ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー『夏――待ちわびて』 作:鍵のすけ
どうも、今回鍵のすけさんのラブライブ!サンシャイン企画小説に参加させていただく事になりました。たーぼです。
約20人近くいる参加者の中、最後から2番目というある意味プレッシャーのある順番になりましたが、それが狙いなので個人的には満足しています(笑)
夏から始まるラ!サンシャインのアニメ。
それが始まる前にまだキャラ掴めてないけどいっちょやってみっか!ってなった結果が今回の自分の小説です。
さて、前話はこの辺にしておいて、他の方々とは少しだけ方向性が違う(?)ストーリーになったかもしれません。
ラストの前に、中々のボリュームある話を楽しんでください!
これが私が作った『サンシャインの物語』です。
では、どうぞ。
“恋というものは必ずしも叶うわけではない。”
そんな言葉を小説で見た事があります。
“そんな事は人間なら幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、社会と、その過程を踏んでいく事で嫌でも現実を突きつけられる。”
“初恋は叶わないだとか、叶ったとしても徐々に恋が冷めて別れるだとか、とにかく『恋』というものは確かであって不確かな気持ちなのである。”
“叶っても、叶わなくても、『恋』は良いものでもあるしそうでないのかもしれない。そこいらの問題は結局個人の価値観で億万通りもあるわけなのだが、恋する乙女という言葉があるように、女の子はそういう事に対して思春期であればあるほど敏感になるらしい。”
“話を戻そう。”
“恋というものは必ずしも叶うわけではない。”
“それだって色々なパターンがある。”
“単純に相手に好意を持たれていないからフラれる。そもそも一目惚れした場合相手はこちらの存在自体を告白されてからようやく認識するから受け入れられる事がなかったり。まず告白する勇気がなくて引きずっているうちに誰かに取られる。取られないにしても結局時間だけが経ち離れ離れになってしまう。”
“そして。”
“そして。”
“そして。”
“複数人が同じ人を好きになった場合、確実に誰か1人しか勝ち得る事はできない。それ以外の者は敗者と同義。”
“それがもし、自分の大事な友人と好きな人が被ってしまったら?”
“2人とかではなく、3人同時に同じ人を好きになってしまったら?”
“それも同じ。誰か1人しか勝ち得る事はできず、他の2人は敗者となる。そこで友情に亀裂が入ってしまう可能性の方が大きい。誰が勝っても勝者以外は敗者になるバッドエンドが付いてくる。”
“逃れられない現実で、だからと言って逃げる事はしたくないという気持ちが『恋』というものでもあるのだ。”
“そしてこれは。”
“奇しくも友人同士である複数の女の子が1人の男子に好意を寄せている。”
“そんな複雑で、バッドエンド直行にいくしか道はないのか。それとも他の道を探すのか、という物語である。”
過去に読んだ事のある小説をもう一度読み終わり、あらすじ部分だけをまた見る。
そして最後の空白のページを一瞥してから閉じて、
「はあ……」
溜め息が出る。
だって、だって……その小説のような物語が。
―――――――――――――――――――
「第一回!チキチキッ!梨子ちゃんのお兄さんの事が大好き3人衆、同じ人が好きなら全員で話し合って協力しよう大作戦~ッ!!」
「本来ならギスギスするはずの展開なのにこの異様なまでの元気はさすが千歌ちゃんだね。よおーし、やるぞー!!」
「あはは……お兄さんって言っても血の繋がってない従兄なんだけどね……」
今目の前で繰り広げられているんですから……。
でも、千歌ちゃんの第一声のおかげであの小説みたいなギスギスシリアス展開はあっけらかんと破壊されちゃいましたね、あはは……。
今は
「まあまあ、そんな事は良いんだよ梨子ちゃん!さっそく本題に入ろう!」
張り切って言う千歌ちゃんを見て凄いなあと思う反面、今から話す事についての緊張感が私を襲ってくる。うう……大丈夫かなぁ……。
「さっきも言った通り、私も曜ちゃんも梨子ちゃんも、梨子ちゃんの従兄であるお兄さんの事が好きって事でいいんだよね?もちろん恋愛的な意味で!」
「そうだよー」
「うっ、そう、です……」
あ、改めて聞かれるとやっぱり恥ずかしいよこういう事言うの……。
そう、私には歳が2つ上の従兄のお兄さんがいます。
両親も一緒の家に住んでるのに何で従兄のお兄さんがって話にもなるかと思いますけど、お兄さんが通っている大学がお兄さんが元に住んでいた場所よりここの近くだったから、急遽一緒に住む事になったんです。
それで、もちろん両親も私も断る理由はなかったから一緒に住んでいたんですけど……わ、私はお兄さんの事がす、す、好きだし……って、今はそうじゃなくてッ!……私が千歌ちゃんに誘われてスクールアイドル、
男手が必要な荷物持ちとか、暇な時にメンバーがランニングしてる時は荷物を見張ってくれてたり、そうやって色々とAqoursのみんなと接する機会がどんどん増えていったんです。そしたら、気付けば私の他に千歌ちゃんや曜ちゃんがお兄さんの事を好きになったらしくて……。
3人が全員他のみんながお兄さんの事好きって気付いたのは最近の事で、同じ恋する乙女だからこそ分かるというか、お兄さんと話してる千歌ちゃんと曜ちゃんの表情を見たら、ああ、私と同じ表情してる。あの2人も好きなんだなあって思ってたんです。
するとある日、千歌ちゃんに呼ばれて曜ちゃんと3人だけの場所に連れて行かれたと思ったら、そこで千歌ちゃんがいきなり確信を突いてきて、見事に3人共同じ気持ちだったんだって吐き出す事になって、今現在このような状況になっています。
「ふむふむ……、じゃあさっそく本題に入ろうよ!どうしよっか!?」
「いきなり聞いちゃうんだ!?」
「だってこの作戦も咄嗟に思い付いただけで何も考えてなかったし~たはは」
千歌ちゃんはたまに、というか大体いつもこうやって咄嗟に浮かんだ事を猪突猛進のように実行してくる。そのおかげで今の私達があるんだけど、たまに空回りするのが難点です。
「梨子ちゃんはどう思う?」
「うぇ、わ、私っ!?」
うんうんとニッコリ笑顔でこちらを見てくる千歌ちゃん。でもいきなり振られても私にはどうしたら良いかなんて分かんないよ~……。わ、私だって初恋がまさかお兄さんだって自分で分かった時でもパニックになったのに……。
でも、法律上従兄妹同士の結婚は禁止されてないし、それなら私にだってほんの少しはチャンスはあるわけで~……って、何勝手に結婚とか飛躍してるんだろ私ッ!?いやでも正直言うとそれが1番望ましい結果なんだけど……。
「梨子ちゃん!」
「わひゃっ!?な、何千歌ちゃん!?」
「もぉ~、さっきからずっと呼んでたのに~!また何か考え事でもしてたんでしょ」
私ったら自分の考え事で頭いっぱいになって千歌ちゃんの呼びかけに気付かなかったんだ……。悪い事しちゃったな。だけど自分の意見をはっきり言えない私は考え事するのが癖になってるからそう簡単には直せないんです。
「でねでね、私ちょっと思い付いたんだけど」
「おお、言いだしっぺの千歌ちゃんの考えとは何かな?」
私が思考の海に沈んでいるあいだに千歌ちゃんが何か案を思いついたらしい。何だろう。どうあがいても誰かが傷付いちゃう未来しか見えないんだけどなあ。
「いっその事同時に3人でお兄さんに告白しちゃうってのはどうかな!」
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?
「「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!?」」
曜ちゃんと声がシンクロしました。
「い、いやいやいや!千歌ちゃん、さすがにそれはいきなりハードルが高いというか何というか、私達の度胸的にそれは大丈夫なのかな~って思うんだけど……!」
「そ、そうだよ!それに3人同時に告白なんてしたら、逆にお兄さんが困っちゃうよ!?」
「あ、それもそっか。うーん、お兄さんの事も考えないとね~難しいな~」
いくら咄嗟に思い付いた事でも、この案はぶっ飛び過ぎてるよ千歌ちゃん……。何をどうしたらそんな事思い浮かぶんだろう。さすがの曜ちゃんもそれには同意しかねたみたいです。というか頬が真っ赤です曜ちゃん。
あの曜ちゃんでも好きな人に告白するという事は結構ハードルが高いようで、今にも頭から煙がプシューと出てきそうなくらい顔が真っ赤になってる。多分私も同じような感じなんだろうけど、千歌ちゃんは平気なんだろうか。
「……千歌ちゃんは、お兄さんに告白するの……緊張とかしないの?」
恐る恐る聞いてみる。すると千歌ちゃんは他の案を考えていた様子からキョトンとした顔で答えた。
「え?そりゃとんでもないくらい緊張するよ?」
「「え?」」
思いもよらない答えが返ってきた。曜ちゃんも思わず聞き返したとこを見ると、私と同じ事を考えてたのかもしれない。じゃあ何でそんな事を言ったんだろうかと。
「そりゃあいつもお気楽でポジティブシンキングな私だってお兄さんに告白するってなると凄く緊張するよ!……でもね、好きって気持ちは3人共変わらないんだし、好きなら結局最後は告白しないといけない。だったら3人で思い切って告白した方が緊張もほぐれて少しは楽になるかな~って!」
あの千歌ちゃんが頬を染めながら照れて言った。それを見て、お兄さんの事が好きな3人はどこまでも同じ気持ちなんだと思えました。そりゃそうだよね。千歌ちゃんでも緊張しちゃうよね。私だけじゃないもんね。
みんな同じなんだ。いつも引っ込み思案な私も、いつも元気でポジティブな千歌ちゃんも、いつも陽気で明るい曜ちゃんも、『恋』というたった1つの感情で女の子になる。それも同じ相手に。
それが良い事なのか悪い事なのかで言うと、そんなのは誰にも分からない。だって、誰かを好きになるのに理由はいらなくて、そう考えると、誰かが自分と同じ人を好きになるのもてんでおかしい事じゃないんだから。
たまたま同じ人を好きになっただけ。たったそれだけ。
「でもこの案じゃダメっていうなら、他に何か考えた方がいいか~」
「かと言ってそう簡単に出てくるわけじゃないもんねえ」
私がまた思考の海に沈んでいるあいだに千歌ちゃんと曜ちゃんは他の案を考えていた。私も考えないとっ。
そんな時でした。
突然私の部屋がノックされると同時に開かれたのです。お母さんはちゃんと返事を待ってから入ってくる。つまりこんな事をしてくるのはただ1人でした。
「やあ、千歌ちゃんも曜ちゃんも来てたんだね。こんにちは」
「「「お、お兄さん!?」」」
3人の声が重なる。お兄さんはいつもノックはしても返事をする前に入ってきちゃうんです。もし私が着替えてる時に入ってきたらどうなるんだろう……。恥ずかしさで窓から飛び降りるかもしれない……。
「も、もう!いつも返事を聞いてから入ってって言ってるじゃないですかぁ!」
「ああ、ごめん。そうだったね。ついいつもうっかり忘れちゃうんだよ」
本当にお兄さんはいつもそうやって忘れて入ってくるからタチが悪いんです……。でも、一体何の用なんだろう。
「あ、お兄さん、こんにちは!お邪魔してます……!」
「こんにちは!私もお邪魔してます~……」
私がお兄さんに何の用か聞きだす前に千歌ちゃん達が挨拶をした。まあ当然の事だから仕方ないよね。でも千歌ちゃんも曜ちゃんも、あんな話をしてた最中にお兄さんが来たものだからいつもと少し態度がドギマギしてる……。
「うん、こんにちは。どうぞゆっくりしていってね。梨子も、2人に失礼のないようにね」
「わ、分かってますよ……」
もうっ、不意にそんな笑顔で言われたらドキッとしちゃうじゃないですか……。チラリと後ろを見ると、千歌ちゃん達も少し頬を赤く染めながら俯いてる。うん、今の私達じゃどうあがいてもお兄さんの前で変な態度とっちゃうかもしれない。
「そ、それより、私の部屋に来たって事は、何か用でもあったんじゃ……」
私が取り繕うように尋ねると、お兄さんも思い出したかのように後ろに隠していた物を前に差し出した。
「そういやそうだった。シュークリームを買ってきたんだけど、ちょっと買いすぎてね。ぼく1人じゃ食べきれないから梨子にも分けようと思ってたんだけど、丁度良いや。千歌ちゃんと曜ちゃんも良かったら食べてくれないかな?」
「「ぜひ!!」」
それはもう素晴らしいくらいに綺麗な即答でした。千歌ちゃんも曜ちゃんもお兄さんの頼みとあらば何でも聞いちゃいそうで少し不安にもなってみたり……。
「そりゃ良かった。梨子は?食べるかい?」
「ぜひ!!」
私も2人と変わらないなぁ……。
――――――――――――――――――――――
「一応お兄さんに話を聞かれる危機はこれで去ったわけだけどモグモグ」
「私達の作戦はまだ何も進んでいないというのが現状なんだよねえはむはむ……おいしっ!」
「どうすればいいんだろ……パクッ」
何とかお兄さんが去ったあとに貰ったシュークリームをモグはむパクッと食べながら、作戦会議?を再開させたけど、イマイチ良い案が出ません……。
「……じゃあさ、バラバラで同じ日にデートに誘って、お兄さんが誰の誘いを受けるか……とかはどう?」
曜ちゃんの提案でした。でもそれって……。
「それだと、断られた人って凄くダメージでかいんじゃないかな……」
「しかも全員断られる可能性もあるわけだし……」
「だよねえ……全員で一緒に告白するのとそんなに大差ないし」
それに、私じゃ上手くデートに誘う事すらできないかもしれないし……。いつものお出掛けならまだしも、デートって意識しちゃうと絶対に変な態度とっちゃうよ~!
「ねえねえ、梨子ちゃんは何かないの?」
「うぇっ!?私!?……え、えと、その……、どこかにら、ラブレターでも置いとく……とか……?」
「こ、古典的すぎるよ梨子ちゃん……」
「それにラブレター置くにしても、お兄さん同じ学校じゃないし大学のロッカーにわざわざ入れに行くのもねえ」
「うぅ……ごめんなさい……」
全然出ない。良い案が全然出ないよぉ……!私の案が1番意味不明だし……、でもこれ以上2人も良い案が出なさそうだし、どうするんだろ。やっぱりこのまま3人それぞれ頑張って誰かが傷付く未来しかないのかな……。
「……ねえ」
すると、千歌ちゃんが何か意を決したような声音で呟いた。
「やっぱり3人一緒に告白しよう!」
「ええ!?」
「ほ、本気なの千歌ちゃん!?」
最初に出た案を、千歌ちゃんがやろうと言いだしました。でも、それっていくらなんでもハードルが高いというか何というか……私達にできるのかな。
「本気だよ!いつまでこうやって考えても何も出ないなら、やってみるしかないよっ!例え誰か1人しか報われなくても、誰も報われなくても、私達が大事な友達だって事には変わりないし、それに……大好きなお兄さんだからこそ、お兄さんが幸せになるなら私はお兄さんが誰と一緒になってもそれを応援するよ!」
「……、」
「……、」
千歌ちゃんは言った。言ってみせた。本当なら言えないような事を、お兄さんが大好きだからこそ、言ってみせた。
私が恐れていた事を、最悪私達の関係が変わってしまうなんて事を考えていた私と違って、千歌ちゃんは真っ向から向き合ってその言葉を吐き出した。やっぱり凄いなあ、千歌ちゃんは。言えないような事を思いきって言うその姿に、私は心を奪われてAqoursに入ったのかもしれない。
「確かに3人一斉に告白なんてしたらお兄さんの迷惑になるかもしれない。でも、2人共大事な友達だから、1人だけ抜け駆けなんてしたくないから、逆にお兄さんに見せつけてあげようよ!3人もの女の子がお兄さんの事を大好きなんですよって!」
とても張り切って言う千歌ちゃんは、私からしたら羨ましいと思えるほどに輝いているように見えました。
千歌ちゃんの案は決して褒められるようなものじゃない。結局は誰かが傷付いちゃうのには変わりないんだし、1番にお兄さんにとてつもない迷惑をかけてしまう。だっていきなり3人の女の子に一斉告白されるなんて、困らない方がおかしいんだから。
……でも、考えても他の案が出ない以上、既に出た案を改めて考えてみても、千歌ちゃんの言った案が1番平和的で、みんな平等だという事も分かる。お兄さんの事も考えなくちゃいけないかもしれない。
だけど、最優先は私達なんです。多少強引だけど、恋する乙女っていうのはこういう事を言うんじゃないかって思うんです。相手の事はとりあえず2番目に。まずは自分のやりたい事を1番に。
相手の事を一々気にしていたらいつまで経っても告白なんてできやしない。ましてや見た目も性格も地味な私なんて到底無理かもしれない。だから千歌ちゃんと曜ちゃんと一緒なら、お兄さんに告白できるかもしれない。
本当ならこんな事考える私はいけないんだろう。1人で頑張るべき事を2人と一緒ならできるなんて考える時点で、私はダメダメだっていう事も分かってる。だけど、それでもお兄さんの事が好きだから、諦めきれないから、やるしかない。
「……分かった。私は千歌ちゃんの案に乗るよ。3人一緒に告白してフラれる展開が待っているとしたら怖いけど、このまま何もしないで終わって後々後悔するより、今当たって砕けた方がいいもんね!砕けちゃダメなんだけど、あははっ」
曜ちゃんも千歌ちゃんの案に賛成の意を示した。本当に2人はどこまでも優しくて、強くて、私なんかとはどこまでも違う。
でも。
だけど。
お兄さんの事が好きっていう意味では、私は2人にも負けるつもりはありません。私の方がずっと前からお兄さんといて、ずっと前からお兄さんを知っていて、お兄さんの良いところをたくさん知っている。
いとこ同士だから本当なら私がお兄さんの事を好きになるの自体おかしいんだっていう事も分かってる。だけどもう好きになってしまったんだから仕方がないんです。小さい頃から知っているから、ずっと優しくしてくれたから、自然と異性として好きになっていった。
私の方が好きになったのが早いんだから有利とか思うつもりはない。むしろ近すぎるからこそお兄さんは気付かないし拒否を示すかもしれない。それでも良い。拒否されても、受け入れられなくても、私の想いを伝えるのが大事なんだ。
千歌ちゃんか曜ちゃんのどちらかがお兄さんとくっつく事になっても、本気で応援するには時間が掛かってしまう事はあるけれど、折り合いを付けて本気で応援していこうとも思ってる。
っと、ダメダメ!こんな時にまでマイナス思考になったらダメだよ私!千歌ちゃんも言ってたでしょ。見せつけるって。だったら私もお兄さんの事が大好きなんですよって見せつけなきゃ……。
少し俯いていた私をそっと見ていた千歌ちゃんと曜ちゃんに、覚悟を決めた事を伝えるために、私は言います。
「私も、その案に賛成する」
――――――――――――――――――――
日は変わって日曜日の夕方。
今日はAqoursの練習は休み。
だから私達2年組とお兄さんは4人で買い物へ行ってから現在帰宅している途中です。
あれから話は割とサクサク進み、決行日は日曜という事になって2年で買い物に行くという事をお兄さんに伝えると、当たり前のように『じゃあぼくは荷物持ちでもするよ』と言ってくれて着いて来てくれました。言っちゃダメなんですけど、お兄さん、作戦通りですありがとうございます。
3人共既に覚悟は決まっているはず。かくいう私はもうすぐ告白するという事実にさっきから心臓バクバクで落ち着かないんですけどね……。
太陽が夕陽という赤く燃えるような、けれど優しく美しいオレンジの綺麗な色に変えて空を染める。それが告白する絶好のチャンスだとネットとかで色々調べていた曜ちゃんは言っていました。
夕焼けは既にできている。あとは、3人で決めた道中まで歩いて、そこでお兄さんを止めて告白するだけ。それだけで、そこへ近づく度に心臓の動きが激しくなっているような感覚に襲われます……。
「今日は一段と夕焼けが綺麗だね。じっくり眺めていたい気分だよ」
不意にお兄さんがそんな事を呟いた。歩きながら私達もそんな夕焼けを見る。こんな田舎だって千歌ちゃんは言ってたけど、人が少ない、だからこそ落ち着けて。しかも海を土台に綺麗な夕空と夕陽をバックに見れるこの景色は、とっても贅沢なんじゃないかっていつも思います。
東京にいた頃では絶対に見る事ができない景色。何気ない道中でこんな景色が見れるのは、ここが内浦だから。今でもここに引っ越してきて良かったと思えてます。大事な友人が増えて、大好きな人と暮らせて、大事な友人と同じ人を好きになれた。
いつものように考え事をしてると、目的地まであっという間に着いてしまった。
「あの、お、お兄さん!」
「ん、どうしたんだい?」
千歌ちゃんの言葉に普通に聞き返すお兄さん。千歌ちゃんが止まった事により、私達は当然、お兄さんも足を止める。
「せっかくだし、少し砂浜で景色を見ていきませんか!」
あくまでいつものテンションを装って自然と切り出す千歌ちゃんですけど、さすがにいよいよ緊張しているのか少し笑顔がぎこちなく見えるような……。
「それもそうだね。ぼく達はタイミングが良かったみたいだ。今のこの景色、凄く良いしね」
お兄さんもこの光景に圧巻されて千歌ちゃんのぎこちなさには気付かなかったらしく、普通に了承してくれた。
そう。
ここが私と千歌ちゃんと曜ちゃんが告白しようと決めた場所。
海と、夕陽と、夕焼け。全ての景色が最高潮に達した時、最もそれが綺麗に見える場所。それがこの砂浜。
告白するには絶好の場所。ロマンチックすぎるかもと思うけど、女の子なんだからこのくらいはしないとダメでしょっていう千歌ちゃんの意見を参考にした結果、この場所になりました。
この日になるまで、それぞれお兄さんに言う事を考えてきたはず。何を言うか、告白するのはもちろん、どう告白するか。それ自体は誰にも相談せずに自分だけで考える、まあ当たり前の事なんですけどね……。
「ははっ、こりゃ良いや。たまにはこの景色の中でのんびり見るのも悪くないね」
「お、お兄さんッ!!」
「ん、何かな?」
千歌ちゃんが切り出した。いよいよです。いよいよ始まってしまう。アニメやマンガの中だけでしかないような、女の子3人からの一斉告白という前代未聞な事を、私達がやるんです。やっちゃうんです……!
「実は……私達から、お兄さんにお話があって……」
「話?それに私達って、曜ちゃんも梨子も何かあるって事かな?」
お兄さんの問いに私達は軽くコクリと首を縦に振る。そこから自然と私達3人は並んでお兄さんと向き合う形になった。お兄さんはそれをキョトンと見ているだけでした。
「……えっと、今から3人で歌でも歌ってくれるのかな?」
「ち、違います!お兄さんもふざけないでちゃんと聞いてください!」
「ふざけてるわけじゃないんだけどね……」
あう……緊張のせいか少しいつもより声を上げちゃった。そんなつもりなかったのに~!お兄さんもいつもの私とちょっと違うから苦笑いされてるし……幸先悪いよ~……!
「えと、その……私達が今から話す事は、私達にとってとても大事な事だから、お兄さんにもちゃんと聞いてほしいんです!」
すると曜ちゃんが本題に入ろうとしだした。ありがとう曜ちゃん~、さりげなく私のフォローまでしてくれて……ただでさえ自信がないのに余計落ち込んじゃうよ……。
「あ、ああ、分かったよ。それで、一体どんな話なのかな。どこか合宿に行くから保護者の代わりに来てほしいとか?」
千歌ちゃんは俯いて首を振る。いつもは元気な千歌ちゃんがそういう大人しめな態度をとる事に違和感を覚えたお兄さんは、そこからはもう黙って話し出すのを待っていました。
最初に切り出したのは千歌ちゃんだった。
「……最初は優しくしてくれて、いつも私達の面倒を見てくれたり、何かあれば手伝ってくれたり、ただの梨子ちゃんの良いお兄さんっていう印象しかありませんでした。……でもそうやって接していくうちに、お兄さんの事が少しずつ気になり始めて……」
少し俯きながら言う千歌ちゃんは、普段の天真爛漫のような元気はなくて、普段よりとても女の子らしくて可愛くて、恋をしている女の子の表情そのものでした。
「気付けば私は……私は……」
まるでそこから先の言葉が中々出てこないような、そんな感覚に襲われているのかもしれない。大事な核の部分を伝える重圧。そんな緊張感がありながら、千歌ちゃんは俯いていた顔を上げて言った。そこには頬を夕陽のように赤く染めながらも覚悟を決めたような千歌ちゃんがいた。
「お兄さんの事が男の人として大好きになってました!!」
凄い。素直にそう思いました。千歌ちゃんは言った。言ってみせた。お兄さんだけじゃない。私達もいるこの場所で、覚悟を決めて、言った。私もこの後やらないといけないのに、無意識に千歌ちゃんを凄いと思ってしまっていた。
「……え、……あ……」
それを聞いたお兄さんは、ただただ呆然としていた。何とか声は出すけど理解が追いついてないかのように。でも、まだ
理解が追いついてないなら今のうちにオーバーヒートさせる必要がある。だから、次に言葉を出したのは曜ちゃんだった。
「私も最初は普通に好青年なお兄さんだなあとしか思ってませんでした。……だけど千歌ちゃんも言ってるように、接していくうちにお兄さんの笑顔に惹かれて、そんなお兄さんの笑顔が見たくて、学校のためだけじゃない。お兄さんの楽しそうな笑顔が見たくて練習を頑張ってる私がいたんです」
曜ちゃんはずっとお兄さんの目を見つめていた。まるで今でもお兄さんの笑顔が見たいとでも言っているかのように。告白の最中でも、好きな笑顔を見せてと言っているかのように。
「もっとお兄さんの笑顔が見たい……楽しませたい……大好きな笑顔で私に微笑みかけてほしい……いつしかそう思うようにばかりなっちゃって……だからもう単刀直入に言います」
いつまでも曜ちゃんはお兄さんの目を見つめていた。それに射抜かれたように、お兄さんも戸惑いながらも曜ちゃんから目を離せないでいた。そして曜ちゃんは言いました。
「お兄さんが好きです。その笑顔を、私に向けてください!!」
どこまでもその目と目は合っていた。私自身何故かは分からないけど、そう確信が持てました。相手の目を見つめて、自分の想いの強さをしっかりと伝えた曜ちゃんはとても凄い。
「な、ん……ッ」
お兄さんを見ると信じられないものを見ているかのような顔をしていました。そりゃそうですよね。いきなり告白されたかと思えば、まさか2人同時に告白されるなんて、普通に考えればおかしいんですよね。……でも、ごめんなさいお兄さん。まだこれでは終わりませんよ。
――――最後は……私。
「……お兄さん」
ゆっくりと、だけど、しっかり届くように、声を届ける。
「私は小さい頃から何かあればお兄さんに遊んでもらっていました。2つ上だから本当のお兄ちゃんって感じでいつもお兄ちゃんお兄ちゃんって着いていって構ってもらって……それでもお兄さんは不満の1つも言わずに私と遊んでくれて、一緒にいてくれましたよね」
千歌ちゃんや曜ちゃんとは違う、確かな過去の出来事。そこからもう、私の『恋』はきっと始まっていたんだ。
「あの時からお兄さんの事が大好きだったけど、私も成長するにつれてその思いは恋心に変わっていきました……。親戚だからいつも私の家にいるわけじゃない。お兄さんも中学や高校や大学に行く事になってから会う事が少なくなって、たまにしか会えないようになった時は凄く悲しくて、寂しかったです」
私は今俯いてるからお兄さんの表情は見えない。でもきっと困ってるんだろうなあとは思う。まさか親戚の子に告白されるなんて思ってもいないだろうし……。でも、私の想いは止まらない。
「だから私は考えたんです。何でこんなに寂しいんだろうって。成長した今なら分かると思って。……そしたら、答えは1つしか浮かばなかったんです。小さい頃からのお兄さんへの思いが、今はもう『恋』という想いになってるんだって……」
千歌ちゃんや曜ちゃんと言う話の長さが違うのは自覚してる。だけど、私は私の想いをぶつけたい。いつも地味で控えめな性格の私だからこそ、ここは絶対に伝えなくちゃいけない気がするから。
「普通なら従妹が従兄の事を好きになったらいけないんだって事も分かってるんです……。親戚同士じゃ、きっと幸せな生活も送れない可能性が大きいってよく聞くから。……でも、それでも……もう好きになっちゃったんだからしょうがないじゃないですか……ッ!」
想いが爆発すれば、それは嗚咽となる。かくいう私も気持ちが抑えきれなくなって、流したくもない涙がどんどん溢れてきた。堪えないといけないのに、我慢しないといけないのに……。
「何で、何で好きになっちゃったのかな……?ダメなのに、幸せになんかなれないのに……!私とお兄さんが出会わなければ、好きになる事も、苦しくなる事もなかったはずなのに……ッ!お兄さんと他人の千歌ちゃんと曜ちゃんが羨ましいんです……。ただ好きでいられる事が、どれだけ良いか……」
「「梨子ちゃん……」」
千歌ちゃんと曜ちゃんの視線が私に集まっているのが分かる。分かってる。私がこんな事言うのが予想外だから戸惑ってる事も分かってる……。告白なのに、何で自分でこんな最悪な事言ってるんだろうって自覚もある。
だけど……これが自分の奥に潜んでた本音だって事も分かってしまった。歯止めが効かない本音ほど、タチの悪いものはないのかもしれない。これじゃ、千歌ちゃんや曜ちゃんの事も悪く言ってるようなものだもん……。
「私とお兄さんが他人だったら、私も何の心配もせずに好きになれたのに……。こんなのってないよ……。ズルすぎるよ……」
「梨……子……、」
お兄さんが心配そうに見つめてくる。けど、今の私を見てほしくない。こんな醜い私なんかを見てほしくない。だから、自分でどうにかしなきゃ……、隠せなかった本音はもう出てしまったんだから。あとはもう、素直な気持ちをぶつけよう。
―――そして、私はあとで、お兄さんの『従妹』として普通に戻ろう。
「……でも、今更この気持ちをただ捨て切るだけじゃ、私の気持ちが収まらないんです。だから、言わせてください……。お兄さんならたとえどう思われてもいい、何を言われてもいい。普通の『従妹』として接する事に戻るだけです。……なので、最後に私の本当の気持ちだけは、言わせてください……」
涙が出るのをもう止めはしない。流れ出る涙も、醜い私の奥底の本音も、私の姿も、全部でお兄さんの事が好きだから。
顔を上げてお兄さんの顔を見る。その表情は、とても困惑していて、悲しそうで、今にも怒りそうで、でも、どこか慈愛に満ちたようにも見えた。ああ、そんな顔されたら、余計想いが爆発しちゃいそうだよ……。
これが私の最後の気持ち。
「大好きだよ……お兄ちゃん……!」
言った。
そして。
終わった。
これで私の初恋は終わり。あとは千歌ちゃんと曜ちゃんのどちらかが選ばれれば、私はそれを全力で応援するし、誰も選ばれなくても、大事な友達には変わりはないんだから。
やがて、お兄ちゃんがようやく口を開いた。
「……正直のところ、今でも頭が現状の理解に少し追いついていないんだ」
それはそうですよね。いきなり3人の女の子に告白されて、しかもそのうちの1人は従妹なんだから。これで理解しろって言う方が難しいです。
「でも、きみ達がぼくの事を、その、異性として好きだって言ってくれた事はちゃんと分かるよ」
少しぎこちなそうに言うお兄さんは、まだ少し戸惑いを隠せていないようでした。でも私達の気持ちが確かに伝わった事だけは良かった。
「まさか3人の女の子に告白されるなんて、どこかのマンガやアニメだけの話と思っていたんだけど、自分に降りかかるとはね……」
現実味のなさすぎる事が起きれば、人は混乱すると聞きますけど、それが今のお兄さんの事を言うならそれはとても的を得ていますね。……って、え?
「さ、3人……?」
思わず聞き返してしまった。私はもう諦めていたのに、あとは千歌ちゃんと曜ちゃんだけのはずだったのに、そこに私が入れられているなんておかしいはずなのに……。
「ん?そうだよ。だって梨子も告白してくれたじゃないか。昔みたいにお兄ちゃんって言われたらそりゃあもう、そう受け取るしかないでしょ」
お兄さんの言葉に耳を疑うと同時に、言葉も失った。自分の中ではもう終わった話のはずだった。なのに、お兄さんはちゃんと私もカウントに入れてくれて考えてくれている。その事に喜べばいいのか否定しないといけないのか、そんなのはもう、言葉を失った私の状態が答えを表していた。
「……言っちゃ悪いんだけど、今のぼくにはこの中の誰かと付き合うなんて事はまだあまり考えられない」
「「「え?」」」
突然の言葉でした。
告白のカテゴリーに自分も入れられていた事へ少しばかり喜びを感じていたら、いきなり奈落の底に落とされるような感覚に襲われた。
「色々とシチュエーションがありすぎて混乱してるんだ。3人の女の子への告白の返事なんて、そう簡単に思いつくはずがないだろ?」
あ……確かに。言われてみればそうでした。
ここで私達3人はお互いの目を見ながら苦笑い。お兄さんに3人の女の子が一斉に告白するという事を見せつけるためにと、その事ばかり考えてお兄さんからの返事の考慮をまったくしていませんでした……。
「けれど、きみ達はわざわざこんな綺麗な景色を用意してまで告白してくれた。だったら今そういう返事する方が良いって事は理解してるつもりだよ」
やっぱりお兄さんはどこまでもお兄さんだ。いつも私達の事ばかり優先して考えてくれる。自分の事も考えないといけないのに。でも、そんなとこも含めて私達は惹かれ、好きになったんです。
「ふむう……でもどうしたものか……。誰も悲しまなくて済む、そんなハッピーエンドで終われる結果にしたいんだけど、それが難しいな」
「は、ハッピーエンド……?」
「ああ、お兄さんの変な癖が出ちゃった……」
基本的にお兄さんは誰よりも最悪の結果を回避したがる癖があるんです。誰も傷つかない。誰もが笑って終われるような、そんなハッピーエンドばかりを求めて何が何でもそこから手を離そうとしない、いわゆるちょっとしたワガママ。
「お兄さん……別に私達が嫌いとかそういうわけではないん……です、よね?」
「当たり前じゃないか。嫌いなわけがない。むしろぼくだってみんなが大好きだ。3人共魅力的で、本当ならみんなと1人1人付き合いたいくらいだしね。だからこそ1人でも傷付くような結果にはしたくない」
曜ちゃんの問いにお兄さんは清々しいくらいの即答をした。こういう時のお兄さんは凄く素直で、一切の嘘を付かない。そして何故かいつもそれで上手くいっちゃうから不思議なんですよね……。
でも、今回ばかりはそうはいかない。
3人が告白して、お兄さんが返事するとして、誰も傷付かない結果になる事なんて絶対にない。
誰か1人と付き合えば、他の2人は必ず心のどこかしらで傷付くし、全員振ったら言わずもがな、全員傷付くに決まってる。誰も傷付かないなんて、そんなのは理想に過ぎないですよ、お兄さん……。
「……ん?待って」
と。
ここで何故か千歌ちゃんが声をあげた。
「どうかしたのかい、千歌ちゃん?」
「普通に考えればおかしい事なのは絶対分かってる。日本じゃ認められない事も承知の上。それでもいいなら……あるよ。お兄さんが望んでる誰も傷付かない方法が!!」
「「「え?」」」
思わず千歌ちゃん以外の声が重なった。
「どういう事、千歌ちゃん?そんな方法、普通あるはずが……」
「それだよ梨子ちゃん!普通ならってのが問題なんだよ!」
千歌ちゃんの言う事に頭の中が疑問符でいっぱいになる。い、一体何が言いたいんだろう……。
「普通に囚われていれば誰かが傷付く結果にしか繋がらないよ。でもさ、梨子ちゃんもさっき言ってたでしょ?『普通なら従妹が従兄を好きになってはいけない』って。でも梨子ちゃんはお兄さんに伝えたじゃん。普通じゃないって自覚しながらもさ!」
「う、うん……」
うう……さっきの事あんまり引っ張らないでほしいんだけどな~……。お兄さんがあっさり私の告白も聞いてくれたからちょっと恥ずかしいんだけど……。
「だったらさ、
今度の今度こそ。一度言われた言葉の理解を放棄しそうになった。
「…………………………………………………………………えっと、つまり、どういう事、なのかな?」
「簡単だよ!私達はお兄さんの事が好き。そしてお兄さんはさっき『本当ならみんなと1人1人付き合いたいくらい』って言ってたじゃん?ならもう答えは1つしかないでしょ!」
そこからはもう、いくら理解が追いつかなかった私でもその先の言葉が分かった。曜ちゃんも、お兄さんも何か分かったような表情をしていた。
「つまり、お兄さんと私達全員でお付き合いしちゃえばいいんだよっ!!」
予想通りの爆弾を千歌ちゃんは投下した。
「そ、それ……本気で言ってるの……千歌ちゃん……?」
「本気に決まってるよ曜ちゃん!お兄さんのお望み通りの、誰も傷付かなくて、誰もが笑って終われるハッピーエンドなんだよ!!」
この千歌ちゃんは本気だ。それが一目で分かるくらいには、千歌ちゃんのテンションが今まで以上に高かった。た、確かにそれは誰も傷付かないけど……。
「……千歌ちゃん、それをお兄さんがどう思うかによって変わるんじゃないかな~と思うんだけど……」
千歌ちゃんに言ってから恐る恐るお兄さんを見てみると、
「う、うーん……確かにその案なら誰も傷付かないハッピーエンドになる……。でもそれでいいのか……?男としてその判断は果たして正解なのか……?」
もの凄く迷っていました。む、無理もないよね……。
「お兄さん!男としてはともかく、誰よりもハッピーエンドを求めるお兄さんなら優先するべき事は私の案のはずです!!というか男なら逆にこの展開は美味しいはずです!!」
千歌ちゃんがもういつものテンションになってる!?ていうか展開美味しいとかそれ言っちゃダメなやつだと思うんだけど……!?
「う、うーむ……ぼ、ぼくとしては嬉しい提案だしお願いしたいくらいなんだけど、曜ちゃんや梨子がそれに賛成してくれるか……」
千歌ちゃんにそそのかされたようにチラリとこちらを見てきたお兄さん。まるで私達の返答を待っているかのような視線だった。
「私は……みんなが良ければいいと思うよ。大好きなお兄さんの笑顔が見れるなら、私はそれで満足だしね!」
曜ちゃんも賛成のようだった。残るは私だけど……もう、答えは1つしかないもんね……。
「私も、お兄さんと付き合えるなら、千歌ちゃん達と同じように笑い合えるなら、それがいいです!!」
迷う必要なんてどこにもなかった。これがお兄さんの望んだ結末なら、私はそれを喜んで享受しよう。たとえ従兄でも、好きな人と笑い合えるなら、それだけで嬉しいんだから。
「……決まったようだね」
少し長めの告白劇がようやく終盤に差し掛かる。夕陽は沈みかけていた。
誰に言われる事もなくまた自然と一列に並んだ私達と、それに向き合うように立つお兄さん。言葉は、優しく放たれた。
「じゃあ改めて。これは確かに普通じゃない。本当なら認められるはずがない事だ。でも、きみ達はぼくを好きでいてくれて、ぼくもきみ達が好きだから、そこに法律なんてくだらない概念は捨てよう。だから、ぼくと付き合おう。千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子」
迷う必要なんて、どこにもなかった。
「「「はいっ!!」」」
―――――――――――――――――――
長い告白劇が終わり、少し薄暗くなってきた道を帰宅している時。
千歌ちゃんと曜ちゃんは私とお兄さんの数メートル先で楽しそうに話していました。
ふと、お兄さんが私に話しかけてきた。
「すまない、梨子」
「え?」
「辛かっただろう、せっかくの告白であんな事を言ってしまうくらいに、ずっと悩んでいた事なんじゃないのか?」
「は、はい……、」
それは今日だけの事じゃない。過去の今までの事全てに対してお兄さんは私に謝ってくれた。そんな必要はないのに。でも、少しだけそんな気持ちを吐き出す事も、今なら許してくれるかな。
「……正直今でも思ってるんです。本当にいいのかなって。従妹なのに、私なんかがお兄さんを好きになっていいのかな、良かったのかなって……」
それは、ちょっとした弱音。全てが上手く収まってからの、私のちっぽけな弱音でした。でも、
「良かったよ、絶対に。例え従妹でも、親戚でも、誰かを好きになるのに理由なんていらない。気付いたらなってるもんなんだ。梨子にとってはそれがたまたま親戚のぼくだったってだけで、何もおかしい事なんてない。それに、梨子がぼくの事を好きって言ってくれてぼくはとても嬉しかったんだ」
そんな不安をいとも簡単にふっ飛ばしてくれるお兄さんの返し。それはまだ続いた。
「確かに千歌ちゃんや曜ちゃんも好きって言ってくれてとても嬉しかったよ。だけど、ぼくが小さい頃から面倒を見て一緒に遊んでた梨子に隙って言われた時は、少し特別に嬉しくなったというか、そう言ってもらえて良かったって思えたんだ」
とても温かくて、とても心地いい、お兄さんの言葉。
「だからさ、もうあんな事言うのはやめてくれよ。ぼくはぼくで梨子が大好きなんだ。たとえ世間じゃ普通じゃなくても、ぼく達はぼく達なりに幸せを見つければいい」
どこまでも優しく包み込んでくれそうな、小さい頃から聞き慣れた安心する声色。
「別れ際に千歌ちゃん達にも言うつもりだけど……好きだよ、梨子」
「……私も、大好きだよ、お兄ちゃん!!」
―――――――――――――――――――――
“恋というものは必ずしも叶うわけではない。”
前に読んだ事のある小説を開く。
“そんな事は人間なら幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、社会と、その過程を踏んでいく事で嫌でも現実を突きつけられる。”
“初恋は叶わないだとか、叶ったとしても徐々に恋が冷めて別れるだとか、とにかく『恋』というものは確かであって不確かな気持ちなのである。”
“叶っても、叶わなくても、『恋』は良いものでもあるしそうでないのかもしれない。そこいらの問題は結局個人の価値観で億万通りもあるわけなのだが、恋する乙女という言葉があるように、女の子はそういう事に対して思春期であればあるほど敏感になるらしい。”
“話を戻そう。”
“恋というものは必ずしも叶うわけではない。”
“それだって色々なパターンがある。”
“単純に相手に好意を持たれていないからフラれる。そもそも一目惚れした場合相手はこちらの存在自体を告白されてからようやく認識するから受け入れられる事がなかったり。まず告白する勇気がなくて引きずっているうちに誰かに取られる。取られないにしても結局時間だけが経ち離れ離れになってしまう。”
“そして。”
“そして。”
“そして。”
“複数人が同じ人を好きになった場合、確実に誰か1人しか勝ち得る事はできない。それ以外の者は敗者と同義。”
“それがもし、自分の大事な友人と好きな人が被ってしまったら?”
“2人とかではなく、3人同時に同じ人を好きになってしまったら?”
“それも同じ。誰か1人しか勝ち得る事はできず、他の2人は敗者となる。そこで友情に亀裂が入ってしまう可能性の方が大きい。誰が勝っても勝者以外は敗者になるバッドエンドが付いてくる。”
“逃れられない現実で、だからと言って逃げる事はしたくないという気持ちが『恋』というものでもあるのだ。”
“そしてこれは。”
“奇しくも友人同士である複数の女の子が1人の男子に好意を寄せている。”
“そんな複雑で、バッドエンド直行にいくしか道はないのか。それとも他の道を探すのか、という物語である。”
何回も見たからか、ストーリーは最後まで知っていた事もありパラパラと読み流す。
そして最後の空白のページを開く。
何故かはずっと分からないでいた。他の小説と違って、この小説だけは本編の最後のページが空白でした。私はその意味がずっと分からなかった。強いて言えば、小説の最後が何故か煮え切らない終わり方だったという事。
あれだけ悩んで複雑になって読んでいた物語が、結局は結果が分からずに終わってしまったのだから。
でも、前代未聞な告白劇が終わった今。
私にはその意味がようやく分かったような気がしました。
途中の物語が空白ならば、自分で書き足せばいいんです。
ペンを用意して、その小説の最後のページに願いと自分達の祈りは届いたという気持ちを込めて書き込む。
『それでも探し続けたその先にハッピーエンドは待っていて。そこで少女達は、一緒に笑っていた』
やっぱり最後は笑顔で終わらないとねっ!
さて、いかがでしたでしょうか?
他の作者様方が大体1人の女の子をヒロインにしているであろうと思い、ラストの手前で少しばかり変化球を用意させていただきました。
まあ実際は梨子視点だったので梨子がメインヒロインみたいなとこはありましたけどね(笑)
変化球は複数人のヒロインだけでなく、相手がまさかの梨子の親戚、従兄にあたるというとこですかね。
本来なら好きになってはいけないはずの人物。好きになったらおかしい人物。
そこに焦点を当ててみました。
それだけで少し違うドキドキ感を感じていただければ狙い通りですね(イケナイ意味とかではない)
『誰かを好きになるのに理由はない』
意外とよく見かける言葉であり、聞く言葉ですよね。だったらそれは親戚や身内でも当てはまるんじゃないか?
『普通』ならおかしいけれど、であれば『普通』じゃなくしてやればいいんじゃないか?というコンセプトもあるわけでございます。
μ'sも2年組が好きであり、Aqoursも2年組が好きなんですよね(笑)
だから2年メインになりました!!
私なりのサンシャインストーリー、楽しんでいただけたら幸いです!
ではでは、最後にこの企画に参加させてくださった鍵のすけさんに感謝を。
この物語を読んでくださった読者の皆様にももちろん感謝を。
ありがとうございました!