東方存在録   作:大神 龍

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第八話

「燃え尽きろ。焔刃(えんじん)陽炎(かげろう)』」

 

 取り出した一本のあるナイフによる赤い剣閃。それは一直線に男へと向かい――――

 

「来てくれ。『騰虵(とうだ)』」

 

 突如として出現した炎を纏った翼の生えている蛇に止められる。

 

「『朱雀(すざく)』。燃やせ」

 

 迅真は瞬時に衣を纏い――――

 

 

 瞬間、迅真を獄炎が襲う。

 

 

「火鼠に業火が効くと思うなよ…!!」

 

 言葉と共に紅い霧がゆらりと周囲を漂う。

 

「…?……ッ!!朱雀!!吹き飛ば――――」

 

「もう遅い!!『紅霧千刃(こうむせんじん)』!!」

 

 足元から徐々に上へとせり上がる浅い切り傷。

 

「ハハハハハハハハハハハハッ!!!!!」

 

 無数の斬撃と共に響く迅真の笑い声。だが、腹部に差し掛かるという時に暴風が吹き荒れ、霧を消し飛ばしてしまう。

 

「チッ!なら、もう一度――――」

 

「『青龍(せいりゅう)』!」

 

 緑色の龍が、迅真の喰らう。

 

「迅真!!」

 

「ふ、フフフ。伝説の存在といえども、あっけないものですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に、そう思うのか?」

 

 突き抜ける激痛。後ろからの一撃は、完全に油断していた彼からしては恐ろしいものだった。

 

「油断大敵。お前の敗因は俺の死を確認しなかった事だ」

 

「それは貴方も同じでしょう…!!!」

 

 

 

 最初に呼び出していた騰虵(とうだ)が尻尾で迅真を襲う。

 

「『反射』」

 

 キィンッ!!と高い音がすると同時に尻尾は吹き飛び、それと同時に吹き荒れる燃え盛る風。

 

「いただきます」

 

 ガブリとかぶりつき、そのまま炎を喰らう。

 

「貴方は…一体何者なんだ…!!」

 

「自らを人間だと信じる人外だ。覚えとけ」

 

 本気で男を蹴り飛ばし、迅真は宣言する。

 

 

 一回、二回とバウンドし、空中で体勢を立て直してすぐに別の式神を呼ぶ。

 

「『白虎(びゃっこ)』!!」

 

 男の言葉と共に現れる白い虎。

 

「噛み砕け!」

 

『GYAAAAAAAA!!!』

 

 大きく声を上げ突き進んでくる白虎。しかし――――

 

 

 

 迅真の正面でピタリと止まる白虎。

 

「『動物避け』。まぁ、このオートスキルが出てた本人は動物好きにも関わらず動物に怖がられて傷付いてたが、俺は全力で悪用する。いやぁ…神獣にも効くんだな」

 

 何も企まず、ただ歩いて白虎の前まで行くと、

 

「『帰るといい』」

 

 そう呟いただけで白虎は姿を消す。

 

「な…ッ!!」

 

「さて…最後は何が出てくるのかな?」

 

 ナイフに付いている紅い狼のエンブレムから漏れ出す紅い霧は、まるで狼の口の仲に居るかのような、死と隣り合わせの雰囲気。

 

「くっ……『玄武(げんぶ)』!!」

 

 呼び出されるは黒い甲羅を持った亀。その体には蛇が巻き付いている。

 

「へぇ…玄武…四神最強の大亀かよ…っていうか、十二天将使うとかやっぱり安部清明かよ…」

 

「さぁ、行きますよ!!」

 

 大亀に巻き付いている蛇が迅真を襲う。

 

「まだ、遅い」

 

 音より速い蛇の一撃を後ろに下がる事で躱し、霊力でもう一本ナイフを作って蛇へと突進し、

 

「『三爪炎痕《さんそうえんこん》』!!!」

 

 ナイフは蛇へと迫り――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――突如として吹き出した水によって飛ばされ、霊力のナイフを取り落す。

 

 

 

 

「ケホッケホッ。少し飲んじまった…そうか、玄武は水神だったな。なら、今のは地下水か…ハハハ!面白くなってきた!!」

 

 蛇が大勢を立て直したようでこちらを見据えている。

 

「さて…カウンターか回避か。どうするかねぇ…」

 

 言っている間に、狙いを定めた蛇が砲弾のように飛び出し、

 

「回避だな」

 

 軽く跳んで背に乗ろうと考え――――足が動かない。

 

「ッ!!チクショウ!!束縛系の結界か!!」

 

 回避不可能。ならばと思い前を向くと同時に吹き出す水。

 

「感知不可とか難易度高すぎだろ…!!」

 

 蛇が何所に居るのか。目でも、耳でも、鼻でも、音波でも、熱でも感じられない。その全てを水が阻んでいる。

 

「……なら、こうするよな」

 

 直後、蛇が水に向かって突っ込んだ。

 

 

 * * *

 

 

「……迅真?」

 

 遠くから見ていたルーミアは、一部始終を見ていた。

 

「…あんな式如きに負けたりしないよね…」

 

 心配しているのではない。彼女はただ信じているだけだ。彼が負けないと。ただそれだけを。

 

「当たり前だ。負けなんてしねぇよ。お前以外には、もう二度と」

 

「え?」

 

 声だけが響き、気配は無かった。それでもたしかに聞こえたその言葉。ならば信じるしかないだろう。

 

 

 * * *

 

 

「は、ハハハ…ハハハハハハ!!!勝った!!気配はない!私の勝ちだ!!」

 

 男は笑い、だが、言っている事とは反対に防御を強化していく。

 

「まだ、あの宵闇が残っているのだ。ここで帰る訳にはいかない」

 

「そうかそうか。で、具体的にはどうするんだ?」

 

「まずは誘い出す。それから――――!?」

 

 振り返ると、そこには迅真がいる。

 

「な、なぜそこに!?さっきまで気配なんて無かったはずだ!!」

 

「『知られざる英雄(ミスターアンノウン)』。存在を希薄にするスキル。ここに来るためには『密と疎を操る能力』で霧状になって。簡単だろ?」

 

「一体いくつの能力を持っているんだ…!!」

 

 おびえた表情で、彼は言う。迅真はそれをみて、笑いながら、

 

「たった一つ。たった一つの能力だ。使ってるのは派生でしかねぇ…さて。テメェは今ルーミアを殺す算段を立てた。ゆえに、俺はコレを使う」

 

 それは本。迅真はその本を開き、言う。

 

「『罪状:妖怪の大量殺戮、俺の殺害未遂』以上を持って『判決執行のルールブック』による判決を下す。『死刑』!!」

 

 虚空から出現する縄。

 

「『殺害遺品(キリンググッズ)』の呪いに死ぬがよい」

 

 それは男の首にかかり、絞殺しようと縄を絞めていく。

 

「グ……グァァ…!!玄武…!!」

 

 言葉と共に揺れる大地。だが、迅真は笑い、

 

「今まで使ってなかったが、すでにお前の式神の能力は俺のモノになってるんだよ。更に、知り合いの土地神の能力も追加させてもらった。だからもう玄武は役に立たない。じゃあな。もう会わないだろうが」

 

 そう言って、迅真が背を向けてルーミアの元へ戻る時、致命的な音と共に何かが消える気配がしたのだった。

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