ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー『夏――待ちわびて』   作:鍵のすけ

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「空と雲、時さえ早し履歴」でお馴染みの笠雲さんです!どうぞ!どうぞ!By企画主催者


はじめまして笠雲と申します。
この度は、鍵のすけ様が主催するラブライブ!サンシャインの合同企画に参加させていただきました。
私の今作品のテーマは「過ぎ行く日々」「時の流れ」「万物に存在する有限」と言った感じでしょうか。
ラブライブ!サンシャインの風景観を少しでも色濃く出来ていればと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。


幸福海洋論

海が好き。その感情はどこからくるのだろうか。

答えは既に出ている。それは一つじゃない、例えば、海に沈む夕日が好きだから海が好き。

海鳥が天高く声を上げて、生命を謳歌しているから海が好き。何も考えずにぼーっとできるから海が好き。

波の音を聞いてると小さな悩みがどうでもよくなってくるから、海が好き。

考えれば考えるだけ出てくる数々。でも、一番真っ先に頭に思い浮かぶのは

 

――――キミと海を見ていたから。

 

 

 

 

好きな人がいる。

突然として話しかけられて、出会い方は謎だったものの、気付いたらその気持ちは芽生えていた。

これは、キミを通して過ごす3年間の履歴的な海洋論。

 

 

 

 

 

出会いを遡るとそれは高校一年生の春になる。

 

 

 

親の都合で中学を卒業した後に父親の実家に家族で帰ることになり、高校も実家の近くの場所に通うことになった。

最初に話をされた時は断固拒否していたのだが、東京にもすぐ行けるしよく考えれば隣の県に移動するだけ。そう考えた俺は考えを改めて『大丈夫』という返事をしてしまった。

この『大丈夫』はどうやら俺の口癖らしい。全然大丈夫ではない時にも『大丈夫』と言ってしまう。それは親にも指摘された。

そしてこの時の『大丈夫』で、引っ越してからの後悔は凄まじかった。

東京までは快速に乗っても2時間以上の時間が掛かり、金額にすると2,270円。普通に高い。

そう易々と中学の友達に会いに行く、という考えは完全に除外されてしまった。そして通い始める高校は女子校から共学になったばかり。

浦の星女学院というらしい、せめて共学にするなら浦の星学院に直してほしかった。男子生徒数は全然見込みが持てないと入学が決まった後に言われ、そこで俺は再び絶望の淵に立たされたのだ。

こんなことなら東京でバイトをしながら一人暮らしをして高校に通った方がまだ良かったのではないだろうか。そう何度も頭の中で考えた。

希望的観測を胸に抱けずにいたので、投げやりな気分になりながら気分転換に外へ出掛けた。

すると自転車を少し走らせたところに絶好のオーシャンビューが臨めるスポットがあるではないか。

気分転換に海はちょうどいい、そう思い自転車を停め砂浜へと降りた。

 

あの時、時間は昼下がりくらいだったかもしれない。

上空、テトラポット、防波堤、見える範囲には鳥が羽ばたいているだけ。聞こえてくるのは波の満ち引きと、生命の呼応。

東京にいるだけでは絶対に味わえなかったであろうシチュエーションに、少しだけ感動したのを覚えている。

それと同時に、どうしてこんなことになったのだろうという、やりきれなさと切なさが急に込み上げてきて、本当に頭が空っぽになって海をずっと見つめていた。

 

気付いたら、夕焼け。辺り一面が真っ赤に染まり、深紅の世界が広がったその光景に、まるでこの世が終わってしまうかのような美しさを見出していた。

 

「海の夕焼けって、こんなに綺麗なのか」

 

意識よりも先に飛び出していた言葉に、自分で納得してしまった。むしろ、綺麗という言葉では終わらせてはいけないくらいの、簡単に崩れ去ってしまう硝子細工のような光景がそこには広がっていたのだ。

東京にいたころは、それこそ近くの海と言ったら東京湾くらいで。ちょっと離れて熱海とかに行けば見れるけどわざわざ海の夕陽を見に数時間を掛けて遠出をする、ということもなかった。

無言で語りかけてくるような夕日に、脳裏に思い浮かんだのは東京での暮らし。そして引っ越してきたことへの後悔。

でも、目の前にある赤色の光景を見て最後に浮かび上がったのは、見れて良かった、という心情。

 

少しは、引っ越して良かったと思った。

 

夕日が沈むにつれて、周りの街灯が徐々に光を帯びてくる。

視界に広がる赤色は徐々に海の元へ収束していき、波の音がその主張を抑えてくる。

ありふれた光景なのかもしれないけれど、どこか現実離れした光景に、自然と目頭が熱くなったのを覚えている。

 

 

その時、足音がしてふと横を見ると女の子が立っていた。

 

 

 

 

キミとの出会いは、ここが始まりだった。

 

 

 

 

 

「…………明日の天気は、きっと晴れ!」

 

「……もしかして、俺に言ってます?」

 

「うんっ!キミしか人いないでしょ?」

 

「まぁそれもそうですけど……何か用?」

 

 

 

 

暁鼠色の髪を肩くらいまで伸ばした活発そうな彼女は、突如として声を掛けてきた。

どこか大人びている顔から、無邪気な喋り方。悪い人ではなさそうだが、突然に明日の天気を告げられたので少しだけ警戒していた。

 

 

「海を見に来たんだ。そしたら暗い顔をしたキミがいたから」

 

「声を掛けた、と?」

 

「そういうこと!」

 

「はぁ……暗い顔してたのか、それはどうも」

 

 

当人は特にそんな気ではなかったのだが、どうやら顔が曇っていたらしい。

隣まで来て笑顔で話す姿に、少しだけ動悸が早くなったのを覚えている。

 

 

「でも、なんで天気のことを?」

 

「私の特技なんだ、この街の天気予報!」

 

「へぇ……」

 

 

思いっきり疑いの眼差しを向けた。

特技が天気予報ってなんだよ、タウンページでも配ってろよ。お天気コーナークビになっちゃうぞ。

軽々と声をあげるキミに、そんな考えを浮かべていた。最も、他の誰が来てもいきなり声を掛けられるのは驚くと思う。

 

 

「あ、その顔……信じてないな~?」

 

「そりゃあ知らない人に急に言われてもな……」

 

「だって暗い顔してたから……」

 

「そんなか?」

 

 

流石に申し訳ないと思ったのか、少し顔に影が差してキミは言った。

しかし、初対面の彼女にすらそう思われるほど顔が落ち込んでいたのだろうか、はたまた彼女が人の感情や表情に敏感なのだろうか。

少し、申し訳ないことをしたと思ってしまう。

 

 

「うん、元気なさそうだなぁって思ったんだ」

 

「そっか……いや、確かに気持ち的には暗かったから正しいんだけどな」

 

「あ、やっぱり??私の予想は当たってたんだね!」

 

「まぁ……少し落ち込んでただけだから、海見てたらなんかどうでもよくなっちゃったし」

 

 

ホントは、どうでもよくはなってないんだけれども。少しだけ和らいだ気持ちから、自然と言葉が出ていた。

キミは清々しいほどの笑顔を、薄暗闇の中でこちらへと向けてきた。

 

 

「うんうん、海は良いよね!分かるよ!」

 

「そうだな、こんなにきれいな海は初めて見た」

 

「初めてっていうのはここに来るのがってこと??」

 

「ああ、先週引っ越してきたばかりなんだ」

 

「お~!そうだったんだね!」

 

 

少し驚いたような表情で、キミが言う。

波音と木々のざわめき、磯の香り、走行音。鮮明に聞こえてくる音たちが、まるでオーケストラのようでこれは夢かと疑いたくなる。

このまま全てが凍りそうな、どこか外れた雰囲気に心まで飲み込まれそうだった。

 

 

「どうして落ち込んでいたの?」

 

「それは……東京から引っ越してきたのは良いけど友達とは離れるし、何もないし。思った以上に不便だったから投げやりになってたんだ」

 

「なるほど!うんうん、東京からだったらそうなるのも分かるよ」

 

「で、気分転換に外に出たらここを見つけて……それで今までずっといたんだ」

 

「そうだったんだ!ここはね、私のお気に入りの場所なんだ」

 

 

少しだけ前に歩みを進めて、こちらに振り向いてキミはそう言った。

 

 

「そうなのか、確かにここからの夕日は最高だったなぁ」

 

「そうだよね!私も夕日が見たくて来たんだけど、お父さんのお手伝いしてたら間に合わなかったぁ」

 

「お手伝い?」

 

「うん!私のお父さんは船の船長なんだ!それで海に出てお手伝いしてたの」

 

「へぇ……海沿いの場所だとそういう家庭も多いのか」

 

「うん、海がなくちゃ生活が成り立たない家は沢山あると思う!」

 

 

土地柄、というやつなのだろうか。やはり海に近い町だとその職が海に携わることが多いらしい。

街中のコンクリートジャングルでは、滅多に見掛けない光景。海を見渡すと、恐らく漁師のものであろう船が何隻も泊まってみえた。

漁港の灯台、停泊した漁船、幾重にも重なる開けた空。改めて辺りを見ると、都会では到底味わえない風景が広がっている。

 

 

「そういえば!学校はどこに通うの?」

 

「浦の星学院……って名前だったはず」

 

「あ、じゃあ私と学校一緒だね!」

 

「女子校だったらしいし正直気が進まないけどな」

 

「大丈夫だよ!新一年生?」

 

「そ、先月卒業したばかり」

 

「じゃあ私と同い年だから同じクラスになるかもだね!」

 

 

そう言ってキミは今度、後ろに向かって歩みを進めた。

少しの間砂浜を歩く音が耳に入り、薄暗闇の中で後ろへ振り返る。

 

 

「私の名前は渡辺曜!今年から浦の星学院の1年生!好きなことは海に飛び込むこと!特技はこの町の天気予報と高飛び込み!よろしくね!」

 

 

何かと思えば、突然自己紹介を始めたキミ。

 

 

「暗くなるとお母さんに注意されちゃうから、もう帰るね!また会えるといいね!」

 

 

そして、こちらの自己紹介も聞かずに帰ってしまった。

 

 

ここに引っ越してきて1週間。

投げやりな毎日を道端に転がし、今に到った俺は、海風のようなキミに出会った。

 

 

 

 

 

あれから、キミとは結局同じクラスになれなかった。

でも、此処に来るとたまにキミがいた。それは休日だったり、平日の夕方だったり。

いつしか、それが日課になっていて。何の気なしに此処に来てしまうようになっていた。

 

 

「明日の天気は雨かな……」

 

「いや、これは晴れだな」

 

「えー雨だよ!向こうにあるの雨雲だよ!」

 

「天気予報で晴れだって言ってたから!キミも見てみろよ!」

 

「……ホントだ。で、でもあれは雨雲だから雨降るよ!!」

 

「往生際が悪すぎるぞ、分かった。明日晴れだったら昼にここな?雨だったらまた今度な??」

 

「うん、絶対降るからね!私の天気予報は外れません!」

 

 

特技が天気予報、というよりは趣味が天気予報だったキミ。

会う度に明日の天気は~と言って予想を立てはじめる。正直何を基準にして言ってるのかさっぱりわからない。

それを横目に俺はアプリの天気予報を起動し、予測と外れるかを予測するのだ。

間違う時もあれば、合う時もある。つまりどこぞの占い師のように曖昧なのだ。とは言っても自然を人間が予測できるなんて言うのはおこがましいから、占い程度の予測でちょうど良いと思った。

完璧に天候が知れたら便利かもしれないけれど、偶然的な奇跡に出会えることは少なくなるだろう。

例えば、雨上がりに空一面に掛かる虹。雲の隙間から太陽が照らす斜陽の兆し。そして、あの日のような夕陽。

 

 

 

「こんにちは」

 

「こ、こんにちは……」

 

「雨が降るって言ったの誰だって?」

 

「うう……で、でも夜中降ったじゃん!雨雲あったよ~!」

 

「でも今は??」

 

「は、晴れてます……」

 

「はい、これで64回中26回外れな」

 

「そんな~……今日は当たる気がしてたんだけどな」

 

「もうすぐ当たりと外れ半々になっちゃうけど?ほんとに特技として名乗って良いのか??」

 

「うっ……特技だよ!天気予報と高飛び込みは特技!」

 

 

 

 

入学してからほぼ途切れることがなくキミと会っていた。

知らぬ間に芽生えた気持ちへの名付け方など、その時の自分は分からなくて。表しがたい感情を、いつしか胸に秘めていた。

その気持ちに気付く間もなくという時に、キミから告げられた喜ばしくも残酷な知らせ。

 

 

 

「その……ね、私、アイドルっていうのをやることになっちゃいまして……えへへ」

 

「……アイドル?」

 

「そう!千歌ちゃんと梨子ちゃんと一緒にね!」

 

「あの2人か……なんでまたアイドル?」

 

「ほら、私達の学校廃校危機じゃない?だからスクールアイドルをして売り込みをしよう!って」

 

「ああ……そういえば何年か前に都内の学校がそれに成功してたな」

 

「うん!千歌ちゃんがそのグループが好きだったんだって。それで誘われたんだ」

 

「アイドルねぇ……」

 

 

正直告げられた時は気が気じゃなかった。

この平坦だけど、それでも心地良い日々が終わる様な気がして。今まで隣にいたキミが遠くに行く気がして。

……他の誰かに、獲られるような気がして。

素直に応援してあげれない自分が、なにより惨めで。元々誰のものでもないのに、勝手に落ち込んでる自分に嫌気がさした。

それと同時に、キミのことが好きだったんだということを頭の中で理解したんだ。

 

 

「私、アイドルなんて出来るのかな……その、ね、やるとは言ったんだけどやっぱり私って海と運動大好きだし、アイドルとは程遠いし」

 

「……はぁ、いつもの元気はどうした?キミは元気があってこそだろ」

 

「うん……でも皆みたいに可愛くないしキラキラもしてないのに大丈夫かなって……」

 

「あのなぁ……キミも十分可愛いから、そんな謙遜しなくて良いぞ」

 

「うんうん……そうだよね……って、え!?なんて言ったの?!」

 

「だから十分可愛いから謙遜しなくて良いって」

 

「な、ななな……なにもう!急に恥ずかしいこと言わないでよね!どーしよ!」

 

 

普段から活発なだけあってリアクションも元気がよろしい。

きっと、こうやって何事にも純粋な反応をするキミが可愛くて好きになったんだろう、そう考えた。

 

 

「そ、それでね!会えなくなるかなって思ったんだけど週に一回とかは休みありそうだし、夕方には練習が終わるときもあると思うから会えなくなるってことはないよ!」

 

「あ、そうなんだ。でも良いのか?アイドルだったらスキャンダルされるぞ」

 

「えっ……えっと、だ、大丈夫だよ!ここあんまり人来ないし!来てもランニングの途中に会ったって言えば大丈夫って感じ?」

 

「それで引いてくれるのか……?いや、キミが良いなら俺は良いけど」

 

 

結局、今までより少し会いづらくなったというだけで会うことは可能だった。

回数は減ったけど、その後も少しずつだけど会っていったんだ。勿論、こっちの気持ちは向こうには言ってなかった。

言ったら、この関係が崩れてしまうかもしれない。スクールアイドルの活動に影響が出てしまうかもしれない。

その気持ちを隠しながら、向き合う毎日。

 

 

「やぁ!今日は練習帰りです!」

 

「おつかれ、俺もさっき来たところ」

 

「ほんと?一人で寂しくなかった?なんちゃって……えへへ」

 

「大丈夫だけど……ずっと漁船が行ったり来たりしてるの見てたから」

 

「何か面白いことでもあったの?」

 

「いや、あの漁船のとこ行ったら生魚食べさせてもらえるのかなって」

 

「えぇ……う~ん、どうなんだろ!」

 

 

少し困ったような顔で言ったキミに、違和感を覚えた。

 

 

「なんでそんな微妙そうな顔なんですか」

 

「え、えっとぉ……その、私お刺身嫌いで」

 

 

瞬間、脳に衝撃が走る。

あれだけ海好き!船ラブ!海の中って素敵!!みたいな子がまさかの魚嫌い、と。

海洋を泳ぐ生物を食べるのはあまりに残酷すぎるから食べないと。嫌い、と。

 

 

「好き嫌いはダメだぞ」

 

「お刺身じゃなかったら食べれるよ!法華とか!」

 

「好き嫌いはダメだぞ」

 

「うぅ……苦手なのは仕方ないでしょ!ほら、その代わり私ハンバーグ好きだから!」

 

「いや、代わりって何?!変なこと言うな!」

 

 

何気ない日常は、音の速度で過ぎていき、いつしか海洋を誇る時も終わりを告げようとしていた。見えずとも赤い空。

 

 

高校3年生の夏。アイドル活動による効果は思った以上に大きく、伝説の再来と呼ばれるほどにまで到っていた。

最も、グループ自体は高校2年生の3月時点で解散している。なぜなら3年生の進路がバラバラだったからだ。

それぞれが幾つもの分かれ道や決意を潜り抜けて、中間地として集まった此処。そこからまた新しい分岐と選択の道が始まっていこうとしていた。

それは、キミからの言葉がきっかけだった。

 

 

「私ね、東京の大学に進学しようと思う」

 

「……はい?」

 

「東京の大学に!進学しようと思います!」

 

「ってことは?」

 

「受かったら東京でも会えるよ!」

 

「なんでまた東京に」

 

「乗船実習が出来る大学があるみたいで、そこなら夢を叶える一歩になりそうなんだ!」

 

「……フェリーの船長だっけ?」

 

「正解!私のファン第一号なだけあるね」

 

「誰がファンになったんだよ、誰が!」

 

 

その知らせとは東京の大学を目指すという決意。

出会った時から船の船長が夢と言っていたキミは、本格的にその道を歩むらしい。

こちらといえば海とは関係ないが、東京の大学に進学を考えていた。

そして、この時に同時に思ったのだ。告白するなら、高校の間しかない、と。

 

ここでキミに気持ちを伝えないなら、自分の気持ちに嘘をつくことになる。

過去も未来もない、有限。今日と昨日の境目も関係なく、生きている限り続く自分自身の物語に嘘をつきたくなかった。

というのはそれなりの決意表明で、単にキミに好きだと伝えたいから。2人で会える機会が減る可能性があるなら、今言うべきだと思ったからだ。

 

 

 

人生を本に例えよう。

時間は有限、つまりどんな今日だって限りある一生の一ページなのだ。だから、読み飛ばしても良い今日はない。

そして、自分が執筆者だったらどうだろう。生まれた時からページを書き足していくのは、自分自身。

だとしたら、新しい次の章は自分自身が書き始め、自分自身が完結させなくてはいけない。

ちぐはぐだとしても、内容が全然違ったとしても、登場人物が違ったとしても、そんなものなのだ。

だから、これからの一ページを作り上げる自分として、キミに伝えるのだ。

 

 

 

 

「はいはい!今来たよ!」

 

「お、おいっす」

 

 

緊張し過ぎて挨拶まで意味が分からなくなった。

昨日はずっと考えていたから、今日、何を伝えようかを。

 

 

「あのさ……伝えたいことがあるんだ」

 

「お?ついに曜ちゃんマニアを認める気になったのかな?」

 

「まぁ聞けよ。ずっと前から……それこそ、遡ったら去年の春から、いや、自分で気づいてなかっただけでもっと前からなのかもしれない。その、キミのことが……あー!つまり、好きだ。キミのことが、好き。」

 

 

ついに言ってしまった。

終わりか始まりか、審議の言葉。新しい一ページの、書き出し。

 

 

「そ、それは……人としてってことかな?」

 

「人としても勿論好きだけど、異性としても」

 

「そ、そっか……うん、そうだよね」

 

「その、今じゃなくてもいいから、答えを貰えると嬉しい」

 

「いや!今返すよ!あのね、正直私は女の子って感じじゃないし、恋愛とかにも疎いし……でも、キミといると安心できるんだ。Aqoursをしてた時も変わらず会ってたし」

 

「うん?」

 

「だからその……私も、好きなの……かなぁ?」

 

「疑問形かよ!」

 

 

心臓が高鳴る今、疑問形で返される今、全部が有限で、全部が過ぎ去る時。

 

 

「だからね、その……私も付き合ってくれると、嬉しいの……かな?」

 

「また疑問形かよ!……でも、じゃあオーケーってこと、だよな?」

 

「うん……これからはもっと曜ちゃんマニアになってもらって、抜け出せなくさせるからね!」

 

 

全部同じ重さで、全部同じ尺度で、目の前にあるものすべてが有限で。

海から始まったこの物語は、これから第2章の執筆に入る。

 

 

2章のタイトルをつけるなら……そうだな。

「海洋幸福論」これが良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、これから始まる有限と分岐の物語。

 




 お読みいただきありがとうございます。
少しでも、何か響くものがあったなら幸いです。今回は言葉の語感や発音した時のリズムの良さなどに意識を置いてみました。
曜ちゃんかわいいですよね、最高。

 さて、次の企画参加者はカゲショウさん。
彼の捻られた文章は読んでて純粋な面白さがあります。恐らく私とは違ったベクトルでの読み応えがあると思うので、是非一読を!
 
 では、ラッシャイ企画。是非最後までお楽しみください。
読了ありがとうございました。
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