こぐま座のポラリス 作:そよ風
新しい学校で、私は最初から友達をつくるのをやめていた。母親が、学校でのことを聞くのをやめていたからだ。授業中も間の休憩時間も何もしゃべらず、ただじっと椅子に座っている。私の理解者はただ一人、勉強が不得意で内気な男の子だった。
名前は、鈴木誠くん。鈴木くんは、入学してから一週間後の昼休みに声をかけてくれた。
「ぼ、僕、鈴木誠。君、佐藤さん、だよね? 僕と、と……」って。「と?」って私は聞き返したと思う。
「と、友達になってもらえる?」って、自信なさそうに、時折ちらっと顔を見ながら聞いてくるから、私は小さい声で「うん」って言った。鈴木くんとは、席は通路を挟んで向かい側だった。休み時間は、ボソボソっと、一言二言話して、お互いに寂しさをまぎらわせた。
夏休みが終わって二学期に入った頃、方面が同じだった私は鈴木くんと一緒に電車で帰っていた。私は部活に入っていなかった。鈴木くんは隣の中学校に通っていたので、家は比較的近かった。
いつも二人で別れる交差点。ある程度の交通量があるそこで、いつも通り「じゃあね」と別れようとしたら、急にサイレンが鳴り響いた。救急車だった。心当たりがあった私は、真っ青になったと思う。
ある程度の事情は、鈴木くんには話していたから、鈴木くんは心配そうな顔で大丈夫、って言ってた。そしたら、向こうの道からさくらちゃんが———久しぶりに会うさくらちゃんが走ってきた。半泣きの顔で、「お母さんが」って。
私はさくらちゃんと鈴木くんに連れられて一度家に戻った。やっぱりさくらちゃんはうちの事情がわかっていた。鈴木くんも知っているとわかり、さくらちゃんは知っていることを説明してくれる。
それによると、母親は自殺を図ったそうだ。風呂場で、カミソリで手首を切って。どうやって通報されたのかは知らない。さくらちゃんは「お母さんは命に別状はないって。お母さんは病室で、流産してしまった弟に向かって謝っていたらしいよ」私の携帯電話で代わりに事情を聞いてくれていた。流産なんて聞いたことがない。頭がおかしくなってしまっていたのかもしれない。
鈴木くんのうちでも問題があるというのは前から聞いていたので、鈴木くんは家に帰った。さくらちゃんはずっとうちにいてくれた。
一週間経って、母親は退院した。私は家で迎えた。母親はしきりに泣き、私に向かって謝罪を繰り返した。私が一度もお見舞いに行かなかったことで、怒っていると思ったらしい。
母親は今まで以上におかしくなった。父親も滅多に見ない。さくらちゃんは平日は放課後に、休日はほぼ一日中うちに来て、家事を手伝ったり一緒に勉強したりした。鈴木くんの家の問題は悪化したらしい。
そして、さくらちゃんの入っている管弦楽部が演奏会間近で、うちに来られない今日、私の誕生日である今日———