マクロス ザ・ロスト   作:神奈 亜栗鼠

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第一章 会敵~incoming~

 「はぁ、ヴァジュラ来ないなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 俺は今、基地のカフェテリアで昼食後のコーヒーを飲んでいる。

 

 言語変換装置の完成へ向けて、さらに大量のデータを集めようとしているのだが、肝心のヴァジュラが現れてくれない。彼らのフォールド波が観測できないんじゃ、どうしようもなくやることが無いわけで、恐ろしく暇なわけだ。研究員ポジションならまだしも、テストパイロットという立ち位置の俺は、他の基地の職員に比べればやることは少ない。

 

 「なにボサッとしてるのよ」

 

 「ん、ユリィか。暇だからコーヒー飲んでる」

 

 俺がそう言うと、彼女は向かいの席に座った。

 

 「あんた、研究員じゃないから暇よね。あたしも暇だわ」

 

 「まあ、飛ぶ側が暇じゃあ裏方も暇なのも道理だな」

 

 ユリィは頷きながらテーブルに肘を立て、頬杖をつく。

 

 「てか、モニターはどうした。いつまたヴァジュラが来てくれるか分からないっていうのに」

 

 「モニターは同僚に任せてきた。あたしは息抜きついでにランチ」

 

 ランチ、と言う割には、彼女は食事の乗ったトレイを持ってきたわけではない。大方、俺にちょっかいを出しに来たのだろう。

 

 「お前も暇だな」

 

 含みのある表情と声色で言った。すると、随分と動揺したようでこちらを睨み付けてきた。

 

 「なによ、喧嘩売ってんの?」

 

 「いんや、なんでもない」

 

 俺はマグカップの縁を口につけ、中身を口に含む。嚥下し、同時にコーヒーの香りが鼻から抜けるのを感じる。天井を見上げ、日課を開始する。

 

 ヴァジュラが現れない分には何もできないから、暫くは《マグナム》の整備を手伝って飛び回ろうか。

 

 そんなこんな考えていると、オフホワイトの天井が突然─────────────────真っ赤に染まった。

 

 けたましく鳴り響く警告音とサイレン。カフェテリアにいた職員や研究員たちが一斉にパニックを起こす。

 

 「な、なんだ!?」

 

 《緊急事態発生。緊急事態発生。コドルバ衛星軌道周辺に正体不明の生命体が出現。マクロスαが応戦中。職員ならびに研究者は、シェルターに避難してください。繰り返します──────────────────》

 

 「応戦中ってことは、攻撃されてるの!?」

 

 「だろうな・・・・・・・・・。管制室に行くぞ」

 

 俺は赤い閃光が染め上げるカフェテリアを抜け、廊下をひた走る。後方にユリィの気配を感じる。付いてきているのだろう。

 

 向かいから走ってくる研究員たちを押しのけ、管制室に入り込む。

 

 「局長、なにが起こってるんです!?」

 

 「アスカ君か。たった今エリアF-7から熱源反応が感知された。衛星軌道上のマクロスαは生命体と思しき何者かからの攻撃を受け、ダイヤ小隊が応戦している。マクロスαのカメラと同期。モニターに出してくれ」

 

 基地の管理者、グラハム局長は管制室のモニターに宇宙空間の映像を映し出した。

 

 画面の枠内外を、青白い光とライムグリーンの閃光が絡み合うように動いている。稀に赤い爆発を起こしながら、まさにくんずほぐれつしている。

 

 「ユリィ、拡大できるか?」

 

 「やってみる」

 

 ユリィがホログラムのキーボードを操作する。静止画を撮影し、その画像をギリギリまで拡大する。

 

 「これは・・・・・・・・・・・・・・・・ヴァジュラ?」

 

 そこに映し出されていたのは、硬質な黄緑色の輝きを持つ装甲を持つ生物だった。腹部にある長大な砲塔。爬虫類のような見た目。それはさながら、ヴァジュラの幼体にそっくりであった。

 

 「ヴァジュラならフォールドアンプが使えるはずだ。上に繋いでくれ」

 

 『すまんが、それは出来んな』

 

 俺の言葉に応えるように、回線が繋がった。

 

 「ガドル艦長。一体どういうことだ」

 

 グラハム局長が返す。

 

 ガドルは、一度低く唸ってから口を開いた。

 

 『ワシもそれを考えてお前さんに連絡しようとしたんだが、こんなデータが得られたんでな』

 

 すると、サイドモニターにマクロスαのブリッジからデータが送られてきた。

 

 「これは・・・・・・・・・」

 

 俺はそのデータを食い入るように見つめる。そして、ある項目に視線が辿り着いた瞬間、戦慄が走った。

 

 「《生体フォールド波》が・・・・・・・・・・・・ない!?」

 

 《生体フォールド波》。現在、人間、ゼントラーディ、ヴァジュラ、命と思考、言語がある種族に確認されている電磁波のようなものだ。それがないということは即ち生命体ではない何かということになる。

 

 「ダイヤ小隊の状況は」

 

 グラハムが鋭く返す。

 

 『芳しくないのう。このままじゃあ押し切られる』

 

 ガドル艦長のその言葉を聞いた途端、俺の爪先は管制室の入口へと向けられた。

 

 「アスカ君何処へ行く!?」

 

 「《マグナム》で出ます!今からならまだ間に合うはずです!!」

 

 俺はそれだけ告げると廊下へ走り出した。背後でユリィが何か叫んだが、扉に遮られてはっきりとは聞き取れなかった。

 

 赤いランプの光が奔る中を、整備場へ向けてひた走る。直進し、角を曲がり、エレベーターで下層階に降りてから、再び入り組んだ廊下を駆け抜ける。

 

 「おやっさん!!コンテナをアンプからA装備に積み替えてくれ!!」

 

 「そう言うと思ってとっくにやっといたぜ!!大気圏越えの準備は万端だ」

 

 ドッグに駆け込むや否やそう叫ぶと、上の方からよく通る声が聞こえた。

 

 それを聞いて一目散に愛機へ駆け寄ると、エンジンブロックの間にあるコンテナには、大きく『A』のマーキングが入れられたものが積まれていた。そして両主翼に取り付けられた、大気圏越えを可能にするブースターと摩擦を緩和する冷却装置を兼ねた追加装備。

 

 単座式のコックピットシートの上に置いてあるヘルメットを被り、シートに腰を掛ける。座席に仕込まれたパーツがパイロットスーツの金具と接続され、身体を固定する。キャノピーを閉じると、キャノピーの裏側、そしてコックピットブロック前方のスクリーンに機体情報が表示される。

 

 「システム、オールグリーン。滑走路への移動を開始」

 

 ゆっくりペダルを踏みこみ、機体を前進させる。タービンの放つ甲高い音は、回転数とともにキーを上げていく。

 

 滑走路へ進入し、定位置に機体を据える。

 

 『ちょっとアスカ、本気なの!?今更古巣の危機に駆け付けたって疎まれるのがオチよ!?』

 

 「でもグェンさんには借りがあるんだよ。これくらいはしないと。それに─────────────────」

 

 俺は中天を見上げて言った。

 

 「『誰かが傷つくかもしれない』って可能性を無くせるなら、本望だ」

 

 言って俺は大きく息を吸った。

 

 「白波アスカ、マグナム、出る!!」

 

 気合とともに思いっきりペダルを踏み込む。タービンエンジンの回転数が跳ね上がり、加速。前方からの押さえつけるようなGを余所に、まだまだ速度を上げる。

 

 操縦桿を上に傾けた途端、宙に浮く感覚がやってきた。しかしそんなものは束の間、今度はさらなるGが身体に圧し掛かる。今にも喉奥から臓器が出てきそうな強烈なプレッシャーに耐えながら、俺は空の果てを目指す。ものの数秒で、さっきまで足をつけていた大地ははるか後方へ吹き飛んでいった。

 

 手元のレバーを引き、ブースターを起動させる。一定になった速度は再び爆発的な上昇を見せ、一気に成層圏まで駆け上がる。マクロスαが漂っている場所まではまだ距離がある。

 

 「ユリィ!ダイヤ小隊はどうなってる!?」

 

 『まだ持ち堪えてはいるけど、そう長くはないわ!!行くなら急いで!』

 

 「十分急いでるけど!!」

 

 既に中間層に突入。ガタガタと激しい揺れの中を、操縦桿がブレないように必死に固定する。通常、ここまでせずとも人間は気を失うか気圧差に耐えきれず内側から膨張して破裂するが、そこは現代の文明の最先端技術が詰め込まれたパイロットスーツにより、影響が緩和されている。が、体力や集中力がかなり消耗するのも事実。

 

 「くっそぉっ!!ここまで無理して俺もお前もよく無事だな!!?そろそろどっちかお釈迦になるんじゃねぇの!?」

 

 縁起でもない減らず口を叩きながらいよいよ熱圏へ。なかなかの長旅だが、ここでようやく三分の一。俺の目的地はもう少し上だ。

 

 ブースターの燃料はまだ残っているが、なるべくは温存しておきたいところではある。

 

 「よし抜けた!!早々にくたばってんじゃねえぞ!!」

 

 熱圏脱出を確認すると、方向をやや修正して一直線に加速する。低周回軌道上へ乗り出したのだ。ここまで来ると目的地は目前だ。その証拠に、機体の無線にノイズを伴って人の会話が聞こえてくる。

 

 刹那、閃光が瞬いた。次々と光が交錯していく。

 

 「グェンさん、猫の手でも貸してやろうか?」

 

 『その声は・・・・・・・・アスカか!?来てくれたのか!』

 

 「いつぞやの借りを返しにね。状況は?」

 

 『情けねぇがかなりヤバい。ヒーローが手を貸してくれるなら願ったり叶ったりだ』

 

 「やめてくれよ、そんなガラじゃないから」

 

 そう言って俺はフルスロットルで戦闘宙域へ駆けこんでいく。ブースターをパージし、身軽になって敵と対峙する。

 

 目を刺すような鮮やかなライムグリーン、強靭な顎から覗く牙は、巡洋艦クラスの船なら齧りつかれたら致命傷間違いなし、と言った様子である。鱗のような細かい継ぎ目と艶めかしい光の反射は、まさに爬虫類のそれである。

 

 『気を付けろ、ヤツは口からとんでもなく強い酸を飛ばしてくる!!掠っただけでもかなり危険だ!!』

 

 グェンがそう言ってくるということは、数人それにやられているということだ。

 

 『ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!』

 

 次の瞬間、一人のパイロットの悲鳴が聞こえてきた。前方を見ると、標的がその咢を開き、ダイヤ小隊の機体に噛みついた。俺はすぐさま標的の頭部に射撃を命中させ、咢の戒めを解いた。

 

 「脱出しろ、受け止めてやる!!」

 

 そう叫ぶと、機体のコックピットブロックからスモークとともにパイロットが射出された。レバーを操作してガウォークに変形し、その手でパイロットを保護する。

 

 「グェンさん頼みます!!」

 

 『おうよ、ぶちかましてこいヒーロー』

 

 「文字通りマッハで大気圏越えてきたんでそこまでは無理だよ!サポート頼む!!」

 

 『あい分かった。野郎ども、死にたくなきゃあヒーローのお膳立てだ!!死ぬ気でやれ!!』

 

 無茶なオーダーを出された隊員たちは、それでも自分の機体を後ろから支えてくれるようだった。

 

 今、一対一で標的とまみえる。トリガーを引いて射撃。しかし躱されるのでミサイルを撃って牽制、確実にビームガンポッドの射撃を当てにいく。ガンポッドの弾こそ命中しなかったが、それの回避に気を取られ、ミサイル数発が代わりに命中。体制が崩れたと見た瞬間、すぐさま加速し、接近する。

 

 レバーを操作してガウォーク形態をすっ飛ばしてバトロイドに変形。ガンポッドを左手に持って、右のマニピュレータを背面へ回ったコンテナに手を伸ばす。そして握ったそれを振り抜いた。

 

 大音声を立てて、機体が弾き飛ばされる。

 

 「ふざけるなよ、特殊合金製の刀だぞ!?」

 

 《マグナム》の右手には、長大な刀が─────────────────正確には、刀のようなも、が握られていた。

 

 こちらも体勢を崩されたが、すぐさま立て直し、再び斬りかかる。今度は関節と関節の間を正確に狙って。

 

 綺麗に決まれば抵抗なくさくっと切れてしまう。切り口を拝んでやろう、なんて思ってキャノピーの外を見た瞬間、俺は戦慄した。

 

 「なんだこいつ・・・・・・・・・・・・・!!」

 

 傷口からは、血などの、そういった体液のようなものは一切滴っていなかった。視界に入ったものは、鋼鉄の骨、そして無数の銀色の間を走り回る電気(スパーク)だった。

 

 そう、あいつは生命体でも何でもない。機械だったのだ。ならば、生体フォールド波が無いのも道理だ。

 

 「くっそ・・・・・・・・・・・・・っ!!七面倒な!!」

 

 そう吐き捨てて後退しつつ左手にあるガンポッドで射撃を浴びせる。すると向こうも反撃に出た。腹部の砲身をこちらへ向け、電撃のような強烈な射撃を行った。紙一重で情報に躱すと、再びアラートが鳴る。

 

 「強酸かッ!!!」

 

 推進装置を起用に使い、こちらも紙一重で回避する。そして回避行動と続けて射撃体勢に入り、発射。向こうも回避行動をとるが、後方から飛来するミサイルや弾丸の嵐に逃げ場を失くし、射撃が命中。

 

 行ける。その直感に突き動かされ、ミサイルを掃射する。それに紛れて急接近。すぐさま敵も反撃に大顎を開けて噛みつこうとしたが、動きを完全に見切って回避。背後を取って背にある僅かな隙間に刀の切っ先を捻じ込む。じたばた動くも、やがて動きは止まり、標的は完全に沈黙した。

 

 「・・・・・・・・ふぅ。終わり、かな?」

 

 コックピットの座席に全体重を預ける。蹴りがついてよかった。正直《マグナム》にはかなり無理をさせていたし、丁度良かった。

 

 『アスカ、無事!?』

 

 コドルバの研究基地から通信が入る。この声は、ユリィだ。

 

 「こっちは大丈夫だ。けど、ダイヤ小隊の方はよく分からない。グェンさん、どうだ?」

 

 『八機中五機が損傷、うちパイロット二名が負傷ってとこか。敵さん一匹にここまでてこずらされるとは思ってなかったけどな』

 

 『そんなに!?どうしてすぐ増援を呼ばなかったんですか?そちらの軍支部で契約している民間軍事会社があったのでは?』

 

 『俺ら新統合軍にも、意地と面子ってもんがあるんだよ。・・・・・・・・・上の決定だ。俺らがどうこう言えることじゃねえ』

 

 それを聞いて、俺は溜め息をついた。軍の連中は、相変わらず下らないプライドなんかを頑なに守り通しているらしい。面倒この上ない。

 

 「ユリィ、このまま降りられると思うか?」

 

 『降りるって地球に!?絶対無理よ。一度マクロスαに収容してもらって、専用のシャトルで降ろしてもらえるよう、局長が話をつけるから』

 

 「分かった。迷惑かけるな」

 

 『自覚してるなら自重しなさいよね!?』

 

 そう言ってユリィは一方的に通信を切断した。

 

 『あんまりお前の我が儘に女の子を巻き込むんじゃねえぞ?』

 

 「別に巻き込んだ覚えはない。いつもくっついてくるのはあいつの方だよ」

 

 俺は再び溜め息をついた。そして地図を開いてマクロスαの位置を確認する。

 

 「じゃあお先。居心地が悪くて仕方がないよ」

 

 『何度も言うけど、お前が気に病む必要はないんだよ。お前は正しいことをした。悪いのは変なプライドに固執してたうちの連中なんだから』

 

 「それでも・・・・・・・・・・・・・」

 

 言いかけて俺は言葉を腹の底へと飲み込んだ。

 

 「いや、この話はやめにしよう」

 

 そう言ってスロットルを引き絞った。

 

 

 

 

 

 

 マクロスαに到着した俺は、そのままブリッジに入って艦長に挨拶をした。人とすれ違う度に、白い目で見られるが気にしてはいけない。

 

 艦長の話によると、丁度物資供給用のシャトルの貨物室に空きがあるので、そこのスペースに上手いこと《YF-44 マグナム》を積載する、とのことだった。シャトルの出発まで自由にしていていいと言われたが、出来るものならこんなところに長居はしたくない。

 

 本日何度目かの溜め息を吐いて、通路を曲がろうとした瞬間、一人の男性と鉢合わせた。お互いに小さく声を上げ、その場で固まる。男が着ているブルソンには、新統合軍のエンブレムと、トランプのダイヤを模った紋章があった。新統合軍マクロスα支部、ダイヤ小隊の隊員だ。そして自分のかつての同僚でもある。

 

 「・・・・・・・・・・・今更何しに戻ってきたんだ」

 

 男はキッと俺を睨み付けながら言う。俺は視線を右下へ外す。

 

 「別になんだっていいだろ。ただのお節介だよ」

 

 「助けを請うた覚えはない!」

 

 「だからお節介だって言っただろうが。いちいち突っかかってくるなよ、面倒くさい」

 

 俺はそれだけ言い残してその場を去ろうとした。だが彼の横を通り過ぎた瞬間、肩を掴まれ無理矢理向き直させられる。

 

 「お前さえいなければ─────────────────」

 

 「おい、よせ」

 

 男の言葉を遮るように、別の男が声を発した。肩幅の広い体躯と長身に、赤毛の短髪。グェンだった。

 

 「しかし隊長、それではジャックが─────────────────」

 

 「やめろって言っただろ。・・・・・・・・・・お前だって、あれが仕方のないことだってことくらい分かってるだろ・・・・・・・・・・・?」

 

 グェンがそう言うと、男は小さく舌打ちしてその場を去った。

 

 俺が目を閉じて息を吐くと、胸に何かが当たった。目を開けてみると、胸元に煙草の箱が浮かんでいた。グェンがよく吸っている銘柄だ。俺はそれを指先で軽く弾き、グェンに返した。

 

 「なんだよ、煙草吸わないのか?」

 

 「あんま得意じゃないって前から言ってるだろ」

 

 グェンはそうか、とだけ言って煙草を咥え、ライターを取り出した。

 

 「館内禁煙だろ。それで何回怒られてると思ってるんだ?」

 

 「ぐっ・・・・・・・・・・・・うちのオペレーターと同じこと言いやがる」

 

 そう言ってグェンは煙草をパッケージにしまった。

 

 「悪く思わないでやってくれ。あいつらだってやりきれないんだよ。今更つまらんプライド捨ててもな、どうしようもないんだよ」

 

 「分かってる。・・・・・・・・・・・・けど俺は自分が許せない。グェンさんならきっとあいつを救えたはずだ」

 

 「それは言いっこなしだって、お前がコドルバに降りるときに言っただろ」

 

 俺は思わず無言になった。とにかくこの場から立ち去りたい気持ちでいっぱいだった。

 

 「ご両親には会いに行かないのか?折角上がってきたんだから、顔くらい見せに行けよ」

 

 「とてもそんな気分じゃないな」

 

 「それもそうだな」

 

 そう言って俺たちは反対方向へと歩き始めた。足取りは自然と早足になっていた。

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