やはり私と同中の彼との青春ラブコメはまちがっている。   作:巣羽流

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デスティニーのアトラクションの名前とか原作と比べて変わってるかもしれませんが気にしないでください!把握できてないだけです!何卒お許しを。


35話

皆さん!おはようございます!

ご存知、愛川花菜です!

 

今日は待ちに待ったデスティニーデート。

現在待ち合わせ場所に向かってます!

 

まだまだ慣れないお化粧に四苦八苦、今日のために少ない時間を利用して買った洋服等々、私自身に精一杯のお洒落を施した。

 

そして完成したのが今日の私!

私史上最高の可愛さだと思う。

 

心なしか道行く男の人に見られてる気がするし…これは可愛いんじゃない!?本当に!

 

っと、駅に到着っと…どれどれ…比企谷君は…いた!

 

十五分前集合とは関心関心。

 

「ひーきがーやくん!おはよ!」

 

「おぉ…愛川。おはようさん」

 

「じゃ、はやく遊びたいし行こうか」

 

「おう」

 

ええっと…デスティニーに行くにはこっちのホームだったかな…。

 

「愛川」

 

私がケータイで行き方を確認してるとポリポリと若干赤みがかった頬をかきながら呼び掛けてきた。

 

「ん?」

 

「その…今日の服、似合ってるぞ…」

 

え、ええっと…まじで?

 

こんなに容易く比企谷君が褒めてくれた…?

 

しかも自ら?

 

し、信じられないんだけど…。

 

にしてもたかが服誉めたくらいで照れちゃってもー。

比企谷君相変わらず初なんだからもう!

 

か・わ・い・い☆

 

さんざん告白されて誉められるのになれた私は華麗に受け答えてやりますか!

 

「あ、ありがとう…」

 

…。

 

はい。めっちゃ嬉しいしめっちゃ照れてますわ。

 

だってあんな!照れてながら誉められるとさ!こっちだって照れるって!

 

「「…」」

 

『あのカップル初々しくて可愛い』

 

「「っ!」」

 

二人そろって顔を真っ赤にしうつ向いてフリーズしてたらそんな声が耳に入ってきた。

 

「い、行こっ!」

 

「そうだな。時間は有限だし勿体ない」

 

はやくこの場を離れたい…。

 

 

ーーーーーー

 

クリスマスと言うだけあってデスティニーへ向かう電車はかなり混んでいてぎゅうぎゅう詰め状態だった。

 

「とうちゃーく!」

 

改札を抜け駅から出るとデスティニーへ続くファンタジーな道が正門まで続いている。遠くを見るとそこには女の子が憧れるお姫様のお城。

 

この道を歩いてると嫌でもテンションが上がってしまう。

 

「いやぁー!楽しみになってきたよ!比企谷君はまず何に乗りたい!?」

 

「うーん…俺はあれかな…」

 

「電車!?もう帰る気まんまん!?」

 

満員電車でかなり消耗したのだろう比企谷君は

すでに平常運転だ。

 

しかし私は見ていた。ぎゅうぎゅうの電車の中でお城やら火山が見えたとき目が少しだけ輝いていた比企谷君を!

 

「じゃ!とりあえず行こうか!」

 

「お、おい。引っ張んなって」

 

こう言うときは強引に行かなきゃね!ついでにちゃっかり手を握ってしまおう。

 

正門の到着するとそこには長蛇の列が作られていた。 

 

「開園まで20分くらい時間あるねぇ。待ってようか」

 

「若干早めに集まったからな…」

 

「最初はどこいこうか」

 

「俺はなんでも良いぞ」

 

「比企谷君って絶叫系平気?」

 

「まぁ、そこまで激しくなければ」

 

「じゃあ最初はあの火山のやつ乗ろうよ!混まないうちにさ!それでついでにスプライドマウンテンのファストパス取っちゃおうよ」

 

「了解だ」

 

スプライドマウンテンから見る景色は綺麗だから暗くなったらもう一回乗りたいな。

 

「…なぁ。ところでいつまで握ってるんだ?」

 

「手離したら比企谷君電車に乗っちゃいそうだし…だからこうして捕まえておこっかなって」

 

「さすがにあれは冗談だから…」

 

「分かってるよ、手を握るための建前だって。私はこうしていたいからね」

 

「そうか…」

 

「だからさ、そういうことにしておいてよ」

 

ぱちっとウィンクを飛ばし笑顔でそういうとみるみる比企谷の顔は紅潮していった。

 

今日の私はいつもより攻めるよ…なにせ勝負の日だからね!

 

にしても手を握っただけで顔真っ赤にして…相変わらず初なんだから。それともウィンクした私が可愛すぎたのかな?なーんて!

 

『見て見て。あそこのカップル二人とも顔真っ赤…初でかわいい』

 

…。

 

は、はやく開園してください。

 

ーーーーーーーーーー

 

「比企谷君!みてみて!おっきいツリー!」

 

「おぉ…さすがにでかいな」

 

正門から入ってすぐにそびえ立つのは巨大なクリスマスツリー。この規模のものはなかなかお目にかかれないのではないだろうか。

 

「キラキラしてて…きれい」

 

「すげえな」

 

「そだ!せっかくだから写真撮ろ?」

 

「え…もう?」

 

「イエス。すみません!写真とってもらっても良いですか?」

 

その辺にいたスタッフさんにケータイを渡し二人で並ぶ。

 

「じゃあ撮りますよー?良いですか?」

 

「大丈夫です!」

 

「はいチーズ」

 

「えい!」

 

「こんな感じでどうでしょうか?」

 

写真を確認するとそこにはツリーをバックに驚いた表情をした彼と彼の腕に抱きつく私が写っていた。

 

「ばっちりです!ありがとうございました!」

 

「いえいえ。それではよい一日をお過ごしください」

 

スタッフさんは笑顔で持ち場に戻っていった。しかしいい写真がとれたな…。

 

「いきなりそれは流石にびっくりするんだけども」

 

「良いじゃん良いじゃん!こんな美少女に抱きつかれて役得でしょ?」

 

可愛くコーデされた私に抱きつかれて不満があるのかね?

あるとしたら私悲しくて泣くよ?

 

「じゃあ行こっか!」

 

「はぁ…はいよ」

 

ずいぶんつかれた顔してるけど…一日はこれからなんだよ?

 

 

 

ーーーーーーーー

 

「やっと座れた…」

 

「さすがに少し疲れたねー」

 

あれからそこそこのアトラクションにのりデスティニーを楽しんだ私たちはお昼時より少し遅い時間にランチを取ることにした。 

 

「わぁ!みてみて!このハンバーガーちゃんとキャラの形になってる!」

 

「おぉ…そうかそうか。俺のピザは残念ながら普通のピザだな」

 

フューチャースペースエリアでのランチということもあり内装はかなりスターフォースの世界みたいになっている。

 

「比企谷君はスターフォース見たことあるの?」

 

「一応な。今話題のアマゾンプライムで予習済みだ」

 

「でたぁ。便利そうだね私も登録してみようかな?」

 

「あれあると暇な時間とか大分潰せるからな、おすすめだ」

 

アマゾンプライムか…有料だから手は出してこなかったけどTSUTAYAとかでDVD借りるならこっちのほうがいいのか?

 

まぁそれはさておき…

 

「そういえばそのピザってなに味?」

 

「ん?ツナ…なんとか味」

 

「圧倒的に情報が足りない」 

 

「とりあえず旨いぞ」

 

「ふぅん。一口ちょーだい」

 

「別に良いけど…ほら1ピース取っていいぞ」

 

「ふふん、違う違う。あーん!」

 

口を開けておねだり開始。

 

「ちょ、やめろってはずいから普通に」

 

私だって恥ずかしいわ!でもほら!デートっていったらこういうのやりたいじゃん!?

 

「あーん!」

 

「…まじで?」

 

力強くコクりと頷き待機。

 

「…まじで無理だって、勘弁してくれ」

 

「…もう」

 

比企谷の顔を見ると頬を真っ赤にして目を凄まじい勢いで泳がせてる。

 

私だってバカみたいに口開けて恥ずかしかったのに…。

 

「…ヘタレ」

 

「申し訳ない…」

 

そんなことをしつつも昼食を終え次のアトラクションへ向かう。

 

次に乗るのはパンさんのバンブーファイトだ。

これもデスティニーの人気アトラクションの1つで乗るまでにかなりの待ち時間を要する。 

 

今回は2時間待ちでようやく私たちの番が来た。

 

「それではパンさんの世界にいってらっしゃーい!」

 

係員のお兄さんに手を振られていざ発進。

 

そこの世界はクリスマス?なにそれ?って感じだった。しかしながらアトラクション自体のクオリティが高い。

 

「すげーな」

 

「うん。パンさんの世界観よく出てるね」

 

二人そろってそんな感想が出てきた。

 

「パンさんと言えば雪ノ下がかなり好きらしいな」

 

「あぁ…そういえば雪乃ちゃんの部屋にいったときにかなりグッズがあったね」

 

「由比ヶ浜いわく、一緒にパンさんのビデオを見ると解説モードに入るか集中モードに入るらしいぞ」

 

「なにそれ怖い」

 

「集中モードにはいるあいつに話しかけると怒られるらしい」

 

「デスティニー映画でまさかの私語厳禁!?」

 

「もしも雪ノ下とこのアトラクションに乗ったら同じ感じになりそうだな」

 

「遊園地でも私語厳禁!?雪乃ちゃんならやりそう」 

 

雪乃ちゃんもなかなか変人だしね。まぁいくら変人でもさすがにデスティニーで私語厳禁はないだろう。

 

アトラクションが終わると出口付近にお土産コーナーが設けられていた。

 

「小町に土産買っていこうと思ってたんだ。ちょっとよっていいか?」

 

「うん、いいよー。なんなら私も選ぶの手伝うし」

 

「そりゃたすかるわ。たのむ」

 

「おっけー!」 

 

お土産コーナーにならぶ商品はそれはもうパンさんだらけ。まぁ当たり前なんだがパンさん一色だ。

 

「小町は受験生だしこのペンとかで良いか…」

 

「なに言ってんの?ペンなんてどこでも買えるし使いなれた今のやつの方がいいに決まってるじゃん!」

 

「むぅ…確かに」

 

「私はこのぬいぐるみがいいと思うな。かわいいもの見るとなんか癒されるし」

 

ストレスたまってついつい投げたりしても壊れないしね!

 

「確かに…俺も前作ったガンプラ見てたらテンション上がるしな…それの女の子バージョンか…ふむ…よし。これにするわ」

 

どうやら決まったみたいだ。さすが私ナイスアドバイス!

 

「…こっちのは今年限定なのか」

 

「このぬいぐるみ?確かに今年の冬限定!って書いてあるね」

 

「雪ノ下にも買ってってやるかな…」

 

「…」

 

「そうすると由比ヶ浜にも何か買ってやらなきゃな…あいつはこれでいいか…よし、じゃあレジ行ってくるわ」

 

「うん」

 

二人のお土産を選んでる比企谷の顔、すごく穏やかで優しかった…。

 

あんな顔、私に向けたことないのに…。

 

てかさっきもだけどデート中に他の女の子の名前だして何!?デリカシー無さすぎでしょ!

 

…まぁデリカシー無いのは知ってたけどさぁ…。

 

ってだめだめ!こんなのダメ!

 

楽しむの!よくないマイナス思考!

 

「おまっとさん」

 

「うん!じゃあ次行こうか」

 

「おう。次はカナダの山賊だったか」

 

「あれはすぐ乗れるからね。ちょっとした休憩タイム」

 

「だな」

 

「じゃあ行こっか」

 

そう言って彼と取り歩いきだしたがさっきよりも少しだけ彼の手を握る力が強くなってしまった。

 

ーーーーーーーーー

 

「いやぁー!もうすっかり夜だね!」

 

「だな。かなり寒いな」

 

「ねー。海沿いだし風強いもんね」

 

「あとスプライドマウンテン乗って花火見たら終わりだな」

 

「もうそんな時間か…」

 

楽しい時間って言うのはあっという間だな…。

 

「俺ちょっとトイレ行ってくるわ」

 

「わかった。じゃあここで待ってるね」

 

「了解」

 

ふぅ…

 

にしても寒いな…手を繋ぐために手袋してこなかったけど今だけはほしいや。

 

「ねぇ、きみきみ!今一人?」

 

「え?」

 

大学生風の男3人組に話しかけられた。これはナンパか?

クリスマスなのになにしてんのやら…いや、クリスマスだから頑張ってるのか。

 

「もう時間ないけど俺たちとさ、回らない?」

 

「連れがいますので」

 

「ならさ!そのお友だちも一緒にどう?」

 

「いえ、結構です」

 

「そんな冷たいこと言わないでよー、俺かなしー!」

 

「君みたいな可愛いこ、なかなか居ないんだからさ!俺たちラッキー!って思ったわけ!ねぇお願い!」

 

それ私に関係あるの?私からしたらアンラッキーなんですが。それにしてもしつこいな…。

 

「っ!」

 

あのアホ毛は比企谷君!トイレから出てきたっぽい!助けて!ナンパされてるよ!

 

アイコンタクトで合図を送ると彼は頭をかきながらこちらに近づいてきた。

 

うわっ!目が大分濁ってるな…面倒事に対しての嫌悪感が滲み出てる…。

 

「待たせたな愛川」

 

「ううん!そんなにまってない!」

 

比企谷君の登場に大学生風の男たちは呆然としていた。

 

「そうか…ところでこの人たちは誰なんだ?」

 

濁った目で大学生ズを見つめて言うとビクッとなってから舌打ちをしてどこかに行ってしまった。

 

「ふぅ…助かった!ありがとう!」

 

「たくっ…ちょっとトイレ行っただけでこれかよ…」

 

「仕方ないじゃん!私は悪くない!」

 

「確かにそうだけど…まぁいいやとりあえずいくぞ」

 

ん、とだけで声をだして左手を私に差し出してきた。

 

これってあれ?比企谷君の方から手を繋ぐために手を出してきたのかな?

 

え?まじで?こんなのはじめてじゃ…。

 

「どうした?繋がないのか?」

 

「いや…比企谷君から手を出してきたのはじめてだから戸惑っちゃって」

 

「少しはなれただけでまたナンパされてたら堪らないからな」

 

そんな台詞を吐きながらぶっきらぼうに手を差し出してる比企谷君って…

 

キュンってきた!

 

「っ!…もう!ちゃんと手あらってんだよね?」

 

「たりまえだろ」

 

「ほんとー?嘘ついてたら怒るからね」

 

やばいな…ドキドキしちゃうよ…なんかほんと少女漫画みたいなね!こんなのあるんだ!

 

冗談でも言わなきゃちゃんと返事出来ないくらいドキッとしたかも…。

 

比企谷君といてこんな感じになるのは初めて…かな…。

 

ーーーーーーー

 

スプライドマウンテンはファストパスを取っていたのでスムーズに進むことができた。そのおかげで私たちの出番はすぐに来た。

 

「よっと…あぁ…やっと座れた」

 

「一日動き回ったから疲れたね…スプライドマウンテンの最初はのんびりしてるし休める」

 

「だなぁ」

 

こう言ってはなんだがもう私はこのスプライドマウンテンには夜景を見るためだけに乗っているようなものだ。さすがに疲れたから最初のようなテンションでははしゃげないし楽しめない。

 

「そういえばさっきの感じ懐かしかったな」

 

「そうだよね!私たちが初めて喋ったときと同じ感じだったよね!」

 

なんかすごいなぁ!原点回帰っていうの!?軽くテンション上がる!

 

「…そうだな。俺たちが高校で関わり始めたのはあんな感じだったな」

 

「なんか懐かしいよね」

 

「ああ…この一年間は色々あったな…」

 

「あったよね…最初私お礼したくて比企谷君探し回ったのに全然見つからなくてさ!」

 

「それはしらん」

 

「もっと教室にいてよ!」

 

「教室には居場所がなくてな、長居は出来ないんだ」

 

「もう…またそんなこと言って…」

 

「それで、俺を見つけたあとお礼として奢ってくれたんだよな」

 

「そうそう。あのカフェちゃんと行ってる?」

 

「何度か行ったぞ、戸塚とな!」

 

「スッゴク嬉しそう…」

 

「そりゃそうだろ戸塚だぞ?」

 

「あはは…わかるようなわからないような」

 

「それで次は戸塚も参加した林間学校か?」

 

「あの時の比企谷君のヒールっぷりはたまんなかったねぇ」

 

「おいこら皮肉か」

 

「まぁねー!」

 

「くっ」

 

「それで夏休みに一緒にプールにも行ったよね」

 

「あぁ…行ったな」

 

あの時に私は初めて比企谷君の事が好きだって認識したんだよね…

 

「お、もうすぐ落ちるな」

 

ガラガラと音をたててコースターが登っていく。それにつれて私の彼への思いも盛り上がってきてしまった。

 

「比企谷君…」

 

「ん?」

 

「私ねあのときから…ね…」

 

やっぱり怖い。この楽しかった遊園地にももう二人でこれないのは怖い。もう二人で帰れないのも怖い。となりで手を繋ぐことができなくなるのも怖い。

 

「?」

 

「っ」

 

頂上についた。そこからのキラキラと光るランドが一望できる。

 

高さも盛り上がりも最高潮。

 

今なら言える。

 

きっと神様が私に…告白する魔法をかけてくれたのかもしれない。今なら言える。今なら…あなたの事が…

 

「…好き…です」

 

そういうと同時にコースターは落下の衝撃で水しぶきを撒き散らした。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

スプライドマウンテンから出て花火を見るために場所取りをしている。白亜の城と花火が見える場所を比企谷君がリサーチ済みだったのでそこを陣取っていた。

 

ところで…

 

「はぁ…」

 

愛川花菜。人生初の告白をいたしました。

 

その結果はどうだったのか、わかりますか?

 

失敗です。

 

落下の衝撃音やらなんやらで私の喉から絞り出した小さな告白はかき消されてしまった。

 

比企谷君も何て言ってたんだ?って聞いてくるし…。

 

もう無理!こんな状況でもう一回告白なんて出来るわけなくない!?

 

あぁーもう!私の青春ラブコメ間違ってるよ!

 

まぁ落ちる寸前までびびってた私も悪いのかもだけどさ…神様…勇気渡すの遅いよ…。魔法は解けてしまいました。

 

「愛川?大丈夫か?」

 

「…うん」

 

はは…失敗したものは仕方ないさ…もう今日は無理なんだし精一杯遊びますか…へへへ…。

 

「よし!花火!花火だよね!あとどれくらいなの!?」

 

「あと五分くらいかな…」

 

「そっか…」

 

それにしてもいい場所だな…見晴らしもいいし。それに私は花火をちゃんと見るの初めてだから楽しみだ。

 

「…さっきの続きになるけど夏休み開けたら文化祭があったよな」

 

「大変だったよね…あれは」

 

「ああ…正直あんなにもう働きたくないって思った」

 

「私も~」

 

「愛川はバンドもやってたよな」

 

「そうそう。コスプレバンドね。似非お姫様でやってましたよ!」 

 

「まさかあれで歌うとはな…」 

 

「まぁね。そこそこ恥ずかしかった」

 

「まぁ…でも気持ちは届いたかもしれないぞ?」

 

「え?」

 

それってどういう…

 

「そのあと修学旅行だったな」

 

「あれは…黒歴史だよ」

 

「俺もだ…」

 

比企谷君は嘘の告白、私はそれを見て真に受けて泣くと言うね。本当に情けないっす。はい。

 

「修学旅行パスで!」

 

「同意だ」

 

「そのあとは選挙やったよね」

 

「生徒会のやつな」

 

「私が一肌脱いでやろうと息巻いたのに比企谷が勝手に解決しちゃうんだもん」

 

「解決はしてない。別の方法で誤魔化しただけだ」 

 

「なにを謙遜してるのやら。嫌がってる人をやる気にさせるなんて逆転の発想なかなか出来ないよ?」

 

「…それ誉めてるのか?」

 

「どうだろうね…」

 

「たく…」

 

「…それでクリスマスイベントだね」

 

「ああ…これも色々あった」

 

「奉仕部の二人とも和解できたしね…」

 

「…お前も聞いてたんだよな…あれ」

 

あれとはきっとあれのことなんだろう。きっと思い出すだけでも恥ずかしい心の叫び。

 

「うん」

 

「…あの時な…前の日に色々考えてたんだ。あいつらは俺にとってなんなのか…どうしたいのか…どうなっていきたいのか」

 

「…うん」

 

「考えた結果があれだったんだ」

 

「そっか…」

 

なんかやっぱり疎外感あるな…。

 

「それで…俺は…愛川、お前のことについても考えたんだ」

 

「…え?」

 

私のことも?

 

「奉仕部の二人とも違う、小町とも違う、材木座や戸塚とも違う。俺にとって愛川はどういう存在なのか、奉仕部の二人について考えてた日からずっと考えてたけど答えは出なかった」

 

「…うん」

 

「他のやつらとも違う、今までにいたやつらとも違う。俺には分からなかった。だからもう一度最初から解き直したんだ。いつから違うと思ったのか…いつから俺にとって特別になったのかを」

 

「特…別…」

 

「お前が特別になった瞬間、それは夏休みにプールに行ったとき俺に向かって放った一言を聞いたとき、そしてそのときの笑顔を見たときなんだ」

 

あれ…なんだか震えてきた…。

 

「それに気づいたら…愛川に対する気持ちがなんなのか分かったんだ」

 

目頭があつい…震えが止まらない。

 

「本当は分かっていたのかもしれない…気付かない振りをしていただけかもしれない気持ち…愛川…」

 

臨海部に位置するデスティニーランドでは夜になると冷たい潮風が吹く。そしてライトアップされたここの象徴である白亜の城が佇み幻想的な空間を作り出していた。

 

そして…この場所で…

 

「あなたの事が好きです。付き合ってください」

 

真っ黒な空に花火が咲いたと同時に彼は私に手を差し出してきた。

 

「っ!」

 

もう我慢なんて出来ない。私の中の想いと同じように目からたくさんの涙が溢れてきた。

 

なんて素敵なんだろう…今までに色んな人から告白されてきたけどこんなにも素敵で、こんなにも嬉しかった告白はなかった。

 

私の目の前には頭を下げ、手を差し出してきた想い人がいる。

 

「答えを聞かせてほいんですが…」

 

少し顔をあげ不安そうに見つめてくる彼を見てるやっぱり心が暖まる。

 

「私…こう見えて嫉妬深いよ?」

 

「ああ」

 

「実は腹黒かもしれない」

 

「知ってる」

 

「これからも一杯困らせるかもしれない」

 

「それはお互い様だ」

 

「つまんないことで怒るかもしれない…こんなわたしでも…いいの?」

 

「愛川がいいんだ」

 

目からはポロポロと涙をこぼし前が滲んで見えないし、震える声しか出せないが返事をしよう。そこまで言ってくれたなら私の答えは一つに決まってる。

 

強く。今までで一番強く、離さないように彼の手を握りしめた。

 

「愛川、付き合ってくれ」

 

「はい、比…企…谷君…」

 

もう我慢できない。

 

握っていた手を引き彼を抱き締める。

比企谷君の体温を感じる…すごい幸福感…。

 

今度こそ聞き逃したりなんてさせない。花火の音でとか言い訳もさせない。

 

彼を抱き寄せさらに顔を接近させる。

 

さっきよりも断然大きくなった彼への気持ちを

 

彼が好きになってくれた笑顔以上の笑顔をであなたに届けます。

 

「私も…あなたが大好きです…」

 

 

 

ーーー完ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて完結です。

35話程度、ちんたらやりすぎだと言うかも知れませんが…許して…結構大変でした。

またそのうち他のを書くかも知れませんがそのときはよろしくです。


それでは今までにご愛読ありがとうございました。


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