ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー『夏――待ちわびて』   作:鍵のすけ

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新谷鈴さんです。新谷鈴さんです。
参加してくださいましてありがとうございますBy企画主催者


黒澤ルビィのお見合い事情

「あ、あの…はっ初めまして、黒澤ル――」

 

「またどもってますわ、もう一度です」

 

今、黒澤ルビィは自己紹介の練習をさせられている。実の姉である黒澤ダイヤの目の前で。

 

「黒澤家の人間として恥ずかしく無いようにみっちりと指導して差し上げます」

 

「か、顔が怖いよ……」

 

 

事の始まりは数日前、娘に男の気配が全くないのを心配した父が勝手にお見合いの募集をかけたの事であった。

 

 

「ルビィちゃーん、ちょっと良いかしら?」

「はーい」

 

母に名前を呼ばれてルビィが居間へ向かうと机の上に書類が広がっていた。

 

「お母さん、これって……」

 

「そうなのよ、この間からお見合いの申し込みがいっぱい来ちゃって」

 

無下に断るのも体裁が悪いからと、一度目を通してくれという事でルビィが呼ばれたのだった。

 

「あ、あの……ルビィは………」

 

お見合いを受ける気はないと、そう伝えようとした。しかし母はルビィが言い終わる前に語り出す。

 

「分かっているわ。もう、あの人ったら本当に心配性なんだから。……でもね、これはチャンスかも知れないわよ」

 

「チャンス?」

 

「そう、この写真の人達は皆良家の出身。普通なら会うことは無かったかも知れない人達よ。そんな人達と知り合える機会があるっていうのは、チャンスだと思わない?」

 

「でも……」

 

「別に無理にという訳では無いの。でも、もしもその書類の中で気になる人がいたら前向きに考えてみて」

 

そう言って母は席を外した。

人と話すのは苦手で、特に男の人とは目を合わせるだけで緊張するのに気になる人なんて。そう思いながらも書類に目を通していると、その中の一枚に目が止まる。

 

「チャンスかあ」

 

写真を見ると優しそうな人だった、趣味は料理と音楽鑑賞でインドア派なのかなと勝手に想像する。

人と話すのは苦手で、緊張する。でもずっとそのままでは駄目だと思ってもいた、それじゃあ『成りたいもの』にも近づけない。それに――

 

「この人なら、話せそう。私だって別に男の人が嫌いな訳じゃない……から」

 

この機会に一歩、踏み出してみようと思った。

 

(お母さんの思惑とは少し違うけど)

 

ということで少し申し訳なく思いながらも母にお見合いを受けると報告すると一瞬ビックリしたが、「絶対に成功させてあげるから!」と張り切って準備を始めた。

 

そこで、騒ぎを聞いて姉が降りてくる。

 

「どうしたんですの?」

 

「あ、お姉ちゃん。実はお見合いを受けようと思って」

 

「なるほど、貴女がお見合いを……え?」

 

言ってから理解したのか、遅れて驚いた表情になる。

 

「あらっ、ダイヤちゃん丁度良かった!」

 

「お母様、ルビィがお見合いを受けるって本当ですか!?」

 

「本当よ?だからね、ちょっとお願いがあるの」

 

そう言って暫く話してたみたいだが「じゃ、よろしくね!」と言って母はまた準備に向かったようだ。

 

「……お姉ちゃん?」

 

「ルビィ」

 

「は、はい!」

 

母との会話が終わってから固まっていた姉を心配して声をかけたが、名前を呼ばれて背筋が伸びた。

 

「本気、なのね?」

 

「う、うん……」

 

「分かりました、じゃあついて来なさい」

 

そうして状況は冒頭に戻る。

 

「――よろしくお願いします!」

 

「…まあ良いんじゃないかしら」

 

数時間に及ぶ特訓のすえ姉からオッケーをもらうことが出来た。

 

「これだけ特訓したんだから本番も大丈夫よね」

 

特訓の目的は作法やら話し方がメインではなく、特訓をすることによってルビィに自信をつけさせる事にあった。

 

「お姉ちゃん、ありがとう」

 

「別に、これも黒澤家のためよ」

 

そう言ってそっぽを向く姉の顔が赤みを帯びてるのに気づく。

 

「照れて、る?」

 

「て、照れてなんかいませんわ!そんなことより、特訓は今日だけじゃありませんからね。お見合いの当日までみっちり指導してあげます」

 

「ええ!?」

 

先程までやっていた姉との特訓を思い出して悲鳴を上げるルビィであった。

 

 

そんなこんなで迎えたお見合い当日、緊張しながらもお互い紹介や挨拶も終わり問題なく進んでいたのだが……

 

「それでね、この間なんか――」

 

「あらやだ、うちなんかね――」

 

挨拶が終わってからずっとこの調子で親同士の世間話が終わらないのである。

 

「あはは……ん?」

 

「あっ」

 

そんな親達をみて苦笑いしている相手の男性と目が合ったが、恥ずかしくて思わず下を向いてしまう。

 

「あら、ついつい長話をしてしまったみたいでごめんなさいね」

 

「あとは若い二人にお任せしようかしら」

 

頃合いを見計らっていたのか、唐突にそう言って席を立つ親二人。去り際、ルビィの耳元で頑張ってねと言い残してそのまま部屋から出て行き二人きりになってしまった。

 

「あ、あの」

 

「あの」

 

突如訪れた沈黙の中、喋り出したタイミングは二人同時だった。

 

「あ、あのっ、お先に、どうぞ……」

 

目が合ってから目線を上げられないまま、ルビィはなんとか相手に先を促す。

 

「えっと、なんかすみません親の長話に付き合わせちゃったみたいで」

 

「い、いえ。そんな、あの」

 

あんなに特訓したんだからとか、落ち着いて話さないととか、色々な事が頭を巡っていたけれどいざ男の人と二人きりになると緊張で頭が真っ白になっていた。

 

「大丈夫?顔色が良くないみたいですけど」

 

相手の男性に心配されるほど酷い表情だったらしい。

 

「あの、私……」

 

「やっぱり体調が悪いんですか?」

 

「ち、違うんです、実は」

 

目線を上げ、相手の顔を見る。写真で見た通りの優しそうな雰囲気の男性だった、しかし今は心配そうにこちらを窺っている。

言わなければ、自分の気持ちを伝えなければ、そう思った。

 

「じ、実は私、男性の方とお話しするのが苦手で。そ、そんな自分を変えたいって、思ってこのお見合いを受けたんです。だから、その、お付き合いとかは考えてなくて……」

 

言ってから、付き合う気もないのにお見合いなんかして相手にどう思われるかと段々怖くなってきた。不誠実だと思われただろうか

 

「そう、なんですか……」

 

しかし、来ると思ってた反応とは違い彼はただ頷いた。

 

「おこら、ないんですか?」

 

「まあ少しショックですけどね」

 

そりゃそうだ、相手はルビィとそういう関係を望んでここに来たのだから。

 

「一つだけ、聞いても良いですか。どうして、僕だったんですか。ルビィさん可愛いしきっと、他にもお見合いの申し込みが来てたと思うんです」

 

「え、えっと、曲、です」

 

「曲?」

 

「はい、あの、趣味に音楽鑑賞で、その、好きな曲も書いてあって」

 

「えっと、確かあのとき書いたのは」

 

「SUNNY DAY SONG、ですよね」

 

そう、だからきっとこの人も――

 

「いや実は僕、μ'sのファンで」

 

「わ、私も!好きなんです!」

 

そう、だからこの人となら話せるんじゃないかと。そう思ったのだ。

 

「なるほど、同じ趣味だったから話しやすいだろうって事だったんだ」

 

「は、はい……」

 

それから彼は暫く考えるような素振りをして、告げる。

 

「ルビィさん」

 

「な、なんでしょう」

 

「これからも僕と会ってくれないか」

 

「……え?」

 

予想外の言葉に戸惑うルビィ。

 

「え、えっと、その、どうして」

 

「ルビィさんは男性と話せるようになりたいんですよね、なら僕がこれからもそれに付き合いますよ。それに、今は付き合う気が無くてもこれからずっとそうだとは限らないですよね?」

 

困惑しながら聞いていたが、話の内容を理解するにつれて顔が熱くなっていくのが分かる。

 

(え、こ、これって告白されてる!?)

 

「駄目、ですか?友達からでも良いんです」

 

返答がないのを不安に思ったのか声をかけてくる彼。

 

「い、いえ、あの、駄目とかでは、なくて」

 

「いえすみません、急すぎましたね。その、さっきのはわす――」

 

「あ、あの!!ふっ、不束ものですがよろしくお願いします!!?」

 

動揺と混乱で思わず口走っていた

 

「良いの?」

 

「は、いえ、と、友達からならその……」

 

「良かったぁ」

 

言うと同時に机に倒れ込む、その時ゴツンという豪快な音が響いた。

 

「え!?あの、だ、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫じゃないです、正直駄目かと思ってました」

 

「自分で言ったんじゃないですか……ふふっ」

 

「あっ!今笑いましたね!?」

 

「わ、笑ってないですよ?」

 

「嘘!絶対笑いましたって!」

 

さっきまでの真剣な表情と違い緩んだ姿がなんだか可愛らしくて思わず口元が緩んでしまった。

 

「あの、改めてこれからよろしくお願いします。僕、頑張るんで」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

そうして二人の交流が始まったのだった。

 

この後、お互いの両親に散々弄られたり最終的に付き合うことになったりするのだがそれはまた別の話

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