ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー『夏――待ちわびて』 作:鍵のすけ
はじめましての方は初めまして!ハーメルンの方で活動させていただいています。ヒロアと申します!今回はサンシャイン企画と言うことで、僕からは梨子ちゃんメインのお話を書かせていただきました!ぜひ、最後までお楽しみください!
潮風香る内浦で俺はただ平凡に毎日を過ごしていた。ただ何となく学校に行き、ただ何となく一日を過ごす。そんなことを繰り返していたらいつの間にか、高校二年生となっていた。今日もまた適当に一日を過ごす、そう思っていた。
「あぁ…今日は野菜が安かったなぁ」
そんなのんきなことをいいながら俺は海沿いを歩いていた。
「あれ、あ、あれ?」
ふと、そんな声が聞こえたのもその時だった。声のした方向を見ると、慌てながらバックのなかをあさっている同い年位の女の子と、困っている八百屋のおっちゃん。俺は気付かれないようにおっちゃんのところへ行き、なるべく声を潜めておっちゃんに何があったのかと尋ねる。なんでも財布がないらしい。
「おっちゃん、いくら?」
「ん?670円だな」
俺は財布を取りだし、ぴったり670円をおっちゃんに渡す。
「へ?いいのかい?」
「制服を見た感じ、ここら辺の学校じゃないんだよなぁ、多分引っ越してきたんだろ、だったら?」
「ああ、引っ越し祝い、ね」
「そゆこと、ってなわけでよろしく」
「あいよ!」
ここら辺の人は結構仲がいい。それは移住してきた人も変わらない。その仲が良くなるきっかけというのがこの『引っ越し祝い』なのだ。引っ越し祝いと言っても、そこまで高いものを渡すわけでもない。
例えば、魚屋をやってる家だったら魚を一匹サービスしたり、花屋をやってる家なら、家に飾ってくださいと花を渡したりだとか。
些細なものでもいい、大事なのは心の問題だと、俺も中学の頃に引っ越してきたのだが、引っ越し祝いだと、いろいろなものをサービスしてくれたりした。
それ以来俺も引っ越し祝いだと何か送ることがある。心を大事に、某RPGゲームの作戦みたいだが、内浦に住む人たちの間では鉄則になっている。
おっちゃんが手際よく袋に野菜を入れると、焦ってバックを逆さにしたりしている女の子の方へと向かう。
「ほい、嬢ちゃん、野菜ね」
「え?でもお金をまだ…」
「いいってことよ!そこのやさしい兄ちゃんが払ってくれたからよ!」
「そんなの悪いですよ!やっぱり一回帰って財布を…」
凄く申し訳ないと思ってるのか急いで走りだそうとする女の子の手を掴み、止めさせる。
「君、引っ越してきたばっかだろ?」
「え…なんでそれを?」
「見た感じ俺と同い年位だし、ここら辺の高校少なくてな、片手の指に入るくらいもないから制服くらい覚えてるんだよ、その制服はこの辺の学校の出はないからな」
「へぇ…って!そうじゃなくて!お金を…」
感心していた顔からいっきに顔が強張る。
「だーかーら!引っ越してきたんだろ?」
「っ…はい」
「なら引っ越し祝いだ。どうだ?受け取ってくれるか?」
「まぁ…それなら・・・ありがとうございます」
女の子は律義に頭を下げる。
「そんなのはいいって、それよりも、これからよろしくな」
「はい!わたし、桜内梨子っていいます」
「桜内さん、な、覚えた。改めてよろしくな」
そう俺が言うと、桜内さんは何か言いたげな顔をする。
「どうした?」
「そ、そのどうせなら名前で呼んでほしいというか…あ、でも無理にとは言いませんけど…そうよばれたいなぁ、なんて…あわ!?私何言ってるんだろう!?わ、忘れてください!」
顔を真っ赤にして手をわたわたとさせている彼女を見ているとつい笑ってしまう。
「ふふ、じゃあな、梨子。また学校帰りとかであったら話そうぜ?ここら辺のことだったら俺でもそこら辺の人に聞けよ?みんな親切に教えてくれる。ここでの生活がいいものになることを願ってるよ」
そう言って俺は帰路につく。後ろでおっちゃんがキザなセリフはくなーと冷やかしてくるが無視だ無視!そんなの俺もわかってるよ!
そう心の中で叫びながら足を進めていると梨子がぱたぱたと走ってきて、俺の隣につくと俺のスピードに合わせて隣を歩く。
「おい、なんでこっちに…」
「私の家もこっちなんです。途中まででいいので一緒してもいいですか?」
…キザナセリフが無駄になっちまったなぁ…
「…途中までな」
「素直じゃないんですね」
「うっせぇよ…」
そんな話をしながら俺達は二人並んで帰った。
☆ ☆ ☆
「あ、ここが私の家です」
どこまで行っても帰り道が分かれることはなく梨子の家についてしまった。しかもそこは―――――
俺の家の隣だったのだ。
「あなたの家はどこに?」
「あ、ああ、ここからもうちょっと(数歩)歩いたとこかな…ハハハ」
乾いた笑みを浮かべながら俺はそう言う。
「じゃあ近所なんですね!」
少し嬉しそうにそう言う梨子にそうだな、と返しつつ内心、近所どころかお隣なんなんだよなぁ…などと思いながら家に入る梨子を見送る。
扉を閉める前に梨子が手を振っていたので笑顔で手を振り返すと、にっこりと笑いながら扉をしめた。
完全に扉が閉まったのを確認し、俺はそそくさと隣にある俺の家に入っていった。
家に入ってホッと一息つき、壁に寄りかかる。
「なんとか誤魔化せた…」
そう安心して夕飯の順備に取り掛かる。
だが、事件はそのあとに起こった。
☆ ☆ ☆
夕飯を食べ終え、俺は学校の課題に取り掛かっていると、ふいに家のインターフォンが鳴る。
「はーい、いまでまーす」
ガチャ、と扉を開けると、清楚。という言葉がピッタリの美人な人と―――――
梨子がいた。
俺はしまった、と冷や汗を流しており、梨子は驚いてフリーズしていたが、そんな事を知らない梨子のお母さんと思われる人は頭を下げる。
それにつられ俺も頭を下げた。
「このたび、隣に引っ越してきた桜内です。よろしくお願いいたします」
「あ、ご丁寧にどうも。こちらこそよろしくお願いいたします」
「礼儀正しいのですね。今はおいくつで?」
「あ、近くの高校に通っております。二年生です」
しまった、年を聞かれてるのに学年言っちまったと、内心焦りつつ、顔には出さないようにしていた。
「あら?じゃあうちの娘と同じですね。ほら梨子、挨拶」
「あ、桜内梨子です。よ、よろしくお願いします…?」
会ったことがあるがために挨拶も少しぎこちない感じになってしまう梨子。
少し笑いそうになってしまったが何とかこらえる。
耐えろ、俺。
それから少し話した後、二人は帰っていったが、何か梨子がこそこそと後ろでポストを指さしていたので見てみるとそこには一枚のメモが入っていた。
なにやらアルファベットの羅列と、その下には数字の羅列が書いてあった。
…うん、これメールアドレスと電話番号ですね。
家に入り、登録するかしないか少し迷ったが一応登録はしておこうと、書かれていたメールアドレスに自分の携帯電話の番号を送ってしばし待つと書かれていた電話番号から電話がかかってきたので出ると
『あ、もしもし?』
「よう、梨子」
『うん、ちゃんと繋がったみたいだね。よかった…』
「良かったって…俺のアドレスなんぞ要らんだろうに…」
『ううん、いるよ。友達だもん』
「…そうか」
『ほら、素直じゃない。それより、隣ってどうゆうこと?びっくりしたんだけど…(怒)』
「あっ」
その後俺はこってりと怒られ、それから毎日とまではいかないが、よく電話をするようになった。今では電話が楽しみで仕方ない。
そんなことがあってから約半年。今は紅葉が春とはまた違った景色が内浦にも広がっていた。
今でも梨子とは電話したり、たまに一緒に沼津駅の方に出掛けたりした。梨子はスクールアイドルとやらになったらしく、今では結構有名になっている。何度か同じグループのメンバーの千歌や曜にもあったが結構いいやつでいつの間にかなつかれて、お兄さんや兄さんと呼ばれるようになった。いい響きだ。
明るいあいつらと一緒なら梨子もさぞかし幸せだろう。そう思いながら、夕飯を作っていると、ふいに携帯が鳴ったので梨子かなと、思いながら電話に出る。
「もしもし…え?…ああ、それで?……は?」
俺は手に持っていたお玉を落とし、そのまま作っていた味噌汁にお玉は着水し、沸騰直前の味噌汁が俺の顔向かって飛び散った。
「あっつ!?」
☆ ☆ ☆
次の日、俺はところどころにやけどをした痕をさすりながら、商店街をとぼとぼと歩いていた。
「あ!お兄さんだ!」
そんな声がしたので俺はその方向を向くと、その先には大きく手を振っている千歌と手をおでこの前に持っていき、敬礼をしている曜のなんとも微笑ましい二人がいた。
「よう、千歌、曜」
「「こんにちは!」」
「って、その手、どうしたの!?やけどしてるよ!?」
千歌が腕を見て心配そうにする。
「…ああ、大丈夫だ…」
そう俺が言うと曜は少し目を細めて俺を見る。
「な、なんだよ」
「兄さん、気づいてないかもだけど、顔も暗いし、覇気がないよ。なんかあったでしょ?」
曜がそう言うと千歌がそうだそうだと心配そうな目をする。
「兄さん、私達が相談に乗るよ?頼ってくれてもいいんだよ?いつもお世話になってるし…」
「参った。降参だ、話すよ」
俺は二人に電話の内容を話し、今の状況をざっくりとだが教えた。
「「お兄さん(兄さん)が引っ越す!?」」
「ああ、両親がやってる店が東京にあるんだがな…急に父さんが倒れて、これからも仕事できそうにもないようなんだよ…もともと俺も店を継ぐ気だったんだが父さんが倒れちまったから引っ越しが早まることになったんだ」
「そんな!?いつ引っ越しちゃうの!?」
千歌が声を荒げて俺に聞いてくる。
俺は目をそらし、少し口ごもりながらもはっきりという。
「……明日だ」
「そりゃぁ、えらく急だね、兄さん」
「ああ、だから今日はこの街を見納めしようかとな…」
「梨子ちゃんは!?梨子ちゃんに言ったの!?」
それこそ俺は苦い顔をして答える。
「……まだだ」
「兄さん…ちょっといい?」
「ん?」
俺は曜の方を向くと
パァン!
曜に頬を叩かれた。
「なにしてんのさ!急に言われたらあの子悲しむよ!はやく行ってきなよ!兄さんを一番慕ってるのはあの子なんだよ?!梨子ちゃんが悲しむところなんて…そんなの…いやだよ!兄さんは、兄さんは!あの子のことどう思ってるのさ?!」
目に涙を浮かべている曜。それは梨子が曜にとってどんなに大切な友達かどうかを物語っていた。
頬を抑えながら、この半年間、梨子と過ごした日々を思い出す。
一緒に笑いあったり、昼名を作って二人で食べたり、そういや、歌のアドバイスもしてやったっけ…そんな日々が走馬灯のように頭のなかをよぎって行くなか、俺は一つ思った。
俺は梨子のことが好きなんじゃないか?
と、そう分かった瞬間、俺がやることは決まっていた。
「曜、千歌」
「なに?」
「…」
「わり、ちょっとやることできたから帰るわ」
「うん!」
「…ふん」
そんな二人に内心感謝しつつ走って家まで向かう。
「おにいさーん!」
千歌の声に振り返ると二人がさっきのところから少し目に涙を浮かべながらこぶしを空に挙げる。
「「頑張って!」」
俺はそれに手をあげることでこたえ、また走り出す。
☆ ☆ ☆
走っていると偶然にも梨子がいた。
「梨子!」
「?あ、どうしたの?そんなに走って…」
「伝えたいことがある」
「え?なに?」
――――お前のことが好きだ。
☆ ☆ ☆
梨子に想いを伝え、俺は次の日、内浦を去っていった。
梨子はすごく悲しそうにしてたが、最後は笑って送り出してくれた。
また必ず会うことを約束して、その時に答えを聞くと約束して――
どうでしたでしょうか?サンシャインは梨子ちゃんが好きなので今回は梨子ちゃんメインのお話を書かせていただきました!今日で三作目のこの企画、まだまだ他の作家さん方も参加しています!最後まで楽しんで読んでいってください!