東方存在録   作:大神 龍

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 王は帰還した。

 月の者よ。その力に怯えるが良い。


第三話

「貴方は?」

 

「薙浪迅真。よろしくさよなら綿月依姫」

 

 迅真は言い終わると同時に近くに落ちていたダーインスレイヴを引き抜き瞬時に振るう。

 

「ッ!!」

 

 一瞬遅れて依姫は回避し、ギリギリ回避できた。

 

 否、

 

「(回避させられた…!?)」

 

 あえて振るう速度を落としている。依姫は瞬時のそう察し、

 

「舐め…るなぁ!!」

 

 光の速度に等しい斬撃は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピシッ。

 

 

 

 

 

 

 

 人差し指と親指に掴まれる。

 

「え…?」

 

「驚く暇なんてないぞ?」

 

 瞬間、投げ飛ばされる依姫。

 

 一回、二回とバウンドし、空中で体勢を立て直すと、

 

「『祇園様』!!」

 

 地面から刀が生え――――

 

 

 

「『帰れ』」

 

 

 

 生成されきる前に消滅する。

 

「祇園様を感じられない…!?何をした!?」

 

「帰した。正確に言うのなら、『祇園様の存在を依姫の中から消した』」

 

「帰した…?そんな…バカな事が…!!」

 

「出来るんだよ。お前からしたら悲しい事に、いともたやすくな」

 

「そんな…な、なら、『愛宕様の火』!!」

 

 瞬間的に出現する炎は、迅真に向かい――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『燃え尽きな』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その炎より明るい炎が飲み込み、その炎は消えてしまう。

 

「『存在を燃やした』。んじゃ、次はこっちだ。しっかりと避けろよ…?」

 

 

 

 

 迅真がゆっくりと手を上げ、それに呼応するように無数の剣が生成されていく。

 

 

 

 

 

「『剣の存在を生成』『剣に追尾の存在を付与』『以上の二つの条件を満たす存在を複製』」

 

 

――――煌々と輝く剣はひたすらに生成され――――

 

 

「『一斉射出』」

 

 

 

 

 

 ドゥッ!!!と、空気を押しつぶすような勢いで同時に放たれる剣の群れ。

 

 

 

 

 

 

「い、『石凝姥命(いしこりどめのみこと)』!!」

 

 瞬間、何かが舞い降り、鏡を持ち――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その鏡を避けて依姫に襲い掛かる。

 

「追尾。確かに俺はそう言ったが、言っただけが全てだと言った覚えはないぜ?」

 

「くぅっ!!」

 

 依姫は悔しげに声を漏らしつつも必死で剣を打ち砕き続け――――

 

 

 

「あぐぅっ!!」

 

 

 

 一本だけ通してしまい、脇腹に突き刺さり、その痛みに依姫は膝を着く。

 

「さて…これでやっと痛み分けとしようか。ルーミア。動くなよ?」

 

「え?あ、うん」

 

 迅真はルーミアの後ろに回ると、しゃがんで傷を指先でスゥッとなぞる。

 

 すると、傷はきれいに消え、出ていた血も無くなる。

 

「ついでに服も直しとくか」

 

 もう一度傷の部分を、今度は手のひらを使ってなぞると、服が元通りになる。

 

「痛みは引いたか?」

 

「うん…でも、なんか違和感あるわ」

 

「それはちょっとだけ我慢してくれ。さすがに違和感まではどうしようもないんだ」

 

 ルーミアの頭を撫で、迅真は立ち上がり、

 

「んで?まだやるのか?俺はさっさとルーミア愛でたいんだけど」

 

「堂々と言うわね。嬉しいけど」

 

「あら、お熱いですわね」

 

 いつの間にか紫が隣にいた。

 

「お前、向こうで戦ってたんじゃないのか?」

 

「迅真さんがいるのになんで戦うんですか。もう撤退しますよ。ほとんどやられてしまいましたし、私一人で戦うにはかなり強いですし」

 

 ため息を吐き、迅真に寄り掛かる紫。

 

「ちょっと、何寄り掛かってるのよ。そこは私の場所よ。退きなさい」

 

「おぅ。いつからルーミアってこんなに積極的になったんだ?」

 

 紫を追い払う様に迅真に抱き着くルーミアを抱きしめ返しながら迅真はそんな事を呟く。

 

「さて…何か増えてるが、どうするんだ?帰らせてくれるのか?」

 

 迅真が視線を依姫に向けると、近くにいつの間にかもう一人の少女が居た。

 

 腰ほどもある金髪に、同色の瞳。その少女は、明らかな敵意の視線を向けている。

 

「貴方が依姫を…?」

 

「まぁ、そうだな。そういう事になる」

 

「許せない…!!」

 

 少女はそう言うと同時に持っていた扇子を広げ、勢いよく仰ぐ。

 

「浄化されなさい!」

 

「超お断り」

 

 右手の人差し指をクイッ!と上げると同時に生み出された風が消滅する。

 

「森を素粒子レベルで浄化させる風…だったか?そんなもんを向けんな。死んだらどうすんだっての」

 

「最初からそのつもりよ!!」

 

「ったく…そんなに頭に血が上ってたら大切な物全部失うぞ?」

 

 迅真はそう言うと、ルーミアと紫に退いてもらい、ゆっくりと少女に近づいて行く。

 

「く、来るなぁ!!」

 

 扇子を仰ぎ、

 

「だから、危ないって言ってるだろ」

 

 瞬間的に消される。

 

「まずお前がしなくちゃいけないのは、撤退だ。そいつが大切なんだろ?」

 

 いくら風を放っても、まるで効いている様子が無い。

 

「ならさ、俺たちは帰ろうとしてるんだ。そのまま帰らせればいいだろ?」

 

「それでも私は貴方を許せない!!」

 

「なら、これでいいか?」

 

 一瞬にして少女の目の前にたどり着くと、座ったまま動けない依姫の傷口に触り、

 

「『傷と汚れの存在を消す』」

 

 言葉と共に傷は消え、それと同時に服に染みついた血まで消えて行く。

 

「…まだ、やるか?」

 

 もう、何も言う事は無かった。少女はその場に崩れ落ちる。

 

「名前は…豊姫だったか。お前は、優しいんだから、常に冷静に居るように努めな。そうすりゃ、守れる奴も増えるだろうよ」

 

 少女――――豊姫の頭を撫で、迅真は瞬時にルーミア達の元へ戻る。

 

「んじゃ、またいつか会おうぜ。月の姫様」

 

 そう言い残し、三人はその場から消えるのだった。

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