やはり私と同中の彼との青春ラブコメはまちがっている。 作:巣羽流
別に読まなくても大丈夫なように書くつもりなので苦手な方は飛ばしてください。
では行きます。
文化祭の二日目目。
本日は一般公開されるため多くの人で賑わうだろう。そのため俺たち文実は朝からフルメンバーで仕事をしなくてはならない。
俺の仕事は記録雑務。朝の仕事は体育館の2階の脇にある狭い道に有志の団体の撮影をするためのカメラやら演出をするための照明やらを設置する事だ。ちなみにこの2階の道の事をキャットウォークと言うらしい。ほんとかは知らんが。
照明とカメラを取り付け、撮影者が座るための椅子を用意してると後ろから不意に声をかけられた。
「比企谷君」
振り替えるとそこにはかつて同じ中学に通っていた愛川が立っていた。
「よう」
「頑張ってるねぇ」
「本当は仕事なんぞしたくないんだけどな・・・」
「言うと思った」
そう言ってクスクスと笑い出す。
「じゃあ比企谷君が少しでも楽をするために何か手伝うことある?」
「あー、じゃあ椅子出しといてくれ。俺はカメラの位置を調節しとくから」
「おっけー!」
生徒会の備品であるカメラの画面を開き三脚に乗せる。
カメラの高さはこれくらいで良いか・・・後はズームか・・・
うーん・・・こんなもんだろう。
「完了したよ」
「こっちもちょうど終わった」
「お疲れさま~」
「まだまだ今日はこれからだろうが・・・」
「そうだね。なんだか今日は大変な1日になる気がするよ」
「まったくだ」
ここまで散々問題を起こしてきたからな・・・また最終日に問題とか起こるんじゃないだろうか。
はぁ・・・頼むから俺の削り取られた精神をこれ以上削るのはやめてほしいなぁ。
「休憩しよ!休憩!座って座って」
そう言って愛川は椅子をパンパンと叩く。
「だな」
腰を下ろすと愛川はにこにこしながら照明のやつが座る椅子を持ってきて隣に置き、座った。
え?隣に座るの?
このキャットウォークはご存知の通り横幅が狭いため椅子で隣り合わせに座ると結構狭い。
近い近い近い。
肩とか触れてるし柑橘系の良い匂いするしもうなんと言うかヤバイです。
「あれ?比企谷君もしかして距離が近いから緊張してる?」
ばれてましたか。ばれるのは分かってましたとも。
最近愛川と居るとどうも調子が狂う。何回勘違いしかけたか分からん。中学校の俺なら間違いなく告白して振られるまでやってたな。
・・・中学か。
やっぱり愛川を見ると中学で一番最初に出来た負の記憶が頭にちらつく。
その事に関しては愛川は悪くないわけだし・・・その事を責めることも出来ない。
悩んでも結局毎回なにも思い付かずに終わる。
「こんだけで緊張しちゃって、比企谷君かわいい~」
「うるせえな。ボッチは誰かと近づくと落ち着かないんだよ」
「そうなんだ」
めっちゃてきとー!聞く気ないなら言わないでよもう!八幡はおこだよ?
・・・きもいな
「まだ少し時間あるしお喋りでもしてようよ!」
にっこりと笑ってこっちを見る。
こうやって見るとやっぱりこいつ見た目は良いんだよな。
雪ノ下よりも子供らしくて由比ヶ浜よりも大人っぽいと言ったところか。
「そんなに悠長にやってる余裕ないだろ」
「そう?折角これ持ってきたのに」
愛川はマッカンをポケットから出し差し出してきた。
「それを早く言え」
「たんじゅーん」
ふふふと微笑みながらマッカンを渡してくる。
ま、マッカンだ・・・!こいつさえいれば30分は頑張れる!
・・・短いな。
「千葉県民のソウルドリンクを差し出されたら断るわけにはいかないだろうが」
「それに関しては同意かな」
こいつは数少ないマッカン愛を持つ同士だ。
基本的に毎日一緒に帰ってるが一週間マッカンについて語り合ったことがある。あんなに有意義な会話はなかなか無いな。
マッカンを二人で啜ってると愛川がそうだと手を叩いた。
「ねぇねぇ!今日の私たちのライブは見に来てね!」
「・・・時間が合えばな」
「それ絶対見に来ないやつじゃん!」
ちっ、ばれたか。適当にやり過ごそうと思ってたのに。
「お願いだよぉ・・・私たち三人の時だけ誰もいなかったら辛いじゃん。せめて比企谷君だけでも見に来て?」
誰もいないライブとかどこのラブライブだよ。もしラブライブだとするなら俺はかよちんポジションか・・・ごはんたけたよぉぉぉー!
・・・きもいな。
「流石に誰もいないなんてことないだろ」
「比企谷君に来てほしいの・・・お願い」
目をうるうるさせながら上目遣いで言ってきた。
「なんでそんなに来てほしいんだよ」
「比企谷君に聞いてほしい歌があるんだ」
え?俺に歌を捧げてくれんの?愛川さんマジイケメンなんですけど。
てかなんで俺なんだよ。そんなこと言われるともしかして俺のこと好きなんじゃって思っちゃうだろうが。
「お願い!」
・・・これは折れないな。仕方ない。
はぁ。愛川って意外と頑固だ。
「分かった。きっと聞きに来るよ」
「ほんと!?絶対だからね!」
「ああ」
「ありがとう!」
そう言って愛川は手を握ってきた。
ちょっと・・・そういう行為がだね、多くの男子を勘違いさせてしまうんですよ。これからは俺が間違えて告白しないように控えなさい控えてくださいお願いします。
「わかったから・・・手離してくれ」
「っ!ごめんごめん。嬉しかったからつい」
顔を赤くして、てへへと笑う。たぶんこのあざとさは天然物なんだと思う。
癒し効果の薄いめぐり先輩って感じかな。
「おーい!もうすぐ文化祭始まるぞー!」
下でパイプ椅子を並べてた係りのやつが全員に大声で知らせた。もうそんな時間なのか。
「もうそんな時間か・・・じゃあ私たちも仕事しようか。この後は各クラスの様子を写真に撮るんだよね?」
「あぁ。役割だがお前が1年のクラスを、俺が2年生と三年生のクラスを撮ってくる」
「え?全然平等じゃないよ?」
「お前バンドなるのに準備とか時間必要だろ。そのくらいの配慮はするさ」
「・・・ありがとう」
えぇ・・・なんで愛川顔を赤くしてるんですか。本当に勘違いしてしまうよぉ・・・
「じゃあ行こうか」
二人で椅子を元の位置に戻し下に降りていく。
「また後でね!」
「おう」
愛川はカメラを持って駆け出して行った。
その後ろ姿を見ると毎回考えてしまうことがある。
「・・・」
昨日の行動と、さっきの顔が赤くなる態度。やっぱり愛川は俺のことを・・・?
いや、そんなはずはない。騙されるな。彼女はきっと色んな人に優しくて良い笑顔をする人なんだ。俺にたいしてバンド見て欲しいと言ったのはたぶん帰るときの話題作りか何かだろう。
それで決まりだ。
「・・・はぁ」
それにしても我ながらひどい結論だな。
さすが自他共に認める捻くれ者なだけある。
「さてと」
ぼちぼち仕事にでも行くか。
クラス撮影用のカメラを持ち校舎へと向かった。
ここまでです!
結構短いですね・・・
それに既存のキャラクターってやっぱり書くの難しいなぁ。
とにかくここまでお付き合いいただきありがとうございました!
次回は普通に花菜ちゃん主観でいきます!