東方存在録   作:大神 龍

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第九話

「はぁ…結局、やる事無かったな」

 

「無くしたのは迅真じゃない」

 

 屋敷に帰ってから呟いた迅真にすかさず突っ込むルーミア。

 

「そんな事言われてもなぁ…想像より弱かったし」

 

「一回死にかけてたくせに言うセリフじゃないわ」

 

「アハハ…えっと、怒っています?」

 

「当たり前でしょ。あんなに余裕そうな事言って、実際には一回死にかけてるじゃない。思わず辺り一帯抹消するところだったわよ」

 

「おぉぅ…すまん…でも、せめて消すとしてもアイツだけにしろよ?」

 

「さすがに二回目は自制が効かないわ。何も許さないし、みんな殺す。壊すし一片の欠片も残さないわ」

 

 いっそ清々しいくらいの笑みで答えるルーミアの顔を見て、頬を引きつらせる迅真。

 

「よし。もう寝よう。そうすれば誰も傷つかないぜ」

 

「そうね。そもそも中途半端に寝たから眠いわ…おやすみ~」

 

「おぅ。おやすみ」

 

 ルーミアが布団に入ると、その後ろから自然に迅真が入ってくる。

 

「……なんで入ってくるのよ」

 

「寂しくない様に?」

 

「別に、私は同じ部屋にいればいいんだけど?」

 

「じゃあ、俺が寂しいからな。一緒に寝かせてもらうぞ」

 

「うぅ…逆に私が寝にくいんだけど…」

 

「何か言ったか?」

 

「べ、別に…?」

 

 絶対聞こえてるくせに。とは言わない。首筋に息が当たってくすぐったいが、我慢して静かに寝る事にする。

 

「……ルーミア…抱きしめても良いか?」

 

「え?ちょ、うわぁ!」

 

 聞かれたが、答えを返す前に行動され、腕の中に引き寄せられてしまう。

 

「あうあうあ…ひ、久しぶりすぎて恥ずかしい…!!か、顔が熱いんだけど…!!」

 

 こういう時は逆に迅真の方を向いて抱きしめ返せば落ち着く!

 

 という、昔試した対処法をしようとした瞬間、

 

 

「んっ…!?」

 

 

 振り向いたと同時に唇を奪われる。

 

「…………」

 

 数秒の放心。

 

「………!!」

 

 やっと状況を理解し、唇を離すと、

 

「クッ…もう理解されたか…!後3秒は行けると思った!」

 

「じ、迅真ぁ!!」

 

 迅真の胸板を軽く叩く。

 

「アハハハ…ごめんごめん。反省も後悔もしてないから許してくれよ」

 

「ゆる…ゆ…ゆ……いや、それ許せないよ!?」

 

「おっと。バレたか」

 

「せめて反省して断ってからしろ!」

 

「嫌だね。驚いて顔を真っ赤にするルーミアも好きなんだぜ」

 

「う、うぅぅ、ウガー!」

 

 ルーミアはそう言うと、勢いよく迅真の首筋に噛みつく。

 

「うぎゃぁ!!痛い痛い!!死ぬ!死んじゃうから!!」

 

しはへはしはひはほ(死なせはしないわよ)!!しははひへひほひひはへふへへはふは(死なない程度に痛痛めつけてやるわ)!!」

 

「気持ちは伝わったけど痛くて泣いちゃう!!泣いちゃうから!!」

 

ほんはほひははひは(そんなの知らないわ)はひはほふへへやふんらはは(噛み痕付けてやるんだから)はわんひへふへははひ(甘んじて受けなさい)!」

 

「イヤァァァァ!!痛くないのが良いんだけどぉ!?」

 

ふふははひわ(許さないわ)!」

 

「あ、あぁぁ……なんだろ…俺、何したっけな…いや、別にこの状況に不満は……やっぱり、痛くないのが良いんだけど。ねぇルーミア?そこらへんどうにかならない?」

 

はらはひ(ならない)

 

「そうですか…まぁ、キスの代償とでも思っておこう。そうすればこの痛みも……大丈夫!ルーミアから受けたのだし!!」

 

「………ふはっ…もうダメかもしれない。救いようがないわ」

 

「大丈夫だ。最低限ルーミアがいれば俺は生きていける。いなくなったら死ぬわ。絶対死ぬわ。速攻死ぬわ。ありとあらゆる手を使ってお前を蘇生させて無理だったら死ぬわ」

 

「迅真…!!」

 

 でも、私には逃げるのを許さなかったくせに逃げるなよ?と言わんがばかりの黒い光も見て取れた。

 

「まぁ、そもそも俺がいる限りルーミアは殺させないし、お前がいる限りもう二度と死にはしない。俺の名とお前に誓って俺は絶対に死なない。これでいいか?」

 

「当たり前よ。私も貴方を死なせないし、貴方が死なない限り私も死なないわ。そして私はどれだけ頑張っても死なない。だから永遠に生きてもらうわよ?」

 

「望むところだ。いくらでも付き合ってやるし、愛し尽してやる。一片の欠片も残さず全てだ。もう良いなんて言わせはしない。永遠に、俺の愛でとけるほどに愛してやるよ」

 

「それなら私も負けないわ。いくらでも、死にたくなるほどに愛してあげる」

 

 二人の顔は一気に近くなり、また、重なる。

 

「………ぷはっ…ふふっ、本当に久しぶり。何時ぶりかしら。こんなになったの」

 

「さぁな……輝夜の時じゃないか?あの時も家を買った後に同じような事をした気がする」

 

「ん~……そうだっけ?」

 

「そうだったと思うぜ」

 

「…まぁいいや…今が幸せで、これからも幸せなら」

 

「それもそうだな…しばらくはもう動くつもりはないし。何か変なのに巻き込まれない限りこのままだ」

 

「そう…なら、しばらくは心配しないでのんびりしてられるわね…」

 

「そうだな…」

 

 二人は、そのまま眠りにつくのだった。

 

 夜闇に紛れて、一回、鳴き声が響いたことを彼らは知る由も無かった。

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