戟を振り払い、スーパーゲッター號を吹き飛ばす。
號 「ぐっ…!」
増長天「身の程を知れぃッ!!」
號 「……っ!」
「フィンガーネット!!」
増長天「むっ!?」
スーパーゲッター號に追撃を加えるため放たれた応龍を、投射されたネットが捕らえる。
かな子「フィンガーネット!?あの技は…」
「何も助かったのは號だけじゃねぇぜ。ちょいと、格納庫でずっと寝かせちまってたコイツを、起こすのに一苦労したがな」
美波「あれって……ゲッター、ポセイドン…?」
弁慶「おうよ!何かあった時のために整備だけはしておいて正解だった。何処の馬の骨かは知らねぇが、俺達の家でもある早乙女研究所をぶっ壊した、そのツケはきっちり払ってもらわなきゃな!!」
渓 「だ、大丈夫なの…!?隊長!」
弁慶「分離と合体さえしなきゃりゃ、負担なんざねぇのと同じだ。心配は無用よ」
凱 「しかし…」
弁慶「へっ、口じゃ言っても伝わらねぇか。ならよ」 グイッ
フィンガーネットに捕縛され、脱出しようと暴れまわる応龍を引き寄せ、
弁慶「ぬぅん…!!」
ゲッターポセイドンを中心に回転させ、応龍を持ち上げる。
弁慶「直伝!大雪山おろしぃぃぃいッ!!」
渾身の大雪山おろしで、応龍を投げ飛ばす。
弁慶「二段返し!!」
吹き飛び、体勢の崩れた応龍にストロングミサイルを撃ち、二段返しを以て応龍を粉々に吹き飛ばした。
増長天「ぬぅ…!」
弁慶「どんなもんってんだ!俺もポセイドンも、まだまだ現役よ!!」
號 「へっ、ロートルが無茶してんじゃねぇ」
弁慶「ンだとぅ!?」
號 「渓、凱!何時までも寝てるわけにはいかねぇぞ!」
渓 「分かってる!隊長だって体張って戦ってるんだ!」
凱 「何時までも戦隊長におんぶに抱っこでは格好も着かないからな!誰が相手でも構わん!やってやれ、號!」
號 「おうよ!オメーらも足引っ張ンじゃねぇぞ!」
多聞天「むぅ……」
莉嘉「おりゃぁあッ!!」
ガギンッ
不意を突いてゲッターアークが振り下ろしたトマホークを、多聞天はその肌で受け止めている。
莉嘉「何ぼんやりしてるの?こっちの勢いに圧倒されちゃった?」
多聞天「……何も、何も悟らぬのだな。お前達は」
美波「悟る…?何を」
多聞天「何故鬼のような存在が生まれた?何故孔明は、晴明は結託し、彼方の宇宙ではアトランティス流国が生まれ、遠き時空を越えこの地球に舞い降りようとしたのか」
かな子「それは…」
多聞天「地球を出たお前達人間が何をするのか。ゲッターに依り従うお前達がどうなってゆくのか、それを悟るのだ!ゲッターロボ!!」
ガンッ
語気強く、言葉を続ける多聞天を、ゲッターアークは蹴っ飛ばす。
莉嘉「何?ごコーセツって訳?神様って偉そーに話すのが好きだよね?勝手なイメージだけど。話す相手を見下してさ」
多聞天「最早、言葉では留められぬか」
號 「こっちは説法聞きに来た訳じゃねぇんだ。テメェらだって、同じだろうが」
ウヅキ「数の上でなら、もう一緒ですよ。さっきまでみたいなこっちを惑わす戦法もさせません」
広目天「ぬぅ…!調子づきおってからに!」
持国天「落ち着け、広目天。有象無象がより集まったところで、所詮は烏合。鎧袖一触の手間に過ぎん」
號 「鎧袖一触かどうか、その体に刻み付けてやるぜぇ!!」
莉嘉「いっくぞ~!!」
増長天「来るがよい!ゲッターロボ、人間共!!」
4機のゲッターロボと、四天王とがぶつかり合う。
ゲッターはトマホークやミサイル、ソードトマホークなど、それぞれが持てる限りの力を全力でぶつけ、四天王もそれぞれに得物を持ち、時に瞬間移動や巻物から炎を、天から雷を招来し、超常の力を以てゲッターを滅ぼすべくその力をぶつける。
空気が振るえ、分厚い雲すら霧散し、木々が薙ぎ倒され大地が裂ける。壮絶な戦いを真横に、1台の軍用車が早乙女研究所の跡地から彼方へと走り抜けた。
アキハ「…っと、始まったか。間に合ってくれれば、良いが──」
──。
美世「……っと、ふぅ。や~っと外に出れた……あ?」
瓦礫の山を掻き分け、非常階段への入り口だった場所から外へと出ると、そこでは激しい戦闘が繰り広げられている。
美世「うぅ…っ。何なの、あれ。誰か…!」
戦闘の余波が生む暴風や衝撃波に煽られながら、他の生存者を探して廃墟を進む。
美世「誰か…!無事な人は……誰か…。……!」
叫びながら辺りを見回すと、地面にへたり込んで座っている、見知った人影を見つける。
美世「茄子!!」
茄子「……」
美世「良かった…!無事だったんだ…!…茄子?」
茄子「……また、私だけ」
美世「また…?一体何が……!!」
茄子が項垂れる向こう。そこには、瓦礫の山となり原形を失った、孤児の保護施設が。
美世「そんな…!嘘…」
茄子「……sだけ、衝撃で吹き飛ばされたんですよ…」
美世「え?」
茄子「可笑しいですよね?また私だけ、生き残っちゃいました…。父と母を亡くした10年前のあの日から、もう誰も失わないと決めたのに!」
美世「茄子…」
茄子「運が良いなんて、嘘っぱちです。ホントは周りを犠牲にして、周囲を不幸にして!そうやってただただ生き延びているだけなんです!」
美世「そんな事……そんな事ない!少なくとも私は、茄子が生き延びててくれて良かったって、ホントにそう思ってるよ?」
茄子「…ダメですよ。きっと私は、誰にも愛される価値なんてないんです。美世ちゃんだって。ずっと一緒にいれば何時か美世ちゃんだって!生き延びるために殺しちゃうかもしれないんです!!」
パシィンッ
茄子「……ぁ」
美世「……っ」
美世の平手が、強かに茄子の頬を打つ。
美世「そんな…!可笑しな事言わないでよ!子供達は、茄子が殺したの?違うでしょ!子供達を殺したのは、今ゲッターが戦ってる訳の分かんないアイツら!アイツらが理由も言わないで、一方的に殺したんだ!茄子のせいなんかじゃない!」
茄子「…けど、私が生き延びてしまったのは事実なんです。10年前の、あの日と同じように」
美世「だったら死んでみるって言うの?死んだら両親に逢える?子供達に謝罪出来る?今の苦しみから解放されて、楽になれるの!?」
茄子「……」
美世「あり得ない!絶対にない!!私達は生きてるんだ!生きているから、こうして話して、叩いて。怒って叫んで!気に入らないって憤っていられるんだ!だから…!」
ギュッ
茄子「……!」
美世「全部自分のせいにして背負わないでよ。そんな、生きてることが不幸みたいな顔しないでよ…。これ以上、顔見知りがいなくなるなんて、ごめんだよ」
茄子「美世ちゃん…」
ガシャンッ
美世・茄子「「!?」」
友紀「おぉ!2人ともこんなところにいた~」
美世「ゆ、友紀!?どうしたの、そんなボロボロで!」
友紀「どうしたもこうしたもないよ。こんなところにいたらそっちだって危ないんだから。ほら、こっち来て手伝って!」
美世「手伝う?」
友紀「そ、ゲッターを動かすんだ。パイロットがあと2人いる」
美世「ゲッターを動かす…?ゲッターって、新ゲッター!?」
友紀「当然。瓦礫の山から掘り出す作業は、生き残った人達で、もうほとんど終わってるよ」
美世「けど、この研究所にパイロットなんて、もう…」
友紀「いるじゃん。私と…」
美世「私と、茄子ぉ!?」
友紀「もちろん無茶しろなんて言ってる訳じゃない。操縦桿を握ってくれるだけで良い!それでも、ゲッターが力を引き出すには、2人の力が必要なんだ!」
美世「私達の力が…」
茄子「どうして、そこまで…」
友紀「ん?」
茄子「どうしてそこまでして、戦おうって思えるんですか?相手は、研究所を一瞬で廃墟にするような相手です。見て下さい」
茄子が指を向ける先、四天王と戦うゲッター達は、押されてこそいないものの優勢と言う風にも見えない。互角、いやジリジリと追い詰められているようにも見受けられた。
茄子「ウヅキさんが、號達、莉嘉ちゃん達ゲッターの熟練のパイロット達が全力で立ち向かって、まだ1人も倒せていないような相手。そんなのを相手に、今更付け焼き刃みたいな私達がゲッターに乗って向かったところで、勝率が上がるとも思えません」
友紀「……」
茄子「それでも、立ち向かおうとするのは、何故ですか?」
友紀「だったら、このまま受け入れられる?ただ一方的に力で滅ぼされるのを、何も出来ないままただただ死んでいく未来を!!」
茄子「それは…」
友紀「あたしは、イヤだね!こんな所で、こんな形で終わるなんて。10年前、親父に助けられた時、誓ったんだ!何がなんでも生きて、生きて、生き抜いて!自分のやりたいことをやりきるまで、どんなに汚くったって生き続けてやるって!」
茄子「どんなに、汚くなっても…」
美世「やりたいことって…?」
友紀「さぁ?…でもさ、別の世界から来た、莉嘉達に会って思ったことがあるんだ」
美世「莉嘉達に?」
友紀「この世界で、アイドルって言うのをやるのも、悪くないかなって」
美世「えっ、アイドルぅ?」
友紀「莉嘉達の世界じゃ、あたし達だってアイドルなんでしょ?だったら素質あるって。きっと!」
美世「あはは…。そうかなぁ?」
友紀「大丈夫。根拠はないけど、何か上手くいく気がするんだよね~。だから、さ!」
美世と茄子の、2人に向かって手を差し伸べる。
友紀「自分の運命は自分で開くんだ。行こうッ!!」
美世「……」
茄子「……」
顔を見合わせる、2人の答えは──。
弁慶「うおおおッ!!」
ゲッターポセイドンが放つ渾身のパンチ。対する増長天は、戟の柄でその拳を受け止め、往なす。
弁慶「……っと!」
號 「車さん、頭下げて!」
弁慶「!?」
言われ、慌てて姿勢を低くしたゲッターポセイドンの頭上を、ソードトマホークの刀身が抜けていく。
號 「でぇぇぇいッ!!」
増長天「小癪な…!」
スーパーゲッター號の轟撃をまたしても戟で受け止める、増長天の姿勢が僅かに崩れる。
弁慶「バカ野郎!俺を殺す気か!?」
號 「意表を突いたんだよ!相手のな!」
増長天「形振り構ってられんか!…だが!」
號 「おわっ!?」
尚もソードトマホークで攻勢の意思を示すスーパーゲッター號を、戟を振るい軽く弾き飛ばす。
増長天「雑草が…!踏みにじられても何度でも!」
號 「おぅ!雑草根性、舐めんじゃねぇ!!」
地に倒れ伏しながらも、マグフォース・サンダーを放ち、増長天を捉える。
號 「車さん、今だ!」
弁慶「ストロングミサイルッ!!」
マグフォース・サンダーに捕捉された増長天に、ストロングミサイルが直撃。黒煙が上がる。
莉嘉「やぁあああッ!!」
広目天「…!!」
また別の場所では、ゲッターアークと広目天、真ゲッタータラクと持国天が激しい轟撃を交わす。
持国天「たぁッ!!」
ウヅキ「っ!!」
素早い剣捌きで放たれる持国天の剣撃を、真ゲッタータラクは容易なものは躱し、直撃になるものはトマホークでその軌道を逸らして相対する。
ウヅキ「はっ!」
真ゲッタータラクのトマホーク、その先端のランス部で持国天の頭部を狙い突き入れるが、持国天は首を軽く捻ることでその攻撃を躱す。
ウヅキ「……」
持国天「ふっふっふっ…!」
ウヅキ「……ふっ」
持国天「?!」
トマホークの刃がサイトへと早変わり。持国天の頸を再度狙う。
持国天「くぅ…!」
広目天「焼き払えぃ!!」
莉嘉「!!」
広目天が広げる絵巻から放たれる地獄の業火が、ゲッターアークに放たれる。
広目天「やったか…!?」
莉嘉「──っ!」
広目天「ぬっぅ!?」
しかし、ゲッターアークは即座に広目天の背後にその姿を現す。
莉嘉「バトルショットカッター!!」
広目天「ぐぬぅぅ!!」
バトルショットカッターを展開し、突き出されたゲッターアークの右ストレートを、一気に後退することで回避。
広目天「天動招雷・響鳴衝破ッ!!」
莉嘉「サンダーボンバァァーーッ!!」
広目天が空かさず絵巻から召喚した轟雷と、片腕に集束したサンダーボンバーで撃ち合う。
広目天「チィ…ッ!」
持国天「広目天!」
広目天「持国天!」
気付けば、持国天と広目天が背中合わせに。そして、それぞれにゲッターと対峙している。
ウヅキ「ゲッター…!」
莉嘉「ゲッター!」
ウヅキ・莉嘉「「ビィィーームッ!!」」
持国天「ぬぅ…!」
広目天「ぐぉぉぉおッ!?」
それぞれに、向けられたゲッタービームを受け止めるが、爆発。爆煙が辺りを包む。
號 「どうだ!?」
ウヅキ「……」
弁慶「…まだ、気を抜くのは早ぇみてぇだぜ」
美波「っ…!」
増長天「……」
広目天「……」
持国天「……」
戦闘が生んだ煙が晴れ、三天王が姿を現す。ほとんど無傷の姿で。
かな子「さっきまでの攻撃、全然効いてない…!?」
凱 「まさか…!多少なりとも、ダメージは与えている筈です!」
渓 「まるで次元が、違いすぎる…!」
多聞天「はじめから分かりきっていた筈だ。貴様らでは、我らには勝てん!」
號 「へっ、上等じゃねぇか!んなデケぇ面して、あとで吠え面かくんじゃねぇぞ…!」
渓 「でもどうするの!?あたし達が束になっても、あの4人の内、1人でも倒せるかどうか…」
弁慶「作戦、小細工。小手先が通用するような相手じゃねぇことは、確かだ」
ウヅキ「……」
莉嘉「くっ…!今のゲッターの力じゃ…」
アキハ『苦戦しているようだな』
美波「アキハさん!?研究所じゃない、一体何処に!?」
アキハ『ちょっと野暮用でな。そんなことより、どうだ?自称・神様は倒せそうか?』
凱 「こんな時に、悠長なことを…!」
號 「倒せそうか、じゃねぇだろ。コイツらを倒さなきゃ何ねぇんだろうが!」
アキハ『號の言うとおり。だが、倒す術はあるか?』
號 「そりゃぁ…」
アキハ『まったく…。いいだろう、私が授けてやる。ゲッターアーク!』
莉嘉「!? 何……これ…」
ゲッターアークのコックピット、サブモニターにマップと、ポイントを示したマーカーが映し出される。
アキハ『何でもいいから指定したポイントに来い。お前達に私から、いやこの世界から最後の力を授けてやる』
かな子「最後の、力…?」
美波「この世界からって…」
莉嘉「兎に角、ここに行けば、今の状況をひっくり返せるの?」
アキハ『あぁ。そこで戦っていても状況は変わらんだろう。ならばここは、私に乗れ』
莉嘉「……分かった!」
美波「けど、いいの?私達がここを離れたら…!」
號 「俺達を見くびるんじゃねぇ!」
ウヅキ「時間稼ぎ……4人の内3人くらいなら、こっちで引き付けられます」
弁慶「連中だって、ここにいる全員、この場から逃がす気はねぇだろうからな。俺達の心配はすんな!行ってこい!!」
莉嘉「うんッ!弁慶さん、ウヅキに、號!ここは任せる!!」
ギュンッ
方向を変え、指定されたポイントへ、最高速で向かうゲッターアーク。
持国天「むっ、奴等……1人逃げるか」
増長天「1匹たりとも逃がすものか!ここは我が…」
多聞天「待て、増長天」
増長天「多聞天?」
多聞天「あのゲッターの動き、何か妙だ」
広目天「妙?」
多聞天「連中が何を考えているか、それは分からぬ。だが奴のあの背中…。あれは、敵を恐れ逃げ出す者のそれではない」
持国天「何か秘策があると言うことか」
多聞天「我が往こう。持国天、増長天、広目天。お前達は、ここに残る者達に裁きを」
三天「「「応っ!」」」
多聞天がゲッターアークを追う。
號 「ちっ…!よりによって一番厄介な奴が…!」
増長天「多聞天は追わせんぞ!人間」
號 「はっ!テメェらこそ、ここに残ったことを後悔するんじゃねぇぞォ!!」
──。
莉嘉「くっ…!」
ゲッターアークを追う、多聞天がゲッターアークの周囲に雷を落とし、その行く手を阻む。
莉嘉「トマホーク、ブーメラン!!」
堪りかねてゲッターアークを反転させ、多聞天目掛けてトマホークを投じるも、多聞天が携える金箍棒によって、容易く弾かれる。
莉嘉「っ…!」
美波「莉嘉ちゃん、今は指定された場所に向かうことに集中して!」
莉嘉「分かってる!けど…!」
幾つかの雷が、ゲッターアークの肩や脇腹を掠める。躱し続けるのにも限界が生じつつある。
莉嘉「~~~…っ!もう、ウッサい!!」
携えたトマホークにエネルギーを蓄え、トマホークハリケーンを多聞天に直撃させる。
多聞天「……」
莉嘉「~~~…っ!」
かな子「下手に反撃して、直撃を受ければゲッターアークだって只じゃ済まないかもしれません。厳しくても、今は逃げ1択です」
莉嘉「くっそ~!今に見ててよ~!!」
言いつつ、ゲッターアークの速度を、更に上げる。
美波「心配しなくても、ゲッターアークの速度ならもうすぐ…。……!」
かな子「どうかしましたか?」
美波「うん…。アキハさんが指定したポイント……改めて確認したら、ここって私達が最初にこの世界にやってきた…」
莉嘉「着いた!」
森林や廃墟の群れを越え、指定ポイントに辿り着く。視界が開け、赤茶げた地面が深く擂り鉢上に抉られている、巨大なクレーターにも見える場所。
美波「ここ……はじめに来た時は事情を知らなかったから、分からなかったけど…。もしかして…!」
アキハ『そう。この場所こそ、10年前、世界の全てを覆した場所さ』
美波「やっぱり!」
莉嘉「どう言うこと?」
美波「10年前に起きたゲッター災害…。その発端となった、真ゲッターがストナーサンシャインを撃った場所…。それがここなんだよ」
かな子「えぇ!?」
多聞天「正しく忌み地と言うことか…。人間共が飽く事なく力を追い求め、身に余る力を手にしたことで、地獄を生んだ場所…」
多聞天(しかし何だ…?この感覚は…。単に高濃度のゲッター線が周囲を覆っているわけではない…。もっと異質な…)
莉嘉「ぐっ…!多聞天…!」
かな子「そんなところに、ゲッターの力があるんですか?」
アキハ『あぁ。これから、地獄の釜の蓋を開ける!』
美波「地獄の釜の?!」
かな子「蓋…!?」
リン『どう言うことなの?アキハ』
アキハ『おぉ、リン。そこは、地下の通信室か。止めてくれるなよ』
リン『止めるに決まってるでしょ。地獄の釜の蓋を開くなんて!』
美波「地獄の釜…。まさかこの世界にも、そう呼ばれるものがあったなんて…!」
アキハ『ほぅ…。お前達の世界にもあるのか。それは興味深い。…が』
話をしながら、コンソールで最後の電子ロックを解除する。アキハの目の前に、小さなバルブが現れた。
リン『何してるの?早く引き返して。アキハ!』
アキハ『10年…。長いものだったよなぁ』
リン『アキハ…?』
アキハ『10年前、真ゲッターがストナーサンシャインを撃った、ゲッター災害が起きた後の話だ。一度放たれ、消費されたエネルギーは、本来霧散し、跡形も残さず消える。その筈だった』
アキハ『だが、真ゲッターが放ったストナーサンシャインのエネルギーは霧散する事なく、この爆心地のど真ん中に滞留し尚、そのエネルギーを増大させたのだ』
リン『世界中を覆う高濃度ゲッター線で、私達もみんな地下への避難を余儀なくされた。私達に出来ることは、滞留するエネルギーがこれ以上ゲッター線を放出しないように蓋をし、封じることだけだった』
美波「それが、この世界の地獄の釜…」
アキハ『厄介極まりなかったよ。10年前の災害が残した、余りにも大きすぎる傷跡…。その為にここら一帯は再開発の目処も、あのアトランティス流国すら、ここには手を出そうとしなかった。何の為にと、ずっと考え続けていたが、ようやく今日、その意味を理解した』
かな子「もしかして、私達に授ける力って…」
アキハ『そうだ。10年前に災いをもたらしたゲッターエネルギー。私達にとっては疫病神に他ならない地獄の釜のエネルギー溜まり…。根こそぎ持っていけ!』
莉嘉「そんなこと、ホントに出来るの!?」
美波「さぁ…。流石に前例がないから。ゲッターエネルギーそのものを、直接受け取るなんて…」
かな子「ストナーサンシャインの……うぅん、10年もの間に増大したそれ以上のエネルギーを受けることになるんです。最悪、ゲッターアークでも消滅しちゃうかも…」
莉嘉「リスク滅茶苦茶なギャンブルじゃん!」
アキハ『いいや、ギャンブルなどではない!私には、その確信がある!』
美波「アキハさん…」
かな子「私も……このままじゃ、神様にも勝てないんです。それなら、リスクを追っても、チャレンジしてみるべきだと思います!」
莉嘉「……」
かな子「それに、ゲッターは何時も私達の味方ですから。卯月ちゃん的に言うなら、ゲッターの力を信じる、です!」
莉嘉「ゲッターの力を信じる、か…。分かった!」
アキハ『釜の蓋はもうすぐ開く!早く爆心地の中心まで来い!』
多聞天「そんな思い通りに、させると思うか!?」
アキハ『私を攻撃するか?それでもいいぞ。貴様の攻撃でも、釜の蓋は破壊されるだろう。結果は変わらん!』
多聞天「むぅ…!」
リン『アキハ!今からでも考えを変えられない?』
アキハ『そんなもの……愚問だな』
リン『そう…』
アキハ『釜の蓋を開けた結果、どうなるかなどは、元より分かっているさ。だからこそ、私なんだ』
リン『それは…』
アキハ『死んでいると言うならそうなんだ。10年前から、当に私は死んでいた。恩師早乙女博士を、目の前で失った時、何で私なのだと悩みもした。非力な己を悔やみ、生きていても仕方ないと、自暴自棄になりもした。だからこそ、その為の10年だったのだと、今なら理解る!』
リン『……』
アキハ『人類の事は任せたぞ。ではな』
リン『アキh──』
通信を切る。釜の封印が緩み、足元から仄かにゲッター線の光が、辺りに立ち上ぼり始める。
アキハ「これがゲッター線の光…。間近に見るのは初めてかもしれないな…。こんなに、美しいものなのか…
アキハ(この美しい光が、数多の命を奪いもする…。分からないものだな、結局…)
アキハ「──!」
ゲッターの光が、アキハを包み込む。
アキハ「ゲッターの光…!宇宙……進化…!確かに宇宙とは、生命があって初めて、その存在を確立させる…!宇宙と生命との関係性はいや、ゲッターと生命の関係は!宇宙が誕生した時から起因しているのか!!」
アキハ「理解った!理解りましたよ、早乙女博士っ!!だから博士は、博士でなく、私に!ふふふふっ──!」
アキハ「さぁ、ゲッターが待っているぞ…。早く来い、ゲッターロボアーク!!」
バルブが開き、地獄の釜が開かれた。堰を切ったように膨大なゲッターエネルギーが天を目指して噴き上がり、アキハの視界も白い闇に呑まれて消える。そして──。
莉嘉「……アキハ?」
多聞天「んっ…!」
ストナーサンシャインが生んだクレーターをも破壊せん勢いで噴き上がるゲッターエネルギーの波に多聞天は後退。ゲッターアークはその輝きに包まれ、消える。
多聞天「これほどのエネルギーを溜め込んでいたとは…。しかし、これだけの量、ゲッターロボなどでは一溜まりもあるまい…」
言葉を溢しながら、光の向こうに視線を注ぐ。
多聞天「!?」
光の中から、影が現れる。それは、
多聞天「この気配は、まさか…!」
その身に光を宿した、ゲッターアークだ。
つづく
予告
果てしない宇宙、果てなき進化、終わりなき戦い。
愚かなる戦いを止めるのが神々の宿命であるならば、神の手を脱するために人類は進化するのか?
地獄の釜の力を手にし、四天王と互角に渡り合うゲッターアーク。この戦いの果てに立っているのは、神かゲッターか。この生存競争の先に待ち受けるものとは──?
次回、第4部最終回。
『遥かなる旅路』