やはり私と同中の彼との青春ラブコメはまちがっている。 作:巣羽流
あの奉仕部での一件があった日の翌日の放課後。
昨日の一件から一晩明けたけどまだ頭はスッキリとしていない。しかしお仕事があるためコミュニティーセンターへ向かっていた。
昨日彼を見て感じたあの気持ちは…一晩経てば元に戻ってるのだろうか。
そもそもあの感情はなんなのか。
今日基子達にも相談したけどニヤニヤしてるだけでちゃんと答えてくれなかった…。
べ、別にのろけてる訳じゃないのに…。
答えのでない問題に頭を悩ませていたら時間はあっという間にすぎ、コミュニティセンターに到着した。そこには比企谷君の姿はまだ無く一色さんしかいなかった。
「おはよ、一色さん」
「あっ!愛川先輩!おはようございます!」
「はやいねぇ」
「いえいえ…って先輩はまだなんですか?」
「みたいだね」
それから一色さんとちょくちょく他愛のない話をしながら比企谷君を待つ。
話のなかで時おり見せる彼女の表情は私と同じでなにか考えさせられてるものだった。きっと昨日の比企谷君の言葉に心動かされたのだろう。
こんなにも可愛い後輩にまで影響させるなんて…やっぱり比企谷君はとんでもない男だわ…困ったものねぇ。
「よう。お待たせ」
多くの(私も含めた)美少女を悩ませているとはまったく思ってないであろう男、比企谷八幡君が登場。
もちろんその後ろには奉仕部の二人もいる。
彼を見て感じるのはやはり下校途中に感じてたものと同じだ。
「じゃあ今日は事前に打合せした通りにやるから頼むな」
「いえいえ、こちらこそよろしくです」
挨拶を済ませ今日の事を話している一色さんは自然と持っていたコンビニ袋を渡し、比企谷君はそれを受けとる。
その様子を見た奉仕部二人は固まっていた。
私も最初、えっ?ってなったからなぁ…気持ちは分かるよ。
てか比企谷君またなんで二人が固まってたのか原因が分かってないな…あの顔は。
ほんと罪作りなやつだぜ。
ーーーーーーー
「予想以上ね…。ずっとああいうやりとりをしていたの?」
「…ああ」
進まない会議は大いに白熱し海浜メンバーは体力を消耗したらしく休憩がとられていた。
最初は二人に現状を実際に見てもらうために今まで通りの会議をした。雪乃ちゃんも由比ヶ浜さんも疲れた表情をしている。
まぁそうだよね。私も同じ気持ちになったし慣れても辛いし。
「愛川さん、あなたこの状況を打開するきっかけを作ったそうね」
雪乃ちゃんが、私に近づき真剣な顔で聞いてくる。
「え?それって前回のあれのことかな?」
「ええ。比企谷君に聞いたわ」
「きっかけってほどじゃないと思うけどなぁ…」
「それでも雰囲気か変わったのは事実でしょ…素直にすごいと思う」
「そ、そんなことないよぉ」
なんだか雪乃ちゃんに褒められると嬉しい。他の人に褒められるのとは全然ちがうな。
…まぁでも失敗したけどね。
「たぶん私じゃ一人でなんてきないわ」
「私にできたんだし雪乃ちゃんだって」
「いいえ。きっと無理よ」
「…?」
急にどうしたんだろう…なんか悲しそうな顔してるけど…
「あなたも私には無いものを持ってるのね…」
「え?何て言ったの?」
「いえ、気にしないで」
何かボソッと呟いたけど…何て言ったんだろ?
「それで、どうしよっか?」
私たちの会話をよそに話し合いを進め始める。
まぁ休憩時間だけだしはやめにやらなきゃね。
「愛川。またお前の出番だ」
「え?私?」
「ああ。前回と同じように海浜側に抗議してくれ。別々でやろうってな」
「でも一回失敗してるじゃん。それで大丈夫なの?」
「あぁ…大丈夫だ」
そう断言した彼の目は腐っていながらも自信があるように感じた。
ああ…やっぱり少し違うな…今までと…。
「わかった。じゃあやってみるよ」
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20分ほどの休みを終えまた各々が会議の席につく。
「じゃあ会議を再開しようか」
にこやかに玉縄はそう宣言する。比企谷君をちらっと見ると小さく頷いた。
…じゃあいきますか。
「あの」
ぴんと手を挙げ玉縄を見据える。
「どうぞ」
「私は再度二校がバラバラの演目をやることを提案します」
海浜の面々はざわめき玉縄はやれやれと困った顔でこちらを見てくる。
いらっときますね!
「それは前回で無しになったじゃないか」
「何でですか?」
「前も言ったことだけどグループシナジーを生むことを目的として合同でやるんだからそれは適したmethodじゃないと思うんだよね」
「グループシナジー…。まだまだ経験不足の生徒会じゃこれを出すのって厳しいと私は考えてます」
「確かにそうかもね。協力することでビジョンを共有することで催し物により一体感が出せると思うんだ。イメージ戦略の点で考えても、合同イベントの大枠は同じにした方が良いんじゃないかな」
なんか前回に比べて饒舌になったなぁ…あれか?
先輩とか他のメンバーと会議してこういった結論が出たんだろ…くそー!これ私に対しての対策して来てるよねこれ!
てか玉縄のどや顔がやはり腹立つなぁ。
「だとしてもリスクは高いよ」
「確かにそうかもしれないけど出来る可能性はある。いい方向に向かえるなら多少のリスクを背負ってでもそれにオールベットするのもいいと思うんだ」
「それはあなた個人の意見ではないでしょうか」
「前回そちらの会長も肯定してくれたじゃないか。ね、一色さん」
キリッと決め顔で一色さんを見る玉縄。
「そのことなんですけどー。わたしも別々にやりたいなーって思ってるんですよねー」
「えっ…?」
思わぬ反撃をくらい決め顔が崩れる。
「僕たち総武高校は今までの案から演劇と音楽の二部構成のイベントにしたいと思ってる」
副会長が一色さんに続き二部構成の詳細を伝える。
比企谷君が生徒会の面々に何か言ったのかな?
やけにみんな準備がいい。
一色さんもなんか凛々しく見えるし…。
「という感じなんだけど。どうかな?」
「うーん…考え方としてはありだと思うんだけど…やっぱり二校合同であることに意味があると思うんだよね」
「そうかもですけどー」
玉縄と一色さん。二人のやり取りがはじまる。
このやりとりはやけに長くいくら話しても平行線のままだ。
いや、徐々にだけどこちらが優勢にはなってるのかな?海浜は奇襲食らって若干驚いてるみたいだし。
それにしてもしぶといなぁ…あっ、一色さん舌打ちした。
イラついてますね…はいわかりますその気持ち。
完全に蚊帳外になったので遠くから眺めているとすっと一人の生徒の手が上がった。
猫背でアホ毛が特徴のシルエット。
そう、彼だ。
「…合同でやる必要ってあるか?」
平行線の討論をしている会議場でその空気を破る一言が出てくる。
会議が長くなり落ち着きを取り戻した玉縄はやれやれと首をふり答えた。
「それは合同でやることでグループシナジーを生んで、大きなイベントを」
「さっき愛川も言ってたろ。シナジーは生めない」
「生めないかもしれないけど、僅かでもかのうせ」
「可能性なんてない。シナジーなんかどこにもない。イベントを大きくって言ったって、このままだと大したことできないだろ。なのになんでまだ形にこだわるんだ?」
会議場は一瞬静まり返るとひそひそ話し声が聞こえ始める。
海浜のメンバーは比企谷君の言葉を受け納得の表情をする人が多く見られた。
これは前回折本を味方につけたときの副産物かな。そうじゃなきゃこうして和を乱した比企谷君や私に対してもっと冷ややかな視線が来るはずだしね。
「き、企画意図とずれてるし。それにコンセンサスはとれたたし、グランドデザインの共有もできてたわけで…」
「…違うな。自分はできると思って、思い上がっていたんだよ。だから、まちがえてもみとめられなかったんだ。自分の失敗を誤魔化したかったんだろ?そのために、策を弄した、言葉を弄した、言質をとって安心しようとした。まちがえたとき、誰かのせいにできたら楽だからな」
どこか自嘲気味に彼はそう発言をした。それはやはり彼の本心、心の中の言葉。だからなのだろうか、その言葉は聞き手の心に響く。
こう、本心っていうか思ってることをここまで言うなんて…やっぱり変わったんだね…。
私からほろりと小さな笑みが溢れた。
「そついうことじゃなくてさー、コミュニケーション不足だと思うんだよね…」
「もう一度クールダウンの時間をとろうよ。やっぱり1日じゃ短かったんじゃないかな…」
そう海浜の生徒会の人たちは玉縄を援護した。また先送りにしようと、そう言ったのだ。
しかし今日はそういったことを許さない人がいる。
「ごっこ遊びがしたければ余所でやってもらえるかしら」
そう。皆さんご存じ雪ノ下雪乃ちゃんですね。
このあと雪乃ちゃんの言葉や由比ヶ浜さんのフォローもあり、二部構成の体制に切り替わることが決定した。
比企谷君と雪乃ちゃんが持ち前の能力で突っ走り由比ヶ浜さんがフォローする。
やっぱり良いチームだよね…
愚直な人がいて、ぐねんぐねんにひねくれ者がいて、周りを見れる常識人がいる。
完璧な布陣だ。
私の入り込む余地は無いくらいに。
私の入り込む余地は無いくらいに…。
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「やったねぇー!」
「だな。まだまだ時間的にも厳しいけどひとまず安心だ」
会議が終わり比企谷君との帰宅道。12月の8時はもう完全に日が沈む。自宅に近づくにつれて街の雑音は消え冷たく吹き付ける風の音だけが私の耳に響く。
比企谷君といつも別れる交差点で今日はマッカン片手に雑談していた。
「疲れた…」
彼がはぁっと吐いたため息は寒さのせいで白くなっていた。
「雪乃ちゃんと比企谷君は一色さんに怒られてたもんね」
「いや待て俺はわるくない。事実を伝えただけだ。それにお前だって少し怒られたじゃねえか」
「私は指示通りに働いただけですよ?」
あのあと問題発言連発の二人と共に言い方がきついと一色さんに怒られてしまった。
年下の美少女にごみを見るような目で罵られるのってあると思います!
いやんなんか目覚めちゃいそう。
そういえばそのあと比企谷君は平塚先生とも話してたな…。
「そういえば比企谷君、平塚先生となに話してたの?」
「ん?…あぁ…悲しい話だよ…」
「悲しい話?」
「先生の友達の結婚式の二次会で獲得した景品の話だよ…」
「…?」
なんか思ってた悲しいと種類が違う…。
「なんとあのディスティニーランドのペアチケットだそうだ。悲壮感が半端ない顔で見せびらかしてきた」
「誘う相手は…?」
「これを見てみろ」
「それは…」
比企谷君がポケットから出したのディスティニーランドのペアチケット。
「先生にもらった」
「…」
「相手がいるのにわざわざ俺にくれると思うか?」
「思いません」
平塚先生…美人なのになぜ相手がいないんだろう。
…ん?まてよ?
「ペアチケットもらったの?」
「ほぼ押し付けられたけどな」
ペアチケット…誰を誘うんだろう。
「へぇ…小町ちゃん誘うの?」
「…小町はいま受験生だからなぁ。流石に誘えんな」
「そういえばそうだったね…」
え?じゃあいったい誰を?
誘えるのは一人だけ。
由比ヶ浜さん?雪乃ちゃん?戸塚くん?材木座君?
あとはあとは…
「な、なぁ…愛川」
なにやら挙動不審だなぁ。声震えてるし。
「比企谷君?どうかしたの?」
「ああ…その…チケットのことなんだけど…」
「?」
「期限が今年一杯までで、はやめに行かなきゃならないだけどよ…」
「うん」
なにやらボリボリと頭をかきながらキョロキョロ色々か場所を見てる。顔は寒さのせいか真っ赤になり、目はじゃっかんうるでいる。
ど、どうしたんだろ…
「その…なんだ…クリスマスイベント終わったら行かないか…俺と…25日とかに…」
「え?」
え?
え?
え?
いまなんて?
イカナイカ?
いや待て。まだ慌てる時じゃない。冷静になるんだ。
「ふ、二人で?」
「ああ…」
ほんとにほんとにお誘いが来た!?しかもあのディスティニーランド!?
え?嬉しすぎて泣けるんだけど。やばいねやばいよ。
「用事があるとかなら良いんだ別に…」
「いやいやいや!行く!絶対に行く!用事とかあっても行く!」
「お、おおう。そうか。てかやけにテンション高いな」
「そりゃ高くもなるよ!あのディスティニーランドだよ!?」
「そ、そうだな」
「うん!」
しかも好きな人と行けるんだよ!格別に違いない。
「じゃあチケット片方渡しとくわ」
「ありがとう!」
おそらく今最大限の笑顔をしているであろう。
「じゃあ俺そろそろ帰るわ。じゃあな」
「うん!またね!」
そういって比企谷君と別れた。
そして自宅に帰ってきて部屋に戻るとすぐさま布団にダイブ!
「うへへぇ」
貰ったチケットを片手に、にやにやと眺める。
比企谷君とディスティニー!比企谷君ディスティニー!
どんな感じなのかな…?
手を繋ぎながら写真とったり…乗り物に乗るときとかは肩とかぶつかるくらい近くて…
「キャー!」
なにこれやばすぎる!
バタバタと足をばたつかせて悶える。
あぁ…母上…生んでくれてありがとう!
こんなに幸せで良いんでしょうか…。
クリスマスイベントのことなんかすべて忘れて誘われた事実にひたすらと歓喜する私…色々悩んでたけど単純なのかな…。
まぁ今はそんなこと良いや!それより当日はどうしよお!
あれやこれやと考えるこの天国のような妄想タイムはこの後30分間続いた。
今回は少し長いですね。
次回は比企谷君視点にするかも。
誤字脱字等あればご連絡を!
最後に!モバマスにはまってて次はモバマスが書きたいです!
今回もお付き合いいただきありがとうございました!