気が付いたら見知らぬ景色が広がっていた。
自分の世界とは全くの別の世界。
空をドラゴンが飛んでいたり、魔法が目の前を行き交っていたり、中世ヨーロッパのよう街並みだったり。
などといったものは定番のような設定であり、思春期の男子諸君には…いや、女子もそうなのかな?
誰もが考えたことがあるはずだ。
なぜおれが独り言みたいにこのような事を長々と話しているのか?時間をちょっと遡ってみよう。
あの時おれは幼馴染と河川敷を歩いていた……
「桜井さん、あなたのことを愛しています。私とお付き合いしましょう!」
「ごめんなさい、ドヤ顔でそのような恥ずかしいセリフ吐ける方はちょっと、ていうか無理です。ていうか生理的に無理です!」
ていうか2回言ってるし、それにここじゃない!もうちょい後の時間だ!
「カケルあんたも懲りないわね~。今月入って何人に告ってんのよ。ただのクラスメイトBみたいな存在のあんたを相手にする女の子なんかいるわけないじゃない」
「うるっさいな!成績優秀容姿端麗お・ま・け・に!運動も得意なおまえになにがわかる!ってかクラスメイトBってなんだよ!?」
「BはBでしょう。学校で話せる人は私ぐらいで、成績に至っては留年ギリギリじゃない。運動もできるわけじゃないし、とりあえず特徴がないわね」
「ふ…俺はいずれ異世界に飛んで勇者として魔王ぶったおし、猫耳メイドさんと楽しく暮らす男だぞ?」
「なにバカなこと言ってn」
ニャー
「ニャーってふざけてんの?ねぇ聞いてる?」
「猫だ…」
「え?」
「川で猫が流されてんだよ!助けなきゃ!」
ッダ!…バッシャーン!
「え、ちょっと!昨日雨が降ったから増水しててあぶないわよ!カケル!カケル~……」
とまあこんなんで川に流されたわけだ。
目を覚ましたら見知らぬ部屋にいた。外を見た感じ日本ではないのは確かだ。というか地球じゃないどこか。だって空をドラゴンが飛んでいて、魔法が目の前を行き交っていて、中世ヨーロッパのような街並み…ではないな、村みたいだし。
「これはあれか?川に流され気づいたら異世界だよ♪パターンか?」
ガチャ。
「あら?目が覚めたの?」
え?
そこにはさっきまで一緒に河川敷を歩いていた馴染み深い顔の女の子が立っていた。
「気分はどう?あなた湖のそばで倒れてたのよ?あとでここまで運んでくれたパパにお礼を言っt」
「ルイじゃないか!なんでおまえまでいるんだ!」
「え?っちょ、ルイって誰かしら?私の名前はルイーナ・アル・フォルドよ」
ということはルイに似たこっちの世界の人間ってことか…
あっちのルイは違ってちょっと落ち着いた感じの子だな。
「ふっふっふ。定番だな!」
「定番?何を楽しげにしているのかは触れないとして、それで?」
「ん?」
「あなたの名前よ」
「あぁ、カケルって言うんだ!よろしくな、ルイーナ!助けてくれてサンッキューな」
「私は見つけただけで、運んだのはパパよ。カケル…変な名前ね。格好も変だし、もしかして王都の方かしら?」
「いや、日本って場所から来たんだけどわかんないよな」
「にほん?」
「まぁうんと遠い所だよ!で、ここは?」
「ここはシュエリ村よ。簡単に言ったら、王都と魔王城の中間らへんね」
「魔王城!?やっぱ魔物とか魔王とかいるんだな!」
「え、えぇ。でも」
「来た来た来た来たーーーー!つまり俺は勇者で、そんで魔王を倒しに行くんだな!」
「え、ちょ」
「でもそしたら王都挟んで魔王城の反対側にスポーンしたかったけど、まあいっか!」
「ねえ何言ってるの?」
「だからおれは勇者だ。魔王はおれが倒してやるから安心しろ!」
「勇者様たちなら、数週間前にこの村を出発したわよ?」
「え?」
「聞いている情報だと戦いはもう始まっているけど魔王を倒すのも時間の問題らしいわ」
「え?」
「あなたが勇者って面白い冗談ね。正直、その、にほん?の奇抜な格好を除けば雰囲気からして村人Bって感じじゃない」
「え?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「まぁしばらくはうちに居て良いから。あ、でも手伝いはしてもらいますよ。村人Bさん」
「カケルだ!あんたが言うとメタいな!」
とほほ…まじかよ…
こうしていきなり異世界に来ちまったおれは、王都から離れたシュエリ村での村人B生活が始まった。