東方存在録   作:大神 龍

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第七話

 すっかり日は沈み、辺りはすでに闇の中だ。

 

「夜…妖怪が出るのって真夜中だっけ?」

 

 ぼんやりとした表情で月を見上げつつ、迅真は聞く。

 

「迅真が自分でそう言ってたじゃない…しっかりしてよ」

 

「ん~…眠くてそれどころじゃない」

 

「じゃあなんで妖怪を見るんだ!!って言ったのよ」

 

「だってさ…早めに出てくると思ったんだよ」

 

「なんか、迅真がどんどんダメになって行ってる気がする」

 

「ルーミア成分の過剰摂取…?」

 

「何その成分初めて聞くんだけど?」

 

 だって今作ったし。と迅真は言って立ち上がると、押し入れから布団を取り出し、おもむろに敷きはじめる。

 

「迅真?まさか寝るつもり?」

 

「……もう一組用意するか」

 

「いや、そのままで良いから」

 

「え?」

 

 迅真は襟首を掴まれ、敷かれた布団に叩きつけられると同時、ルーミアにのしかかられる。

 

「うおぁ!?想像してなかった最高の状況!これはこのまま寝るしかない!」

 

「おやすみ~」

 

「え?本当に寝るの?」

 

「…寝ないの?」

 

「え、あ…おやすみなさい」

 

「おやすみ」

 

 二人は、結局そのまま寝た。

 

 

 * * *

 

 

「――――ルーミア。聞こえたか?」

 

「聞こえた。街の外ね」

 

 ヒョー。ヒョー。と聞こえるその鳴き声は、はっきりと響いてくるため、恐怖を与えるには十分だ。真夜中の不吉な鳴き声。

 

 迅真は立ち上がり、いつもの様にショルダーバッグを持つと、ルーミアの手を取って抱え上げ、音の元に向かって飛んでいく。

 

「正確な場所は、もう少しだな……」

 

「もう少し右。あの一本だけちょっと高い木の下にいる」

 

「……敗北感が異常だが、とりあえずそこに向かうよ」

 

 超音波と熱源探知で探していたにもかかわらず、ルーミアに負けて悔しい迅真。数秒後に、本当にそこに生物がいてなおの事落ち込んでしまった。

 

「はぁ……俺の数十年は何だったんだ…」

 

「そもそも迅真のその能力は探知には向かないでしょ。更に言えば、私からしたら皆私の欠片だからどんな探知系の能力よりも早く見つけられる自信があるわ」

 

「……敵わないって諦めていいのか?」

 

「そうした方が痛みは少ないと思うわよ?」

 

「……許せないから次は勝つ」

 

 迅真はそう言って、反応があった場所の近くに下りる。

 

 

 * * *

 

 

「んで、どうするか」

 

「どうするって、正面突破でしょ?」

 

「いや…それはそうだけど、もし人間と鉢合わせしたらどうするんだよ」

 

「それは――――消えてもらうしかないわね」

 

「怖い怖い。まず助けるって選択肢は無いんですか」

 

「それは…まぁ、迅真が望むなら仕方ないわ。助けてあげましょう。記憶は奪うけどね」

 

「それでいいよ…あ、俺達に会った時だけの記憶だからな?それ以外は奪うなよ?」

 

「……残念」

 

「やる気だったのか!!?」

 

 最近、ルーミアが怖く思えて来た迅真。本性が出て来たんじゃないだろうか。

 

「まぁ、周囲警戒するだけで十分なんだけどな」

 

「やっぱり迅真も正面突破じゃない」

 

 二人そろって同じ選択しかないようだった。

 

「人は居ないし、問題ない問題ない。行こう」

 

「何のために話したのかしらね」

 

 ルーミアはため息を吐き、突き進んでいく迅真の後ろをついて行くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「おぉ~…キマイラ型かぁ~……どうやって倒すかなぁ」

 

 頭が猿。尾は蛇。胴体は狸で手足は虎の異形。消して低くは無い所を飛んでおり、迅真達には気付いていないようだった。

 

「倒すの?」

 

「ん~…冗談だよ。倒すのは俺じゃない」

 

「どういうこと?」

 

 迅真は二本の霊剣を作りつつ、答える。

 

「鵺の伝承は、源家の人間が弓で射落とし、家来が取り押さえて止めを刺す。そういう話になってる。だから、俺が倒すと色々と問題が出る。そんな訳で、俺の役目は追いやる事だ」

 

「ふぅん…?じゃあ、脅かすだけなのね。それでも良いけど、どうやるの?」

 

「別に、止めを刺さなきゃいいんだ。だから、殺さない様に、且つ逃げるように仕向ければいい。まぁ、見ててくれ」

 

 迅真は完成した双剣を持ち、突撃する。

 

「ハッハァ!!」

 

 ドゴォッ!!と轟音を立て、鵺は吹き飛ぶ。

 

「おいおい。これくらいでくたばらねぇよな?」

 

『ヒョーーーーーー!!!』

 

 奇妙な、だが心を揺さぶるような声に、迅真はにやりと笑い、

 

「死ぬんじゃねぇぞぉ!?」

 

 右の剣が鵺の爪と衝突し、衝撃波が発生する。

 

「まだだ…それじゃあ俺には届かねぇ!!」

 

 バキンッ!と音を立て、鵺の爪が折れると同時に左の剣で頭を狙い――――

 

 

 

――――尾の蛇に噛まれて止まる。

 

 

 

「ッ!!ハハハッ!毒か!?生憎、毒には異常なまでの抗体を持ってるから効かねぇな!!」

 

 右の剣で尾を斬り、体を捻り、回転を加えて左の剣で顔を狙う。が、

 

 ガキンッ!と音を立て、剣は砕かれる。

 

「へぇ!砕くのか!なら、もう一段階強化だ」

 

 瞬時に霊剣を生成すると、一度体勢を立て直してから一撃右の霊剣を振り下ろす。

 

 だが、なぜか復活していた蛇に止められる。

 

「再生速度が早い事で…!!」

 

 鵺の頭を蹴り上げ、下に回ると同時に左の剣で一撃斬る。

 

『ヒョーーー!!』

 

 悲鳴のように声を上げ、鵺は飛んで逃げて行こうとする。

 

「逃げるのか!?なら、オマケでこれも貰っとけ!!」

 

 両手の霊剣を投げつける。それは見事に鵺の尾を斬り落とし、そのまま鵺は逃げて行く。

 

「よし。これだけやればいいか。後は勝手に終わるだろ」

 

「…それでいいの?」

 

「いいのいいの。むしろ、問題はそこの奴だろ?」

 

 迅真は、霊槍を作ると同時に背後に全力で投げつける。

 

「フフフ…やはり、ばれていましたか」

 

 霊槍を受け流し、その人物は出て来た。

 

「残念ながら、どれだけ隠しても無駄だ。俺達には通じない」

 

 その人物は、陰陽服を着た男性。

 

「色々混ざって不思議な奴ね。迅真、どうするの?」

 

「倒すに決まってるだろ?」

 

「やれるのでしたら、どうぞやってみてください。『生命の掌握者』薙浪迅真」

 

「フルネームかよ…良いぜ、容赦なく叩きのめす」

 

 そう言って、迅真は男に向かって突撃する。

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