東方存在録   作:大神 龍

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鵺の呼び声~正体不明の生命体~
第五話


「不思議な妖怪が出るらしいぞ…?」

 

 そんな噂が流れている街があった。

 

「なんでも、夜になると不思議な鳴き声が聞こえるのだそうだ」

 

「天皇様の側近たちがそれを退治するために人を呼んだそうな」

 

「確か名は――――」

 

――――夜の恐怖は、もうすぐ終わりを告げる様だった。

 

 

 * * *

 

 

「それで?その妖怪をどうするの?」

 

 ルーミアは、不思議そうな顔でそう聞く。

 

「いや、見てみたくないか?だって、夜な夜な不思議な鳴き声で人を苦しませるんだぜ?俺の勘だと、コレは(ぬえ)だと思う!キマイラ型妖怪鵺!複数の動物の部位を持った伝説級の妖怪だ!面白そうだろ!!」

 

 鵺。それは、複数の姿を持ち、見る者によって姿が違う、という正体不明の妖怪である。

 

 そして、現在彼らはその噂の中心である街へと向かっているのだった。

 

「なんか、迅真って、帰って来てから妙にテンション高くない?」

 

「まぁ、数十年ぶりにルーミアと会ったんだし、当然だ!」

 

「ふぅん?本当にそう?何か隠してない?」

 

「な、何言ってんだよ。別に隠したって得の無い事は全部言ったぞ?」

 

「……隠し事はあるんだね。まぁ、無理には探らないけどさ」

 

「何時か話すさ。何時になるかは分からねぇけど」

 

「なによそれ」

 

 と突っ込んだ後、ルーミアは笑顔になり、

 

「でも、話してくれるっていうのなら何も問題は無いわね。聞きだすまで逃がさないから」

 

「おぅ。そうしててくれ。もうお前の腕からすり抜けるような事は無いと思うけどな」

 

「そこは断言しなさいよ」

 

「難しい事を言うな。ルーミアは」

 

 右腕を抱きしめて離さないルーミアの頭を撫でつつ、進んでいく。

 

「……ルーミア。しっかりつかまってろよ」

 

「そこは抱き上げてくれるのが一番じゃない?」

 

「それもそうか」

 

 迅真がルーミアをお姫様抱っこし、その場から前に向かって一歩、力を込めて踏みだし前進すると同時に、先ほど居た場所に無数の霊力弾――――いや、神力弾が撃ち込まれる。

 

「神様か。しかも、対妖怪専門の厄介な神様」

 

 チラリと草陰に目を走らせると、陰陽服を着ている男性の様な人物を発見する。

 

「そこか」

 

 跳んでいる最中に無数の剣を生成し、着地すると同時にその剣を一斉射出する迅真。

 

 剣の群れはその男の元へと進んでいき、森の中へと入って行き――――

 

「チッ、全弾砕かれた」

 

「おぉぅ、意外。砕かれるような代物じゃないと思ったのに」

 

「一応、鉄レベルの強度にしてるから剣で弾かれるんだが…砕かれるのはさすがに想定外だ。しかも、全部一撃。正面からの相殺だ。普通鉄を砕くって、難しいと思うんだがなぁ」

 

「神だし、出来るんじゃない?」

 

「認めたくねぇな。そんな恐ろしいの。そもそも、なんで神様と争ってんだ俺は」

 

「私が原因かしら…?」

 

「…………よし。殲滅目標視認。見敵必殺。サーチアンドデストロイだ。俺のルーミアに手を出そうとした報いを受けろカミサマ」

 

 目の色を変えて殺意を露わにしながら先ほどの男を睨みつける迅真。ちなみに、男は木の陰に隠れていたりする。

 

「一気に潰す。『存在の生成:鉄塊』。行くぞ、対神様用最強コーティングの超電磁砲(レールガン)だ。吹き飛べやオラァァァァァ!!!!!!!!」

 

 音の壁を数度砕き、その砲弾は男へ向かい――――

 

「……やったの?」

 

「全然。掠りもしやがらねぇ…おかしいな…避けたっていうより、消えた感じだ」

 

「…分体かしらね。神ならやりかねないけど…」

 

「かなぁ…むしろ、そうじゃないと俺の立場がねぇ…帰って来てこのザマかプギャアって言われる気がしてならねぇ…」

 

「迅真は一体誰と戦ってるの…?」

 

「己の中の中二病と…」

 

「……うん。聞いちゃいけない質問だったみたいね」

 

 遠い目をし始めた迅真を見て、苦笑いをしつつ言うルーミア。

 

「と、とりあえず、見える危険は去ったし、行こうよ」

 

「それもそうだな…はぁ、ビビった。また出てくる気がしてならねぇんだけど…」

 

 立ち上がりつつ、ルーミアはふと思った事を言う。

 

「ねぇ、さっきの、変な神じゃなかった?」

 

「変な…まぁ、気配が人間と妖怪と神の混ざったような変な感じ…半分妖怪で…祭られてる人間…?」

 

「しかも、陰陽服に膨大な力。変なのも居るわね」

 

「……安倍清明…?」

 

 いや、まさかな。そう思い、考えを切り捨てる迅真。というか、そんな大物に会いたくない。

 

「清明かぁ…いや、でも、母親が白狐だった気がするよ?それなりに力の強い奴」

 

「……まぁ、そんな大物なんかが俺達を狙うわけないって」

 

「……え?本気で言ってるの?冗談よね?」

 

「え?何その反応。想定外なんだけど」

 

 目を見開いて言うルーミアの言葉に驚き、迅真は聞きかえす。

 

「迅真。そもそも、私の時点で知名度すごいのよ?更に、迅真自身も凄い有名だからね?この前の月面戦争だって、紫の呼びかけで集まってるけど、半分近くは私名義だし、全体の3割くらいは迅真の仇討ち名義よ?というか、それで集まる事にびっくりしたわ」

 

「聞いた俺もビックリだわ。なんだそいつら。めっちゃ気になるんだけど」

 

「旅してる最中に会った野良妖怪の群れだと誰が気付けるだろうか。って感じね」

 

「マジか…で?そいつらは?」

 

「無事撤退できたッポイよ。運がいい奴らだったわね」

 

 言っている間に、街が見え始めていた。

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