東方存在録   作:大神 龍

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第十二話

 迅真はゆっくりと息を吐き、

 

絶喰(ぜっくう)光絶喰牙(こうぜつくうが)』」

 

 瞬間、横薙ぎの一撃と共に放たれた暗黒の斬撃は影すら見えず、だが、進む度に大きくなっていく。それはまるで、そう。光すらも喰らい、侵蝕しているかのように。

 

 紫はそれを見て、咄嗟に回避し、スキマの中に入る。

 

 だが、迅真は冷静にダーインスレイヴを構え、

 

「『宵ノ斬撃(よいのざんげき)』」

 

 一回転しつつの横薙ぎの斬撃。それは、振るわれると同時に黒い剣閃を残し、次の瞬間、紫を引きずり落とす。

 

「なッ!!」

 

 咄嗟に紫は受け身を取り着地すると、再びスキマに逃げ込もうとする。

 

「『黒炎ノ糸(こくえんのいと)』」

 

 地面から噴き出た黒い炎がスキマの縫い、紫を阻む。

 

「嘘っ…!!」

 

「どうした?もう終わりか?」

 

「クッ…集と散の境界!!」

 

 無数の砂や石が集まり、迅真に向かう。が、

 

「効くか」

 

 全反射。反射した砂や石同士もぶつかり、粉のようになっていく。

 

「行くぞ」

 

 一瞬にして紫に近づき、縦に大ぶりの一撃を放つ。

 

「うぁッ!!」

 

 右に避け、すぐに霊力製のナイフで一撃放つが、

 

 迅真が強く地面を踏みつけると同時に隆起して来た地面に吹き飛ばされる。

 

 だが、紫はすぐに体勢を立て直すと、自分を吹き飛ばした地面に掴まり、迅真に向かって飛び降りる。

 

 迅真はそれを軽くかわすと、紫はドンッ!と音を立てて着地し、足払いをしてくる。

 

 瞬時に後ろに跳んでそれを躱すと、紫が数発の妖力弾を放ってくる。

 

「捕食対象だ」

 

 軽く振るい、妖力弾をダーインスレイヴに喰らわせる。

 

 が、直後目を見開き驚く。

 

 ダーインスレイヴが紫を隠した一瞬で彼女は消える。

 

 そして、迅真がダーインスレイヴを振るい切るより早く、紫が地面から飛び出て迅真を下から斬り上げる。

 

「うぐっ…!!」

 

 迅真は数歩下がり、紫が着地する瞬間を狙って突きを放つ。

 

 しかし、その一撃は当たらない。

 

「成否の境界。まぁ、運よく躱せただけとも言えますけどね…!」

 

 紫はそう言って、迅真の頭を蹴り上げる。

 

「ガッ!!……つぅ…良いな…!どんどん来いや!!」

 

 迅真の足払い。紫はそれをあえて受け、倒れ込む様にスキマへと入って行く。

 

「『致死武器(スカーデッド)』。今まで受けた痛みの再臨だ。名誉に、屈辱に、受けた傷は開き、血に染まれ」

 

 瞬間、スキマが開き、転がり出てくる紫。

 

 その姿は血塗れで、体中に傷が出来ていた。

 

「古傷を生傷へ変える…って事ですか…?」

 

「まぁ、な。さて、どうする?」

 

 すでに、これまで負ってきた傷の総数は数えられないほどで、紫は流れ出る血の量が尋常ではなく、もう瀕死の状態だ。

 

「うぅ……有と無の境界…!」

 

 スキマに入りながらそう呟く。

 

 瞬間、迅真の上空から出現すると、一撃、ナイフを振るい、その軌跡に弾幕を放っていく。

 

「『柄見本(サンプルファンブル)』!!」

 

 迅真はその一撃をダーインスレイヴの柄で殴る。すると、まるで斬られた様に妖力のナイフが切断される。

 

「嘘っ!!」

 

「事実だぜ!!」

 

 迅真は素早くダーインスレイヴを振るい、紫は瞬時にスキマを作る。が、

 

「『狙数増(ゲットターゲット)』『これっきりの厄足(リミテッドフット)』『血は水よりも薄い(ウォータージェットメス)』『大爆傷(ダイナマイトスマイル)』」

 

「ッ…!?」

 

 瞬間、放たれた一撃は、一瞬にして紫の左腕を斬り落とし――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドゴォォォッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 爆音を立てて紫は吹き飛ぶ。

 

「さすがに、『大爆傷(ダイナマイトスマイル)』まではやり過ぎか……まぁ、安心院なじみの能力は異常ってのが再確認できたな。何時か戦ってみたいもんだ」

 

 そう言っている間に、結界が消える。

 

「っとと、封印しないとな」

 

 迅真は闇を正面に出して、そこにダーインスレイヴを突き刺すと、

 

「王の顎門(アギト)。再封印式構築。食事を終了する。……ご馳走様でした」

 

 ダーインスレイヴの赤い刀身が黒くなっていき、元に戻ると、そのまま闇の中へと沈めていく。

 

「さて、紫。どうだった?」

 

 地面に仰向けで倒れている紫を見て、聞く迅真。

 

「うぅ…見た事の無い能力が…たくさん…」

 

「そりゃそうだろうよ。世界が違う。まぁ、ルーミアは知ってるかもしれないが。何せ俺のバッグの中から本とって読んでたし」

 

「未だ全部読破は出来てないけどね…一体何冊あるのよ」

 

「さぁ?万?億?数えてねぇからな。大体そんくらいだと思うぜ」

 

「じゃあ読み終わる訳無いでしょ」

 

「まぁ、俺も読んで無いのがいくつかあるしな。仕方ない」

 

 迅真はそう言って、ルーミアのいる縁側に行き、ルーミアの隣に座る。

 

「まぁ紫。お前は十分強くなったと思うぜ。かなり焦ったしな」

 

「そんなお世辞は要りませんよ」

 

「はぁ…お世辞じゃないけどな。ダーインスレイヴを使った時点でかなり焦ってたし。しかも今回はオリジナルで頑張るつもりだったのに最終的にはスキル使っちまったし。何とも言えない結果だ。戦いに勝ったが勝負に負けた感じだな」

 

「でも…納得いきませんよ。結局勝てて無い事に変わりは無いんですし」

 

「ハハハ!!そういうとそうなるな!でも、俺とルーミア以外になら大体勝てるんじゃないか?」

 

「むむ…それはそうですが…迅真さんに勝てないと悔しいです」

 

「ふざけんなッつの。それで俺が負けたら俺の立場が無いだろうが。死んでもこの座は譲れねぇな」

 

「それでもいつか譲ってもらいますよ」

 

「嫌だね」

 

「そんなの私が許さないわ?」

 

 微笑むルーミア。しかし、その目は笑っていない。

 

 迅真と紫は何とも言えない表情になり、目を逸らす。

 

「まぁ、紫。取りあえず、休憩しよう。んで、仕事手伝え」

 

「えぇ!?私もですか!?」

 

 文句を言いながらも、三人は家の中へと入って行く。

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