ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー『夏――待ちわびて』   作:鍵のすけ

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秩序鉄拳さんです。二回目です。二回目なのです。その分もうどこが見どころかはもう分かってますよね???By企画主催者


Small Island Love Story

静岡県沼津市、その中でも伊豆半島の海岸線沿いに降りたところにある【淡島(あわしま)】。

そこはパーク島であり、昔は釣り堀が二か所、ロープウェイが運航していたりとあったが、今ではその半分が老朽化などで運営停止。

今では水族館と、小さな方の釣り堀と、水族館に隣接されているカエルばかりの施設、そして――

 

 

 

「それでは、お部屋の鍵はこちらとなります。島外へ外出の際はフロントにてお知らせください」

「ありがとうございます。あ、ここら辺の地図とかありますかね?」

「ええ、こちらになります、どうぞ」

「ありがとうございます、それでは」

 

 

 

――ホテル施設が運営されている。

宿泊費は少々お高めで、その分サービスは致せりつくせりで、さらに景色もいいもの、その中でも露天の温泉が特におすすめらしい。

だということが自分の調べた口コミに書かれていた。

そんな場所に何故、特にお金持ちというわけでもない俺が、東京というコンクリートジャングルからきているのかと言えば。

 

 

それはここの水族館が面白いという口コミと、さらにこの俺が泊まる二泊三日の間に、【コスプレイベント】なるイベントが行われるという話があるからだ。

俺はもともとコスプレに興味がある人で、しかしながらいきなりコミケだとかそんな大きな企画でコスプレをするのはとても精神的な重圧がかかる。

だからこそ、今回のような規模の小さいコスプレイベントから地道に参加していこうという考えがあったのだ。

それに、高校生になったならば、一度でいいから奮発して良い場所に泊まりたいという、軽い挑戦心があったというのもある。

家族に頭を下げて、可能な限り短期バイトなどをして稼いだりと、頑張ったんだ。

 

 

 

「イベントは明日だから、今日はとりあえず下見を兼ねて水族館にでも行くかなぁ……」

 

 

 

部屋に荷物を置く前からこの後の予定をつらつらと考え始める。

折角来たのだからいろんなところを周ってみたい。

島の外に行くのもいいかもしれないけど、調べてみると特に何かあるわけじゃないし、今からの時間だと沼津駅のほうへ行ってもどこも閉まってしまうと思う。

そうだとすると、やはり今日は島のほうに集中し、明後日帰るときに駅までよればいいかな――

そうプランを立て、エレベーターから自分の部屋の階に降りると、何かがぶつかってくる感じに会った。

 

 

 

「あ、Sorry! 前を見てなかったよ~!」

「い、いえ。大丈夫……です」

「キミ、ここの宿泊客? 同い年位だと思ったけど――幾つ?」

「えっ、あっ、あー……16……です」

 

 

 

どうやらぶつかってきたのは目の前にいる金髪の……美少女。

ニッコリと笑顔で話しかけてくる彼女に俺の鼓動はさっきからバクバクと余裕のないリズムをたたき出している。

――文化祭でバンドライブしたときもこんな感じだったなと思いながら、上手く動かない口を無理やり開いて彼女の言葉に返していく。

 

 

 

「へぇー、私も16なの! やっぱり同い年だねぇ!」

「えっええ、うん、そうですね……はい」

「……ゴメンネ? 今あったばかりなのにまくし立てちゃって」

 

 

 

俺のぎこちなさに気付いたのか、彼女は口に手を当てて謝罪を述べた。

さっきからオーバーなリアクションをしているけど、絵になるなぁ……これが美少女かぁ。

あとどもるのは単に俺が女性慣れしてないだけなんです、男子校なんです……

 

 

 

「いっいや、大丈夫です。大丈夫……」

「そーう? じゃあなんでキミは目をそらしてるのかなぁ?」

「いっいやぁ、あの……恥ずかしくて……」

 

 

 

俺の反らした視線に回り込んでくるように、目を合わせようとする金髪の少女。

ぐるぐるとやり取りをするうちに向こうも疲れたのか、フーフーと息を漏らしながら俺の肩を掴んだ――え?

 

 

 

「最初からぁ、キミのことをこうやってHoldすればよかったんだよねぇ!」

「あっ、あの、近……」

「なぁに? 私の顔に何かあるの?」

「じゃっじゃなくて近い……!」

 

 

 

目を合わせようとして近づいてくる少女からふわりと香水――それもキツくない柔らかな匂いが漂う。

女性だなんて妹である梨子(りこ)と母位しか接したことが無い俺は、そんな彼女とのやり取りに顔が熱くなるのをはっきりと感じた。

いや、だってふと合う彼女の目――黄色がかった緑っぽい目――碧眼というのかな、そんな綺麗な目と、薄くだけどつけられてるっぽいマスカラだとか、そういう初めて見るものだらけなんだよね。

そりゃあドキドキするじゃないか、だって美少女なんだもん……

 

 

 

「恥ずかしがらなくていいのに、もしかしてキミ……」

「都会の男子校なので、じょ……女子と話したことは少ないです」

「ふぅん、いろんなところを転々としているけど、Cityの子ってやっぱりShyなのね!」

「いや……俺を基準に都会っ子評価されても――あれ、そういえば妹の梨子もシャイな奴だったような……」

 

 

 

『見た目だけならめっちゃ明るそうなやつ』って言われたりするんだけどなぁ……

梨子も目立ちたくないのか、身内の贔屓抜きで可愛いと思うのだがあまり化粧や着飾ることを嫌っている。

そんな俺だからこそ、なんとなく都会っ子がシャイだという少女の意見に異を唱えきれず、うなることしかできないのであった。

 

 

 

「――あ! パパに呼ばれてるんだった! そろそろ行かなくちゃ!」

「あっ、ああ、そうなんだ……それじゃあ」

「あっ待ってキミ!」

 

 

 

慌てるしぐさをする少女を置いて、俺は部屋へと向かう。

いや、早めに荷物置いておかないと外に行けないんだけど、話し込んでてまだ置いてないじゃん、ということに焦っているんだよね。

そんな俺を先ほど以上に慌てるような声で呼び止める少女。

 

 

 

「私は小原(おはら)鞠莉(まり)、マリーって呼んでいいわよ? キミは?」

「ぁ……ええと、桜内(さくらうち)……です」

「Non! そうじゃないの、名前、Nameのほうが聞きたいの!」

「えっ……ええと……」

 

 

 

女子に名前を教えるだなんて恥ずかしいというか、初めての経験でどうしたらいいのか戸惑ってしまう。

名前を教えてあげればいいのだろうが……どうしようか、と迷っていると――

 

 

 

「もう! 本当にShyなのね! わかったわサクラウチ、また会ったときに名前を聞いてみせるんだからね!」

「あっ、ああ……」

「それじゃあね! チャオ!」

 

 

 

一方的にまくし立てると小原さん――マリーは走って行ってしまった。

突然のことだらけで戸惑う頭を振り、再び俺は宿泊部屋へと向かって行った。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

この淡島のホテルでは、夕食も朝食も別料金だ。

その金額は宿泊だけで手いっぱいな庶民の俺にとっては全く手の届かない万越え。

そんな現実に俺は、仕方なくロビーの売店で晩飯代わりになりそうなものを物色していたのだが――

 

 

 

「Hi、サクラウチ! さっきぶりね!」

「やっやあ、小原さん。ほんとださっきぶりだね」

 

 

 

――マリーに突如声をかけられた。

今まで女性とろくな縁がなかった俺からすればこういうシチュエーションは苦手な方で。

ワーワーと高いテンションで話しかけてくる彼女にどことなく苦手意識を感じている。

 

 

 

「…………」

「え、えっと……小原……さん?」

「ツーン」

 

 

 

わざわざ『ツーン』と口で言うマリー。

そっちから話しかけてきたというのにそっちが無視してどうするんだと思うが、何か理由でもあるのだろうか……

 

 

 

「……わからない?」

「えーと、なにが……?」

「私が、今不機嫌な理由」

「……ごめんなさい、わからないです」

 

 

 

いや、マジでわからないんだって。

何かを訴えかけるマリーの視線から目をそらそうとすると、再び肩を掴まれ、顔を覗き込まれる。

温泉に入った後なのか、昼間に漂った香りとはまた違うフローラルな……梨子と母からも感じるシャンプーなどの匂いに近いものを、ふわっと感じる。

髪のほうは先ほどと違って垂らされていて……しっとりと少しだけ濡れているのも分かる。

とにかく……ドキドキしてくるし、顔が熱い。

 

 

 

「サクラウチ、本当にわからないの?」

「わっわかりません!」

「もう、本当にInsensitiveなんだから! サクラウチ、Ladyの扱い方がなってないわよ?」

「そんなこといわれましても……」

 

 

 

理由も分からぬままマリーに非難され、困惑を隠しきれない俺。

肩を掴まれてるから逃げられず、顔をそらすと――

 

 

『ちょっとサクラウチ、Talkの最中に目をそらすなんてNonsenseよ?』

 

 

――と言われてしまい、視線を合わせることを求められ……

マリーは美少女と言われる部類の子なんだろうなと思っているので、そんな長い時間目を合わせていたら……

未だ夕食を食べていない腹が空腹を訴える声を上げた。

 

 

 

「……サクラウチ、お腹空いているの?」

「えっあっああ、まぁ……うん」

「Dinnerは食べてないの? 今日はItalianがお薦めなの!」

「いっいやぁ……それが……お金なくて……」

「サクラウチって結構Foolね?」

 

 

 

Fool(おばか)とはひどい言われようだ、流石に並の英語力しかない俺でも今の英語は解った。

いや、否定はできないのだけどさ……

宿泊費にお金持っていかれて食費が全然ないし、ホテルのごはん食べることなんて夢のまた夢みたいな現実になってるわけだし。

そんな事実に否定や弁明の言葉が出ない俺のことを、マリーはジト目でにらみ、ため息をついた。

 

 

 

「――わかったわ。サクラウチ、一緒に来て」

「えっああ、ハイ」

 

 

 

マリーの後ろをついていくとそこは食堂。

思わず立ち止まった俺を、マリーが背中に回って押し、入ってゆく。

――って、待って待って!

 

 

 

「おっ小原さん、俺、金、持って無いので!」

「No problem、安心してサクラウチ……あ、彼は私のFriendだからServiceで案内してちょうだい!」

「かしこまりました、こちらへどうぞ」

「えっ、えっ!?」

「ほら、ボーっとしないでCome on!」

 

 

 

なんか色々と急すぎて頭が追い付かないまま、気付けば俺は個室みたいなところに通され、マリーと向かい合わせに座っていた。

後ろには先ほど俺たちを案内した従業員がいて、俺の首にテレビくらいでしか見たことのない【前掛け】を付けている。

――マリーはさっき『Serviceで案内して』と言っていた……つまり、俺は、飯を奢られたということなのだろうか?

 

 

 

「あっあのー……小原さん、流石に俺――」

「サクラウチ、さっきなんで私がAngryだったのか教えてあげる」

「――あっ、はい」

「私のことをFamily name、『小原さん』としか呼んでないわ!」

 

 

 

いや、仕方ないじゃん。

『マリーって呼んでもいい』と言われたとしても、そう簡単に女子の名前を呼ぶのは恥知らずだとか聞いたことがあるし……

――ということを簡単にまとめて弁解したのだが、マリーは逆にさらに怒る。

 

 

 

「い・い・か・ら! アナタは私のことを『マリー』って呼ぶの!」

「えっでも……」

「Understand?」

「ア、 アイムオーケー――まっ、マリー……」

 

 

 

俺の精神的な理由でのストップも凄みで却下されてしまい、ドッドッと音を立てて揺らぐ呼吸を抑えながら彼女に求められた名を呼ぶ。

するとマリーは満足げにウンウンとうなずき、笑顔を見せる。

 

 

 

「サクラウチ? もうDishは来てるわよ、食べないの?」

「――あっ、ああ、食べます、いただきます」

「フフッ、So funnyね、サクラウチ」

 

 

 

いけない、どうやら彼女の笑顔に目を奪われていたようだ。

目の前に気付けば料理が並んでいる――まずい、何が何だかさっぱりわからない。

一庶民である俺にはイタリアンのどんな料理がどうとか全く知らないのだ……

後ろから従業員の人が丁寧に解説してくれてはいるが、ほとんど耳に入ってこない――あれ、テーブルマナーってどういう感じなんだっけ?

 

 

 

「Take it easyよ、サクラウチ。もっとEnjoyしましょ?」

「あっああ、ありがとう……じゃあ、改めて……いただきます」

「ええ、自慢の味を召し上がれ!」

 

 

 

――初めて食べた本格イタリア料理の味は、よくわからなかったけども、とにかく美味しかったとだけ、言わせてほしい。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

あの食事のあと、マリーにコスプレイベントのことを話したのだが――

 

 

『なぁにそれ! とってもEccentricでUniqueな催しね! マリーそんなPartyがあるってこと、パパに教えてもらったことないわ!』

 

 

――と、えらく興味を引いたらしく――

 

 

『Take me with you! サクラウチ、イイでしょ?』

 

 

――と、半ば強引にではあるが連れていけと要望された。

親御さんには上手いこと言っとくらしいが――女もののコスプレとか俺持って無いんだよなぁ……

まぁ、明日の朝食時にまたその話をするらしく、またもや勝手に朝食堂に来るように決められてしまった。

つまりはまたもやマリーの奢り……彼女はいったいどんな家の出身なんだろう、めっちゃお金持ちってことだよね……

自分の飯一つ自分で満足に用意できていない飯を奢られる情けない人は、俺でした。

 

 

そんなわけで食堂に来た俺。

ビュッフェ形式の朝食はどれもいい匂いを漂わせていて、空き始めた腹が抗議の声を上げ始めている。

テーブルのほうを見渡すと、先日俺に色々説明してくれていた従業員が歩み寄ってきた。

 

 

 

「お待ちしておりました桜内様、ご案内いたします」

「あ、はい。本日もありがとうございます」

 

 

 

従業員の人に案内され、マリーのいるテーブルに着く。

マリーの目の前には、既に盛り付けられた料理があった。

自分の分だけ先に取ってきたのだろうか? いや、もう一つ同じものがあるから、俺の分もあるな……

とりあえず座り、従業員の人にお礼を言う。

彼は一礼し、スムーズに、それでいてぶれない動きで去っていった……カッコイイなぁ。

 

 

 

「Good morning、サクラウチ。昨日はよく眠れた?」

「グッモーニンマリー。いやぁ、部屋でゆっくりしてると改めて値段を意識しちゃってね……ちょっと寝付けなかったよ」

「It’s so bad、確かに、ここはリゾートホテルみたいなものだからサクラウチの気持ちもわからなくはないけど、ダメよちゃんと寝ないと」

「うん、ありがとうマリー。ごめん、待たせたね、それじゃあ食べようか。いただきます」

 

 

 

そして食べ終えた俺は一度マリーと別れ部屋に戻る。

とりあえずコスプレ衣装を持ち出し、ロビーでマリーと合流する。

そのあとで一度陸に回り、更衣室で着替えてから島に渡ることになっている。

ちょっとめんどくさい手順ではあるが、まぁ仕方がないだろう。

というか、マリーはコスプレ衣装持ってるのか……?

 

 

 

 

***

 

 

 

 

結果を先に言おう、マリーのコスプレはお流れとなった。

いや、パンクロッカーのコスプレは規約的にグレーゾーンで、確認してる暇もないということで不確定だと却下したのだ。

俺としてはコスプレ云々よりマリーの趣味がそういう系統だということ自体に驚きがあるんだけどね。

移動中それについて興奮して語っていたマリー。

言ってることの大半は解らなかったけどお勧めされたロッカーについては後で調べて聞いてみようと思う。

 

 

 

「サクラウチ、あのコスプレはOut、次はもっとCoolなキャラを選んでちょうだい」

「そっかぁ……島と海に合わせてみたんだけどなぁ」

「アナタは普通にかっこいいのだから、それを生かせばいいのに」

「カッコイイかぁ……あんまり言われたことないからうれしいなぁ……」

 

 

 

マリーに容姿をほめられて、思わず照れてしまう。

やっぱり彼女と話していると顔が熱くなってしまうなぁ。

 

 

 

「ねぇ、サクラウチ……」

「なんだい?」

「明日、帰るのよね? Tokyoに」

 

 

 

そうだ、マリーと過ごす時間が楽しくて忘れてしまいそうになったが、明日には東京へ、家へ帰らないといけないんだ。

……たぶん、俺は二度とここのホテルに泊まることはない。

そうすると、マリーと偶然一緒の時に同じホテルに泊まるということも当然ない。

つまり、もう会うことはないのかもしれない。

 

 

 

「……そうだね、寂しいけどさ」

「私、楽しかった」

「……俺も楽しかった。奢ってもらって情けないけど、いろいろ話せて……よかった」

 

 

 

いろんなことを話した。

マリーの特技、俺の趣味、互いの好物、やってみたいこと。

いっぱい話して、気付けば彼女と普通に会話できるようになっていて――別れが惜しくなった。

 

 

 

「ねぇサクラウチ」

「なんだいマリー」

「結局、君の名前聞いてなかったこと、思い出しちゃって」

「そうだね……」

 

 

 

自分の名前、あの時は気恥ずかしかったけど、今なら言える。

そう思って顔をマリーのほうへと向けると、彼女はその柔らかな掌で俺の口をふさいだ。

 

 

 

「――教えなくてもいいわよ」

「……?」

「だって、今Answerをもらっちゃったら、もうアナタに会えないんだって――マリーは感じちゃうから」

「…………」

「だからね、次会った時に教えてもらうの。だから待ってる」

 

 

 

そう俺に告げて、彼女は立ち上がり、ホテルの中へと戻っていく。

――また会いましょうという言葉を残して、彼女は帰っていった。

初めてまっすぐ見れた彼女の瞳は、彼女の涙か、俺の涙かはわからないけど、ゆらゆらと水面のように揺れていたように見えた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

翌日、島を発つ俺を、マリーが見送ることはなかった。

一人寂しく東京に帰り、そして一年の月日が流れた。

父親の転勤によって、俺達一家は俺の思い出の場所――静岡県沼津市の内浦地区に引っ越すこととなった。

たった二日間の小さなロマンス……と、俺だけが思っているそれは、ここに引っ越してくるときに梨子に聞かせたところ――

 

 

『まるで物語みたい。また会えるといいね、兄さん』

 

 

――と、やんわり励ましの言葉をもらったものだ。

しかしながら、俺は島の向こう、本土のほうに住んでいる。

彼女は島にいて、それもただの宿泊客のためいつ来るのかわからない。

連絡先も交換し忘れていて、秘密の場所なんてそんな約束もない。

正直会うことは絶望的であったからこそ、梨子の励ましは余計に胸に刺さった。

 

 

そうして引っ越しから半年、俺はいまだに情けなくズルズルとあの時のことを引きずったままなのだが……我ながらになんて女々しい男か。

そんな情けない兄がうじうじしている反面、梨子は学校に慣れたのかスクールアイドル活動を始めたとか話してきた。

スクールアイドルと言えば梨子が通っていた音ノ木坂学院でも居たな。などといった話を彼女としていた時のことだ。

 

 

『兄さんに会わせたい人がいるの、次の休みあけておいてほしいな』

 

 

――と、梨子に言われた。

今日はその当日、待ち合わせ場所に指定してきたのは梨子の通っている浦の星女学院校門。

スクールアイドルの練習が終わる頃に来てほしいと言われたので、俺はその時間に校門前で、不審者ではないという証に学生証を常に開き手に持って待っていた。

 

 

 

「兄さん、待たせてしまいました?」

「いや、時間通りだよ梨子」

 

 

 

制服姿の梨子が学内から走ってきた。

スクールアイドルと言えばダンスをするらしく、今日もその練習のためか梨子の額には汗が浮かんでいた。

俺は念のために持ってきていたタオルを、彼女の額に数度押し当てる。

 

 

 

「あっ、ありがとうございます、兄さん」

「いいってことさ。妹が頑張っているのに、これくらいしかできなくて寧ろ悪いな」

「いえいえ、いつも兄さんには――じゃなくて、会わせたい人がいるんでした」

「そうだったな、それで、その人は何処にいるんだい」

 

 

 

俺の言葉に少し不敵な笑みを浮かべる梨子。

不敵? いや、この場合は『待ってました』という顔だろうか?

直後――聴き覚えがある、懐かしい声が、俺の耳に届いた。

 

 

 

「リコ、Lessonが終わったらすぐに来て欲しいって、一体なにが――」

「――ぁ、やっ……やぁ」

「――サクラウチ?」

「鞠莉ちゃんが、私の名前を聞いた時真っ先に『アナタに兄っている?』って聞いてきたので、兄さんの話と合わせてですね、もしかしたらって思ったのだけど、当たってましたね……よかったぁ」

 

 

 

マリーが、梨子の後ろにいた。

何故マリーがここに? 彼女はただホテルに泊まっていただけの子じゃあ……?

などと、俺の頭はとにかくぐるぐる回る。

だけど、それだけれども、そうだけども、俺は、彼女に対して、確信はあった。

あの金髪も、あの瞳も、あの声も、俺を呼ぶ【サクラウチ】の響きも――間違いなく、あのマリーだった。

 

 

 

「Hi、サクラウチ。私ね、あれから……コスプレ、頑張ってみたの」

「俺も……教えてもらったあのアーティスト聴いて、この前文化祭でやったよ」

「……久しぶり、また会えて、わたし……とっても、ハッピーよ!」

「俺も……はっぴーだよ、まりー、ひさしぶりだね!」




・告白内容
再会の喜び(桜内、鞠莉)
会わせたい人(梨子)



読了ありがとうございました、作者の秩序鉄拳と申します。
【出会いの海、始まりの話】、【Small Island Love Story】と二作品を上げさしていただきました。
皆様、いかがでしたでしょうか?

今回投稿いたしました二作品では、それぞれで【島】の扱いが大きく異なっております。
果南ヒロインの【出会いの海、始まりの話】ではアニメ、漫画にできるだけ近づけた【有人島】として。
逆に鞠莉ヒロインの【Small Island Love Story】では現実世界に限りなく近づけた【無人島】として描いております。
アニメ、漫画と、現実とではきっと様々なところが違うことでしょう、皆さまもその違いをアニメ開始後は是非探してみていただければと思います。

そして私が今回ピックアップしました三年生組の二人。
人気投票の結果ではあまり目を向けられていなかった二キャラですが、今回の私の作品を気に、【松浦果南】を、【小原鞠莉】の魅力を皆様にも探していただければなと思っております。

最後に企画主である鍵のすけさん、副企画主である香月あやか(kazyuki00)さんへの感謝と労いを以って私の手番を仕舞にいたします。
お二方、大変お疲れさまでした、そしてありがとうございました。
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