「ついに来たよ隼兎!」
「何が?」
昼休み、キャーキャーと女子に囲まれる狛倉君を傍目に、僕と遊羽は駄弁っていた。
「三人目だよ! 三人目!」
「…………あー」
遊羽言うところの三人目とは、バイオリンのことだ。
半年前、近くのコンサートホールで開催されている子供向けのアンサンブルコンテストに人数不足で参加を断念せざるを得ないことになったという苦い思い出があった。つまり僕らは三人という人数を集めなければならないわけだ。
「で、狛倉君を誘おうと?」
「だって狛倉君あの見た目だし、きっとバイオリンくらい弾けそうじゃない?」
「そう言われればそんな気もしなくもないけど…………」
見た目が見た目だけに否定出来ない感もあるしなぁ。
"天才バイオリニスト狛倉琴矢"とかテレビで紹介されてても本当に違和感ゼロだし…………どう考えても決めつけなんだけどね。それでも人数がそろうなら問題ないか。
「けど何か誘う策はあるの?」
「ふふーん! それについてはちゃんと考えてあるんだよ」
「ほぅ」
いつも、ザ・ノープラン、の遊羽が何か計画して行動するのは珍しい。やっぱり狛倉君のためってのがあるからかな…………痛い、胸がちょっと痛いよ。
「そ、それで、どうやって誘うの?」
「うん、それはね!」
と言うや否や、遊羽はそそくさと狛倉君の元へ行った。
「えっ? ちょ、遊羽?」
「まーかせといて!」
親指を立ててグッと表すと、狛倉君を取り囲む女子集団を掻き分けて狛倉君の前に立つと、何のためらいもなく言い放った。
「狛倉君! 付き合って下さい!」
「こんのアホ幼馴染みがぁぁぁぁ!」
僕は一瞬で遊羽との距離を詰める。
「へっ? 何?」
「何じゃないよ! わざとやってるのそれ!?」
「ん? わざと? ゴメン隼兎なんのこと言ってるの?」
「このド天然が!」
さあ、教室内がポカンとしちゃったけど、これどうするかな…………。もういいや。
「狛倉君一緒に来て!」
僕は狛倉君の手を引いて教室を走り去った。
「何でそうなるの!? ちょっと待って隼兎!」
ちらりと後ろを見ると、走って追いかけて来る遊羽と、ポカンと
○○○○○
「何で急に連れ出しちゃうのさ!」
「僕が遊羽と同じくらい無計画だからだよ!」
子供だからね! と、開き直る僕が連れてきたのは音楽室だった。普段ここでバイオリンの練習をしていることもあって、先生からスペアキーを貰っている。
「まあクラスの女子には明日事情を話すよ。それより狛倉君、実は話したいことが」
「待ってその前にあたしが無計画だったことについて撤回を求めるよ!」
「もういいんだよその話は! 僕も同じくらい無計画だったってことでいいじゃん! 話が前に進まないよ!」
もういい加減狛倉君とまともに喋りたい。
「いいや、あたしの(直球勝負で真っ向から勧誘)計画を、無計画とは言わせられないね!」
「言えるよ! 変なとこでプライド持つなよ!」
もう面倒だから無視して話を進めようかと狛倉君の方を向くと……………………。
「……………………え、あっ! ご、ゴメン! 別にバカにしてたわけじゃなくて」
クスクスと、狛倉君は笑っていた。
今にして思えば、狛倉君が教室に来たときから笑っていたことは無かった。だからこそ僕は、イケメンさとも相まって狛倉君の笑顔に驚いてしまったんだ。
…………そっか。
「遊羽。僕らには先にやることがあったんだ」
「?」
僕は狛倉君の一歩前に立つと
「殴るの?」
「違うよ! 別に笑われてイラついたわけじゃないよ!」
正直柄にもないことしようとしてるんだから茶化すのはホント止めてほしい。
僕は気を取り直してその、柄にもないことをした。
「狛倉君。僕と友達になろう」
僕自信、友達と呼べるのは遊羽くらいだから、そこそこの一人ぼっちなわけで、だからホント、柄にもないことだ。
「……………………」
なにかしらの返答も無い狛倉君を見つめていると、狛倉君の瞳から、スゥッと涙が溢れていた…………。
「ええ! 狛倉君!」
「なーかしたなーかした、女子全員から責められるー」
「そういう雰囲気じゃないから! あと地味に怖いこと言わないで」
「…………ごめん、そうじゃなくて…………ただ、嬉しくて」
涙を拭いながら狛倉君はこちらに向き直った。
「僕も、友達になりたいよ。えっと…………」
「ん? ああそっか」
僕は手近にあった紙と鉛筆で自分の名前を書き、狛倉君に見せた。
「春馬隼兎、です。よ、よろしく」
今さらになって照れ臭くなってしまった。
涙も収まった狛倉君は、改めて言った。
「うん、春馬君。友達になろっか」
狛倉君が何故泣いたのか、単に喜怒哀楽の変化が激しいのか、それともなにか理由があるのか。なんにせよ、いつか聞く機会もあるのかな。一応、友達になったんだし。
内心、友達が一人増えたことにガッツポーズしている自分がいることに、気がついた。
「隼兎だけズルい! あたしも友達になる」
次いで遊羽も僕と同じようにして、狛倉君と友達になっていた。
「よろしくね、雪見原さん」
「……エへへ」
照れたように笑う遊羽を見ていると、何でかな、やっぱり胸がチクチクするんだよなぁ。
ともあれ、僕らはこれで本題に入ることが出来る。友達として、堂々と頼むことが出来る。
「………………狛倉君」
「ん、どうしたの春馬君」
友達が出来たのが嬉しいのか、ニコニコと表情を返す狛倉君。けれど、僕は少なからず緊張してしまう。だって……。
「僕らと一緒に、バイオリンをして欲しいんだ」
大切な友達で、大切な三人目だから。
初あとがきです。たまにあとがきは挟もうと思います。……で
更新が約1ヶ月空きになって申し訳ないです。
そのわりに話が全然進まないことにも本当に申し訳ないです。あらすじに載ってる展開全然出てこねーじゃねーかとか言われるかもしれませんが、本当に申し訳ないです。
更新ペースは、もう少し早めていこうと思います。
世間一般的には駄作と言われてもしょうがないような作品かもしれませんが、それでも一応オチをつけて終わらせるつもりですので、是非読んでいただければ幸いです。
➡本文の終盤に追記しました。