ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー『夏――待ちわびて』   作:鍵のすけ

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「後悔の音と約束の色」でお馴染みの専務さんです。
謎です。謎の方です。謎過ぎるのでまずは読んでください。By企画主催者


津島と俺の脳内世界物語

 

「なぁ、津島。」

 

「ヨハネって呼んで頂戴。」

 

「…いや、そのことなんだけどさ。」

 

固く握った、決意の拳が震える。

津島の事だ。根はしっかりしている子なんだ。だから、その体質がそれに寄るものでは無いとわかっている。

だからこそ言いづらかった。君は、こんなことを信じてくれるのか。

 

「…何、教えてよ。」

 

すこしぶっきらぼうな返事。いつもの成り切った姿では無い、俺に見せる昔からの姿。

俺も変わらない姿で伝える。ずっと秘密にしてきた。

俺の、一生一代の告白だ。

 

「…お前は、」

 

言葉が詰まる。でも言わなきゃ。浦が星女学院に入れたのも、中学を別々に過ごしたのも今日の為。伝えるんだ。

 

「…お前は、堕天使じゃない。」

 

すこし詰まったような、それでいて寂しげな表情を浮かべる。それに縋っていたから、今までを過ごして来れたのに。

 

「…何、そんなこと言いに」

 

「堕天使じゃないけど…」

 

津島の言葉が途切れる。きっと脳内は疑問符でいっぱいなのだろう。堕天使じゃないことは自分が一番分かってたはずだ。自分は、只の不幸体質な人間である…と。

彼女を救うのか、落とすのか、それはわからないけど。

俺は、伝える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 お前は、魔女なんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

せめて、受け止めてくれ。

この、馬鹿げた告白を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

津島が浦の星女学院に入るずっと前、俺と津島が小学生だった頃まで時間は巻き戻る。子供の頃の津島は、そのあまりにも不運な体質にいつも落ち込んで、泣いて、俺が励まして、途端にケロっとして、いつもの津島に戻る。そんなサイクルに生きていた。

俺も津島の不幸体質には同情したし、だからこそ、俺といる時くらいはその体質を忘れさせたいと一緒に遊ぶことも多かった。

不思議と、俺と遊ぶ時だけは何も起こらなかった。もちろん遊園地の予定で雨が降ることもあったが少し前に予報でわかってたことだったり、逆に晴れている時も予報に出ている天気だったり。とにかく、良くもなければ悪くもない普通の生活が出来た。

中学は別々になった。その時に初めて聞いたのが、「津島善子は魔女である。」という事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうのが流れ。ここまでいいか?」

 

津島の家にて3年間頑なに守り続けた秘密を告白した。当の本人はどうだろうか。

 

「…あー、うん。なるほど。」

 

理解ができていないようだ。それもその筈だ。普通の人間はまず混乱する内容だし、ここまで聞いてくれるだけでも有難いものだ。

 

「とりあえず、お前の不幸体質には原因があったってことなのよ。オッケー?」

 

「オッケーなわけないじゃないの。にわかに信じ難いわよ。」

 

もはや隠す気の無い素直な津島善子になっている。俺の慣れ親しんだ津島だ。

 

「んー、そうだな。そりゃそうだよな。俺ですら最初はわけわかんなかったもん。」

 

「はぁ、あなたでわからないなら私には到底無理よ。私と正反対の人間が理解不能だってのにわかるわけないわよ。」

 

そうなのだ。

 

「出かければいつも晴天、雪道はあなたの歩く道だけ溶けてるし、コンビニのくじは毎回1等。インフルエンザにかかったかと思えば1日で元気になって出席停止期間の後に連休が来て1人だけ長期休暇だったりするものね。」

 

俺は…異常なほどの幸運体質だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔女…この定義は世紀を跨ぐ事に変わっていったと言ってもいい、ひどく曖昧で確定した根拠の無いものだ。

それなのに、なぜ津島善子を魔女と決めたのか。

 

「俺とお前っていとこじゃん?」

 

「ええ、昔からの付き合いよね。」

 

「でも体質は正反対だろ?」

 

「…悔しいけれど、そうね。」

 

「魔女のうちの1人、モーガン・ル・フェイの存在を知っているかい?」

 

津島はきょとんとした顔で見つめてくる。知らないことが見え見えだ。

 

「アーサー王の伝説において度々出てくる魔女…とされてる人物だ。」

 

「されてる、ってことは確かではないのね。」

 

「他にも多くの文献で出てくるが、『女神』の異名をとることもあるし、普通の人間である場合もあるからな。」

 

「はぁ。で、その人がどうかしたの。」

 

「俺とお前の先祖をたどると、そのモーガンに当たるとしたら?」

 

驚いたような顔を浮かべた後、津島は笑い出した。

 

「何いってんの?正気?」

 

「…初めてモーガンの存在が出る文献、『マーリンの生涯』において、モーガンは美しい美貌と歌声を持つ博識の女性として書かれた。」

 

「…ふぅん。」

 

馬鹿にしていたような態度から、少しは話を聞く姿勢になったようだ。俺は続ける。

 

「その後、文献『アーサー王の死』によってモーガンは邪悪な魔女に変貌するが、興味深いのは彼女の両親だ。」

 

「…一体何が?」

 

だんだんと興味を持ち始めたことに手応えを感じる。こういう系の話はやっぱり好きなようだ。

 

「彼女…モーガンの母親はモーガンを産んだ後に離婚、とある男性と再婚して男の子を産む。」

 

「まさか、それが…」

 

「アーサー王、なんだよ。」

 

いつしか津島は真剣な眼差しで俺の話を聞いていた。堕天使を名乗るくらいのものだ。この話は彼女の興味をガッツリ掴んだらしい。

 

「後にアーサー王は己の子供、モルドレッドを相手にして最後を迎える…この時のモルドレッドの母親…アーサー王の妻が、モーガンって説があるんだ。」

 

「なるほどねぇ…」

 

「もし、そのアーサーとモーガンの血を俺とお前が継いでたとしたら…たまたまお前にモーガンの魔女の血が濃く受け継がれ、俺にアーサー王の血が濃く受け継がれてたとしたら…?」

 

「お互いの体質に筋が通るってことね。」

 

「そういうこと。少しは理解出来た?」

 

「えぇ…。確かに、納得いくものが多いわ。」

 

「今まで…正確にはお前が中学に入ってから秘密にしてきたことだったから、ドキドキしたよ。」

 

「そんな前から?」

 

「あぁ。」

 

「…ねぇ、その話一体誰から聞いたのよ。」

 

「あぁ、それなら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋で1人、ベッドに横になる。

さっきまですぐそこには彼がいた。私が魔女の血を…それも、割と有名な魔女の血を継いでる、と。

正直、途中から普通に聞き入っていた。そういう話が元から好きだし。

でも、彼は詰めが甘い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…ねぇ、その話一体誰から聞いたのよ。』

 

『あぁ、それなら、俺が小6の頃の夜にさ、夢に出てきたんだ。』

 

『誰が?』

 

『わかんない。でもその人が俺に話しかけてくんのよ。でも聞き取れなくてさ、なんとか聞こえたのは魔女って単語と津島の名前。で、そっから調べたのよ。そしたらビンゴってわけ。な?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ホント、バカだなぁ。」

 

私は不幸な体質だ。反対に彼はとても幸運に恵まれている。ただ、昔から伝記や空想の世界が好きで、いつも自分がいろんな世界の主人公だと思って遊んでいた。私は逆に、物語と現実は区別がついている至って普通の女の子。不幸なことを除けばの話だけど。

きっと今日のアレも、それの延長上なのだろう。昔から変わらない彼の性格。高校生になった今でも変わらないとは思わなかった。

途中から『浦が星女学院には魔女を育成する目的もあるらしい』とか、完全に自分の世界を語り続けていた。昔は苦手だった。有り得ないし、意味がわからないし。

でも、彼がそういうこと話す時、決まって私も入ってて、決まって私の不幸に対する意味付けだった。

いつも不幸なために泣いてばかりいた私の為だったのか、自分の世界に浸ってただけなのかはわからないけれど。

それでも、彼のその世界に、私は惹かれていった。

小6の、卒業して中学が離れ離れになる直前、彼は私に話してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なぁ津島。お前って、実は堕天使なんだよ。』

 

『だてんし?』

 

『堕ちた天使で堕天使。悪いことをしたり掟を破った天使がそうなるの。』

 

『…私、なにか悪いことしたの?』

 

『ううん。でも堕天使ってさ、すっごい綺麗だったりするんだって、それってさ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『津島にピッタリじゃん?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出して、顔を枕に埋めた。

今日も言ってたっけ。魔女は綺麗な容姿と歌声を持ってるとか。

どういう感情から来るのか知らないけど、本気で私のことをそう思ってくれてる。だからあぁやって素直に言える。それがわかっちゃうから、恥ずかしい。

 

「…まだしばらくは、堕天使のままでいいかなぁ。」

 

いつか、アーサー王に負けないくらいの魔女にならなきゃ。そう思って、眠りにつく。

私の不幸に現れた、たった1つの幸運を想って。

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